※本記事は、株式会社中央経済社ホールディングス の有価証券報告書(第88期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 中央経済社ホールディングスってどんな会社?
会計、税務、法律などの専門分野に特化した書籍や雑誌の出版を行う企業グループです。
■(1) 会社概要
1948年に設立され、同年には月刊誌「企業会計」を創刊しました。1997年に株式を店頭公開し、2013年には株式会社シーオーツーを買収して連結子会社化しています。2016年に持株会社体制へ移行し、現在の商号に変更しました。2022年には東京証券取引所の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しています。2024年には子会社であった株式会社CKDを吸収合併しました。
同グループの従業員数は連結で91名、単体で69名です。筆頭株主は代表取締役最高顧問である山本時男氏で、第2位は資産管理業務を行う海外銀行の常任代理人、第3位は信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 山本 時男 | 10.84% |
| THE HONGKONG AND SHANGHAI BANKING CORPORATION LIMITED - HONG KONG PRIVATE BANKING DIVISION CLIENT A/C 8028-394841(常任代理人 香港上海銀行東京支店セキュリティーズ・サービスオペレーションズ) | 8.03% |
| 日本カストディ銀行(信託E口) | 6.51% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は山本憲央氏が務めています。取締役4名のうち社外取締役は1名で、社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山本 憲央 | 代表取締役 社長 | 2001年入社。取締役副社長などを経て、2009年より現職。グループ会社であるプランニングセンターや中央経済グループパブリッシングの代表取締役社長も兼務。 |
| 山本 継 | 代表取締役 会長 | 2005年入社。専務取締役COOを経て、2009年に代表取締役会長兼CEOに就任。現在は中央経済社代表取締役社長も務める。 |
| 山本 時男 | 代表取締役最高顧問 | 1955年入社。営業部部長、雑誌部部長などを経て、1987年に代表取締役社長に就任。2009年より現職。 |
社外取締役は、松尾武(元NHK出版代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「出版事業」および「出版付帯事業」を展開しています。
■(1) 出版事業
経営、経済、法律、会計、税務等の専門分野における学術書、実務書、教科書、資格試験学習書などを出版しています。また、「企業会計」「税務弘報」「旬刊経理情報」「ビジネス法務」といった専門雑誌の発行も行っています。読者は実務家や研究者、学生などが中心です。
主な収益源は、取次販売会社を経由した書店等への書籍・雑誌の販売代金です。また、電子書籍やサブスクリプション・サービスへのデータ提供による収益も含まれます。運営は主に株式会社中央経済社が企画・編集を行い、株式会社中央経済グループパブリッシングが制作・販売を行っています。また、株式会社シーオーツーも編集制作を担っています。
■(2) 出版付帯事業
税務、会計、法務分野を中心とした媒体向けの広告宣伝の請負代理を行っています。具体的には、同社グループが発行する専門雑誌への広告掲載の取り扱いが中心です。あわせて、企業の商品カタログや販売促進用パンフレットの企画・制作なども手がけています。
広告主からの広告掲載料や制作費が主な収益源となります。この事業の運営は、子会社である株式会社プランニングセンターが行っています。近年では紙媒体だけでなく、Web上での広告展開も進めており、新規顧客の開拓を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移です。売上高は30億円台前半で安定的に推移していますが、利益面では変動が見られます。当期は売上高が増加し、経常利益も大幅に伸長しました。当期利益についても、前期の損失から黒字転換を果たしています。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 32億円 | 32億円 | 30億円 | 31億円 | 33億円 |
| 経常利益 | 1.8億円 | 1.7億円 | 1.0億円 | 1.3億円 | 2.5億円 |
| 利益率(%) | 5.8% | 5.3% | 3.4% | 4.1% | 7.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.5億円 | 1.7億円 | 0.5億円 | -0.9億円 | 2.4億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の傾向を分析します。売上高は増加し、売上総利益率も改善しています。営業利益は前期比で大きく増加し、営業利益率も向上しました。コストコントロールと売上増が利益押し上げに寄与した形です。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 31億円 | 33億円 |
| 売上総利益 | 11億円 | 12億円 |
| 売上総利益率(%) | 35.3% | 36.9% |
