※本記事は、助川電気工業株式会社の有価証券報告書(第88期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月15日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 助川電気工業ってどんな会社?
同社は、熱と計測の技術を核に、原子力発電所等のエネルギー関連設備や半導体製造装置向け製品を提供するメーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1949年に創業し、1955年にシーズヒータ、1961年にシース型熱電対の製造販売を開始しました。その後、1971年に原子力機器の研究開発に本格着手し、現在の事業基盤を築いています。2004年にJASDAQ証券取引所に上場し、2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東京証券取引所スタンダード市場に上場しています。
2025年9月30日時点で、同社(単体)の従業員数は191名です。筆頭株主は創業者一族の資産管理会社であるドウメキエンタープライズで、第2位は中小企業の育成支援を行う東京中小企業投資育成、第3位は地方銀行の常陽銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ドウメキエンタープライズ | 17.02% |
| 東京中小企業投資育成 | 6.48% |
| 常陽銀行 | 4.78% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は高橋光俊氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 高橋 光俊 | 代表取締役取締役社長 | 1989年同社入社。技術本部装置第1設計部長、技術本部長などを経て、2022年12月より現職。 |
| 百目鬼 孝一 | 取締役会長 | 1972年同社入社。取締役副社長、代表取締役社長などを歴任し、2015年12月より現職。 |
| 滑川 雅広 | 常務取締役技術本部長 | 1988年同社入社。製造本部第1製造部長、技術本部副本部長などを経て、2024年12月より現職。 |
| 小室 高志 | 取締役営業本部長 | 1992年同社入社。営業本部東京支店長を経て、2022年12月より現職。 |
| 菅 芳文 | 取締役製造本部長 | 1994年同社入社。品質管理部長、第1製造部長などを経て、2022年12月より現職。 |
| 佐藤 一雄 | 取締役監査等委員 | 1972年同社入社。取締役営業本部長、常務取締役などを経て、2021年12月より現職。 |
社外取締役は、小野修一郎(税理士)、髙市智恵子(元土浦税務署署長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「エネルギー関連」「産業システム関連」および「その他」事業を展開しています。
■(1) エネルギー関連事業
このセグメントでは、研究機関向けの安全性確証試験装置等の試験研究設備や、原子力・火力発電所の温度制御関係装置に使用される製品を提供しています。特に、原子力関係の再稼働に向けた製品や、核融合に関する試験研究設備(溶融金属ループ等)が主力です。
収益は、電力会社や研究機関、プラントメーカー等への製品販売および付帯する設備工事から得ています。運営は主に助川電気工業が行っています。
■(2) 産業システム関連事業
このセグメントでは、半導体、フラットパネルディスプレイ(FPD)、自動車、鉄鋼等の製造装置における「熱と計測」に関する部分に使用される製品を提供しています。主な製品には、温度センサー(シース熱電対)や加熱装置(シーズヒーター)、アルミ給湯・鋳造用電磁ポンプなどがあります。
収益は、半導体製造装置メーカーや各種産業機械メーカー等への製品販売から得ています。運営は主に助川電気工業が行っています。
■(3) その他事業
報告セグメントに含まれない事業として、一般消費者向けの飲食店の経営を行っています。
収益は、飲食店舗におけるサービスの提供による対価として得ています。運営は助川電気工業が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高、利益ともにきれいな右肩上がりの成長トレンドを描いています。特に2024年9月期以降の利益率の向上が顕著で、2025年9月期には経常利益率が20%を超えました。売上高は37億円から55億円へと約1.5倍に拡大し、利益面でも大幅な増益基調が続いています。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 37.0億円 | 43.3億円 | 45.8億円 | 49.6億円 | 54.7億円 |
| 経常利益 | 2.9億円 | 4.7億円 | 6.0億円 | 9.2億円 | 11.8億円 |
| 利益率(%) | 7.8% | 10.8% | 13.0% | 18.5% | 21.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2.0億円 | 3.3億円 | 4.0億円 | 6.4億円 | 7.9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに順調に拡大しています。売上総利益率は35%前後で安定して推移しており、営業利益率も20%を超える高い水準を維持しています。増収効果に加え、生産効率の向上等が寄与していることが伺えます。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 50億円 | 55億円 |
| 売上総利益 | 18億円 | 20億円 |
