※本記事は、株式会社ニックス の有価証券報告書(第95期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ニックスってどんな会社?
工業用プラスチック製品の専業メーカーです。プラスチック製の留め具や治具などを幅広い産業に供給しています。
■(1) 会社概要
同社は1949年に不二機械製作として創業し、1953年に日幸工業へ商号変更しました。1966年に初の自社ブランド製品を販売開始し、2001年に現在のニックスへ社名を変更しています。2007年にジャスダック証券取引所へ上場し、2012年にはタイに現地法人を設立するなど海外展開を推進しました。
2025年9月30日時点の従業員数は連結で154名、単体で142名です。筆頭株主は代表取締役社長の資産管理会社で、第2位は従業員持株会、第3位は個人株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| SKコーポレーション | 9.04% |
| NIX従業員持株会 | 7.33% |
| 中島幹夫 | 6.01% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は青木一英氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 青木 一英 | 代表取締役社長 | 1998年大正製薬入社。2002年同社入社。取締役副社長等を経て2013年より現職。 |
| 射水 郁郎 | 取締役生産本部長 | 1985年同社入社。グローバル営業本部長、グローバルサプライ本部長等を経て2025年より現職。 |
| 青木 達也 | 取締役管理本部長 | 2002年府中市役所入庁。2023年同社入社。グローバル管理本部長を経て2025年より現職。 |
社外取締役は、玉井敏博(元マックスガイホールディングス最高財務責任者CFO)、藤田隆久(エキスパート・リンク代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「工業用プラスチック部品事業」の単一セグメントですが、製品区分として「工業用プラスチック・ファスナー及びプラスチック精密部品」「生産設備治具」「その他」を展開しています。
■工業用プラスチック・ファスナー及びプラスチック精密部品
自動車、電気、電子、OA、通信、住宅設備分野向けに、部品を留める「プラスチック・ファスナー」や、自社開発素材を用いた精密機能部品を提供しています。主要な顧客はこれらの製品を使用するメーカー等です。
収益は、製品の販売代金として顧客から受け取ります。運営は主にニックスや、海外連結子会社のNIX OF AMERICA、香港日幸有限公司などが行っています。
■生産設備治具(ラック)
電子部品の自動実装機用治具として、プリント基板の移送保管に使用される「ラック」を提供しています。組立生産工場を持つ企業が主な顧客となります。
収益は、製品の販売代金として顧客から受け取ります。運営は主にニックスが行っています。
■その他(金型)
プラスチック製品を成形するための「金型」の製造・販売を行っています。プラスチック製品の量産を行う顧客等に提供されます。
収益は、金型の販売代金として顧客から受け取ります。運営は主にニックスが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年9月期から2025年9月期までの業績を見ると、売上高は40億円台で推移しており、安定した水準を維持しています。利益面では、経常利益率は4%台から6%台の間で変動していますが、毎期黒字を確保しています。直近の2025年9月期は前期比で増益となり、利益率は改善傾向にあります。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 41億円 | 45億円 | 45億円 | 44億円 | 44億円 |
| 経常利益 | 2.3億円 | 2.6億円 | 3.0億円 | 2.1億円 | 2.5億円 |
| 利益率(%) | 5.6% | 5.8% | 6.6% | 4.7% | 5.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2.0億円 | 2.1億円 | 1.6億円 | 1.8億円 | 1.9億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、売上高は横ばいですが、売上原価の増加により売上総利益は若干減少しました。一方で、販売費及び一般管理費を抑制したものの、営業利益は微減となりました。営業外収益の増加等により、経常利益は増加しています。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 44億円 | 44億円 |
| 売上総利益 | 19億円 | 19億円 |
| 売上総利益率(%) | 44.4% | 43.0% |
| 営業利益 | 2.2億円 | 2.1億円 |
| 営業利益率(%) | 4.9% | 4.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が5.5億円(構成比33%)、研究開発費が1.8億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、製品区分別の売上高を見ると、主力のプラスチック・ファスナー等は円安等の影響もあり増収となりました。一方、生産設備治具は顧客の設備投資意欲の減退により減収となっています。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) |
|---|---|---|
