ホウライ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ホウライ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ホウライは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、保険代理店、不動産賃貸、千本松牧場、ゴルフ場運営の4事業を展開する企業です。直近の業績は、観光需要の回復や不動産事業の安定収益により、営業収益61.1億円(前期比増)、経常利益7.3億円(前期比増)と増収増益で推移しています。


※本記事は、ホウライ株式会社 の有価証券報告書(第142期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ホウライってどんな会社?


保険代理店、不動産賃貸、千本松牧場(乳業・観光)、ゴルフ場運営の4事業を展開する複合企業です。

(1) 会社概要


1928年に旧十五銀行所有の不動産を買収し、農牧場等を営む蓬莱殖産として設立されました。1949年に損害保険代理店業務を開始し、1964年には観光事業へ進出しました。1991年に日本証券業協会へ店頭登録を行い、2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東証スタンダード市場に上場しています。

同社(単体)の従業員数は155名です。筆頭株主はビルメンテナンス等の管理を行う事業会社で、第2位は外国銀行、第3位は倉庫会社です。

氏名 持株比率
室町ビルサービス 12.75%
THE HONGKONG AND SHANGHAI BANKING CORPORATION LIMITED - HONG KONG PRIVATE BANKING DIVISION CLIENT A/C 8028-394841 7.26%
帝国倉庫 7.17%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長兼社長執行役員CEOは小野 直樹氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
小野 直樹 代表取締役社長兼社長執行役員CEO 三井銀行(現三井住友銀行)出身。三井住友カード社長を経て2024年同社入社。2025年10月より現職。
寺本 敏之 代表取締役会長兼会長執行役員 三井銀行(現三井住友銀行)出身。三井住友FG取締役を経て2019年同社入社。社長を経て2025年12月より現職。
萩尾 哲也 取締役兼専務執行役員CFO兼CIO総合企画部長兼財務企画部担当兼IT統括部担当兼広報部担当兼不動産事業本部担当 三井銀行(現三井住友銀行)出身。2012年同社入社。総合企画部長等を歴任し2024年10月より現職。
森川 禎一 取締役兼専務執行役員千本松事務所長兼千本松牧場本部長兼ゴルフ事業本部担当 三井銀行(現三井住友銀行)出身。2021年同社入社。人事部長等を経て2025年10月より現職。
大嶋 雅樹 取締役兼常務執行役員CRO人事部長兼総務部担当 三井銀行(現三井住友銀行)出身。2017年同社入社。総務部長等を経て2024年10月より現職。


社外取締役は、柴田 征範(虎門中央法律事務所パートナー)、武藤 隆明(元三越伊勢丹HD取締役)、飴善 晶子(昭和女子大学教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「保険事業」「不動産事業」「千本松牧場」「ゴルフ事業」を展開しています。

保険事業


損害保険および生命保険の代理店業務を行っています。自動車保険、火災保険等の損害保険代理店業務に加え、終身・定期・がん保険を主とする生命保険の募集業務を手掛けています。

主な収益源は、保険契約の締結・維持に伴い保険会社から受け取る代理店手数料です。運営は主にホウライが行っています。

不動産事業


同社所有ビルを中心とした不動産賃貸業および不動産の売買・仲介を行っています。また、栃木県那須塩原市の千本松地区において、太陽光発電事業者に対し土地の賃貸も行っています。

収益源は、テナントや入居者からの賃料収入および不動産売買・仲介手数料です。運営は主にホウライが行っています。

千本松牧場


栃木県那須塩原市に保有する千本松牧場において、原乳の生産から乳製品の製造・販売まで一貫して行うほか、観光牧場としてレストラン、アミューズメント施設等の産業観光施設の運営を行っています。

収益源は、乳製品や農産物の販売代金、レストランやアミューズメント施設の利用料などです。運営は主にホウライが行っています。

ゴルフ事業


栃木県那須塩原市において、「ホウライカントリー倶楽部」および「西那須野カントリー倶楽部」の2つのゴルフ場運営を行っています。

収益源は、ゴルフ場のプレーフィ、会員権収入、レストラン利用料などです。運営は主にホウライが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は48億円から61億円へと着実に増加傾向にあります。経常利益は3億円台から7億円台へと拡大し、利益率も改善傾向を示しています。特に直近では観光需要の回復などが寄与し、増収基調を維持しています。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上収益(または売上高) 48億円 49億円 52億円 55億円 61億円
経常利益 3.6億円 6.8億円 7.4億円 7.2億円 7.3億円
利益率(%) 7.4% 13.8% 14.4% 13.2% 12.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.1億円 4.7億円 5.1億円 3.1億円 5.0億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較します。売上高は55億円から61億円へ増加し、売上総利益も拡大しています。営業利益率は10%台を維持しており、安定した収益性を確保しています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 55億円 61億円
売上総利益 13億円 14億円
売上総利益率(%) 23.6% 23.5%
営業利益 5.7億円 6.2億円
営業利益率(%) 10.4% 10.1%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料・賞与が1.9億円(構成比23%)、役員報酬が1.3億円(同16%)を占めています。売上原価においては、千本松牧場やゴルフ事業における経費や労務費が主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


