オーバーラップホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オーバーラップホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

グロース市場に上場し、ライトノベルやマンガ、アニメ等のエンターテインメント事業を展開しています。IP創出とメディアミックス展開が奏功し、第4期は売上収益85億円、営業利益30億円、当期利益21億円と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社オーバーラップホールディングス の有価証券報告書(第4期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. オーバーラップホールディングスってどんな会社?


ライトノベルやマンガ、アニメ等のコンテンツIPを創出し、多角的に展開するエンターテインメント企業です。

(1) 会社概要


2011年に前身となるオーバーラップが設立され、2013年に「オーバーラップ文庫」、2016年にWeb漫画誌「コミックガルド」を創刊しました。2021年にはWeb漫画事業等の拡大を目的にオーバーラップ・プラスを設立。2022年に投資ファンドの出資受入に伴い持株会社体制へ移行し、2025年10月に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。

同社グループは連結85名、単体6名の従業員で構成されています。筆頭株主は投資ファンドのNIC Fund II Cayman, LPで、第2位、第3位も同様に投資ファンドが名を連ねています。また、出版大手の小学館やポケモンも大株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
NIC Fund II Cayman, LP 17.37%
Cerasus Fund II Cayman, LP 14.62%
Wisteria Fund II Cayman, LP 14.14%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長には永田勝治氏が就任しており、社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
永田 勝治 代表取締役社長 リクルート、メディアファクトリーを経て、2012年にオーバーラップに入社し社長就任。2022年より現職。
原田 直樹 代表取締役副社長 コーエー、メディアファクトリーを経て、2012年にオーバーラップに入社。2023年より現職。オーバーラップ・プラス社長も兼任。
岸川 雄吾 取締役管理部長 プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント、ゴンゾ・ディジメーション、メディアファクトリー、アサツーディ・ケイを経て2023年に入社。同年より現職。


社外取締役は、名子俊男(元マーベラス監査役)、谷田昌広(元テイクアンドギヴ・ニーズ取締役)、秋里英寿(日本企業成長投資パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「エンターテインメント事業」および「その他」事業を展開しています。

エンターテインメント事業

ライトノベル、マンガ、アニメなどを通じてコンテンツIP(知的財産)を創出し、その価値を最大化する事業を展開しています。小説投稿サイト等から発掘した作品を書籍化し、ヒット作をマンガ化、さらにアニメ化へと展開するメディアミックスが特徴です。主な顧客は、これらのコンテンツを楽しむ一般消費者です。

収益は、紙の書籍および電子書籍の販売収入、アニメ化に伴う原作使用料や製作委員会からの分配金、海外へのライセンス収入などから構成されています。運営は主に事業子会社であるオーバーラップおよびオーバーラップ・プラスが行っています。

その他

上記以外の事業として、他社が保有する有力なIPに関連する商品の企画・販売を行っています。

収益は、ゲーム攻略本(ポケモン関連)やサウンドトラックCDなどの商品販売収入により構成されています。運営は主にオーバーラップが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は第2期から第4期にかけて順調に拡大傾向にあります。特に利益面の成長が著しく、税引前利益および当期利益は毎期大きく増加しています。利益率も第2期の16.5%から第4期には33.6%へと大幅に上昇しており、高収益体質への転換が進んでいます。

項目 2023年8月期 2024年8月期 2025年8月期
売上収益 78億円 84億円 85億円
税引前利益 13億円 18億円 29億円
利益率(%) 16.5% 21.1% 33.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 11億円 21億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上収益は微増ですが、営業利益が大幅に増加しています。これは、売上総利益が減少した一方で、販売費及び一般管理費が大きく圧縮されたことによるものです。高い利益率を確保しつつ、コスト構造の改善が進んだことで、営業利益率は20%台後半から30%台半ばへと向上しました。

項目 2024年8月期 2025年8月期
売上高 84億円 85億円
売上総利益 49億円 45億円
売上総利益率(%) 58.2% 53.2%
営業利益 22億円 30億円
営業利益率(%) 25.6% 35.5%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が5億円(構成比34%)、広告宣伝費及び販売促進費が4億円(同25%)を占めています。売上原価については、詳細な内訳データはありません。

(3) セグメント収益


エンターテインメント事業単一セグメントであるため、全社の業績推移と同様に、売上収益は安定的に推移し、利益は大幅に伸長しました。既存の人気作品の続刊や新規IPの創出、メディアミックス展開が収益に貢献しています。

区分 売上(2024年8月期) 売上(2025年8月期) 利益(2024年8月期) 利益(2025年8月期) 利益率
エンターテインメント事業 84億円 85億円 22億円 30億円 35.5%
連結(合計) 84億円 85億円 22億円 30億円 35.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は27.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「マンガ・ノベル・アニメ・ゲーム・WEB─―あらゆるメディアと多彩な才能をオーバーラップさせ世界に広がるIPを創り出し続ける。」という経営理念を掲げています。メディアの垣根を越えた最適な展開により、作品世界を拡大・波及させていくことを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、業界の常識や単一メディアに縛られず、メディアミックスによってコンテンツの価値を最大化することに挑戦する文化を持っています。業界や国境を越え、新しい才能とともにエンターテインメント業界の最前線へと駆け上がっていくことを行動指針としています。

(3) 経営計画・目標


同社は、「自社IP売上」の源泉となり、長期的な収益貢献が期待される「主力IP」の増加を成長ドライバーと位置づけています。主力IP数およびその売上高、さらに営業利益や当期利益、調整後EBITDA(償却費等を加味した利益指標)を重視する経営を行っています。

* 主力IP数(2025年8月期):57点
* 主力IP売上(2025年8月期):66億円
* 調整後EBITDA(2025年8月期):33億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、編集体制の強化やジャンル拡大による新規IP創出力の向上を基本戦略としています。また、アニメ化を中心としたメディアミックスの拡大によりIP価値を高めるとともに、海外市場での需要を取り込むため、ライセンス展開の地域やパートナー企業の開拓を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、コンテンツIPの目利きを行う編集担当者の確保と育成を重視しています。中途採用の積極活用に加え、定期的な新卒採用を実施し、将来の成長を担う人材を確保しています。また、業務を通じたトレーニングや研修制度を充実させ、社員が能力を発揮できる環境整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年8月期 37.0歳 3.8年 8,488,333円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競合他社の動向について

ウェブ小説やマンガを書籍化するビジネスモデルは競合が多く、各社からヒット作が出版されています。今後も新規参入等が見込まれる中、知名度向上やクリエイター・ユーザーの満足度向上施策により優位性を確保できない場合、業績に影響を与える可能性があります。

(2) システムの安定的な稼働について

Webサイトやアプリの運営において、急激なアクセス増加や災害等によるサーバー停止、サイバー攻撃等によるシステム障害が発生した場合、サービスの提供に支障をきたし、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 海外へのIPライセンス許諾について

海外企業へのライセンス展開において、現地の市場動向、政治・経済、法規制等の変化が事業活動に悪影響を与えるリスクがあります。情報収集に努めていますが、カントリーリスク等が顕在化した場合、業績に影響する可能性があります。

(4) 小規模組織における管理体制について

同社グループは小規模な組織であり、事業拡大に応じた組織整備や内部管理体制の拡充を進めていますが、これらが順調に進まなかった場合、適切な業務運営が困難となり、業績等に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。