| 営業利益 | 1.2億円 | 2.3億円 |
| 営業利益率(%) | 3.9% | 7.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2.5億円(構成比26%)、支払手数料が1.6億円(同16%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメントごとの増減要因を分析します。主力の出版事業は、新リース会計基準関連書等の実務書や教科書が好調で増収増益となりました。出版付帯事業も新規顧客開拓により増収となり、黒字転換を果たしています。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) | 利益(2024年9月期) | 利益(2025年9月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 出版事業 | 30億円 | 31億円 | 2.3億円 | 2.3億円 | 7.4% |
| 出版付帯事業 | 0.9億円 | 1.2億円 | -0.1億円 | 0.1億円 | 12.5% |
| 連結(合計) | 31億円 | 33億円 | 1.2億円 | 2.3億円 | 7.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のCF状況は、本業で稼いだ現金と保有資産の売却等で得た資金により、借入金の返済を進めている「改善型」の傾向を示しています。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4.1億円 | 3.7億円 |
| 投資CF | -1.1億円 | 0.6億円 |
| 財務CF | 0.1億円 | -0.7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、企業経営に関する書籍・雑誌の出版を通して社会活動に参画し、その発展に貢献することを基本理念としています。広範にわたる企業実務のすべてを取り扱う専門出版社としての社会的役割を認識し、読者からの信頼を拠り所にして企業価値を高めることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は経営活動の基本方針として「市場への適正対応」を掲げています。社会が必要とする知識や技術の変化、特に出版情報に対する極めて個性的なニーズの一つひとつに対して的確に応答することが出版の使命であると考え、読者が求める多様なニーズに応える体制を整えています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、安定した経営基盤を維持・構築し、良質な出版を継続すること、および安定した株主還元を行うことを目標としています。そのために、特に「1株当たり純資産価額」を重視し、その増大を絶えず意識して経営を行っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
持続的な成長と企業価値向上のため、新たな視点や感性を持つ人材の確保・育成、読者ニーズを捉えた企画立案とマーケティングの徹底に取り組みます。また、既刊本の販売強化や物流コスト増への対応、コンテンツのデジタル化を推進し、「所有する価値のある専門書づくり」を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人材を最大かつ最高の経営資源と位置づけています。新たな視点や感性を持って企画開発を行うため、性別、年齢、国籍、学歴にとらわれない多様な人材の採用に努めています。また、従業員の健康維持や能力発揮ができる職場環境の整備と、「知識創造の経営」に向けた継続的な人材育成を実施する方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 40.0歳 | 13.0年 | 6,578,337円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は、公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 再販制度について
同社の書籍・雑誌は独占禁止法の適用除外として再販制度が認められていますが、将来的に制度が廃止された場合、価格競争の激化などにより、業界全体および同社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 委託販売制度と返品リスク
出版業界特有の委託販売制度を採用しており、一定期間内であれば書店等からの返品を受け入れています。同社は適量送本により返品減少に努めていますが、返品率が増加した場合、売上の減少や返金負債等の処理により経営成績に影響を与える可能性があります。
■(3) 生成AIの普及と著作権
生成AIの急速な普及に伴い、AIを利用した書籍の刊行など新たな動きがある一方、適切なルール整備がなされない場合、既存の著作者や出版社の利益が不当に害される恐れがあります。これは出版業界全体の課題であり、同社にとってもリスク要因となります。
■(4) 人材の確保及び育成
企画・編集能力をはじめとする専門的技能を持つ人材は同社の最も重要な資産です。定期的な採用や研修を行っていますが、人材の確保や育成に支障が生じた場合、競争力の低下を招き、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。



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