ミクロン精密 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ミクロン精密 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の工作機械メーカーです。心なし研削盤および内面研削盤の製造・販売を主力事業とし、グローバルニッチトップ企業にも選定されています。直近の業績は、売上高58億円、経常利益11億円と増収増益を達成しており、高い自己資本比率を維持する安定した財務基盤が特徴です。


※本記事は、ミクロン精密株式会社 の有価証券報告書(第66期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ミクロン精密ってどんな会社?


心なし研削盤(センタレスグラインダ)等の工作機械を製造・販売し、世界28か国以上に展開するグローバルニッチトップ企業です。

(1) 会社概要


1961年に中川精機製造として設立され、1968年に現商号へ変更しました。2001年に米国法人を完全子会社化し、2005年にジャスダック(現・東証スタンダード)へ上場しました。その後、タイや中国にも現地法人を設立して海外展開を加速させ、2020年には経済産業省の「グローバルニッチトップ企業100選」に認定されています。

現在の従業員数は連結229名、単体212名です。大株主の構成は、筆頭株主が同社の社員持株会、第2位が取引先持株会となっており、第3位には社長の榊原憲二氏が名を連ねています。従業員や取引先、経営陣が株式を保有し、安定した経営基盤を構築していることが特徴です。

氏名 持株比率
ミクロン精密社員持株会 20.05%
ミクロン精密取引先持株会 6.27%
榊原 憲二 6.08%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名、計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は榊原憲二氏が務めています。社外取締役比率は10.0%です。

氏名 役職 主な経歴
榊原 憲二 代表取締役社長 1982年大日本インキ化学工業入社。1985年同社入社。米国現地法人社長等を経て2009年より現職。
善本 淳一 常務取締役設計本部長 兼 営業本部長 兼 メディカル事業部長 1986年セイコー電子工業入社。2001年同社入社。営業部長、取締役営業本部長等を経て2022年より現職。
大宮 正則 常務取締役技術部長 兼 CDO(ChiefDigitalizing Officer) 1986年同社入社。製造部長、技術部長を経て2023年より現職。
遠藤 正明 取締役管理部長 1988年同社入社。管理部次長、調達部次長、監査役等を経て2019年より現職。
山口 仁志 取締役生産本部長 兼 調達部長 1990年同社入社。設計部次長、制御部長、製造部長等を経て2023年より現職。
武田 雅人 取締役営業部長 1989年同社入社。東京営業所課長、営業部次長等を経て2022年より現職。


社外取締役は、押野正德(公認会計士・押野正德公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「研削盤製造販売事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 研削盤製造販売事業


主に心なし研削盤(センタレスグラインダ)および内面研削盤(インターナルグラインダ)と、その周辺装置を提供しています。顧客は自動車部品やモーターシャフトなど高い精度が要求される部品メーカーが中心であり、日本国内だけでなく北米、アジア、欧州など世界中のものづくり企業に製品を納入しています。

収益は、顧客への工作機械の販売代金および部品販売、メンテナンス等のアフターサービス料から得ています。運営は、国内では同社が開発・設計・製造・販売を一貫して行い、海外では米国、タイ、中国の連結子会社(Micron-U.S.A., Inc.など)が拠点となって製品販売やサービス提供を行っています。

(2) その他事業


主力製品以外の分野やサービス提供を行っています。具体的には、テスト研削や機械の再生事業、さらには人材派遣サービスなどが含まれます。また、医療機器分野への参入も進めており、電動式骨手術器械などの開発・製造販売も行っています。

収益は、テスト研削料やサービス提供の対価、人材派遣料などから得ています。運営は、同社および人材派遣を行う子会社ミクロンテクニカルサービス株式会社などが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年8月期から2025年8月期までの業績推移を見ると、売上高は40億円台から50億円台後半へと拡大傾向にあります。特に直近の2025年8月期は売上高58億円、経常利益11億円と、前期から大幅な増収増益を達成しました。利益率も常に高い水準(15%以上)を維持しており、収益性の高さが際立っています。

項目 2021年8月期 2022年8月期 2023年8月期 2024年8月期 2025年8月期
売上高 40.1億円 52.0億円 51.8億円 47.0億円 57.8億円
経常利益 6.3億円 18.2億円 11.6億円 7.6億円 11.2億円
利益率(%) 15.8% 35.0% 22.4% 16.2% 19.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 4.6億円 12.3億円 8.7億円 4.8億円 7.8億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに前期比で大きく伸長しています。売上総利益率は36%台と高い水準を維持しており、付加価値の高い製品を提供できていることがわかります。営業利益率も改善しており、効率的な経営が行われていることが示されています。

