※本記事は、株式会社ABEJA の有価証券報告書(第13期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ABEJAってどんな会社?
同社は、AIの社会実装を支援する「ABEJA Platform」を基盤に、DX推進を行う企業です。
■(1) 会社概要
2012年に設立された同社は、ディープラーニング技術を活用した事業を開始し、2018年には基盤システム「ABEJA Platform」を正式リリースしました。2021年にSOMPOホールディングスと資本業務提携を行い、2023年に東証グロース市場へ上場を果たしました。その後もLLM(大規模言語モデル)の社会実装やAIロボティクス分野への展開を進めています。
同社(単体)の従業員数は133名です。筆頭株主はSOMPOホールディングス傘下のSOMPO Light Vortexで、第2位は創業者であり代表取締役CEOの岡田陽介氏、第3位は資本業務提携先のヒューリックとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| SOMPO Light Vortex | 17.34% |
| 岡田 陽介 | 13.09% |
| ヒューリック | 4.43% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役CEOは岡田陽介氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岡田 陽介 | 代表取締役CEO | 2011年リッチメディア(現シェアリング・ビューティー)入社を経て、2012年同社を設立し代表取締役社長就任。2020年11月より現職。日本ディープラーニング協会理事も兼任。 |
| 小間 基裕 | 代表取締役COO | ヤフー(現LINEヤフー)データソリューション本部長、リクルートホールディングスデータ・AI戦略統括部長などを経て、2020年同社入社。2021年11月より現職。 |
| 英 一樹 | 取締役CFO | 野村證券を経て、2013年アイリッジ入社、同社執行役員CFO、取締役CFOを歴任。2021年同社入社、執行役員CFOを経て2022年3月より現職。 |
| 外木 直樹 | 取締役CSO | 2012年オープンアソシエイツ入社。2013年同社入社、取締役、取締役COO、執行役員CEO室長を経て2023年11月より現職。 |
社外取締役は、田中邦裕(さくらインターネット代表取締役社長)、麻野耕司(ナレッジワーク代表取締役)、的野仁(SOMPOダイレクト損害保険取締役常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「デジタルプラットフォーム事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) トランスフォーメーション領域
この領域では、顧客企業のDXニーズに対し、基盤システムである「ABEJA Platform」の導入支援や周辺サービスの提供を行っています。経営ビジョンの策定からビジネスプロセスの構築までを伴走型で支援し、AI技術の実装を進める「仕組みづくり」のフェーズを担います。
収益は主に、コンサルティングやシステム構築に伴う対価を顧客企業から都度受け取るフロー型のモデルです。運営は主に同社が行っており、SOMPOホールディングスなどのエンタープライズ企業との継続的な取引が多くを占めています。
■(2) オペレーション領域
この領域では、構築された「ABEJA Platform」上で、人とAIが協調して業務運用を行うサービスを提供しています。小売流通業向けの店舗解析サービス「ABEJA Insight for Retail」などが含まれ、運用データの蓄積による精度向上やオペレーションの高度化を実現します。
収益は、システム利用料や運用保守料などを顧客企業から継続的に受け取るストック型のモデルです。運営は同社が行っており、小売、製造、インフラなど多様な業界に対して安定的なサービス提供を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
第9期から第13期にかけて、売上高は着実に拡大傾向にあります。特に直近の第13期は売上高が約36億円に達し、経常利益も4.5億円と過去最高水準を記録しました。第9期、第10期は赤字でしたが、第11期以降は黒字化し、高い利益率を維持しながら成長を続けています。
| 項目 | 2021年8月期 | 2022年8月期 | 2023年8月期 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 13億円 | 20億円 | 28億円 | 28億円 | 36億円 |
| 経常利益 | -2.6億円 | -1.8億円 | 3.8億円 | 2.9億円 | 4.5億円 |
| 利益率(%) | -20.6% | -9.2% | 13.7% | 10.4% | 12.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -3.5億円 | -2.0億円 | 4.2億円 | 2.2億円 | 4.5億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を見ると、売上高は約28億円から約36億円へと大きく伸長しました。売上総利益も増加しましたが、売上原価の増加などにより売上総利益率はやや低下しています。一方、営業利益は約2.9億円から約4.5億円へと5割以上増加し、収益性が向上しています。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 28億円 | 36億円 |
| 売上総利益 | 18億円 | 22億円 |
| 売上総利益率(%) | 66.7% | 62.4% |
| 営業利益 | 2.9億円 | 4.5億円 |
