アスタリスク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アスタリスク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所 グロース市場に上場する同社は、スマートフォン装着型のバーコード・RFIDリーダー「AsReader」等の開発・販売を行うAsReader事業を主力としています。第19期は売上高が増加し、各段階利益の赤字幅が縮小する増収増益(損失改善)の傾向にあります。


※本記事は、株式会社アスタリスク の有価証券報告書(第19期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アスタリスクってどんな会社?


モバイル端末に装着して使用するバーコードやRFIDリーダー「AsReader」を展開する企業です。

(1) 会社概要


2006年に滋賀県大津市で設立され、システム受託開発を開始しました。2013年にiPod touch接続のバーコードリーダー「AsReader」を販売開始し、翌年にはRFIDリーダーも投入して事業を転換。2021年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場し、2022年の市場区分見直しによりグロース市場へ移行しました。

同社グループの従業員数は連結75名、単体50名です。筆頭株主は創業者で代表取締役社長の鈴木規之氏の資産管理会社であるトリプルウィン株式会社で、第2位は株式会社SBI証券、第3位は鈴木規之氏本人となっています。創業者が経営と所有の両面で強い影響力を持つ体制です。

氏名 持株比率
トリプルウィン 41.04%
SBI証券 2.14%
鈴木 規之 2.07%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表は代表取締役執行役員社長の鈴木規之氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
鈴木 規之 代表取締役執行役員社長 1997年東レ入社。2006年同社設立し社長就任。2014年より現職。海外子会社AsReader, Inc.等のCEOも兼務する創業者。
加藤 栄多郎 取締役執行役員事業部長 ディジ・テック研究所(現ディジ・テック)を経て2011年同社入社。営業部やビジネスソリューション開発の部長を歴任し、2020年より現職。
山本 和矢 取締役執行役員管理統括室長 星光ビル管理、青木会計事務所、アスカ監査法人等を経て2020年同社入社。執行役員管理統括室副室長を経て2021年より現職。
中川 陽介 取締役執行役員技術室長 湯山製作所、ディジ・テック、星和電機を経て2023年同社入社。R&Dセクションマネージャー、執行役員技術室長を経て2024年11月より現職。
石田 泰一 取締役(監査等委員) 鐘紡(現クラシエHD)、KBセーレン取締役等を経て2014年同社入社。管理統括室長、取締役執行役員を経て2021年より現職。


社外取締役は、辻本希世士(弁護士・弁理士)、岩﨑文夫(元阪急タクシー社長)、山元教有(澤電気機械営業部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「AsReader事業」、「システムインテグレーション事業」および「賃貸事業」を展開しています。

AsReader事業


スマートフォンやタブレット等のモバイル端末に装着して使用するバーコードリーダー、RFIDリーダー/ライター等の「AsReader」製品群の企画・開発・販売を行っています。製造、物流、小売、医療など幅広い業界のDXや業務効率化を支援しており、画像認識や顔認証システムなども手掛けています。

主な収益源は、製品の販売代金および保守サービス料、アプリケーションソフト利用料です。製品販売は売り切り型が大半ですが、保守等のストック型収益の拡大も進めています。運営は同社および海外子会社のAsReader, Inc.、大連明日星科技有限公司、株式会社自動レジ研究所が行っています。

システムインテグレーション事業


モバイル活用による業務改革を推進するため、AsReader導入などに関わるアプリケーションやソフトウェアの受託開発を行っています。顧客の業務フローに合わせたシステムの設計・開発から保守までを提供し、ハードウェアとソフトウェアを融合させたソリューションを展開しています。

主な収益源は、アプリケーションやソフトウェア等の受託開発費および保守サービス料です。物流、小売、医療、製造業界など多様な顧客からの開発案件を受注しています。運営は主に同社および中国子会社の大連明日星科技有限公司が行っています。

賃貸事業


大阪市淀川区にある本社兼研究所(AsTech Osaka Building)の一部フロア(7階~9階)を住居として賃貸しています。

主な収益源は、入居者からの賃貸料収入です。同社が物件を保有・管理し、安定的な収益を得る不動産賃貸事業として運営されています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は15億円から24億円の範囲で変動しており、直近の第19期は前期比で増収となりました。利益面では第17期以降、営業損失および経常損失が続いていますが、第19期は赤字幅が縮小しています。当期純損益についても損失計上が続いていますが、こちらも改善傾向にあります。

項目 2021年8月期 2022年8月期 2023年8月期 2024年8月期 2025年8月期
売上高 18億円 24億円 18億円 16億円 17億円
経常利益 2億円 5億円 -1.8億円 -1.8億円 -1.3億円
利益率 13.3% 19.7% -10.2% -11.2% -7.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 3億円 -1.7億円 -3.9億円 -2.1億円