| 工業用プラスチック・ファスナー及びプラスチック精密部品 | 30億円 | 32億円 |
| 生産設備治具 | 12億円 | 11億円 |
| その他(金型) | 1.1億円 | 1.2億円 |
| 連結(合計) | 44億円 | 44億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
ニックスグループは、事業運営に必要な資金の流動性と源泉を安定的に確保することを基本方針としており、運転資金は自己資金と金融機関からの長期借入金を基本としています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、事業活動から生み出される資金の状況を示しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や有形固定資産の取得・売却など、将来の事業成長に向けた投資活動の状況を表します。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や調達、配当金の支払いなど、資金調達や返済に関する活動の状況を示しています。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.7億円 | 2.9億円 |
| 投資CF | -0.9億円 | -3.4億円 |
| 財務CF | -0.3億円 | -1.1億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「Nothing to Something」を合言葉に、「常に変化し、新しいものに挑戦し、新しい製品、技術、サービスを顧客に提供し続けていく」ことを理念としています。また、仕事を通じた人格形成や、正当な活動で得た対価の従業員への分配を重視し、ステークホルダーに対して安全で快適な生活・作業空間を提供することで社会的責任を果たすことを目指しています。
■(2) 企業文化
同グループは「存在善」「三方善」の経営理念のもと、関係する全ての人々の利益と社会貢献を念頭に置いています。企業ミッションとして「企業活動を通じて世界のサステナビリティ及び脱炭素社会に貢献する」ことを掲げ、顧客や地域社会と共に持続可能な社会の実現を目指す姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2027年9月期を達成年度とする中期経営計画を策定しています。収益向上を中心とした収支バランスの改善を基本戦略とし、以下の数値目標を掲げています。
* 売上高営業利益率:10%
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画の達成に向け、グローバル市場での顧客課題解決とソリューション提案、新事業の確立による収益向上を目指しています。また、原価低減に加え、IT化や自動化による社員の生産性向上により支出を抑制する方針です。
* 新製品開発と新分野への挑戦:高付加価値製品の生産能力強化、素材開発力と設計力の連携による新製品開発。
* 利益率の改善:製造工程の合理化、生産性改善、グローバル調達や適地生産による原価低減。
* 海外拠点との連携強化:米国での市場開拓、中国・タイ拠点との連携による生産バランス最適化と拡販。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、グローバルでの事業推進に必要な多様な人材を確保するとともに、高度なマネジメント力とリーダーシップを備えた人材の育成を重視しています。若手幹部候補への研修やプロジェクトへの公募参加を促すなど、次世代の育成に注力しています。また、多様な視点を取り入れるため、女性社員の採用・育成や活躍できる環境づくりにも努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 46.3歳 | 17.8年 | 4,805,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.3% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 60.2% |
| 男女賃金差異(正規) | 64.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | 90.8% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 在外子会社の経営成績変動リスク
同社グループは米国、香港、中国、タイなどに拠点を持ち、積極的な海外展開を行っています。海外市場では、予期せぬ法規制の変更、政治的・経済的な不安定要因、為替変動、社会的混乱などが事業に影響を与える可能性があります。これらが発生した場合、経営成績や財務状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 競合との競争激化リスク
主要事業である精密プラスチック部品市場には競合他社が存在しています。同社は事務機器用プラスチックファスナー分野で一定のシェアを有していると考えていますが、将来にわたりシェアを維持できる保証はありません。競合が激化し、市場占有率が低下した場合には、経営成績に影響を与える可能性があります。
■(3) 原材料価格の高騰リスク
同社の製品製造にはプラスチック原料などの素材が必要です。原油価格の変動や供給不足などにより原材料価格が高騰した場合、製造コストの上昇を招く可能性があります。製品価格への転嫁が困難な場合や、コスト削減が追いつかない場合には、利益率が低下するリスクがあります。



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