IC 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

IC 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東証スタンダード市場に上場し、ソフトウェア開発やインフラ構築などのITソリューション事業と、自社開発のITサービス事業を展開する企業です。直近の業績は売上高101億円(前期比9.1%増)、経常利益6.1億円(同9.7%増)となり、増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社IC の有価証券報告書(第48期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ICってどんな会社?


ITシステムの開発・運用から自社サービスの提供まで幅広く手掛ける独立系IT企業です。

(1) 会社概要


同社は1978年に設立され、コンピュータの運用管理業務を開始しました。1990年代には各所に開発拠点を設けて事業を拡大し、2004年にJASDAQ市場へ上場しました。2022年に商号を現在の「IC」へ変更し、市場区分の見直しに伴いスタンダード市場へ移行しています。直近では2025年に日本画像配信を子会社化するなど、M&Aによる体制強化も進めています。

同グループは連結従業員807名、単体722名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は奨学金給付等を行う財団法人で、第2位は従業員持株会、第3位は投資事業組合となっています。

氏名 持株比率
一般財団法人IC齋藤育英会 15.55%
IC従業員持株会 7.84%
光通信KK投資事業有限責任組合 4.61%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長には齋藤良二氏が就任しており、社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
齋藤 良二 代表取締役社長 1980年同社入社。開発センタ長、ソリューション開発本部長などを経て2019年より現職。
三澤 昇平 代表取締役副社長 2002年同社入社。事業戦略本部長兼事業開発室長などを経て2025年より現職。
池田 貴志 取締役ソフトウエアソリューション本部長 1994年同社入社。ITソリューション開発本部部長、開発ソリューション本部長などを経て2019年より現職。
鈴木 直人 取締役インフラソリューション本部長 1994年同社入社。インフラソリューション本部長などを経て2025年より現職。
髙瀨 実 取締役(監査等委員) サッポロホールディングスグループ監査部長などを経て2023年より現職。


社外取締役は、中田裕規(弁護士)、小林靖弘(コバ代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ITソリューション事業」および「ITサービス事業」を展開しています。

(1) ITソリューション事業


顧客の事業所内に常駐、または同社内において、ソフトウェア開発やシステム運用を行う事業です。具体的には、業務アプリケーションの開発、情報システムのオペレーション、サーバやネットワークの設計・構築などを提供しています。主要顧客には日立グループなどが含まれます。

収益は、顧客に対するシステム開発や運用支援の対価として得ています。運営は主にICが担い、システムエンジニアリングサービスや受託開発を通じて安定的な収益基盤を形成しています。

(2) ITサービス事業


特定の業界ニーズに対応した自社製サービスの開発・販売を行う事業です。クラウド型チケット販売サービスや、聴覚障がい者向けコミュニケーション支援アプリ、個人能力開発支援システムなどを提供しています。

収益は、自社サービスの利用料や導入支援費用、関連機器の販売などから得ています。運営はICのほか、多言語音声翻訳技術を持つ子会社のフィートなどが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が81億円から101億円へと着実に成長しています。経常利益は一時的に4.8億円まで低下したものの、直近では6.1億円まで回復傾向にあります。利益率は5〜8%台で推移しており、安定した収益性を維持しながら事業規模を拡大させています。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 81億円 85億円 86億円 93億円 101億円
経常利益 6.7億円 7.1億円 4.8億円 5.5億円 6.1億円
利益率(%) 8.2% 8.4% 5.6% 5.9% 6.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 4.9億円 5.5億円 3.8億円 3.6億円 5.4億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率は21%前後で安定しており、営業利益率も5%台を維持しています。増収効果により各利益段階でプラス成長となっており、本業の収益力は底堅く推移しています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 93億円 101億円
売上総利益 19億円 22億円
売上総利益率(%) 20.7% 21.3%
営業利益 4.4億円 5.2億円
営業利益率(%) 4.8% 5.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が4.7億円(構成比29%)、法定福利及び厚生費が1.4億円(同9%)を占めています。売上原価においては、労務費が45億円(構成比60%)、外注加工費等の経費が31億円(同40%)となっており、人件費と外注費がコストの主要部分を占めています。

(3) セグメント収益


ITソリューション事業は官公庁や金融・通信分野の需要増により増収となりました。一方、ITサービス事業は開発業務の一部をITソリューション事業へ移管した影響などにより減収となっています。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期)
ITソリューション 93億円 100億円
ITサービス 2.5億円 1.7億円
連結(合計) 93億円 101億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で稼いだ資金で借入返済を行いつつ、投資は手元資金の範囲内で実施している健全型です。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 5.1億円 1.4億円
投資CF 0.1億円 -1.7億円
財務CF -4.3億円 -3.0億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は73.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「情報処理のサービスを以って、社会に奉仕します。」「企業の理念に賛同、投資頂いた株主様に奉仕します。」「組織と共に成長を続ける社員に奉仕します。」という3つの奉仕を企業理念として掲げています。この理念に基づき、全てのステークホルダーと共に発展し、継続的な企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


設立以来、「社員が幸せになること」を理念の一つとし、人材を最も重要な経営資源と位置づけています。社員一人ひとりが能力を最大限発揮できるよう、魅力ある職場環境の構築に注力しており、環境への配慮や社会貢献も重視しています。組織と共に成長を続ける社員への奉仕を通じて、明るく活力ある企業集団であり続けることを目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は目標とする経営指標として「売上高経常利益率」を掲げており、その数値目標を8.0%としています。また、2026年9月期を初年度とする中期経営計画「Growing Beyond 2028」を策定し、長期ビジョン実現に向けた成長基盤の強化に取り組む方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


基盤事業であるITソリューション事業の収益拡大を図るとともに、高収益な新規事業の創出を目指しています。具体的には、自社技術に加えM&Aを含む社外リソースを積極的に活用し、早期の事業化を推進します。また、不透明な経済環境や技術者不足に対応するため、機能・基盤の強化や将来の成長に向けた積極投資を継続していく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的成長のため「コンスタントかつ計画的な採用」を基本とし、新卒・中途採用の拡大や女性社員比率の向上を推進しています。育成面では、階層別研修や技術研修に加え、DX推進に向けた知見獲得や次世代マネジメント層の育成にも注力しています。また、健康経営の推進や社員エンゲージメント向上施策を通じ、活き活きと働ける環境整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 39.2歳 15.0年 6,019,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 58.3%
男女賃金差異(全労働者) 74.6%
男女賃金差異(正規雇用) 74.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 0.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(15.7%)、女性社員の平均勤続年数(6.7年間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の販売先への依存度


同社グループの売上高の約50%は、日立システムズをはじめとする日立グループ向けが占めています。主要顧客の受注動向の変化や取引縮小が生じた場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。これに対し、市場競争力の強化や新規顧客の開拓によりリスク低減を図っています。

(2) 製品・サービスの品質問題


提供するシステムやサービスにおいて不具合や品質上の問題が発生した場合、信用の失墜や損害賠償責任などが生じ、業績に悪影響を与える可能性があります。同社はISO9001の認証を取得しており、国際基準に基づいた品質管理を徹底することでリスクの低減に努めています。

(3) 人員の拡充と確保


顧客密着型のサービスモデルを展開する同社にとって、優秀なIT技術者の確保と育成は重要課題です。必要な人員拡充が計画通りに進まない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。新卒・中途採用の継続や職場環境の整備を通じて、人材の確保と定着を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。