タカトリ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

タカトリ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場し、半導体製造装置などの電子機器、アパレル向け繊維機器、医療機器の開発・製造を手掛ける産業機械メーカーです。直近の業績は、EV市場の成長鈍化に伴うパワー半導体関連装置の受注低迷などの影響を受け、前期比で大幅な減収減益となりました。


※本記事は、株式会社タカトリ の有価証券報告書(第69期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. タカトリってどんな会社?


奈良県に本社を置き、半導体製造装置や新素材加工機器、医療機器などを展開する開発先行型の産業機械メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1956年に繊維機械の製造販売を目的として設立されました。1983年には半導体機器分野に進出し、現在の主力事業の基盤を築きました。2000年に大阪証券取引所新市場部に上場を果たし、2013年には医療機器分野へも参入しています。2022年の市場区分再編に伴い、現在は東京証券取引所スタンダード市場に上場しています。

連結従業員数は201名(単体198名)です。大株主構成を見ると、筆頭株主は創業家資産管理会社の有限会社コトブキ産業で、第2位は従業員持株会であるタカトリ共栄会、第3位は中小企業の育成を目的とする投資会社です。

氏名 持株比率
有限会社コトブキ産業 6.38%
タカトリ共栄会 4.83%
大阪中小企業投資育成 3.44%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は増田誠氏が務めています。社外取締役比率は12.5%です。

氏名 役職 主な経歴
増田  誠 代表取締役社長 1986年同社入社。営業本部での要職を経て、2013年取締役副社長兼経営企画本部長に就任。2016年より現職。
松田 武晴 代表取締役副社長 1973年同社入社。海外営業部長、営業本部長などを歴任し、2016年代表取締役副社長兼経営企画本部長に就任。2022年より現職。
重富 謙一 取締役管理本部長 2015年同社入社。管理本部経営管理部長、経営企画本部長を経て、2023年より現職。
正岡 智明 取締役経営企画本部長営業統括兼 品質管理統括 2022年同社入社。経営企画本部副本部長などを経て、2024年12月より現職。


社外取締役は、川村真(公認会計士・税理士、川村公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電子機器事業」、「繊維機器事業」、「医療機器事業」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

**(1) 電子機器事業**
半導体製造機器、新素材加工機器(SiC切断加工機等)、ディスプレイ製造機器の開発・製造・販売を行っています。主な顧客は国内外の半導体メーカーや電子部品メーカーであり、特にパワー半導体向け装置に強みを持ちます。
収益は、これらの製造装置の販売代金およびメンテナンス等のサービス料から得ています。運営は主に同社および海外連結子会社が行っています。

**(2) 繊維機器事業**
アパレル業界や産業資材業界向けに、自動裁断機(CAM)などの繊維加工機器の製造・販売を行っています。国内のアパレル市場縮小の影響を受けつつも、防衛装備関係や学生服向けなどの底堅い需要に対応しています。
収益は、機器の販売およびアフターサービス料から得ています。運営は同社が行っています。

**(3) 医療機器事業**
難治性胸腹水の治療に使用される「モバイル型胸腹水濾過濃縮処理装置」や、医療機器・健康機器のOEM/ODM製品の開発・製造・販売を行っています。医療機関や医療機器メーカーが主な顧客です。
収益は、医療機器の販売、レンタル料、および開発受託費から得ています。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は第67期にピークの約164億円を記録しましたが、直近の第69期では約73億円へと大きく減少しています。これに伴い、経常利益も第68期の約28億円から当期は約9億円へと減少し、利益率は低下傾向にあります。市場環境の変化が業績に大きく影響していることが伺えます。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 65億円 102億円 164億円 161億円 73億円
経常利益 5億円 15億円 26億円 28億円 9億円
利益率(%) 7.5% 14.3% 15.9% 17.2% 11.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 10億円 19億円 19億円 6億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は前期の約161億円から当期は約73億円へと半減しました。売上総利益もこれに伴い減少していますが、売上総利益率は前期の26.8%から当期は32.3%へと改善しています。一方で、営業利益は前期の約28億円から約8億円へと大きく縮小し、営業利益率も低下しました。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 161億円 73億円
売上総利益 43億円 24億円
売上総利益率(%) 26.8% 32.3%
営業利益 28億円 8億円
営業利益率(%) 17.3% 11.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料が3.1億円(構成比20%)、役員報酬が1.8億円(同12%)を占めています。売上原価については、製品製造原価等が主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


