アイナボホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アイナボホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場し、タイルや住宅設備機器の販売・工事を行う戸建住宅事業と大型物件事業を展開しています。2025年9月期は、主力事業である戸建住宅事業におけるサイディング工事やサッシ工事等が好調に推移したことなどから、増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社アイナボホールディングス の有価証券報告書(第71期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アイナボホールディングスってどんな会社?


タイルや住宅設備機器の販売・工事を主力とし、戸建住宅から大型ビルまで幅広く手掛ける持株会社です。

(1) 会社概要


1955年に阿部窯業として設立され、タイルやれんがの工事請負から事業を開始しました。1992年にアベルコへ商号変更し、1997年に日本証券業協会(現スタンダード市場)に株式を店頭登録しました。2013年には持株会社体制へ移行し、現在の商号に変更しました。近年はM&Aを積極的に行い、事業基盤の拡大を進めています。

同グループは連結従業員1,107名、単体27名で運営されています。筆頭株主は株式会社アベタで、第2位はホールセール株式会社、第3位はマルティス株式会社です。上位株主には創業家に関連するとみられる法人や個人が含まれており、安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
アベタ 7.40%
ホールセール 7.40%
マルティス 5.04%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は阿部一成氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
阿部 一成 代表取締役社長 1977年丸与産業入社。1979年同社入社。1991年より社長を務め、グループの中核企業であるアベルコの会長も兼任。長年にわたり経営を牽引している。
須藤 豊 専務取締役CFO 1988年三和商事(現同社)入社。管理本部経理部長、経営企画室長、アベルコ常務執行役員等を経て、2022年より現職。ベトナム子会社の会長も務める。
鋤柄 禎彰 常務取締役 1986年鋤柄建材(現インテルグロー)入社。1997年同社社長に就任し、2013年より同社常務取締役を兼任。
奥山 学志 常務取締役 1990年三和商事(現同社)入社。執行役員管理統括部長、アベルコ常務取締役等を経て、2022年より現職。アイナボ物流社長も兼任。


社外取締役は、藤沼哲朗(元株式会社キララ代表取締役副社長)、大塚昌子(大塚経営労務管理事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「戸建住宅事業」および「大型物件事業」を展開しています。

戸建住宅事業


戸建住宅市場において、各種タイルや関連商品、キッチン・給湯器などの住宅設備機器の販売および工事を行っています。主な顧客は工務店やハウスメーカー等であり、意匠性の高いタイルや省エネ機器の提供を通じて住環境の向上に貢献しています。

収益は、顧客への商品販売代金や工事請負代金から得ています。運営は主に、株式会社アベルコ、株式会社インテルグロー、株式会社今村、株式会社アルティス、株式会社マニックス、株式会社Maristoが行っており、各社が連携して地域ごとの需要に対応しています。

大型物件事業


ビルやマンションなどの大型物件市場向けに、タイル工事、住宅設備工事、石材工事、空調・衛生設備工事等を提供しています。ゼネコンなどを主な顧客とし、大規模な建築プロジェクトにおける専門工事を請け負っています。

収益は、建設会社等からの工事請負代金が主となります。運営は、株式会社アベルコ、温調技研株式会社、株式会社インテルグロー、株式会社今村、株式会社マニックス、株式会社ミックなどが担当しており、高い施工技術と管理能力を活かして事業を展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は661億円から923億円へと右肩上がりで成長しています。経常利益も21億円から28億円へと増加傾向にあり、利益率は2%台後半から3%台で推移しています。特に直近の2025年9月期は増収増益となり、当期純利益も過去最高水準に達するなど、堅調な業績拡大が続いています。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 661億円 791億円 861億円 898億円 923億円
経常利益 21億円 22億円 21億円 25億円 28億円
利益率(%) 3.2% 2.7% 2.4% 2.8% 3.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 16億円 13億円 13億円 17億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益率も改善しています。これは工程管理や原価管理の徹底が奏功したことによります。営業利益率も上昇しており、収益性が向上していることが読み取れます。販管費も増加していますが、増収効果が上回り、利益の拡大に繋がっています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 898億円 923億円
売上総利益 129億円 136億円
売上総利益率(%) 14.4% 14.8%
営業利益 22億円 25億円
営業利益率(%) 2.4% 2.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が40億円(構成比36%)、賞与が12億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


