IMV 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

IMV 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場し、振動シミュレーションシステムや計測システムの製造・販売、試験受託サービスを展開しています。第79期は、国内の自動車・防衛産業向けや海外の航空宇宙向け設備投資が堅調に推移し、売上高179億円、営業利益23億円といずれも過去最高を更新し、増収増益を達成しました。


※本記事は、IMV株式会社 の有価証券報告書(第79期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. IMVってどんな会社?


振動試験装置や計測装置の開発から製造、販売、試験受託までを手掛ける振動技術の専門企業です。

(1) 会社概要


同社は1957年に株式会社国際機械振動研究所(International Machine Vibration)として設立されました。1974年に会社更生法の適用を申請しましたが、現在の取締役会長である小嶋成夫氏が管財人に就任し再建を開始、1985年に更生手続を終結しました。2005年にジャスダック証券取引所へ上場を果たし、2011年にはタイ現地法人を設立するなどグローバル展開を加速させています。

2025年9月30日現在、従業員数は連結で373名、単体で212名です。筆頭株主は法人である有限会社SEIKOで、第2位は同社取締役会長の小嶋成夫氏、第3位は取引先持株会となっており、創業者一族および関係者が主要株主となっています。

氏名 持株比率
有限会社SEIKO 18.88%
小嶋成夫 7.99%
IMV取引先持株会 7.37%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.0%です。代表取締役社長兼CEOは小嶋淳平氏が務めています。社外取締役は3名で、全取締役9名のうち33.3%を占めています。

氏名 役職 主な経歴
小嶋淳平 代表取締役社長兼CEO 2006年同社入社。海外事業本部長を経て2015年代表取締役社長に就任。2024年1月より現職。
小嶋成夫 取締役会長 1958年シャープ入社。公認会計士事務所開設後、1976年同社社長就任。会長兼CEOを経て2023年4月より現職。
青木秀修 取締役最高技術責任者(CTO)兼技術推進統括本部長兼輸出管理室長 1988年同社入社。R&Dセンター長、DSS事業本部長等を歴任。2023年10月より現職。
小嶋健太郎 取締役 1999年チッソ入社。公認会計士事務所等を経て2005年税理士事務所所長。同年12月より現職。
柿原正治 取締役経営企画本部長 1997年同社入社。テストラボ事業部部長、海外事業本部長等を歴任。2024年10月より現職。
溝本秀樹 取締役営業本部長 1995年同社入社。営業本部営業マーケティング部長、営業本部長代行を経て2023年12月より現職。


社外取締役は、草野欽也(株式会社藏商会相談役)、酒井清(公認会計士酒井清事務所所長)、髙橋祥子(株式会社ジーンクエスト取締役ファウンダー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「振動に関する事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 振動シミュレーションシステム


振動試験装置および複合環境試験装置の製造・販売、修理・保守を行っています。これらは製品の耐久性や品質を確認するために使用されます。主要な顧客は自動車、航空宇宙、防衛、エレクトロニクス産業などです。

収益は、製品の販売代金および修理・保守サービス料から得ています。運営は同社に加え、連結子会社の株式会社振研、IMVプレシジョンワークス、海外現地法人(タイ、ベトナム、英国、米国)が行っています。

(2) テスト&ソリューションサービス


顧客からの要請に基づき、供試品に対する振動を含む環境試験を実施し、その結果に基づく分析・解析を行う受託試験サービスを提供しています。顧客は自社で試験設備を持たない企業や、高度な試験を必要とする企業が中心です。

収益は、顧客から受領する受託試験料および分析・解析料から構成されます。運営は国内では同社および株式会社振研が、ASEAN地域ではタイおよびベトナムの連結子会社が行っています。

(3) メジャリングシステム


振動計測装置、振動監視装置、地震監視装置などの製造・販売および修理・保守を行っています。これらは地震や工業機械の異常振動を感知し、防災や予知保全の分野で使用されます。

