※本記事は、株式会社ラストワンマイル の有価証券報告書(第14期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. ラストワンマイルってどんな会社?
電気・ガス・ネット等の生活インフラサービスを、提携企業を通じてエンドユーザーに案内する「ラストワンマイル事業」を展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は2012年に設立され、NTT東日本二次代理店として営業を開始しました。2016年に自社サービス「Best光(現:まるっとひかり)」の提供を開始し、2018年にはサービスブランドを「まるっとシリーズ」に統一しました。2021年に東京証券取引所マザーズ(現:グロース)へ上場を果たしました。その後もM&Aや組織再編を積極的に進め、事業基盤の拡大を図っています。
同グループの従業員数は連結で313名、単体で181名です。筆頭株主は同社と資本業務提携を結ぶ事業会社のプレミアムウォーターホールディングスで、第2位は同社代表取締役会長兼CEOの渡辺誠氏、第3位は子会社であるブロードバンドコネクション代表取締役の多田敬祐氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| プレミアムウォーターホールディングス | 34.39% |
| 渡辺 誠 | 8.84% |
| 多 田 敬 祐 | 4.04% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役会長兼CEOは渡辺誠氏、代表取締役社長兼COOは松永光市氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 渡辺 誠 | 代表取締役会長兼 CEO | 1995年竹中土木入社。2010年コール&システム設立。2022年同社代表取締役社長を経て、2024年11月より現職。 |
| 松永 光市 | 代表取締役社長兼 COO | 1994年光通信入社。プレミアムウォーター取締役副社長、同社常務取締役営業本部長等を経て、2024年11月より現職。 |
| 市川 康平 | 取締役執行役員 | 2008年シティクリエイションホールディングス入社。同社管理本部長、財務経理部長を経て、2025年9月より経営企画室長(現任)。 |
| 栁田 拓也 | 取締役執行役員 | 2008年NEXT入社。U-NEXT(現:TACT)等を経て、2024年11月より事業本部第1営業部長(現任)。 |
| 氣仙 直用 | 取締役執行役員 | 2000年遠藤設備建設入社。アズラフォスタ代表取締役等を経て、2024年11月より事業本部第2営業部長(現任)。 |
| 久木宮 然 | 取締役執行役員 | 1997年薩摩マツダ(現:南九州マツダ)入社。コール&システムを経て、2024年11月より事業本部CC事業部長兼事業管理部長(現任)。 |
| 久木宮 美和 | 取締役執行役員 | 2003年大洋食品入社。コール&システム代表取締役、同社社長室長等を経て、2025年5月より会長室長(現任)。 |
| 長野 成晃 | 取締役 | 2003年光通信入社。プレミアムウォーターホールディングス代表取締役CFO等を経て、2024年11月より現職。 |
| 矢野 貴文 | 取締役 | 2014年まとメディア(現:マーケットインサイト)代表取締役社長。2017年RUTILEA代表取締役(現任)。2023年11月より現職。 |
社外取締役は、田中裕也(元日本板硝子監査部)、尾﨑充(アクティベートジャパンコンサルティング代表)、石上麟太郎(石上法律事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「アライアンス事業」「集合住宅向け無料インターネット事業」「コンタクトセンター事業」「ホテル運営受託事業」および「リスティング・メディア事業」を展開しています。
■(1) アライアンス事業
不動産管理会社やその他の顧客基盤を持つ提携企業から、新生活を始めるなどの見込顧客を紹介してもらい、自社サービスおよび他社サービス(電気、ガス、インターネット回線、宅配水など)を提案・販売しています。
収益は、見込顧客に対してサービスを提案・契約することで得られる手数料や、自社サービスの利用料などから構成されます。運営は主にラストワンマイルや、連結子会社であるブロードバンドコネクション、キャリア、ベンダー、SHCなどが行っています。
■(2) 集合住宅向け無料インターネット事業
マンションやアパートなどの集合住宅に対して、物件所有者の負担でインターネット設備を導入・設置し、入居者が無料でインターネットを利用できる環境を提供するサービスです。
収益は、物件所有者等から受け取るインターネット設備の設置工事代金や、毎月の保守運用サービス料などから構成されます。運営は主にブロードバンドコネクション、ベンダー、CITV光、SHCなどが行っています。
■(3) コンタクトセンター事業
官公庁、不動産管理会社、飲食店などからの委託を受け、電話やWeb、メール等を通じた顧客対応業務を行っています。管理物件入居者の問合せ対応や各種受付業務などを代行します。
収益は、委託元企業から受け取る業務委託料などから構成されます。運営は主にラストワンマイルが行っており、独自のノウハウによるIT化推進や業務効率化により、同業他社からの受注も増加しています。
■(4) ホテル運営受託事業
ホテルの所有者から、集客や清掃などの運営業務を受託しています。通常の観光・ビジネス需要に加え、マンスリーマンションとしての長期宿泊運営のノウハウも活用しています。
収益は、ホテル所有者から受け取る運営受託料(成果報酬型を含む)から構成されます。運営は主に連結子会社のHOTEL STUDIOが行っています。
■(5) リスティング・メディア事業
自社のマーケティングノウハウを活かし、リスティング広告の運用やランディングページの制作・運用を行うことで、顧客からの直接流入を獲得する事業です。
収益は、広告運用によって獲得した顧客へのサービス販売や広告収入などから構成されます。運営は主にラストワンマイルが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は順調に拡大しており、直近の第14期では150億円を突破しました。利益面でも、第13期に大幅な増益を達成した後、第14期も税引前利益で増益基調を維持しています。親会社所有者帰属当期利益については、第14期は前期比で減少しています。
