Chordia Therapeutics 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Chordia Therapeutics 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース市場に上場する同社は、がん領域に特化した創薬ベンチャーとして、「RNA制御ストレス」を標的とする新規抗がん薬の研究開発を行っています。現在は先行投資による研究開発活動を優先しているため赤字が続いていますが、主力パイプラインの臨床試験が進展しており、将来的な収益化を目指しています。


※本記事は、Chordia Therapeutics株式会社 の有価証券報告書(第8期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月21日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. Chordia Therapeuticsってどんな会社?


がん領域において、「RNA制御ストレス」という新しい特徴に着目した画期的な医薬品(ファーストインクラス)の研究開発を行う創薬ベンチャーです。

(1) 会社概要


2017年に神奈川県藤沢市の湘南ヘルスイノベーションパーク内で設立され、同時に武田薬品工業とライセンス契約を締結しました。その後、2018年に抗がん薬候補化合物の日本での第1相臨床試験を開始し、2023年には米国での第1/2相臨床試験へ進展しています。2024年6月には東京証券取引所グロース市場への上場を果たしました。

同社(単体)の従業員数は20名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は同社設立時よりライセンス契約等の関係にある武田薬品工業であり、第2位はベンチャーキャピタルファンドであるNew Life Science1号投資事業有限責任組合、第3位は投資法人となっています。

氏名 持株比率
武田薬品工業 15.59%
New Life Science1号投資事業有限責任組合 10.51%
日本グロースキャピタル投資法人 6.97%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性2名の計6名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役は三宅洋氏が務めています。取締役6名のうち5名が社外取締役であり、経営の透明性を高めた体制となっています。

氏名 役職 主な経歴
三宅 洋 代表取締役 武田薬品工業にてがん創薬研究所日本サイトヘッドなどを歴任後、2017年11月より現職。


社外取締役は、嶋内明彦(元Fujirebio America Inc. CEO)、中村学(新生キャピタルパートナーズ代表取締役)、石井幸佑(石井幸佑会計事務所代表)、西方ゆかり(元武田薬品工業オンコロジー領域ユニット日本・アジアヘッド)、橋本阿友子(骨董通り法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社は、「医薬品事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

医薬品事業


同社は、医療ニーズの高いがん領域において、新しい作用を持つ低分子医薬品の研究開発を行っています。特に、がん細胞特有のストレス状態である「RNA制御ストレス」に着目し、これを標的とすることでがん細胞を選択的に死滅させる新しい治療薬の創出を目指しています。自社工場を持たず、研究開発マネジメントに特化するファブレス型を採用しています。

収益モデルは、製薬会社等とのライセンス契約に基づき、契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストン収入、および製品上市後のロイヤリティ収入を得る形となります。研究開発は同社(Chordia Therapeutics)が主導し、基礎研究や製造、販売などの業務は、大学や製薬会社、受託機関などの外部パートナーと連携して進めています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年8月期から2025年8月期までの業績を見ると、創薬ベンチャー特有の収益構造が見て取れます。2023年8月期にはマイルストン収入等により一時的に黒字化しましたが、その他の期では事業収益が計上されず、研究開発費等の先行投資により損失を計上しています。基本的には製品上市またはライセンスアウトまでの期間、赤字が継続する傾向にあります。

項目 2021年8月期 2022年8月期 2023年8月期 2024年8月期 2025年8月期
事業収益 8.0億円 - 25.0億円 - -
経常利益 -5.3億円 -17.8億円 2.3億円 -18.2億円 -17.7億円
利益率(%) -65.6% - 9.0% - -
当期利益(親会社所有者帰属) -5.3億円 -17.8億円 2.2億円 -18.3億円 -17.9億円

(2) 損益計算書


直近2期間において、事業収益の計上はありませんでした。費用面では、新薬開発のための研究開発費が費用の大半を占めており、積極的な研究開発投資が継続されています。

項目 2024年8月期 2025年8月期
売上高 - -
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 -18.0億円 -17.9億円
営業利益率(%) - -


