※本記事は、株式会社サイエンスアーツ の有価証券報告書(第22期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. サイエンスアーツってどんな会社?
現場で働く「デスクレスワーカー」をつなげるライブコミュニケーションプラットフォーム「Buddycom」を提供するホリゾンタルSaaS企業です。
■(1) 会社概要
同社は2003年にITコンサルティング事業を行う企業として設立されました。2015年にスマートフォンIP無線サービス「Aldio」の開発・販売を開始し、2019年にサービス名を「Buddycom」へ、社名を現在のサイエンスアーツへ変更しました。2021年に東京証券取引所マザーズ(現グロース)へ上場を果たしています。2024年には楽天グループおよびJVCケンウッドと資本業務提携を行い、事業拡大に向けた体制を強化しています。
2025年8月31日現在、同社の従業員数は58名(単体)です。筆頭株主は創業者の資産管理会社で、第2位は資本業務提携先である楽天グループ、第3位は創業者(現会長)となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 合同会社平岡秀一事務所 | 37.05% |
| 楽天グループ | 10.12% |
| 平岡 秀一 | 9.49% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長は平岡竜太朗氏、社外取締役比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 平岡 竜太朗 | 代表取締役社長 | 2017年ワークスアプリケーションズ入社。2018年同社入社。企画本部長、取締役を経て、2025年11月より現職。 |
| 平岡 秀一 | 代表取締役会長 | 日立西部ソフトウェア、マイクロソフト等を経て、2003年同社(旧シアンス・アール)を設立し社長就任。2025年11月より現職。 |
| 松田 拓也 | 取締役管理本部長 | ゼファー、持田製薬、デザインワン・ジャパンを経て、2018年同社入社。2019年2月管理本部長就任。2019年11月より現職。 |
社外取締役は、島田貴子(アールエイジ管理本部取締役)、中川浩之(元商船三井システムズ社長)、三ツ橋徹(司法書士)、藤田友佳子(PHONE APPLI執行役員CWO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「Buddycom事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) Buddycom事業
スマートフォンやタブレットにアプリをインストールすることで、トランシーバーのように複数人への一斉連絡を可能にするクラウドサービス「Buddycom」を提供しています。主な顧客は、店舗や交通インフラ、建設現場などで働くフロントラインワーカー(デスクレスワーカー)です。音声だけでなく、テキスト化、翻訳、映像配信なども可能です。
収益は主に、ユーザー数に応じたサブスクリプション型のサービス利用料と、イヤホンマイクやヘッドセットなどの専用アクセサリーの販売代金から構成されています。アクセサリーは他社製品のほか、共同開発品も取り扱っています。運営は主に同社が行っています。
■(2) その他事業
同社がBuddycom事業を開始する以前から取り扱っている、ハイブリッド型データベース「ALTIBASE」の提供を行っています。大容量データの高速処理に対応したデータベース製品です。
現在は新規のライセンス販売は終了しており、既存顧客に対するライセンス販売および保守サポートサービスの提供による収益が主となっています。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年8月期から2025年8月期までの5期間において、売上高は一貫して右肩上がりで推移しており、特に直近の2025年8月期は前期比で約40%の大幅な増収となりました。損益面では、投資先行により赤字が続いていましたが、2025年8月期には経常利益および当期純利益が黒字化し、収益性が大きく改善しています。
| 項目 | 2021年8月期 | 2022年8月期 | 2023年8月期 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3.7億円 | 6.6億円 | 7.7億円 | 11.8億円 | 16.5億円 |
| 経常利益 | -1.0億円 | 0.1億円 | -0.7億円 | -0.3億円 | 0.9億円 |
| 利益率(%) | -26.1% | 1.5% | -8.7% | -2.9% | 5.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -1.0億円 | 0.1億円 | -0.8億円 | -0.3億円 | 1.1億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が拡大しています。売上総利益率は50%台後半から60%台前半で推移しており、高い収益性を維持しています。販売費及び一般管理費も増加していますが、増収効果がそれを上回り、営業利益は前期の赤字から当期は1億円を超える黒字へと転換しました。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 11.8億円 | 16.5億円 |
| 売上総利益 | 6.8億円 | 10.1億円 |
| 売上総利益率(%) | 57.2% | 61.0% |
| 営業利益 | -0.3億円 | 1.1億円 |
| 営業利益率(%) | -2.6% | 6.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2.6億円(構成比29%)、広告宣伝費が0.7億円(同8%)、研究開発費が0.2億円(同3%)を占めています。売上原価については、商品仕入等が4.6億円(売上原価構成比71%)、経費が1.6億円(同24%)となっています。
