※本記事は、ARアドバンストテクノロジ株式会社 の有価証券報告書(第16期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ARアドバンストテクノロジってどんな会社?
同社は、クラウドとAI技術を駆使し、顧客のDXを支援する「BXデザイナー」として社会変革をリードする企業です。
■(1) 会社概要
2010年に設立され、同年12月に現在の連結子会社であるエーティーエスを子会社化しました。その後、2020年にAWSのパートナー認定を取得し、2023年6月に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。2024年11月にはシステム開発等を行うピー・アール・オーを完全子会社化するなど、事業拡大を進めています。
同社グループの連結従業員数は759名(単体569名)です。筆頭株主は創業者である代表取締役社長の資産管理会社で、第2位は同社の社員持株会、第3位は個人株主です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| エスエスアール | 60.00% |
| ARI社員持株会 | 6.39% |
| 岡部 吉純 | 4.08% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名、計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長執行役員は武内寿憲氏で、社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 武内 寿憲 | 代表取締役社長執行役員 | 1999年キャリアスタッフ(現アデコ)入社。2007年アリスタソリューション代表取締役を経て、2010年1月同社設立、代表取締役社長就任。2023年より現職。 |
| 中野 康雄 | 取締役執行役員 | 1999年フューチャーシステムコンサルティング入社。ディー・エヌ・エーを経て、2011年同社入社。2025年より現職。 |
| 山岡 択哉 | 取締役執行役員 | 2006年ワールドサポート入社。エスコサービス等を経て、2010年同社入社。ソリューションセールスユニット長等を歴任し、2021年より現職。 |
| 竹内 康修 | 取締役執行役員 | 1997年CSK入社。フューチャーシステムコンサルティング等を経て2014年同社入社。経営戦略事業室長等を歴任し、2024年より現職。 |
| 髙橋 英昌 | 取締役 | 1994年電通国際情報サービス入社。FIXER等を経て2021年同社入社。デジタルビジネスユニット長等を歴任し、2023年より現職。 |
社外取締役は、藤宮宏章(元TIS代表取締役会長)、森本千賀子(morich代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「DXソリューション事業」および「その他」事業を展開しています。
■DXソリューション事業(クラウドインテグレーション)
クラウド技術とAI技術を活用し、顧客のDXを実現するためのコンサルティングからシステム設計・構築・運用までをワンストップで提供しています。AWSやMicrosoft Azure等のクラウドプラットフォームを軸に、AI駆動開発を用いたシステム構築を行っています。主要顧客は多岐にわたる事業会社や官公庁です。
収益は、顧客からのシステム開発費、コンサルティングフィー、保守運用費等から得ています。運営は主にARアドバンストテクノロジが行っており、AI技術を核とした高付加価値サービスの提供に注力しています。
■DXソリューション事業(関連サービス)
DX人材の提供や自社プロダクトの展開を行っています。人材サービスではマッチングプラットフォーム「テクパス」を通じ、顧客ニーズに応じたエンジニアリソースを供給しています。また、AIチャットボット「LOOGUE」やファイルサーバ管理「ZiDOMA」等の自社プロダクトも提供しています。
収益は、人材派遣料や紹介料、プロダクトのライセンス料や利用料から得ています。運営は主に子会社のエーティーエスやARアドバンストテクノロジが行っており、グループ内での人材共有やクロスセルを推進しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は順調に拡大しており、直近3期で約1.4倍に成長しています。経常利益も増加傾向にあり、特に直近の第16期では大幅な増益を達成しました。利益率も改善傾向にあり、5%台を回復しています。
| 項目 | 2023年8月期 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 102億円 | 111億円 | 142億円 |
| 経常利益 | 5.1億円 | 4.5億円 | 7.8億円 |
| 利益率(%) | 5.1% | 4.0% | 5.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2.7億円 | 2.8億円 | 4.5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに大きく伸長しています。特に営業利益は前期比で倍増近い成長を見せており、収益性の向上が確認できます。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 111億円 | 142億円 |
| 売上総利益 | 28億円 | 38億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.5% | 26.7% |
| 営業利益 | 4.2億円 | 8.3億円 |
| 営業利益率(%) | 3.8% | 5.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が10億円(構成比35%)、役員報酬が2.9億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社はDXソリューション事業の単一セグメントですが、AI開発案件や高付加価値案件の獲得が進んだことにより、売上が大きく伸長しました。
| 区分 | 売上(2024年8月期) | 売上(2025年8月期) |
|---|---|---|
| DXソリューション事業 | 111億円 | 142億円 |
| 連結(合計) | 111億円 | 142億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で得たキャッシュを借入金の返済や投資に回しており、堅実な経営を行っている「健全型」と言えます。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.6億円 | 11.4億円 |
| 投資CF | -3.6億円 | -1.9億円 |
| 財務CF | -0.6億円 | -3.8億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は21.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は31.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「ARIグループ普遍的価値観」として、「先進性ある技術を通して、顧客の問題解決と社員の幸せを創造し、社会の未来発展に貢献する」を経営理念に掲げています。クラウド技術とデータ・AI活用を通じて社会的価値あるサービスを創出し、顧客の課題解決と関わる人々の発展に尽くすことを使命としています。
■(2) 企業文化
同社は、クラウド技術とデータ・AI活用によって事業変革を実現する「ビジネストランスフォーメーションデザイナー(BXデザイナー)」として社会変革をリードすることを重視しています。社員全員が働く場を通して人生の目標を持ち、成長し、物心両面で豊かになることで、社員とその家族が幸せを実感できる環境作りを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、高い収益性の確保と継続的な売上高の成長を維持することにより、企業価値を継続的に向上させ株主利益を最大化することを経営上の目標としており、そのための指標として「売上高成長率」を重視しています。具体的な数値目標としては、年平均10%程度の水準を目安とした売上高成長を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、AI駆動開発によるサービスアップデートを続け、以下の4つの戦略を推進しています。
* **BTCアプローチの強化**: Business(コンサル)、Technology(エンジニア)、Creative(UI/UX)の三位一体体制によるDX支援の推進。
* **ハイブリッドアプローチの強化**: コンサルティング等を起点としたワンストップ提供によるクロスセル・アップセルの推進。
* **新規事業開発の強化**: 「cnaris」「dataris」ブランドの拡販およびAI駆動開発への研究開発投資の継続。
* **M&A・業務提携戦略の推進**: シナジーのある企業のM&Aや業務提携による非連続な成長の実現。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「High Quality , High Performer の実現」をスローガンに、社員一人一人の成長がグループ全体の成長と社会の持続可能性につながることを目標としています。専門部署を設置して教育・研修を推進し、多様な人材が自律的に力を発揮できる職場環境の整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年8月期 | 37.1歳 | 4.5年 | 6,148,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金の手当を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 14.2% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 70.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 72.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 74.4% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期) | 60.9% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、クラウド認定資格取得数(901個)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 技術革新への対応
情報サービス産業では技術進化が速く、市場ニーズの変化への迅速な対応が求められます。同社は調査・研究に努めていますが、対応が適切でなかった場合、顧客取引の拡大が困難となり、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) ビジネスパートナーとの関係
事業遂行にあたり多くのビジネスパートナーと連携しており、業務の一部を委託しています。パートナーから適切な技術力やリソースを確保できない場合や、外注コストが変動した場合、適正価格によるサービス提供が困難となり、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 人材の確保と育成
事業活動は人材に依存しており、優秀なIT人材の確保・定着が重要です。人材獲得競争が激化する中、計画通りに採用・育成が進まない場合や人材流出が生じた場合、事業の維持・拡大が困難となり、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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