主力の電子機器事業は、パワー半導体市場の調整局面などの影響により売上が大幅に減少しました。繊維機器事業も市場縮小の影響で減収となっています。一方、医療機器事業は新製品のOEM供給開始などにより売上が増加しましたが、全体への寄与は限定的です。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期)
電子機器事業 157億円 69億円
繊維機器事業 2億円 1億円
医療機器事業 1億円 3億円
連結(合計) 161億円 73億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

タカトリは、営業活動で資金を使用し、投資活動でも資金を使用しましたが、財務活動で資金を得ることで、期末の資金は減少しました。営業活動では、税金等調整前当期純利益があったものの、売上債権の減少や仕入債務の減少、法人税等の支払いなどにより、資金の使用額が増加しました。投資活動では、有価証券の取得による支出が主な要因となり、資金を使用しました。財務活動では、短期借入れによる収入が支出を上回ったものの、配当金の支払いなどにより、前連結会計年度に比べて得られた資金は減少しました。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 2億円 -9億円
投資CF 1億円 -4億円
財務CF 15億円 2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「創造と開拓」を社是とし、「世界に誇れる独自技術を製販一体となって構築し、最良の製品とサービスを提供し、人々の暮らしを豊かにする」を企業理念として掲げています。ユーザーニーズを先取りした新規製品や高付加価値製品を創出する「開発先行型企業」を目指し、社会に貢献することを使命としています。

(2) 経営文化


「The Power of “T” Technology Trust Teamwork」をスローガンとし、製品の独自性や強さを極めることを重視しています。また、「自分の意見は会社組織の上下関係にとらわれず、はっきり発言するとともに、何でも話し合える輪を作ろう」という理念のもと、社員が活発に議論し合える風土づくりを目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、安定した利益率の確保と財務体質の強化を目指しています。具体的には、以下の数値目標を掲げて経営努力を続けています。

* ROE(自己資本当期純利益率):10%以上
* 売上高総利益率の向上を通じたPBR(株価純資産倍率)の向上

(4) 成長戦略と重点施策


中長期的には、原価力の強化と海外調達比率の向上により高収益体質を構築し、地域ナンバーワン企業を目指しています。特に戦略的コア技術である「8つのコア技術」(貼付、真空、搬送、切断、制御、研磨、計測、剥離)を強化し、既存事業の付加価値向上や他製品への技術展開、ビジネスパートナーとの協働による革新的価値の提供に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「開発先行型企業」を実現するため、「採用・育成・活躍」の各フェーズで施策を展開しています。採用では多様な人材の確保を目指し、育成では階層別・目的別研修や資格取得支援を充実させています。また、社員のアイデアを反映する提案制度を設け、個々が会社を創造する風土を醸成しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 42.6歳 15.8年 6,751,685円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

**(1) 部材等の調達による影響**
主要部材である鉄、アルミ、樹脂等の価格高騰や、半導体等の供給不足が業績に影響する可能性があります。長期にわたり部材入手が困難な場合、生産が不安定となり、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

**(2) 市場変動による影響**
電子部品製造装置市場は、一般的な経済状況に加え、半導体市場サイクルや液晶市場の景気循環の影響を強く受けます。市場環境の変動により受注高や売上高が減少し、業績が悪化する可能性があります。

**(3) 事業戦略による影響**
技術革新のスピードが速く、価格競争も厳しい市場環境にあります。競争激化による価格下落や、技術革新による既存製品の陳腐化、新製品投入タイミングの遅れなどが、業績に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。