INGS 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

INGS 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

* 上場市場:東京証券取引所グロース市場 * 主要事業:ラーメン事業、レストラン事業 * 業績トレンド:2025年8月期は売上高77億円(前期比20.5%増)、経常利益4.5億円(同5.6%増)と増収増益を達成しました。一方、当期純利益は減益となりました。


※本記事は、株式会社INGS の有価証券報告書(第17期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. INGSってどんな会社?


ラーメン店「らぁ麺 はやし田」やイタリアンバル「CONA」等を運営し、直営・プロデュース展開を行う企業です。

(1) 会社概要


2009年に法人を設立し、ラーメン事業を開始しました。2011年には「CONA」直営店を出店しレストラン事業へ参入、2017年には現在の主力ブランド「らぁ麺 はやし田」をオープンしました。2018年からはプロデュース部門およびライセンス部門を開始して事業を拡大し、2024年9月に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。

単体の従業員数は334名です。筆頭株主は創業者である青柳誠希氏の資産管理会社であるMAcompanyで、第2位は青柳誠希氏本人となっており、経営陣による株式保有比率が高いオーナー系企業としての側面を持っています。

氏名 持株比率
MAcompany 39.72%
青柳 誠希 19.54%
小島 直人 9.65%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名(社外監査役含む)の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は青柳誠希氏です。社外取締役比率は10.0%(取締役7名中1名)です。

氏名 役職 主な経歴
青柳 誠希 代表取締役社長 2009年3月同社設立代表取締役社長就任。2019年4月MAcompany設立代表取締役就任より現職。
持木 惣 取締役レストラン事業部長 2007年4月大黒屋入社。2009年4月同社入社。2019月3月より現職。
塚本 一宏 取締役ラーメン事業部長 2007年4月東栄住宅入社。ヒューメンタッチ等を経て2014年6月同社入社。2019年3月より現職。
石井 丈章 取締役総務部長 2007年4月大塚商会入社。エコロジーホーム等を経て2017年9月同社入社。2021年8月より現職。
磯野 勇 取締役人事部長 2010年4月アロウズ入社。プルデンシャル生命保険等を経て2018年10月同社入社。2020年9月より現職。
鈴木 建 取締役経営管理部長 2008年4月大和証券エスエムビーシー入社。ジェイ・ウィル・アドバンス等を経て2021年3月同社入社。同年9月より現職。


社外取締役は、大森 彩香(大森法律事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ラーメン事業」「レストラン事業」事業を展開しています。

(1) ラーメン事業


「らぁ麺 はやし田」を主力ブランドとし、一都三県を中心に都市型店舗やロードサイド店舗を直営で展開しています。また、オーナー独自の屋号で展開する「プロデュース店」に対し、開業支援や運営ノウハウの提供を行っています。直営店ではブランド食材や自家製麺を使用し、個店のような品質を追求しています。

収益は、直営店における一般顧客からの飲食代金のほか、プロデュース店オーナーに対するプライベートブランド商品(麺・タレ・スープ)の販売代金、および月額のプロデュースフィー等から構成されています。運営は主に同社が行っています。

(2) レストラン事業


カジュアルイタリアンバル「CONA」や大衆酒場「焼売のジョー」を主軸ブランドとし、一都三県を中心に直営店を展開しています。また、同ブランドのライセンス貸与を行い、全国的に店舗網を広げています。「CONA」は低価格なピザ、「焼売のジョー」は特製焼売を強みとしています。

収益は、直営店における一般顧客からの飲食代金のほか、ライセンス店に対する食材等の販売代金、ロイヤリティ(月額フィーまたは売上歩合)、開業前支援料等から構成されています。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間において売上高は一貫して増加傾向にあり、順調に事業規模を拡大しています。利益面では、第15期に利益率が低下したものの、その後は回復基調にあります。第17期は前期比で増収増益(経常利益ベース)となりましたが、当期純利益は減少しました。

項目 2021年8月期 2022年8月期 2023年8月期 2024年8月期 2025年8月期
売上高 20億円 35億円 53億円 64億円 77億円
経常利益 4.5億円 5.0億円 2.7億円 4.3億円 4.5億円
利益率(%) 22.3% 14.2% 5.1% 6.6% 5.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -1.1億円 2.1億円 0.7億円 2.9億円 2.7億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で約20%増加し、売上総利益率もわずかに改善しました。営業利益額は増加していますが、営業利益率は横ばいから微増の範囲に留まっています。事業拡大に伴い、売上原価および販売費・一般管理費も増加していますが、増収効果により営業黒字を維持しています。