収益は、製品の販売代金および保守サービス料から得ています。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は右肩上がりに成長しており、特に最新期では過去最高を更新しています。利益面でも、経常利益および当期純利益ともに増加傾向にあり、高い利益率を維持しながら成長を続けています。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 116億円 119億円 137億円 153億円 179億円
経常利益 13億円 12億円 16億円 19億円 26億円
利益率(%) 11.3% 10.4% 11.5% 12.1% 14.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 10億円 11億円 14億円 19億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに伸長しています。営業利益率は前期よりも改善しており、収益性が向上していることが読み取れます。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 153億円 179億円
売上総利益 58億円 67億円
売上総利益率(%) 37.7% 37.6%
営業利益 18億円 23億円
営業利益率(%) 12.0% 12.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が10億円(構成比23.1%)、その他が11億円(同24.5%)を占めています。売上原価においては、材料費などが主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益



同社は「振動に関する単一セグメント」であるため、品目別の利益は開示されていません。

売上高は全ての事業品目で増加しています。特に主力の振動シミュレーションシステムは、国内外での設備投資需要を取り込み大きく伸長しました。テスト&ソリューションサービスも、EV関連等の試験需要増により増収となりました。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期)
振動シミュレーションシステム 109億円 130億円
テスト&ソリューションサービス 31億円 37億円
メジャリングシステム 13億円 12億円
連結(合計) 153億円 179億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ資金で借入金の返済を行いつつ、将来のための投資も自己資金の範囲内で実施している健全型のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 20億円 38億円
投資CF -10億円 -12億円
財務CF -4億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.0%で市場平均(スタンダード市場製造業平均57.5%)をやや下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同グループは「SECURE THE FUTURE」をスローガンに掲げ、社会の安全・快適・エコロジーに貢献することを責務としています。振動試験装置や計測装置の開発・提供を通じて、製品の品質向上や防災に寄与し、持続可能な未来を守ることを目指しています。

(2) 企業文化


世界トップレベルの「開発力」「提案力」「総合力」を強みとし、これらを基盤に経営を進める文化があります。また、コンプライアンスの遵守を経営の基盤としつつ、高収益体質への変革を目指して各種施策を着実に実行する姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、経営上の目標達成状況を判断する指標として、投下資本利益率(ROIC)を重視しており、8%以上の維持を数値目標としています。また、中期的な連結業績予想として、以下の目標を掲げています。

* 投下資本利益率(ROIC):8%以上
* 2026年9月期 売上高:200億円
* 2026年9月期 営業利益:24億円

(4) 成長戦略と重点施策


今後の持続的成長のため、グローバル展開と新規事業への進出を重視しています。生産体制の強化やコスト削減、研究開発への投資も継続し、高品質な製品・サービスの提供を目指します。

* 生産体制:子会社や外部パートナーとの連携による品質・生産効率向上。
* 人材育成:チャレンジ精神と自己実現を追求できる組織文化の醸成。
* 新規事業:有力企業との提携やデジタル技術への投資を通じた新分野開拓。
* 海外展開:欧米での航空宇宙向け需要の取り込みや、現地法人との連携強化。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最も重要な資本と位置づけ、チャレンジ精神と自己実現を追求できる組織文化の醸成を目指しています。適正な評価に基づく報酬制度やインセンティブ制度の構築、研修およびスキル強化プログラムの充実を通じて、プロフェッショナルが挑戦し続ける企業風土を作っていく方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 43.3歳 12.4年 8,038,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 54.5%
男女賃金差異(正規) 70.5%
男女賃金差異(非正規) 64.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 生産における外注先の活用等


製品製造において、主要部品や工程以外は積極的に外注を活用する方針をとっています。外注先を複数確保する等の対策を行っていますが、外注先からの調達に支障が生じた場合、納期管理や品質管理等に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 季節変動


振動シミュレーションシステムの売上高は、顧客の予算執行の関係で3月および9月に集中する傾向があります。また、大型案件の計上タイミングによっては月ごとの業績変動要因となるほか、検収遅延等による期ずれが発生する可能性があります。

(3) 内需の減少


国内売上比率が約55%と高いため、自動車産業等の国内需要回復が遅れた場合、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、海外売上の拡大や次世代エネルギー等の新たな需要への対応を進めています。

(4) 為替の変動リスク


海外売上比率の増加に伴い外貨建取引が増加しており、想定為替レートと実勢レートの乖離が業績に影響を与える可能性があります。また、海外子会社の財務諸表を円換算する際の為替変動も、連結財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。