| 売上総利益率(%) | 35.5% | 36.3% |
| 営業利益 | 9億円 | 12億円 |
| 営業利益率(%) | 18.5% | 21.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び報酬が3.4億円(構成比41.1%)を占めており、人件費が主な費用項目となっています。また、売上原価に関しては、材料費が20億円(当期総製造費用に対する構成比56.4%)と最も大きく、次いで労務費が10億円(同28.7%)となっています。
■(3) セグメント収益
エネルギー関連事業は、原子力・核融合関連の需要増により売上が大きく伸長し、利益も増加しました。産業システム関連事業は、半導体・FPD関連が調整局面にあるものの、環境関連向けの増加により売上は微増、利益も確保しています。全社的にエネルギー関連が業績を牽引する形となりました。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) | 利益(2024年9月期) | 利益(2025年9月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| エネルギー関連 | 22億円 | 28億円 | 7億円 | 8億円 | 30.1% |
| 産業システム関連 | 26億円 | 27億円 | 6億円 | 7億円 | 26.4% |
| その他 | 1億円 | 0億円 | -0億円 | -0億円 | -15.4% |
| 調整額 | - | - | -4億円 | -4億円 | - |
| 連結(合計) | 50億円 | 55億円 | 9億円 | 12億円 | 21.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「顧客には誠実」「取引先には信頼」「社員には調和」「株主には誠意」を旨とする経営理念を掲げています。この理念の実現のため、ものづくりの技術とサービスを通じて、産業の進歩発展と人々の安全で快適な暮らしの維持向上に貢献する企業として成長していくことを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は、経営理念の中で社員に対し「調和」を旨とし、協力の精神をもととして企業の繁栄に努め、物心両面より生活の向上を図ることを目標としています。また、市場や環境の変化を的確に捉えつつ、ものづくりに関して品質・環境管理体系を基本として行動し、組織の永続的な成長と社会の持続可能な発展を目指す文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、激しい時代の変化や経済変動の中においても適切な人員配置を行い、生産性を向上させることを目標としています。具体的な数値目標としてのKPI等は有価証券報告書内には記載されていませんが、社員の技量の明確化や教育訓練を通じた多能工化など、質的な向上に向けた取り組みを推進しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
エネルギー分野では、国の基本計画に基づき原子力発電の活用や次世代革新炉、核融合に関する研究開発に注力し、技術開発への投資を行います。産業システム分野では、半導体製造装置関連の受注確保に注力します。また、組織面では若手社員を中心とした多能工化を進め、部門間の仕事量の変化に柔軟に対応できる体制を構築し、生産性向上を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、経営理念の達成と社会の持続可能な発展のために「人材の育成」を基本として行動しています。各業務に必要な知識・力量を明確にし、教育訓練を実施することで社員の能力向上を図っています。特に、受注生産による繁閑の差に対応するため、若手社員を中心に他部門の技術を習得させる「多能工化」を推進し、適切な人員配置と生産性向上を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 44.0歳 | 21.3年 | 6,033,014円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は常時雇用する労働者の数が300人を超えないため、公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原子力産業分野への依存
同社の売上高の約45%は原子力産業分野が占めています。福島第一原子力発電所の事故以降、他の分野への展開を進めていますが、依然として依存度は高い状態です。そのため、今後原子力産業分野の需要がさらに減少した場合、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 半導体・FPD製造装置関連の需要変動
同社は産業システム関連分野、特に半導体やFPD製造装置向けの加熱装置や温度センサー等の販売に注力しており、この分野の売上高は全体の約25%を占めています。そのため、これらの最終製品の需要変動により、製造装置や関連設備の需要が大幅に下落した場合、業績に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 生産拠点の集中リスク
同社は生産効率や品質管理の観点から、売上高の約9割の生産を茨城県の高萩工場に集中させています。そのため、地震や火災などの災害、あるいは工場内での事故等により、同工場での生産能力に重大な支障が生じた場合、製品供給が滞り、業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。



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