旭化学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

旭化学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード、名証メイン上場のプラスチック製品メーカー。電動工具や自動車部品の成形加工、金型製作を主力とし、海外(中国・タイ)での生産・販売比率が高い点が特徴です。直近の業績は、売上高は微増ながら、研究開発費の増加や為替の影響等により、経常利益、当期純利益ともに減益となりました。


※本記事は、旭化学工業株式会社 の有価証券報告書(第59期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 旭化学工業ってどんな会社?


電動工具部品や自動車部品を中心としたプラスチック製品の成形加工および金型製作を行うメーカーです。

(1) 会社概要


1966年にプラスチック製品の成形加工を目的に設立され、1969年よりマキタ(旧マキタ電機製作所)との取引を開始し電動工具部品へ進出しました。1993年に日本証券業協会へ店頭登録し、2001年には中国に現地法人を設立して海外展開を加速させました。その後、2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東証スタンダード市場に上場しています。

同社グループの連結従業員数は477名、単体では156名体制です。筆頭株主は代表取締役社長の杉浦武氏で、第2位も同氏の親族と思われる個人株主となっており、創業家による持株比率が高い構成です。第3位には取引先持株会が名を連ねています。

氏名 持株比率
杉浦 武 14.27%
杉浦 求 9.47%
旭化学工業取引先持株会 7.11%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は杉浦武氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
杉浦 武 取締役社長(代表取締役) 1991年同社入社。製造部長、生産管理部長、中国子会社董事長などを経て、2010年11月より現職。
岡野 篤 常務取締役営業本部長 1986年同社入社。営業部長、中国子会社総経理などを歴任し、2016年6月より現職。
手島 淳 取締役 1987年同社入社。製造部長を経て、中国子会社総経理を兼務。2015年11月より現職。


社外取締役は、本田信行(岡崎信用金庫人事部担当課長)、小島正志(小島正志税理士事務所所長)、異相武大(異相・村瀬法律事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「中国」「タイ」の各報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


国内において、電動工具部品や自動車部品などのプラスチック製品の成形加工、および樹脂成形用金型の設計製作を行っています。主要顧客であるマキタやイノアックコーポレーション向けの製品供給が中心です。

収益は、顧客への製品販売および金型販売から得ています。運営は主に旭化学工業が行っています。

(2) 中国


中国市場において、プラスチック製品の成形加工および樹脂成形用金型の設計製作を行っています。牧田(中国)有限公司や牧田(昆山)有限公司などの現地法人を主要顧客とし、グループ最大の売上規模を有しています。

収益は、現地顧客への製品および金型販売から得ています。運営は子会社の旭日塑料制品(昆山)有限公司が行っています。

(3) タイ


タイ王国において、プラスチック製品の成形加工および樹脂成形用金型の設計製作を行っています。東南アジア地域における生産拠点として、電動工具部品などを製造しています。

収益は、現地顧客への製品および金型販売から得ています。運営は子会社のAsahi Plus Co.,Ltd.が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は80億円台から100億円台の間で推移しています。第55期から第56期にかけては100億円を超えていましたが、第57期以降は80億円台で安定しています。利益面では、経常利益が減少傾向にあり、利益率は低下しています。

項目 2021年8月期 2022年8月期 2023年8月期 2024年8月期 2025年8月期
売上高 104億円 107億円 87億円 83億円 84億円
経常利益 8億円 7億円 3億円 2億円 1億円
利益率(%) 7.4% 6.2% 3.2% 2.2% 1.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 5億円 3億円 3億円 -0.5億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高はほぼ横ばいですが、売上総利益は増加し、売上総利益率も改善傾向にあります。一方で、研究開発費の大幅な増加や減価償却費の負担増などにより、営業損益は赤字に転じています。

項目 2024年8月期 2025年8月期
売上高 83億円 84億円
売上総利益 8億円 8億円
売上総利益率(%) 9.0% 9.5%
営業利益 0.4億円 -0.5億円
営業利益率(%) 0.5% -0.5%


販売費及び一般管理費のうち、荷造運搬費が1.1億円(構成比13%)、給与・賞与が1.0億円(同12%)を占めています。また、今期より研究開発費が増加しており0.7億円(同8%)となっています。

(3) セグメント収益


日本セグメントは売上が微増したものの、研究開発費や減価償却費の増加により営業損失が拡大しました。中国セグメントは為替の影響で減収となりましたが、営業利益は増加しています。タイセグメントは電動工具部品の受注増により大幅な増収となり、黒字転換を果たしました。

区分 売上(2024年8月期) 売上(2025年8月期) 利益(2024年8月期) 利益(2025年8月期) 利益率
日本 36億円 36億円 -0.8億円 -2.4億円 -6.7%
中国 40億円 39億円 1.5億円 1.8億円 4.6%
タイ 8億円 9億円 -0.3億円 0.1億円 0.7%
連結(合計) 83億円 84億円 0.4億円 -0.5億円 -0.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業によるキャッシュ・フローはプラスを維持しており、得られた資金と借入金を合わせて投資活動に充てる「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年8月期 2025年8月期
営業CF 3.0億円 1.4億円
投資CF -3.9億円 -2.8億円
財務CF -0.3億円 0.8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は79.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「愛されるプラスチックメーカー」を目指し、社是として「良い考え[合理化の追求]・良い商品[信頼性の重視]・良い職場[人間性の尊重]」を掲げています。創業以来、社会のニーズに合った製品を造り出すための研究活動に注力し、技術力の向上と効率的な生産システムの確立を通じて、収益力の向上と経営基盤の強化を図っています。

(2) 企業文化


「人・物・金は企業にとって限度がある。限度あるものを最高に活かすのが事業である。」という基本理念のもと、企業活動を行っています。この理念に基づき、限られた経営資源を最大限に活用し、顧客や市場からの評価を高めることを重視する文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は、グループ全体の売上目標として毎年10%以上の増収を目指して事業活動を行っています。また、収益性の指標として、具体的な数値目標を掲げています。

* 売上高総利益率:20%の安定的維持

(4) 成長戦略と重点施策


特定顧客(電動工具および自動車業界)への依存度が高いため、自社ブランドのアンカープラグの製品改良や新製品開発に注力し、販売先の多角化を図っています。また、生産性向上に向けた省力化・自動化設備の導入や、カメラによる不具合検知システムの高度化を進めています。

* 研究開発施設(植物工場)の新設と量産設備の建設検討
* 廃棄プラスチックの削減・再利用の研究(廃棄予定材料を使った建築資材開発など)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従業員を財産と考え、多様な価値観を尊重し、安全で働きやすい環境の確保に努めています。働きがいを感じながら仕事ができる環境づくりを進めるとともに、会社とともに成長できるよう外部研修などを推奨し、人材育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年8月期 40.8歳 11.2年 4,037,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 59.1%
男女賃金差異(正規雇用) 62.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 82.5%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の顧客への依存


同社グループの売上高の93.5%は、電動工具業界および自動車業界の特定の得意先に依存しています。これらの顧客との取引は継続的かつ安定的ですが、顧客の生産・販売動向によっては、同社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外市場での活動


中国およびタイで事業を展開しており、海外売上比率は57.0%に達しています。為替リスクに加え、政情不安、経済動向の不確実性、法規制や税制の変更など、海外事業特有のリスクが存在し、これらが顕在化した場合、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 人材の雇用及び育成


規模拡大および事業存続のためには、優秀な人材の確保と育成が不可欠と考えています。特に経営理念に共感する人材の育成に注力していますが、計画通りに優秀な人材を採用・確保できない場合、グループの競争力や業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。