※本記事は、株式会社トスネット の有価証券報告書(第49期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. トスネットってどんな会社?
交通誘導警備を核に、施設警備や電源供給事業等を展開する、東北地方を地盤とした総合セキュリティ企業です。
■(1) 会社概要
1977年に宮城県で東北タイショウ警備保障として設立され、1992年にトスネットへ商号変更しました。2000年に株式を店頭登録し、2004年にはJASDAQ証券取引所(現・東証スタンダード)へ上場を果たしています。M&Aを積極的に活用して事業エリアと領域を拡大しており、2005年以降、大盛警備保障や三洋警備保障、I・C・Cインターナショナルなどを相次いで子会社化しました。
2025年9月30日時点で、連結従業員数は864名、単体従業員数は140名です。筆頭株主は、住所が仙台市にある有限会社元気で、第2位は2001年に資本提携を行ったセコム、第3位は代表取締役専務の佐藤雅彦氏です。創業者の佐藤康廣氏は現在会長を務めており、安定的な株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社元気 | 26.27% |
| セコム | 15.53% |
| 佐藤 雅彦 | 11.88% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性0名の計12名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は氏家仁氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 氏家 仁 | 代表取締役社長 | 平成3年トスネット入社。営業本部長、震災対策本部長などを歴任し、平成23年12月より現職。 |
| 佐藤 雅彦 | 代表取締役専務兼管理統轄本部長 | 平成22年トスネット入社。企画開発部長、営業統轄部長などを経て、令和6年7月より現職。 |
| 佐藤 康廣 | 取締役会長 | 昭和52年東北タイショウ警備保障(現トスネット)設立、代表取締役就任。平成23年12月より現職。 |
| 菅 日出夫 | 取締役 | 平成24年トスネット入社。管理統轄部長、関係会社管理部長、トップロード代表取締役会長などを経て現職。 |
| 箱石 義隆 | 営業統轄部取締役統轄本部長 | 平成3年トスネット入社。東北事業部長、トスネット南東北代表取締役などを歴任し、令和6年12月より現職。 |
| 五 十 嵐 春 樹 | 業務統轄部取締役統轄部長 | 平成6年トスネット入社。首都圏事業部長、トスネット首都圏代表取締役などを歴任し、令和4年12月より現職。 |
社外取締役は、浦井義光(弁護士)、鎌瀧敬司(元東北電気工事専務取締役)、猪股恒一(元宮城県警察警視長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「警備事業」「ビルメンテナンス事業」「電源供給事業」の3つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。
■(1) 警備事業
交通誘導警備、施設警備、列車見張り警備などを提供しています。交通誘導は建築・工事現場や商業施設での車両・歩行者誘導を行い、同社グループの主力業務です。施設警備はオフィスビルや工場等の出入管理・防犯防災管理を担います。列車見張り警備は鉄道営業路線近接工事での安全確保を行います。
主な収益源は顧客からの警備料金です。運営は、トスネット本体に加え、三洋警備保障、トスネット北陸、トスネット北東北、トスネット南東北、トスネット上信越、アサヒガード、トスネット琉球、北日本警備、トップロード、NEXT、日本保安、トスネット首都圏、アイワ警備保障、大盛警備保障等の子会社が行っています。
■(2) 電源供給事業
各種イベントやコンサートにおける仮設電源の提供、テレビ局の中継バックアップなど、電源需要に応じた電力供給サービスを提供しています。リチウムイオンバッテリーとソーラーパネルを搭載したCO2排出ゼロの電源車の提供なども行っています。
収益源は、イベント主催者やメディア企業等からの電源供給サービス料です。運営は、連結子会社のI・C・Cインターナショナルが行っています。イベントやコンサートの開催状況により業績が変動する特性があります。
■(3) ビルメンテナンス事業
オフィスビル等の清掃業務、設備管理などのビルメンテナンスサービス、および労働者派遣業務を提供しています。施設警備部門やイベント警備部門とのシナジー効果を図りながら事業を展開しています。
収益源は、ビルオーナーや管理会社等からのメンテナンス料や清掃料などです。運営は、連結子会社のビルキャストが行っています。
■(4) メーリングサービス事業
メール便発送取次業務、販促品・サンプル等の封入・梱包および発送取次業務を行っていましたが、2025年7月1日付で事業を行っていたメーリングジャパンの全株式を譲渡しました。
収益源は顧客からの発送代行手数料等でした。運営は連結子会社のメーリングジャパンが行っていましたが、株式譲渡に伴い、2025年7月1日より連結の範囲から除外され、報告セグメントからも除外されています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあり、100億円前後から120億円近くまで成長しています。経常利益も8億円から9億円台で安定して推移しており、底堅い収益力を維持しています。2024年9月期には一時的な利益増加が見られましたが、全体として安定成長を続けています。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 99億円 | 100億円 | 109億円 | 116億円 | 119億円 |
| 経常利益 | 9.1億円 | 8.0億円 | 8.9億円 | 9.0億円 | 9.6億円 |
| 利益率(%) | 9.2% | 8.0% | 8.2% | 7.8% | 8.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4.2億円 | 4.2億円 | 3.7億円 | 7.9億円 | 4.3億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は3.0%増加し、売上総利益も増加しています。売上原価率は微減し、利益率の改善が見られます。営業利益率は7.1%から7.2%へとわずかに向上しました。販管費も増加していますが、売上の伸びに伴う範囲内であり、本業の収益性は堅調に推移しています。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 116億円 | 119億円 |
| 売上総利益 | 38億円 | 39億円 |
| 売上総利益率(%) | 32.9% | 33.2% |