戸建住宅事業は、流通向けタイルの需要増やリフォーム関連の工事増加により増収増益となりました。一方、大型物件事業は売上高が減少しましたが、石材工事や空調工事などの好採算物件が増加したことで利益は増加しました。全体として、両セグメントともに利益面での貢献度が高まっています。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期) 利益(2024年9月期) 利益(2025年9月期) 利益率
大型物件事業 151億円 143億円 10億円 11億円 8.0%
戸建住宅事業 747億円 780億円 28億円 31億円 4.0%
調整額 -0億円 -0億円 -17億円 -17億円 -
連結(合計) 898億円 923億円 22億円 25億円 2.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は「健全型」です。本業で稼いだキャッシュ(営業CF)の範囲内で投資活動や借入金の返済・配当支払い(財務CF)を行っており、財務基盤は安定的です。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 28億円 31億円
投資CF -6億円 -18億円
財務CF -6億円 -5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.6%で市場平均(7.2%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.4%で市場平均(48.5%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「私たちは、快適で人にやさしい空間づくりを創造する企業として、人財の育成を通じ、社会環境の健全化に貢献します。」というグループ企業理念を掲げています。優れた製品と工事技術を提供し、全ての人々から愛される企業、社会から信頼される企業を目指しています。

(2) 企業文化


「VIC'S」の愛称で「バリュー・イノベーション・カンパニー=価値創造企業」を目指すことを展開しています。事業会社の独自性を尊重しつつ、企業マインドの融合を図り、社会に安心感を与えられる企業グループを目指す方針をとっています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画において、2026年9月期の数値目標を設定しています。また、自己資本利益率(ROE)については、売上高営業利益率2.6%前後を安定的に維持し、将来の市場変化に対応すべく8%を達成することのできる経営基盤づくりを目指しています。

* 売上高:985億円
* 営業利益率:2.1%

(4) 成長戦略と重点施策


新規顧客開拓、商材拡充、施工力増強を基本戦略としつつ、成長スピード加速のためM&Aを積極的に実施し、エリアや商材の補完を図っています。また、市場環境の変化に備え、グループ内の調達・外注先の共有化や工事管理体制の統一化、物流機能の効率化、AIを活用したシステム開発などのDX推進により、グループシナジーの早期実現を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


グループ内における人事制度や研修制度の統一化を推進し、グループ間での交流や異動を促進しています。また、多様性の確保に向けて中途採用比率を高めるとともに、外国人の採用も積極的に進めています。定年後の継続再雇用制度の導入や、在宅勤務・時短勤務などの環境整備にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 35.5歳 10.2年 7,073,059円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 53.0%
男女賃金差異(正規) 41.5%
男女賃金差異(非正規) 71.3%


※男性労働者の育児休業取得率は対象者がいなかったため記載していません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国人労働者の比率(6%)、60歳以上の従業員の比率(9%)、有給休暇取得率(72%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場の動向


同社グループは建設業界に属しており、景気変動や政府の経済政策の影響を受けやすい特徴があります。住宅ローン減税制度の変更や金利上昇等により新設住宅着工戸数が大幅に減少した場合、グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 販売先の信用リスク


主要な販売先は工務店、ゼネコン、ハウスメーカー等であり、売上債権の回収管理を含む与信管理を重要課題としています。業界動向を注視し管理を徹底していますが、多額の不良債権が発生した場合には、経営成績及び財政状態に大きな影響を与える可能性があります。

(3) 特定の仕入先への依存


2025年9月期において、連結ベースの商品及び材料仕入額の38.4%が株式会社LIXILからの仕入となっています。何らかの要因により同社との取引が困難となった場合、グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 不採算工事の発生リスク


工事事業では、契約ごとに原価を見積もっていますが、工事途中の設計変更や原材料価格の高騰などにより、予期せぬ追加原価が発生するリスクがあります。これにより不採算工事が発生した場合、グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。