■(3) セグメント収益
主力であるBuddycom事業が大幅な増収増益を達成し、全社の黒字化を牽引しました。Buddycom事業の売上高は前期比約40%増、セグメント利益は黒字転換しています。一方、その他事業(ALTIBASE事業)は縮小傾向にあり、売上・利益ともに減少しました。
| 区分 | 売上(2024年8月期) | 売上(2025年8月期) | 利益(2024年8月期) | 利益(2025年8月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| Buddycom事業 | 11.8億円 | 16.5億円 | -0.4億円 | 1.1億円 | 6.4% |
| その他 | 0.1億円 | 0.0億円 | 0.0億円 | 0.0億円 | 85.0% |
| 連結(合計) | 11.8億円 | 16.5億円 | -0.3億円 | 1.1億円 | 6.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 0.0億円 | 2.9億円 |
| 投資CF | -0.3億円 | -0.3億円 |
| 財務CF | 0.9億円 | 7.5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「フロントラインワーカーに未来のDXを提供し、明るく笑顔で働ける社会の力となる」というミッションを掲げています。このミッションのもと、現場で働く人々をつなげるライブコミュニケーションプラットフォーム「Buddycom」を提供し、あらゆる業種において音声や動画を活用して現場の課題を解決することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、現場の課題解決を目指す姿勢を重視しており、特に「Buddycom」の開発においては自社内製化を徹底しています。これにより、安定的な稼働と機動的な新機能追加を実現できる体制を構築しています。また、セールスパートナーとの連携やエコパートナーとの共存共栄を図る「パートナーエコシステム」を重視し、相互に価値を高め合う文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、中長期的に安定した売上収益を拡大させることを重視しており、経営上の重要指標としてARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)を採用しています。事業本来の稼ぐ力と活動の効率性のバランスを考慮し、持続的かつ質の高い成長を目指しています。
* 2025年8月期実績 ARR:10.7億円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、利用企業数・ユーザー数の増加およびARPU(ユーザー平均単価)の向上による成長加速を目指しています。具体的には、ブランディング・マーケティング強化による知名度向上、販売代理店の戦略的活用、エコパートナーとの連携による機能拡充、IoT機器との接続連携などを推進しています。
* 2025年8月期 契約社数:1,562社
* 2025年8月期 解約率:0.42%
* 2025年8月期 NRR(売上継続率):118.0%
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、事業拡大と成長スピード向上のため、優秀な人材の継続的な雇用と定着を重要視しています。採用体制の強化に加え、教育・研修制度や人事評価制度の拡充を進めています。また、多様な人材が能力を発揮できるよう、性別や年齢、国籍に関わらず適材適所で配置する方針をとっており、フレックスタイム制度や従業員持株制度、株式報酬制度などの整備も行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年8月期 | 31.0歳 | 2.8年 | 5,782,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 40.0% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※男性育児休業取得率および男女賃金差異については、有価証券報告書等に記載が見当たらないため「-」としています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(48.3%)、女性管理職比率(40.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 競合他社の参入と競争激化
国内ソフトウェア市場の拡大に伴い、類似のビジネスモデルを持つ新規参入者や既存の競合企業が増加する可能性があります。これにより同社の優位性が失われ、顧客との取引が縮小した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 技術革新への対応
技術革新のスピードが速い業界であるため、常に新しい技術を取り入れ、開発環境を進化させる必要があります。想定を超える技術革新や環境変化が生じ、それに適切に対応できなかった場合、競争力が低下し、事業活動に影響を与える可能性があります。
■(3) Buddycom事業への依存
同社は経営資源を「Buddycom」事業に集中させています。特定の業種や地域には依存していませんが、同事業の成長に何らかの障害が生じた場合、全社の財政状態や経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 人材の確保と育成
事業拡大には優秀な人材の確保と育成が不可欠です。採用や育成が計画通り進まない場合や、人材が流出した場合、サービス品質や競争力の低下を招き、業績に影響を与える可能性があります。



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