各セグメントの状況を見ると、千本松牧場事業がリニューアル効果等により大幅な増収増益となり、全体を牽引しています。不動産事業は安定的な収益を維持しています。保険事業は減益となったものの黒字を確保しており、ゴルフ事業は赤字幅が縮小しています。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期) 利益(2024年9月期) 利益(2025年9月期) 利益率
保険事業 12億円 12億円 4.8億円 4.6億円 39.0%
不動産事業 13億円 13億円 7.6億円 7.6億円 58.8%
千本松牧場 22億円 28億円 1.3億円 2.6億円 9.1%
ゴルフ事業 7.7億円 8.5億円 -0.8億円 -0.3億円 -4.1%
連結(合計) 55億円 61億円 5.7億円 6.2億円 10.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 7.3億円 9.4億円
投資CF -10.8億円 -11.0億円
財務CF 1.7億円 -3.5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.1%で市場平均をやや上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「ひとを大切に。自然を大切に。」をコーポレート・ステートメントとして掲げ、「お客様・消費者」「地域・社会」「株主・投資家」「社員・お取引先」の4つの領域でのコミュニケーションを重視し、永続的な健全経営を目指しています。誠実と熱意をもって商品やサービスを提供し、良き企業市民として共存共栄の実現を図ることを基本方針としています。

(2) 企業文化


明治の元勲・松方正義公が「自然との共生」の理念に基づいて開いた「千本松農場」を起源とし、その理念が現在の経営にも受け継がれています。広大な森林資源を有する千本松地区での事業を中心に、経済活動と自然環境への配慮を融合させた「環境適応型企業」としての姿勢を重視し、伝統である文化支援や社会貢献にも積極的に取り組む風土があります。

(3) 経営計画・目標


2023年10月に策定した「中期経営計画2026」に基づき、「成長モデルへの転換のための基盤整備」を進めています。2028年の設立100周年に向けた第三フェーズを見据え、以下の数値目標を掲げています。

* 2026年9月期 営業収益:62億円
* 2026年9月期 営業利益:6.3億円
* 2026年9月期 経常利益:7.3億円
* 2026年9月期 当期純利益:5.0億円

(4) 成長戦略と重点施策


「中期経営計画2026」に基づき、ブランド価値向上による成長モデルへの転換を目指しています。具体的には、千本松牧場の施設リニューアルや新商品開発、DX推進による業務効率化と顧客満足度の向上、人的資本への戦略的投資を重点施策としています。また、自然資本を活用したSDGsへの貢献や、他社との協業によるビジネスモデル変革にも取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


年功や性別にとらわれない実力・成果主義の浸透を進めるとともに、ベース処遇の引き上げや福利厚生の拡充により、働きがいと働きやすさを追求しています。また、スキル別・階層別研修の拡大や社内資格制度の整備など人材育成制度を拡充し、女性活躍や多様な人材の採用・登用を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 47.4歳 11.5年 5,841,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.9%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 61.1%
男女賃金差異(正規) 68.0%
男女賃金差異(非正規) 55.9%


※男性育児休業取得率について、当事業年度は男性労働者の育児休業取得の対象者はいませんでした。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用した労働者に占める女性労働者の割合(正社員)(28.6%)、採用した労働者に占める女性労働者の割合(準社員)(60.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 地震・風水害等大規模災害

各事業所において、地震や台風などの自然災害、火災等の事故が発生した場合、長期間の事業停止などにより業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。同社は緊急事態対応マニュアルの整備や訓練の実施により、早期復旧体制の構築に努めています。

(2) サイバーリスク

事業全般で活用している情報システムにおいて、停電、災害、機器故障、ウイルス感染、不正アクセス等により、システム停止や情報漏えいが発生した場合、社会的信用の失墜や事業活動の停止を招く可能性があります。データのバックアップやセキュリティ対策、従業員教育を強化しています。

(3) 気候変動リスク

千本松牧場やゴルフ事業など自然環境を基盤とするビジネスにおいて、気候変動による平均気温の上昇や異常気象の頻発は、事業活動や美しい自然環境という財産に影響を与えるリスクがあります。顧客への快適な環境提供や従業員の熱中症対策など、事業継続性の向上に取り組んでいます。

(4) 食中毒リスク

千本松牧場事業の飲食・販売部門において、食中毒や異物混入等の品質問題が発生した場合、営業停止や風評被害により業績に悪影響を与えるリスクがあります。HACCPの手法を取り入れた衛生管理や、食品衛生法に基づく管理体制の徹底により、安全性の確保に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。