キャスター 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

キャスター 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

キャスターはグロース市場に上場し、リモートワーク人材を活用したバックオフィス代行等のBPaaS事業を主力としています。2025年8月期は売上高46億円と前期比で増収を達成しましたが、利益面では先行投資や販管費の増加により営業損失および当期純損失を計上し、赤字幅が拡大する減益となりました。


※本記事は、株式会社キャスター の有価証券報告書(第11期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. キャスターってどんな会社?


フルリモートワークによる組織運営を実践し、オンラインアシスタントサービス「CASTER BIZ」を中心に、人材のリソース不足を解消する事業を展開しています。

(1) 会社概要


2014年に設立され、オンラインアシスタントサービス「CASTER BIZ」の提供を開始しました。2019年には宮崎県へ本店を移転し、2023年10月に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしました。その後、2024年には株式会社マネーフォワードと資本業務提携契約を締結し、EC向けツール開発を行うグラムス株式会社を完全子会社化するなど、事業基盤の拡大を進めています。

同グループの連結従業員数は458名、単体では444名です。筆頭株主は、業務効率化支援で資本業務提携を結んでいる株式会社マネーフォワードであり、第2位は代表取締役が代表を務める資産管理会社の株式会社ブルーマンデイ、第3位はベンチャーキャピタルのインキュベイトファンド2号投資事業有限責任組合となっています。

氏名 持株比率
マネーフォワード 20.30%
ブルーマンデイ 17.34%
インキュベイトファンド2号投資事業有限責任組合 9.93%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.0%です。代表取締役は中川祥太氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
中川 祥太 代表取締役 2008年古着店を開店。オプト、イー・ガーディアンを経て、2014年9月に同社創業、代表取締役就任。ブルーマンデイ代表取締役などを兼任。
森岡 由布子 取締役 ケーブルテレビ神戸、リクルートスタッフィング、イー・ガーディアンを経て、2017年同社入社。2024年6月より執行役員を兼任。
清田 尚志 取締役 キーエンス、オプト、ソウルドアウト、STORESを経て、2023年11月同社入社。2024年6月執行役員就任、同年11月より現職。


社外取締役は、本田浩之(元リクルート取締役兼専務執行役員)、池村公男(元ソウルドアウト取締役CFO)、君島寿章(マネーフォワードグループ会社代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「BPaaS事業」および「その他」事業を展開しています。

BPaaS事業


リモートワーカーのリソースとITツールを組み合わせ、企業のバックオフィス業務(秘書、経理、人事、採用等)を代行・支援するサービスです。主力サービスの「CASTER BIZ」シリーズや、小ロットのルーティン業務に対応する「My Assistant」などを提供し、主に中小企業のリソース不足解消を支援しています。

収益は、顧客企業から受け取る月額利用料や従量課金によるサービス対価が主な柱です。独自のマッチングシステムを活用し、必要なスキルと時間を柔軟に提供するモデルを構築しています。運営は主に株式会社キャスターが行っています。

その他事業


リモートワークを前提とした人材派遣「在宅派遣」や求人メディア「Reworker」の運営、EC事業者向けのコンサルティング、業務効率化ツールの開発・提供などを行っています。また、生成AIを活用したプロダクト開発や、経理人材育成スクールなども含まれます。

収益は、人材派遣における派遣料金、紹介手数料、ECコンサルティング料、ツールの利用料などから構成されています。運営は株式会社キャスターのほか、EC関連ツール等はグラムス株式会社、生成AI関連は株式会社キャスターテックジャパン(旧株式会社LUVO)などが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近2期間のデータを見ると、売上高は44億円から46億円へと増加しており、事業規模は拡大傾向にあります。一方で、利益面では経常損失および当期純損失が継続しており、損失額も拡大しています。成長投資や体制強化に伴う費用負担が先行している状況が見て取れます。

項目 2024年8月期 2025年8月期
売上高 44億円 46億円
経常利益 -1.6億円 -3.9億円
利益率(%) -3.6% -8.4%
当期利益(親会社所有者帰属) -2.2億円 -3.9億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上総利益率は低下しており、収益性の改善が課題となっています。営業利益はマイナスで推移しており、赤字幅も拡大しました。売上原価や販管費の増加が利益を圧迫している構造となっています。

