ライオン事務器 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ライオン事務器 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する文具・事務用品、オフィス家具、ICT機器の大手専門商社兼メーカーです。販売店や法人、官公庁・学校向けに「オフィスまるごと提案」を推進しています。直近の業績は、GIGAスクール構想等の需要を取り込み、売上高370億円(前期比6.1%増)、経常利益13億円(同9.2%増)と増収増益でした。


※本記事は、ライオン事務器 の有価証券報告書(第125期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ライオン事務器ってどんな会社?


1792年の創業以来、文具・事務用品からオフィス家具、ICT機器へと事業領域を広げてきた老舗企業です。

(1) 会社概要


1792年に筆墨商として創業し、1921年に株式会社福井商店を設立しました。1937年に文具製造を開始し、1980年に現社名であるライオン事務器へ商号変更を行っています。2008年には大塚商会と資本業務提携を締結しました。その後、2025年10月に東京証券取引所スタンダード市場へ上場を果たしています。

同社グループは連結従業員487名、単体従業員376名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は、独立系システムインテグレーターであり資本業務提携先でもある大塚商会(持株比率40.18%)です。第2位以降は創業家出身の個人株主が名を連ねています。

氏名 持株比率
大塚商会 40.18%
福井資 4.60%
福井靖 3.99%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性0名、計13名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は髙橋俊泰氏が務めています。社外取締役比率は15.4%です。

氏名 役職 主な経歴
髙橋俊泰 代表取締役社長 大塚商会入社後、同社取締役兼専務執行役員などを歴任。2016年6月より現職。
清野宏 代表取締役副社長 みずほ銀行入行後、同社に出向。常務取締役、代表取締役専務などを経て、2016年6月より現職。
鎌田龍雄 取締役専務執行役員 同社入社後、営業本部長、専務執行役員などを歴任。2025年1月より現職。
茶谷英二 取締役上席常務執行役員経営管理本部長経営企画部長 みずほ銀行、青山財産ネットワークスを経て同社入社。2024年1月より現職。
島徹 取締役常務執行役員商品本部長 同社入社後、営業本部長、マーケティング本部長などを歴任。2023年10月より現職。
大庭忠良 取締役常務執行役員営業本部長ソリューション事業部長 リコー入社後、リコージャパンMA事業本部全国民間事業統括などを歴任。2025年1月より現職。
森貴文 取締役上席執行役員財務部長 監査法人トーマツを経て同社入社。財務部長を務め、2025年12月より現職。


社外取締役は、水沼久雄(元プロネクサス常務執行役員)、首藤正治(大正大学教授・元延岡市長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「販売店事業」「エンタープライズ事業」「文教事業」および「EC事業」を展開しています。

(1) 販売店事業


全国の文具・事務用品販売店を主要顧客とし、文具、オフィス家具、事務機器等を販売しています。近年は文具に加え、オフィス家具や事務機器の取り扱いを拡大し、販売店を通じてエンドユーザーへ「オフィスまるごと提案」を行っています。

収益は、販売店への商品卸売による対価を中心としています。運営は主にライオン事務器が担当し、商品の製造は子会社のサンライテック、配送はライオンロジスティクス等が担っています。

(2) エンタープライズ事業


大手パートナー企業との協業や法人ユーザーとの直接取引により、文具・事務用品、オフィス家具等を販売しています。また、海外市場への輸出や介護・福祉市場、他社通販サービスへの販売も行っています。

収益は、パートナー企業や法人顧客からの商品販売代金となります。運営は主にライオン事務器が担当し、海外販売については米国子会社や中国子会社等が担っています。

(3) 文教事業


自治体や教育委員会を通じて、公立小中学校へICT機器(パソコン、タブレット等)や保守業務を入札等により販売しています。GIGAスクール構想による端末需要や、その後の保守・更新需要に対応しています。

収益は、自治体や教育委員会、リース会社等からの機器代金および保守サービス料となります。運営は主にライオン事務器のIT事業部が担当しています。

(4) EC事業


ECプラットフォーム「ナビリオン(NAVILION)」を通じて、文具・事務用品、オフィス家具、消耗品等を販売しています。大塚商会の「たのめーる」の仕組みを基盤とし、豊富な品揃えを提供しています。