| 営業利益 | 8.2億円 | 8.6億円 |
| 営業利益率(%) | 7.1% | 7.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が13億円(構成比41%)、その他が4.4億円(同14%)、法定福利費が2.4億円(同8%)を占めています。人件費関連が大きな割合を占める構造です。
■(3) セグメント収益
警備事業は増収となったものの、利益面ではマイナスとなりました。電源供給事業はイベント再開等の影響で増収増益となり、全体の利益を牽引しています。ビルメンテナンス事業は減収で損失を計上しました。メーリングサービス事業は譲渡までの期間の計上により減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) | 利益(2024年9月期) | 利益(2025年9月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 警備事業 | 98億円 | 102億円 | 0.2億円 | -0.3億円 | -0.3% |
| ビルメンテナンス事業 | 2.4億円 | 1.9億円 | -0.0億円 | -0.0億円 | -2.6% |
| メーリングサービス事業 | 4.3億円 | 3.5億円 | 0.1億円 | 0.1億円 | 2.1% |
| 電源供給事業 | 11億円 | 12億円 | 3.2億円 | 3.7億円 | 32.3% |
| 調整額 | -1.5億円 | -1.5億円 | 4.7億円 | 5.1億円 | - |
| 連結(合計) | 116億円 | 119億円 | 8.2億円 | 8.6億円 | 7.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は「健全型」です。本業の営業活動で得たキャッシュ(プラス)の範囲内で、投資活動(マイナス)と財務活動(マイナス、借入返済等)を行っており、財務体質は安定的です。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 11億円 | 8.0億円 |
| 投資CF | -2.7億円 | -0.9億円 |
| 財務CF | -5.1億円 | -4.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.2%でスタンダード市場平均(非製造業7.2%)を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.2%で市場平均(非製造業48.5%)を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「トータルセキュリティネットワークの構築」を基本方針として掲げています。コア事業である警備事業を通じて、社会に「安心・安全」を提供する提案型の警備を幅広く展開することを社会的使命としています。
■(2) 企業文化
最も重要な基盤は「人材」であると強く認識し、社員の指導教育やスキルアップに注力する文化があります。「警備業の原点は教育にあり」という考えのもと、警備員の資質向上や資格取得を推進しています。また、高付加価値営業による収益性の確保とコスト管理の徹底を重視し、持続的な信頼関係の構築を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
創業50周年を迎える2027年に向けた中期経営計画「VISION for 50(Step.2)」を推進中です。2026年9月期の連結業績目標として以下の数値を掲げています。
* 売上高:122億6,000万円
* 営業利益:8億8,000万円(営業利益率7.18%)
* 経常利益:9億9,000万円
■(4) 成長戦略と重点施策
「革新(イノベーション)」をキーワードに、DX推進による業務効率化、ソリューション型営業による新規事業機会の創造、およびM&Aやエリア戦略による規模拡大を重要戦略としています。
* システム革新(DX):警備業務・人事給与・会計システムの新システム稼働と全社展開。
* 営業手法の革新:マンパワー警備を核としたソリューション提案力の強化。
* 規模拡大:M&Aの積極活用、未進出地域への拠点拡大、オリジナル商品「ロードスタッフ業務」の拡販。
* 人材戦略:教育徹底による「警備品質の向上」、全警備職員の8割を資格保持者にする体制構築。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人的資本を最も重要な無形資産と捉え、社内環境整備と人材育成に注力しています。給与・賞与の増額や時間単位有給休暇の活用など働きやすい環境を整える一方、座学・実技訓練や資格取得支援を通じて専門性を高めています。また、女性の管理職登用や多様な人材の採用を進め、競合他社との差別化を図るスキルを持った人材の育成を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 41.6歳 | 10.0年 | 3,021,141円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.4% |
| 男性育児休業取得率 | -% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 92.3% |
| 男女賃金差異(正規) | 91.2% |
| 男女賃金差異(非正規) | 95.7% |
※男性育児休業取得率について、HTML原文では「-」と記載されています。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) お客様情報の管理について
警備請負契約等を通じて大量の顧客情報を保有しており、情報セキュリティ方針や各種規程に基づき管理を徹底しています。しかし、不可抗力の事故等を含め情報流出などの重大な問題が発生した場合、損害賠償請求や社会的信用の低下を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 法的規制等について
警備事業は警備業法等の法的規制を受けており、公安委員会の認定が必要です。法令違反等があれば認定取消等の行政処分を受けるリスクがあります。同社は管理体制や社員教育を徹底しコンプライアンス体制の充実に努めていますが、行政処分等の事態が生じれば事業継続に支障をきたす可能性があります。
■(3) 警備員の採用・退職について
労働集約型のビジネスモデルであるため、警備員の人材確保が重要です。求人媒体や学校訪問等で採用活動を行っていますが、採用が計画通り進まない場合や退職者が増加し配置人員が不足した場合は、受注機会を逸失する可能性があります。2025年9月期は前期比で警備員数が減少しており、人手不足は継続的な課題です。



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