リップス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

リップス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所グロース市場に上場しており、メンズコスメの企画・販売およびヘアサロンのフランチャイズ運営を主要事業としています。直近の業績は、主力商品のヘアワックスやEC販売が好調に推移し、売上高は44億円(前期比17.2%増)、当期純利益は7億円(同53.9%増)と増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社リップス の有価証券報告書(第18期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. リップスってどんな会社?


Z世代の男性を中心に高い支持を得ているメンズコスメブランド「LIPPS」の企画・販売と、人気ヘアサロンの運営支援を展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は2008年、ヘアサロン運営支援と美容商材の企画・販売を目的に設立されました。2019年にはメンズメイクアップブランド「LIPPS BOY」を発売し、市場に先駆けて男性向けコスメを展開しました。2021年には主力商品のヘアワックスをリニューアルし、2022年に現在の社名へ変更しました。その後も事業を拡大し、2025年に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしました。

同社(単体)の従業員数は48名です。筆頭株主は創業者である代表取締役社長の資産管理会社で、第2位は創業者の的場隆光氏本人、第3位は大手証券会社となっています。経営陣が過半数の株式を保有しており、オーナーシップの強い資本構成です。

氏名 持株比率
Akeru 41.18%
的場 隆光 8.75%
SBI証券 8.28%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は的場隆光氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
的場 隆光 代表取締役社長 2000年リップスヘアー設立、2008年同社設立・代表取締役社長就任。2022年Akeru設立・代表取締役就任より現職。
長島 幹孟 取締役商品事業部長 2011年カタセ入社。2016年同社入社、2020年取締役商品事業部長就任より現職。
上原 大輔 取締役経営管理部長 2010年M&Aキャピタルパートナーズ入社、同社取締役等を歴任。2021年同社取締役経営管理部長就任より現職。
西澤 民夫 取締役 1966年中小企業金融公庫入庫。1998年日本エスアンドティー社長就任。2021年同社取締役就任より現職。
藤田 明久 取締役 1991年電通入社。D2C社長、ぐるなび副社長等を歴任。2024年同社取締役就任より現職。


社外取締役は、西澤民夫(日本エスアンドティー社長)、藤田明久(MIXI社外取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「商品事業」および「サロンフランチャイズ事業」を展開しています。

(1) 商品事業


若年層の男性から支持される「LIPPS」ブランドのヘアワックス等のスタイリング剤やヘアケア商品、およびメンズメイクアップブランド「LIPPS BOY」の企画・販売を行っています。サロン現場の声を反映した商品開発が特徴です。

収益は、卸売業者を通じたドラッグストア等の小売店への販売、ヘアサロンへの販売、およびAmazonや楽天等のECサイトを通じた一般消費者への販売によって得ています。商品の企画・販売は主に同社が行い、製造は外部委託するファブレス形態をとっています。

(2) サロンフランチャイズ事業


原宿・表参道エリアを中心に展開するメンズヘアサロン「LIPPS hair」のフランチャイズ本部として事業を行っています。直営店舗は持たず、加盟店に対して経営指導、店舗運営支援、美容師への技術指導などを提供しています。

収益は、フランチャイズ加盟店(スタイリストまたはその法人が運営)から受け取るロイヤリティや、経営指導・運営支援の対価から構成されています。フランチャイズ本部の運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は順調に拡大しており、直近5期間で大幅な成長を遂げています。利益面でも、経常利益・当期純利益ともに高い水準を維持しつつ増加傾向にあり、高い収益性を確保しながら事業規模を拡大していることが読み取れます。特に直近の伸びが顕著です。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2022年8月期 2023年8月期 2024年8月期 2025年8月期
売上高 12.2億円 18.8億円 10.1億円 31.1億円 37.6億円 44.1億円
経常利益 4.8億円 5.2億円 1.9億円 7.7億円 7.2億円 9.4億円
利益率(%) 39.3% 27.8% 19.1% 24.8% 19.1% 21.3%
当期純利益 3.2億円 3.5億円 1.4億円 5.4億円 4.2億円 6.5億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も順調に伸長しています。営業利益率も20%を超える高い水準を維持しており、効率的な事業運営が行われていることがうかがえます。コスト管理も適切になされており、収益性が向上しています。

項目 2024年8月期 2025年8月期
売上高 37.6億円 44.1億円
売上総利益 22.3億円 25.6億円
売上総利益率(%) 59.2% 58.0%
営業利益 7.2億円 9.5億円
営業利益率(%) 19.2% 21.5%