項目 2024年8月期 2025年8月期
売上高 64億円 77億円
売上総利益 42億円 52億円
売上総利益率(%) 66.1% 66.9%
営業利益 4.5億円 4.9億円
営業利益率(%) 7.0% 6.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が18億円(構成比38.5%)、地代家賃が7.5億円(同16.0%)を占めています。

(3) セグメント収益


ラーメン事業は直営店の新規出店やプロデュース店の拡大により、売上高・利益ともに2桁成長を達成しました。レストラン事業も新規出店により増収となりましたが、新店舗開店や既存店改装に伴う費用の影響等により、セグメント利益は前期を下回りました。

区分 売上(2024年8月期) 売上(2025年8月期) 利益(2024年8月期) 利益(2025年8月期) 利益率
ラーメン事業 33億円 41億円 3.3億円 3.8億円 9.4%
レストラン事業 31億円 36億円 1.2億円 1.1億円 2.9%
連結(合計) 64億円 77億円 4.5億円 4.9億円 6.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金に加え、株式発行や借入による資金調達を行い、新規出店等の設備投資に積極的に資金を投下している「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年8月期 2025年8月期
営業CF 6.7億円 6.0億円
投資CF -4.3億円 -7.4億円
財務CF 1.1億円 7.1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「『幸せ』への挑戦~関わるすべての人と共に~」を企業理念として掲げています。顧客だけでなく、従業員、株主、取引先など関わる全ての人に幸せを届けることを目指し、社名の由来でもある「チャレンジし続ける(ING)こと」を経営方針としています。

(2) 企業文化


「『人』に挑戦し、食に挑戦し、感動と笑顔を創り続ける」というミッションのもと、料理の提供だけでなく、サービスや空間づくりを通じて感動を届けることを重視しています。「当たり前を圧倒的に」というスローガンや、「街に愛される個人店のような味・空間(個店感)」を大切にする文化があり、画一的なチェーン店とは異なる店舗運営を目指しています。

(3) 経営計画・目標


長期的な出店戦略として、一都三県を中心に直営店においてラーメン事業、レストラン事業ともに100店舗ずつの計200店舗、プロデュース店およびライセンス店で計300店舗、合計500店舗の達成を目指しています。

* 直営店:計200店舗
* プロデュース店・ライセンス店:計300店舗
* 合計:500店舗

(4) 成長戦略と重点施策


ラーメン事業では、主力ブランド「らぁ麺 はやし田」を中心とした都市型店舗の出店に加え、ロードサイド店舗や商業施設内への展開も進めています。また、プロデュース店やライセンス店を通じた全国展開も加速させ、直営店のノウハウを提供することで店舗網を拡大します。商品開発力の強化やアプリを活用したマーケティング、複数ブランド展開によるドミナント戦略も推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


継続的な新規出店を支えるため、新卒・中途採用に加え、特定技能外国人人材の採用を強化しています。育成面では、エゴグラム診断を活用した適材適所の配置や、階層別研修、店長会議での定例研修等を実施しています。また、アルバイトからの正社員登用や、評価制度「ILUO評価」の導入により、多様な人材のキャリア形成と定着率向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年8月期 30.4歳 3.0年 4,206,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.8%
男性育児休業取得率 60.0%
男女賃金差異(全労働者) 42.3%
男女賃金差異(正規雇用) 83.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 73.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食材の調達について


同社が使用する大山鶏や小麦粉などの原材料は、天候不順や感染症、国際情勢の変化等により価格高騰や供給不足が生じるリスクがあります。これに対し、複数取引先の確保や生産者との直接交渉を行うとともに、状況に応じた価格改定やメニュー変更を行うことで影響の最小化に努めていますが、想定を超える変動があった場合、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 人材の採用及び育成について


直営店の出店拡大には優秀な人材の確保が不可欠ですが、労働人口の減少や人件費高騰により、計画通りの採用や育成が困難になるリスクがあります。同社は採用手法の多様化や教育制度の充実に注力していますが、必要な人材を十分に確保・育成できない場合、出店計画の遅れや店舗運営レベルの低下を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 新規出店計画について


同社は新規出店による事業拡大を進めていますが、希望する条件に合う物件が見つからない場合や、工期の遅れ等により、計画通りに出店できない可能性があります。立地調査や収益性の検討を慎重に行っていますが、実際の出店進捗が計画と乖離した場合、成長速度や財政状態に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。