※本記事は、株式会社トリプルアイズ の有価証券報告書(第17期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. トリプルアイズってどんな会社?
独自の画像認識AIプラットフォーム「AIZE」やGPUサーバー事業を展開するテクノロジー企業です。
■(1) 会社概要
2008年に設立され、2019年に画像認識プラットフォーム「AIZE」の提供を開始しました。2022年5月に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしています。その後、2023年9月にGPUサーバー事業を行うゼロフィールド、2024年7月にエンジニアリング事業を行うBEXを子会社化し、事業領域を拡大しています。
連結従業員数は449名、単体では244名です。筆頭株主は創業者(故人)の配偶者である福原聖子氏、第2位は福原氏が代表取締役を務める資産管理会社のコスモウエアです。第3位には2024年に資本業務提携を行ったゲームカード・ジョイコホールディングスが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 福原 聖子 | 27.25% |
| コスモウエア | 21.45% |
| ゲームカード・ジョイコホールディングス | 4.76% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役CEOは片渕博哉氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 片渕 博哉 | 代表取締役CEO | 2016年同社入社。AIZE開発部部長、執行役員技術本部副管掌を経て、2025年11月より現職。 |
| 山田 雄一郎 | 代表取締役会長 | 新日本監査法人(現 EY新日本有限責任監査法人)出身。2020年同社入社、CFOを経て2021年代表取締役就任。2025年11月より現職。 |
| 加藤 慶 | 取締役CFO管理本部管掌 | 新日本監査法人(現 EY新日本有限責任監査法人)、MAYAホールディングス取締役CFO等を経て、2021年同社取締役CFO就任。現在に至る。 |
| 篠原 博 | 取締役監査等委員 | 日本コロムビア等を経て、首都圏コンピュータ技術者株式会社監査役などを歴任。2018年同社常勤監査役就任。2023年11月より現職。 |
社外取締役は、篠田庸介(ヘッドウォータース代表取締役)、鈴木規央(弁護士・公認会計士)、中釜和寿(公認会計士・税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「AIソリューション事業」および「GPUサーバー事業」を展開しています。
■(1) AIソリューション事業
AI技術を用いたシステム開発(AIインテグレーション)、画像認識プラットフォーム「AIZE」等の自社プロダクト提供、および自動車分野等におけるエンジニアリングサービスを行っています。大手SIerやエンドユーザーからの受託開発、顔認証システムの導入などが主な業務です。
システム開発やコンサルティングの対価、自社プロダクトの月額利用料、技術者の役務提供に対する対価等を主な収益源としています。運営は同社に加え、自動車設計等を行う株式会社BEX、研修サービスを行う株式会社シンプルプラン、将棋道場運営を行う株式会社所司一門将棋センターが行っています。
■(2) GPUサーバー事業
生成AIや暗号資産マイニングに適した高性能なGPUサーバーの開発・販売、およびデータセンターの構築・運用を行っています。国内および米国にデータセンター拠点を持ち、AI開発者や企業の計算リソース需要に応えるインフラを提供しています。
主な収益は、GPUサーバーやマイニングマシンの販売代金、およびデータセンターでの保守・運用サービス料から得ています。運営は主に株式会社ゼロフィールドが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は着実に拡大を続けており、特に直近の2025年8月期はM&Aの効果もあり過去最高を更新しました。一方、利益面では投資や一時的な損失の影響により変動が大きく、2023年8月期と2025年8月期は最終赤字となっています。
| 項目 | 2021年8月期 | 2022年8月期 | 2023年8月期 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 21.2億円 | 24.2億円 | 23.5億円 | 44.1億円 | 57.1億円 |
| 経常利益 | 0.8億円 | 1.2億円 | -2.9億円 | 0.5億円 | 0.6億円 |
| 利益率(%) | 4.0% | 4.8% | -12.4% | 1.1% | 1.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.4億円 | 1.1億円 | -8.3億円 | 1.1億円 | -3.4億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、売上高が約13億円増加し、売上総利益も増加しました。しかし、販管費の増加に加え、棚卸資産評価損等の特別損失を計上した影響により、営業損益および最終損益が悪化しています。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 44.1億円 | 57.1億円 |
| 売上総利益 | 14.7億円 | 17.3億円 |
| 売上総利益率(%) | 33.4% | 30.3% |
| 営業利益 | 0.4億円 | -0.6億円 |
| 営業利益率(%) | 0.9% | -1.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が5.1億円(構成比28%)、支払手数料が2.5億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
AIソリューション事業はBEX社の連結化等により大幅な増収増益となりました。一方、GPUサーバー事業はマイニングマシンの販売低迷等により減収となり、セグメント損益も若干の赤字に転落しました。