| 営業利益率(%) | 10.5% | 12.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が6億円(構成比33%)、業務委託料が1億円(同8%)を占めています。売上原価においては、外注費が7億円(構成比49%)、労務費が5億円(同34%)となっており、外部リソースの活用と人的コストが主な費用構成要素です。
■(3) セグメント収益
デジタルプラットフォーム事業単一セグメントですが、領域別に見るとトランスフォーメーション領域、オペレーション領域ともに増収となりました。特にトランスフォーメーション領域はLLM関連需要の取り込みにより大きく伸長しています。
| 区分 | 売上(2024年8月期) | 売上(2025年8月期) |
|---|---|---|
| トランスフォーメーション領域 | 21億円 | 27億円 |
| オペレーション領域 | 7億円 | 8億円 |
| 連結(合計) | 28億円 | 36億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、新株予約権の行使による増資と当期純利益の計上により、純資産を増加させています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期純利益の計上や公的プロジェクト助成金の回収により、前事業年度の支出から大幅な収入へと転換しました。投資活動では、有形固定資産の取得や差入保証金の差入により資金を使用しました。財務活動では、新株予約権の行使による株式発行が主な収入源となりました。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -7.6億円 | 16.2億円 |
| 投資CF | -0.3億円 | -0.3億円 |
| 財務CF | 1.2億円 | 1.2億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「ゆたかな世界を、実装する」を企業理念として掲げています。優れたテクノロジーであっても社会に実装されなければ価値がないという考えに基づき、産業横断的なイノベーションを創出し、社会への貢献を目指しています。この理念のもと、ミッションクリティカルな業務へのAI導入支援を推進しています。
■(2) 企業文化
同社は「テクノプレナーシップ」を行動精神として重視しています。これは、テクノロジー(Technology)、リベラルアーツ(Liberal Arts)、アントレプレナーシップ(Entrepreneurship)を融合させた造語であり、進化する技術を用いてどのような社会を実現するかを問い続け、変革を推進する姿勢を表しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中長期的な企業価値向上のため、デジタルプラットフォーム事業の両領域を成長させ、知見を「ABEJA Platform」に蓄積するサイクルを重視しています。経営上の重要指標として、顧客支援の総量である売上高、プラットフォーム活用度を示す関連売上比率、安定的収益を示す継続顧客売上比率、および収益力を示す営業利益を掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、生成AI(特にLLM)とその周辺領域、およびAIロボティクスを注力領域としています。大規模・中規模基盤モデルの構築や周辺機能の研究開発を進めるとともに、AIの判断を実世界での行動に繋げるAIロボティクスの社会実装を推進します。また、既存機能の改善による「ABEJA Platform」の拡充や、顧客基盤の拡大・深耕にも取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、市場拡大と技術進化に対応するため、「テクノプレナー人材」の確保と育成を重視しています。多様な経歴や専門性を持つ人材を採用し、働きやすく自己研鑽できる環境や、入社直後から活躍できる仕組みを整備しています。また、従業員持株会の設立や、社内交流を促進する制度などを通じ、エンゲージメントの向上と定着を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年8月期 | 36.7歳 | 2.7年 | 9,527,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※女性管理職比率および男女賃金差異については、公表項目として選択していないため、記載を省略しています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(75.5%)、女性従業員比率(12.0%)、外国籍従業員比率(1.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 競合環境の激化
同社が属するDX・AI市場には、大手企業から新興企業まで多くの参入があり、類似サービスも存在します。競争が激化した場合、顧客獲得や維持が困難になる可能性があります。同社は「ABEJA Platform」への投資や実績の積み上げで差別化を図っていますが、競争環境の変化は業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定の人物への依存
代表取締役CEOである岡田陽介氏は、創業者として経営戦略等において重要な役割を果たしています。同社は権限委譲等により組織的な経営体制の整備を進めていますが、何らかの理由で同氏が経営執行困難となった場合、事業運営や業績に影響が出る可能性があります。
■(3) 特定の取引先への依存
SOMPOホールディングスやさくらインターネットなど、特定の顧客への売上依存度が高い傾向にあります。これらの企業との関係は良好ですが、相手先の戦略変更等により取引が減少した場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は新規顧客の開拓を進め、依存度の低減を図っています。



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