販売費及び一般管理費のうち、荷造運賃が5億円(構成比34%)、広告宣伝費が3億円(同18%)を占めています。売上原価に関しては、経費(外注加工費等)が売上原価の69%を占め、材料費が31%となっています。

(3) セグメント収益


商品事業は、ヘアワックス等の配荷店舗数の拡大やEC販売の伸長により大幅な増収増益となり、全社の成長を牽引しています。一方、サロンフランチャイズ事業は売上が微減となったものの、利益は大幅に増加しており、収益性の改善が見られます。

区分 売上(2024年8月期) 売上(2025年8月期) 利益(2024年8月期) 利益(2025年8月期) 利益率
商品事業 33.1億円 39.7億円 6.1億円 7.9億円 19.8%
サロンフランチャイズ事業 4.5億円 4.4億円 1.1億円 1.6億円 37.1%
連結(合計) 37.6億円 44.1億円 7.2億円 9.5億円 21.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年8月期 2025年8月期
営業CF -0.2億円 6.8億円
投資CF -0.9億円 -0.1億円
財務CF 0.0億円 1.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は88.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「Boys, Be Beautiful!」を理念に掲げています。これは年齢や性別を問わず、すべての人に対して「ありのままの自分を楽しみ、センス良く、自由に、幸福に生きることは、なによりも美しい!」と肯定するものです。メンズビューティのトップランナーとして、磨き上げた技術と感性で人々の背中を押すことをミッションとしています。

(2) 企業文化


同社は、創業以来のヘアサロン運営を通じて、顧客一人ひとりの「最高の似合わせ」を提案し続けてきた姿勢を大切にしています。鏡の中の顧客と向き合い、外見だけでなく内面や生き方も含めた「カッコいい」を追求することが文化として根付いています。また、互いを認め合う世界観を重視し、あらゆるアクションをこの想いで貫くことを行動の指針としています。

(3) 経営計画・目標


同社は成長途上にあるため、主な経営指標として「商品事業の売上高」を重視しています。また、同業他社と比較して低い広告宣伝費や販売促進費で効率的な運営を行っている特徴から、「販促・広告費売上高比率」にも注目しています。さらに、物流費やその他の販管費をコントロールしつつ、「商品事業の営業利益率」の推移も重要な指標として位置づけています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「LIPPS」のブランド力向上とメンズコスメ市場でのシェア拡大を目指しています。商品事業では、知名度向上による既存商品のシェア拡大に加え、メンズコスメ以外の新商品開発や、開拓済みの販路を活用した新規領域への進出を模索します。サロン事業では、業界全体の課題である人材流動化に対応するため、離職率低下に向けた経営助言やスタイリストの技能習得支援を強化し、安定したサロンブランドの維持を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


優秀な人材の確保と教育を企業成長の重要要素と位置づけています。組織体制の強化とともに、従業員エンゲージメントを重視したインナーブランディングや福利厚生、インセンティブ制度の設計に積極的に取り組んでいます。また、人材の多様性を確保しつつ、有給休暇の時間単位取得や在宅勤務制度などを導入し、働きやすい環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年8月期 33.8歳 2.1年 5,965,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の商品カテゴリーへの依存


同社の売上の過半数は、主要商品であるヘアワックスが占めています。ヘアサロン発のブランドとして中高価格帯のスタイリング剤を中心に成長してきましたが、大手メーカー等の参入により競争が激化しています。消費者嗜好の変化やブランド力の低下により、主力商品のシェアや市場が縮小した場合、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 特定の取引先への高い依存


主力商品であるヘアワックスシリーズの製造のほとんどを、エフシー中央薬理研究所株式会社に委託しています。同社とは製品供給基本契約を締結し、緊密な連携を図っていますが、取引先に何らかの支障が生じ、製品の供給に問題が発生した場合には、同社の業績に影響を与える可能性があります。

(3) 原材料市場の変動


主力商品の製造には石油関連の原材料が使用されており、その価格は原油価格や為替変動の影響を受けます。製造委託先と連携して代替品の開発や情報交換を行い、原価高騰リスクの軽減に努めていますが、国際情勢などにより想定を超える価格変動が発生した場合には、利益率が低下し、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 人材確保と小規模組織であることについて


同社は従業員数が少ない小規模な組織であり、個々の従業員の活躍に依存しています。若手従業員が多く、職場環境の整備やインセンティブ設計に取り組んでいますが、労働人口の減少や人件費高騰により優秀な人材を確保できない場合、または人材が流出した場合には、事業運営や業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。