販売費及び一般管理費のうち、業務委託費が1.6億円(構成比45%)、租税公課が0.5億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は医薬品事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの比較情報は記載していません。事業収益は、ライセンス契約に基づく収入に依存しており、当期および前期ともに計上はありませんでした。

区分 売上(2024年8月期) 売上(2025年8月期)
医薬品 - -
連結(合計) - -

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の研究開発活動による支出が先行しており、営業キャッシュ・フローはマイナスとなっています。投資活動は限定的である一方、株式発行等による資金調達を行っており、財務キャッシュ・フローはプラスです。これは、将来の成長のために市場から資金を調達し、研究開発に投資し続ける「勝負型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年8月期 2025年8月期
営業CF -19.4億円 -18.4億円
投資CF -0.1億円 -0.1億円
財務CF 14.8億円 0.6億円


財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は90.8%で市場平均を上回っています。一方、現在は先行投資段階で赤字のため、企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は算出されず市場平均を下回る状態にあります。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「日本発」「世界初」のこれまでにない新しい抗がん薬を一日でも早く患者のもとに届けることで、『Tomorrow is Another Day~明日に希望を感じる社会の実現』を目指しています。2030年には日本発の研究開発型製薬会社へ成長することをビジョンに掲げています。

(2) 企業文化


同社は、既存治療薬では効果が不十分な患者に対し、がんの進行をコントロールできるという希望を届けることを重視しています。ファーストインクラス(画期的医薬品)の創出に注力し、外部パートナーと積極的に協業しながら、効率的かつ迅速に研究開発を進める姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は創薬ベンチャーであり、現在は安定的な利益計上の段階にないため、ROAやROEなどの数値目標は設定していません。当面の目標として、抗がん薬の早期市販化に向けたパイプラインの研究開発推進と、新規創薬標的の探索およびパイプラインを安定的に創出する体制の構築を掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、リードパイプラインであるrogocekibの臨床開発を最優先課題としています。特に再発・難治性の急性骨髄性白血病(AML)等を対象とした開発を加速させ、早期の承認取得を目指します。また、開発リソースを集中させる一方で、他のパイプラインについてはパートナー企業との提携を模索し、経営資源の最適化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、多様な経験や価値観を持つ人材を採用し、個々の能力を最大限に発揮できる組織づくりを目指しています。特に研究開発において高度な知識や技能を持つ優秀な人材の確保と育成を重視しており、育児や介護などの事情があっても働きやすい職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年8月期 47.5歳 4.7年 11,146,752円


※平均年間給与は基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 新薬開発の不確実性


医薬品の研究開発には多額の投資と長期間を要し、成功確率は極めて低いとされています。臨床試験で期待した効果が得られない、重篤な副作用が生じる、承認が得られない等の理由により、開発の中止や遅延が発生する可能性があります。その場合、追加資金の必要性が生じたり、将来の収益計画に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 副作用発現による損害賠償責任及び製造物責任


臨床試験や市販後において予期せぬ副作用が発現するリスクがあります。損害賠償保険に加入しているものの、賠償額全額がカバーされる保証はなく、また製造物責任請求等がなされた場合の風評被害により、同社の信頼性が損なわれる可能性があります。これにより業績や財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。

(3) 競合について


国内外の製薬会社や創薬ベンチャーとの競争が激化しています。同社のパイプラインと同じ疾患領域で、他社がより優れた医薬品を早期に開発・販売した場合、同社製品の競争力が低下する恐れがあります。また、競合品の開発状況によっては、同社の臨床試験の進行遅延や開発中止、ライセンス契約への悪影響などが生じ、事業計画に重大な影響を与える可能性があります。

(4) ライセンス活動の不確実性


同社の収益は、製薬会社とのライセンス契約に基づく一時金やマイルストン収入等に依存しています。パイプラインの評価が得られず契約に至らない、開発遅延等により収入時期がずれる、あるいは契約が解消される等のリスクがあります。想定通りのライセンス活動が進まない場合、業績や資金繰りに重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。