(2) 損益計算書


売上高は増加し、売上総利益率も改善していますが、販売費及び一般管理費が売上総利益を上回る状態が続いており、営業損失となっています。ただし、営業損失の額は前期と比較して大きく縮小しており、収益性は改善に向かっています。

項目 2024年8月期 2025年8月期
売上高 16億円 17億円
売上総利益 5億円 6億円
売上総利益率 33.8% 37.3%
営業利益 -2億円 -1億円
営業利益率 -14.2% -7.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が2.3億円(構成比30%)、販売促進費が0.6億円(同8%)、支払手数料が0.6億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のAsReader事業は増収となり、セグメント利益も黒字転換を果たしました。一方、システムインテグレーション事業は減収となり、損失を計上しています。賃貸事業は売上・利益ともに安定しています。

区分 売上(2024年8月期) 売上(2025年8月期) 利益(2024年8月期) 利益(2025年8月期) 利益率
AsReader事業 13億円 14億円 -0.4億円 0.6億円 4.6%
システムインテグレーション事業 3億円 3億円 0.0億円 -0.1億円 -5.3%
賃貸事業 0.1億円 0.1億円 0.0億円 0.0億円 14.2%
調整額 - - -1.9億円 -1.8億円 -
連結(合計) 16億円 17億円 -2億円 -1億円 -7.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

アスタリスクは、新株予約権の行使による収入が財務活動によるキャッシュ・フローを大きく増加させました。営業活動では、棚卸資産や売上債権の減少が資金増加に寄与し、事業活動からプラスの資金を生み出しています。投資活動では、有形・無形固定資産の取得により資金を使用しました。これらの結果、期末の資金は前期末から増加し、潤沢な資金状況となっています。

項目 2024年8月期 2025年8月期
営業CF -0.7億円 2億円
投資CF -0.3億円 -0.2億円
財務CF 3億円 3億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「ITを通じて、三方笑顔(お客様の笑顔/社員の笑顔/世間の笑顔)を創造し、人類・社会の進歩発展に貢献します。」を経営理念として掲げています。自己の良心、スピード、新しいIT技術をもって信頼と安心を築き、三方笑顔を創造することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「アスタリスク人の宣言」として8つの行動指針を定めています。「プロとしての熱意」「徹底の徹底」「土俵の真ん中で相撲をとる」「時間軸を第一に」「目的、ねらい、コンセプトの明確化」「夢のある提案をし続け、固定客化」「何事も『数値』をもって行動」「常に明るく前向きで、楽しむことを工夫する」という価値観を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、将来の需要と業績を表す重要な指標として「受注高」を重視しています。「受注高=受注件数×受注単価」と定義し、受注件数の増加と受注単価の向上を営業活動の行動規範としています。これらを分析し、現状認識や戦略立案に活用しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、既存主力事業であるAsReader事業において、スマートフォンを利用した業務の一般化やRFIDの普及、製造・物流・医療など幅広い業界への展開を通じて拡大を目指しています。また、セミセルフレジや顔認証システム、賞味期限管理アプリ「SdcO」などの新製品拡販、国内キャリアとの協業による営業力強化、および米国を中心とした海外展開を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、これまでの若手中心の採用に加え、多様な価値観を取り入れ新たな価値を生み出すため、他業種からの中途採用も含めた幅広い人材の採用に取り組んでいます。今後の事業拡大に対応するため、優秀な人材の確保と育成を極めて重要な経営課題と位置付け、新卒定期採用も積極的に行う方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年8月期 43.4歳 6.0年 5,679,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 継続企業の前提に関する重要事象等


同社グループは営業損失および親会社株主に帰属する当期純損失を計上しており、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象が存在しています。これに対し、営業体制のプロダクト別再編、ストック型商材の拡販、手元資金の確保、コスト削減等の施策を実行し、収益性の改善と財務の健全化に努めています。

(2) 海外生産への依存とMFi認証


主力製品「AsReader」の一部は、Apple社のMFi認証を持つ韓国の特定企業でのみ製造可能であり、売上の約49%が当該企業への生産委託に依存しています。委託先の経営状況やカントリーリスク等が顕在化した場合、製品供給や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 経済環境および市場動向の変化


日本や米国など主要市場における景気後退や個人消費の低迷は、同社製品の需要減少につながる可能性があります。また、技術革新のスピードが速い業界であるため、新技術への対応遅れや開発した製品が市場に浸透しない場合、先行投資の回収が困難になるリスクがあります。

(4) 品質に関するリスク


市場ニーズに応える新製品の開発において、予期せぬ品質課題や不具合が発生する可能性があります。これにより、対策費用の発生や販売遅延、社会的信用の低下、損害賠償責任などが生じ、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。