項目 2024年8月期 2025年8月期
売上高 44億円 46億円
売上総利益 18億円 17億円
売上総利益率(%) 40.0% 36.6%
営業利益 -1.5億円 -3.8億円
営業利益率(%) -3.4% -8.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料賃金が7.3億円(構成比35%)、広告宣伝費が2.4億円(同12%)、支払手数料が2.1億円(同10%)を占めています。売上原価においては、労務費が23億円(売上原価の81%)と大半を占めており、労働集約的なコスト構造であることがわかります。

(3) セグメント収益


主力のBPaaS事業は売上がほぼ横ばいですが、先行投資の影響等により利益は減少しました。一方、その他事業は子会社の連結化や新規事業の寄与により大幅な増収となり、赤字幅も縮小しています。全社費用等の調整額が利益を押し下げる要因となっています。

区分 売上(2024年8月期) 売上(2025年8月期) 利益(2024年8月期) 利益(2025年8月期) 利益率
BPaaS事業 36億円 36億円 8.5億円 6.3億円 17.6%
その他事業 8.4億円 10億円 -2.7億円 -1.5億円 -14.4%
調整額 - - -7.3億円 -8.7億円 -
連結(合計) 44億円 46億円 -1.5億円 -3.8億円 -8.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、事業運営に必要な資金を生み出しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、将来の事業拡大に向けた投資に充てられています。財務活動によるキャッシュ・フローは、増資や借入による資金調達と返済等で構成されています。

項目 2024年8月期 2025年8月期
営業CF -1.5億円 -3.7億円
投資CF -3億円 0.2億円
財務CF 5.7億円 -0.7億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「自然体で合理的な世界」をビジョンに掲げ、創業以来のミッション「リモートワークを当たり前にする」を基盤としつつ、2025年9月に「創り変える。働くの全てを。」へと刷新しました。生成AIの進化を踏まえ、働き方そのものを再定義し、社会全体の労働構造のアップデートに貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


創業時から「フルリモートワーク」による企業経営を自ら実践し、あらゆる会議や業務をオンラインで運営するスタイルを確立しています。場所や時間に縛られない柔軟な働き方を体現し、独自のインフラと運用ノウハウを構築することで、多様な人材が活躍できる環境を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


2026年8月期から2028年8月期までの中期経営計画を策定し、最終年度にあたる2028年8月期に「親会社株主に帰属する当期純利益2億円」の達成を目標としています。収益性を高めながら経営基盤を固め、持続的な成長を目指す方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


新ミッションのもと、「AI FIRST」をストラテジーに掲げ、AI駆動開発による業務構造改革を推進します。事業セグメントを「BPaaS事業」「HR事業」「AI Tech事業」に再編し、安定収益基盤であるBPaaS・HR事業から得られる利益を、成長領域であるAI Tech事業へ重点投資する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「フルリモートワーク」を前提とした働き方を提供することで、居住地やライフスタイルの制約を超えて多様な人材を確保する戦略をとっています。選考から業務まですべてオンラインで完結する体制を整備し、日本国内のみならず海外からも優秀な人材を採用しています。また、AI技術を活用した業務プロセスの自動化を進め、生産性の向上と高付加価値業務へのシフトを図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年8月期 38.4歳 3.9年 3,974,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含んでおりますが、事業年度中に撤退した海外拠点の正社員は含んでおりません。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 67.4%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 73.9%
男女賃金差異(正規雇用) 71.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 75.3%


※男性育児休業取得率については、有価証券報告書において数値の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) インフラ・システムの障害発生


事業運営の基盤が通信ネットワークやクラウドサービス等のシステムに強く依存しているため、自然災害やサイバー攻撃、システム障害等が発生した場合、業務停止やデータ喪失などにより、業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 法的規制について


労働者派遣法や職業安定法、下請法などの法的規制を受けて事業を行っています。法令違反や関係者による不正行為が発生した場合、また将来的な法改正により規制が強化された場合、事業活動の制限や行政処分を受ける可能性があり、業績に影響を与えるリスクがあります。

(3) 優秀な人材の確保について


事業の成長には質の高いリモートワーカーや運営スタッフの確保が不可欠です。労働市場の変化により計画通りの採用が困難になった場合や、採用コスト・人件費が高騰した場合、サービスの品質低下や収益性の悪化を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 技術革新について


生成AI等の技術進歩により業務自動化が急速に進む中、同社が受託している業務の一部が代替される可能性があります。AI技術への対応が遅れた場合や、技術革新を自社サービスに取り込めなかった場合、競争力を失い業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。