収益は、法人顧客からの商品購入代金となります。ストックビジネスとして位置づけられており、運営は主にライオン事務器が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は2023年9月期を底に回復傾向にあり、直近では370億円規模まで伸長しています。経常利益も10億円台前半で安定的に推移しており、利益率も3%台を維持しています。当期純利益も着実に積み上がっており、堅実な業績推移を示しています。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 479億円 339億円 330億円 349億円 370億円
経常利益 16億円 10億円 11億円 12億円 13億円
利益率(%) 3.4% 3.1% 3.4% 3.3% 3.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 7億円 7億円 7億円 9億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も増加しています。売上総利益率は24%台で安定しています。営業利益および営業利益率も微増しており、コストコントロールを行いながら収益性を維持していることが分かります。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 349億円 370億円
売上総利益 87億円 91億円
売上総利益率(%) 24.8% 24.5%
営業利益 11億円 12億円
営業利益率(%) 3.1% 3.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が25億円(構成比32%)、物流費が17億円(同22%)を占めています。

(3) セグメント収益

ライオン事務器は、事務器等の製造販売並びにこれらの付随業務を行う「単一セグメント」です。各事業の利益は開示されていませんが、ターゲットチャネルや組織体制に基づいて「販売店事業」「エンタープライズ事業」「文教事業」の3つの事業ユニット別に売上高の内訳が開示されています。

直近の2025年9月期の売上高を見ると、販売店事業は「オフィスまるごと提案」の推進により増収となりました。文教事業はGIGAスクール端末の更新需要等により大幅な増収となっています。一方、エンタープライズ事業は一部得意先の売上減少等により減収となりました。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期)
販売店事業 148億円 157億円
エンタープライズ事業 113億円 109億円
文教事業 88億円 104億円
連結(合計) 349億円 370億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


直近の2025年9月期のキャッシュ・フローは、本業で稼いだ資金を投資や還元に回す健全な循環を示しています。営業CFは約64億円のプラスとなり、安定した現金創出力を維持しています。

これを原資として設備投資などの投資CF(△40億円)や配当金支払等の財務CF(△30億円)に充当しており、期末の手元資金は約300億円と潤沢な水準を維持しています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 18億円 -0.1億円
投資CF -1億円 -2億円
財務CF -2億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.8%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「わが社は、常に新しい事務機器・事務システムを提供し、事務の合理化と能率向上に資し、企業の繁栄と社会の福祉に貢献できることを念願とする。」という社是を掲げています。この精神に基づき、「メーカー機能」と「商社機能」を連携させた「オフィスまるごと提案」に取り組んでいます。

(2) 企業文化


社会環境の変化を敏感に捉え、ビジネスモデルの変革を常に意識する姿勢を持っています。また、顧客との信頼関係の維持と新たなパートナーシップの創出に努め、安定的に成長する経営を目指しています。社是の精神に則り、グループ連携を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、ステークホルダーとともに成長し続けることにより企業価値の向上を目指しています。経営成績としては、売上高、営業利益の拡大を一つの指針と考えていますが、具体的な比率目標等の客観的指標は設けていません。

(4) 成長戦略と重点施策


「オフィスまるごと提案」を軸に、個室ブースや環境配慮型商品、LED照明などの提案を強化しています。また、大手パートナー企業との協業拡大や新規法人顧客の開拓、ECプラットフォーム「ナビリオン」によるストックビジネスの強化、DXによる生産性向上を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「オフィスまるごと提案」等を推進できるコンサルティング能力に長けた人材の確保・育成を目指しています。また、全社員が幸せを実感できる「働きがいのある職場環境」の整備やウェルビーイングの向上、女性管理職比率の向上などダイバーシティ推進にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 41.8歳 14.5年 5,795,115円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.1%
男性育児休業取得率 40.0%
男女賃金差異(全労働者) 65.1%
男女賃金差異(正規) 62.9%
男女賃金差異(非正規) 56.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用 女性比率(72.7%)、女性育児休業取得率(120.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境に関するリスク


売上の90%超が国内市場向けであるため、国内企業の設備投資や公共投資の動向に業績が左右されます。また、ペーパーレス化の進展による既存紙製品の需要減少や、異業種参入による価格競争の激化が業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 仕入価格の変動に関するリスク


製品や商品の原材料である紙、樹脂、鋼板等の価格高騰や原油価格の高騰、為替変動が仕入価格に影響を与える可能性があります。これらによりコストが増加した場合、業績および財務状況に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 製品・サービスの品質リスク


提供する製品やサービスにおいて不測の事象やクレーム、リコールが発生する可能性があります。製造物責任賠償保険等に加入していますが、全ての損害を賄える保証はなく、大規模な品質問題が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 大塚商会との関係に関するリスク


大塚商会は同社の筆頭株主であり、売上・仕入の両面で重要な取引先です。また、EC基盤も同社のシステムを利用しています。両社の関係性に変化が生じた場合や、大塚商会が同社株式を売却した場合、事業運営や取引関係に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。