項目 2024年8月期 2025年8月期
売上高 47.0億円 57.8億円
売上総利益 17.7億円 20.9億円
売上総利益率(%) 37.6% 36.2%
営業利益 3.8億円 6.1億円
営業利益率(%) 8.1% 10.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4.3億円(構成比29%)、役員報酬が1.5億円(同10%)を占めています。また、研究開発費は1.1億円(同7%)となっており、技術開発への投資も継続しています。売上原価に関しては、材料費や外注費などが主な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、製品・サービスごとの売上状況を見ると、主力である「研削盤」が前期比で大きく増加し、業績を牽引しました。「部品」販売も堅調に推移しており、安定した収益源となっています。「その他」も増加しており、全体として好調な推移を示しています。

区分 売上(2024年8月期) 売上(2025年8月期)
研削盤 36.0億円 46.0億円
部品 11.0億円 11.0億円
その他 0.4億円 0.6億円
連結(合計) 47.0億円 58.0億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFと財務CFはマイナスとなっており、本業で稼いだ現金を設備投資や借入返済、株主還元に充てる「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。特に当期は営業CFが大きく増加しており、資金創出能力が高まっています。

項目 2024年8月期 2025年8月期
営業CF 0.5億円 17.4億円
投資CF 5.9億円 -1.4億円
財務CF -15.2億円 -3.9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は87.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「技術と人柄」を社是としています。優れた技術は人柄という礎の上に努力と知恵の積み重ねで確立され、技術を研鑽する中で人柄が醸成されるという相互作用を重視しています。このハーモニーを磨き上げることで会社を発展させ、社会に貢献することを目指しています。技術革新を通じて企業価値を高め、社員の幸福と取引先の繁栄を実現することを基本方針としています。

(2) 企業文化


「世界最高峰の研削技術・技能を極める」「妥協のない品質と顧客満足を追求する」「一歩先行くものづくりで地球環境を守る」というビジョンを掲げ、全社員参加の経営を徹底しています。創造性豊かな人材の育成と実直な人柄を身に付けた企業人を育むことを重視しており、理想の真円を意味する「限りなき円」を追求し、他社には真似のできない精度を実現する姿勢が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、売上高および各利益の成長率を重要な指標とし、ROEやROAの向上も目指しています。市場動向や設備投資動向を勘案して毎年の目標を決定しており、2026年8月期については以下の目標数値を掲げています。

* 売上高:5,467百万円
* 営業利益:381百万円
* 経常利益:668百万円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:452百万円

(4) 成長戦略と重点施策


中長期的な成長に向け、技術・研究開発力の強化と海外市場への展開を重点施策としています。自動車産業以外の医療機器や航空機分野での革新的な技術開発に注力するとともに、米国・タイ・中国の拠点を活用した安定的なビジネス展開を図ります。また、知的財産の保護・活用による高付加価値化や、原価管理の徹底による収益力の強化、アフターサービスの充実にも取り組んでいく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「技術と人柄」の社是に基づき、性別や国籍に関係なく多様な人材を採用し、組織強化と人材育成に注力しています。新卒者にはメンター制度を導入し、四半期ごとの面談でキャリアプランを共有するなど、安心して成長できる環境を整備しています。また、フレックスタイム制や独自の休暇制度導入、ハラスメント防止など、社員がいきいきと働ける環境づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年8月期 45.1歳 18.5年 5,257,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、男性社員の育児休業取得率(125%)、有次有給休暇の取得率(80.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品検収時期の変動リスク


同社の製品は受注生産であり、顧客からの高度な要求を満たすための調整や仕様変更により、受注から検収までの期間が長期化することがあります。これにより、予定していた検収時期に変動が生じた場合、売上計上時期がずれ込み、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) キャンセル発生による影響


顧客の仕様に基づき製造を行っているため、予期せぬキャンセルが発生した場合、製品の転用が困難であり、製造原価の一部負担などが発生する可能性があります。同社は他への転用やキャンセル条項に基づく費用請求等で負担軽減を図りますが、業績や財政状態に影響を与えるリスクがあります。

(3) 特定取引先および心なし研削盤への依存


原材料や部品の一部を特定の仕入先に依存しており、供給停滞のリスクがあります。また、販売面では自動車業界向けが多く、主力製品である心なし研削盤への依存度が高い状況です。同社は仕入先の分散化や内製化、新たな業界(医療・航空機等)への展開、内面研削盤の強化などを進めていますが、特定の市場動向の影響を受けやすい構造にあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。