| 区分 | 売上(2024年8月期) | 売上(2025年8月期) | 利益(2024年8月期) | 利益(2025年8月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| AIソリューション事業 | 30.3億円 | 46.1億円 | 0.3億円 | 0.6億円 | 1.3% |
| GPUサーバー事業 | 13.8億円 | 11.0億円 | 0.2億円 | -0.0億円 | -0.0% |
| 調整額 | -0.3億円 | -0.1億円 | -0.0億円 | - | - |
| 連結(合計) | 44.1億円 | 57.1億円 | 0.5億円 | 0.6億円 | 1.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
トリプルアイズの当連結会計年度は、現金及び現金同等物が前連結会計年度末から増加しました。営業活動によるキャッシュ・フローは、損失計上や棚卸資産評価損、契約負債の減少などが主な要因となり、前年と比べて支出に転じました。投資活動によるキャッシュ・フローは、保険積立金の解約による収入があったものの、長期貸付けや無形固定資産の取得による支出により、前年より支出額は減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、株式発行による収入が主な要因となり、前年より収入額は減少しました。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 0.0億円 | -0.7億円 |
| 投資CF | -10.7億円 | -0.8億円 |
| 財務CF | 7.7億円 | 4.5億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「テクノロジーに想像力を載せる」という経営理念を掲げています。テクノロジーと想像力との融合によるイノベーションを追求し、新たな時代の新たなスタンダードの構築を目指しています。また、人にやさしいICTサービスの提供を通じて社会に貢献することを志向しています。
■(2) 企業文化
人材育成において「トリプルアイズ15の約束」という価値観を重視しています。また、同社グループ社員で構成する将棋部を持ち、アマチュア大会での実績や「将棋採用」を実施するなど、論理的思考力を重んじる独自の文化があります。多様な人材が能力を発揮できる職場環境や風土の醸成にも取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
成長性・収益性の指標として売上高成長率を重視しています。また、M&Aによる成長に伴う利益伸長の指標として経常利益およびEBITDA(経常利益+減価償却費等)を重視しています。なお、2026年8月期より国際財務報告基準(IFRS)を任意適用するにあたり、営業利益を指標とする方針です。
■(4) 成長戦略と重点施策
AI社会実装の実現に向け、独自開発のAIプラットフォーム、現場での開発力、GPUサーバーの計算資源という3つの強みを掛け合わせた戦略を推進しています。具体的には、AIプラットフォームの展開、レガシー産業へのAI実装、GPUサーバーセグメントの推進を掲げ、M&Aや資本業務提携も活用しながら事業拡大を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
成長の源泉であるエンジニアの技術力向上や個々の意欲向上に注力し、急変する時代にふさわしい人材育成を進めています。AIエンジニア等の専門人材の採用と育成を急務とし、教育機関との連携や採用活動を活性化させています。また、多様な人材が活躍できるよう、在宅勤務や時差出勤等の柔軟な働き方も導入しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年8月期 | 35.8歳 | 4.7年 | 4,917,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金等を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.0% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 83.5% |
| 男女賃金差異(正規) | 78.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | 82.5% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業環境の変化
AIソリューションおよびGPUサーバー事業は技術革新や顧客ニーズの変化が非常に速い分野です。同社は商品開発会議や外部有識者へのヒアリング等で変化の把握に努めていますが、適時対応できない場合や想定以上の費用が発生した場合、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 自社プロダクトの機能開発
画像認識プラットフォーム「AIZE」等の自社プロダクトにおいて、継続的な先端技術開発や機能更新を行っています。競争が激しい市場環境の中で、開発が想定通り進まない場合や、競合他社に市場シェアを奪われるなどして収益獲得が困難になった場合、業績に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 画像認識プラットフォーム・AIZEの事業展開
顔認証技術を利用したサービスは新規参入も多く、市場形成の途上にあります。同社は今後の事業伸長を見込んでいますが、事業の見通しを正確に見積もることは困難です。事業展開の規模や速度、収益性が想定を下回った場合、経営成績等に影響が生じる可能性があります。
■(4) 画像データの利活用に関する法令等の規制
AIZEにおいてカメラ画像を利活用しており、個人情報保護法等の法令遵守に加えプライバシー保護への配慮が必要です。関連法令の改正や社会的要請の変化により、サービスの継続提供が困難になったり提供範囲を縮小せざるを得なくなったりした場合、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。



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