| 項目 | 2023年8月期 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 94億円 | 118億円 | 155億円 |
| 税引前利益 | 2億円 | 9億円 | 11億円 |
| 利益率(%) | 2.6% | 7.7% | 7.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | 8億円 | 7億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益の増加に伴い、売上総利益も拡大しています。一方、販売費及び一般管理費も増加しており、営業利益率は前期の水準を維持しつつ推移しています。事業規模の拡大に合わせ、利益額を着実に伸ばしている状況が見て取れます。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 118億円 | 155億円 |
| 売上総利益 | 78億円 | 110億円 |
| 売上総利益率(%) | 65.9% | 71.1% |
| 営業利益 | 9億円 | 11億円 |
| 営業利益率(%) | 8.0% | 7.4% |
販売費及び一般管理費のうち、支払手数料が44億円(構成比44%)、給料及び手当が9億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社グループは単一セグメントで事業運営を行っているため、連結全体の業績が増減要因となります。既存事業の強化に加え、M&Aによる事業規模の拡大が売上収益および営業利益の増加に寄与しています。
| 区分 | 売上(2024年8月期) | 売上(2025年8月期) | 利益(2024年8月期) | 利益(2025年8月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| Total | 118億円 | 155億円 | 9億円 | 11億円 | 7.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
ラストワンマイルは、営業活動により潤沢な資金を生み出し、事業基盤を強化しています。投資活動では、子会社株式の取得や有価証券の売却等により、将来の成長に向けた投資も行っています。財務活動では、借入金の返済や自己株式の取得等により、財務基盤の安定化を図っています。これらの活動の結果、同社は期末時点で多額の資金を保有しています。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 16億円 | 14億円 |
| 投資CF | -5億円 | 2億円 |
| 財務CF | 1億円 | -11億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「全従業員が究極的に経済合理性のある判断をできる集団であり続ける」を経営理念として掲げています。これは短期的ではなく、長期的な利益につながる行動を選択することを意味し、これを追求することで企業価値の向上を実現できると考えています。
■(2) 企業文化
同社は「業種業態にこだわらず、あらゆる商品を世の中にまだない販売の手法を考えて新たな市場(ブルーオーシャン)を構築し、独占的に販売する」ことを営業方針としています。既存のリソースを活かした事業参入やM&Aを活用し、安定した事業基盤を複数持つことで持続的な成長を目指す姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、事業の継続的発展のために収益力を高め、適正な利益を確保することを重要視しています。特に、売上収益や営業利益に加え、「ストック型収益」の増大を重要な経営指標として位置づけています。
* ストック型収益:6,809,344千円(2025年8月期実績)
■(4) 成長戦略と重点施策
主力事業の拡大に加え、M&Aや既存リソースを活用した新規事業への参入により、複数の安定した事業基盤の構築を目指しています。特に、長期的な利益を獲得できるサービスの選定、自社サービスの拡充による顧客単価の向上、販売手法の多様化による顧客数増加に注力しています。
* 2025年8月期 ストック型収益:6,809,344千円
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、従業員を成長を支える重要な存在と認識し、多様な人材が能力を発揮できる環境づくりに取り組んでいます。年齢や性別、社歴によらず平等に機会が得られる人事評価制度とキャリアプランを整備し、事業拡大に連動して従業員を育成し、管理職へ登用する方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年8月期 | 34.6歳 | 6.3年 | 4,847,000円 |
※平均年間給与は基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 20.6% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 72.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 83.5% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 労務関連の法制改正のリスク
働き方の異なる多くの従業員が従事しているため、時間外労働の上限規制や有給休暇取得義務化、同一労働同一賃金などの法規制への対応や労働環境の変化により、人件費が高騰し経営成績に影響を与える可能性があります。
■(2) 競合他社の影響
取り扱う生活関連サービスには競合企業が複数存在します。ワンストップサービスのブランド力向上を図っていますが、異業種からの参入を含む競争激化による収益力低下や広告宣伝費の増加が、事業展開や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 自然災害、感染症等に関するリスク
大規模な自然災害や感染症の発生・拡大により事業活動が長期間制限された場合、財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。ホテル運営受託事業においては、有事の際にマンスリーマンション需要へリソースをシフトするなどでリスク低減を図っています。



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