※本記事は、株式会社メディネット の有価証券報告書(第30期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. メディネットってどんな会社?
免疫細胞治療の支援サービスから発展し、現在は細胞加工受託や再生医療等製品の開発を手掛けるバイオ企業です。
■(1) 会社概要
1995年に設立され、1999年より免疫細胞療法総合支援サービスを開始しました。2003年に東証マザーズ(現グロース市場)へ上場を果たしています。その後、2015年には品川の細胞培養加工施設で特定細胞加工物製造許可を取得し、2020年には再生医療等製品製造業許可を取得するなど、事業基盤を拡大してきました。
同社(単体)の従業員数は107名です。大株主の構成は、筆頭株主がインターネット証券会社、第2位が同社取締役会長、第3位も大手インターネット証券会社となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 楽天証券 | 3.36% |
| 木村 佳司 | 2.97% |
| SBI証券 | 0.71% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は久布白兼直氏が務めています。取締役7名のうち、社外取締役は3名で比率は約43%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 久布白 兼直 | 代表取締役社長 | 田辺三菱製薬にて営業本部製品情報部長、東京支店長、グループ理事等を歴任。2020年12月同社取締役就任、2022年4月より現職。 |
| 木村 佳司 | 取締役会長 | HOYAを経て1995年同社設立、代表取締役社長就任。以後、代表取締役CEO、代表取締役会長兼社長等を歴任し、2024年12月より現職。 |
| 落合 雅三 | 取締役経営管理部長 | 丸紅テレコム(現MXモバイリング)等を経て2004年同社入社。経営企画グループマネージャー、医療法人社団滉志会管理本部長等を歴任し、2018年より現職。 |
| 近藤 隆重 | 取締役細胞加工事業部長 | 2003年同社入社。臨床開発グループマネージャー、TR推進部学術開発室長、経営戦略部長を経て、2020年4月より現職。 |
社外取締役は、篠田丈(株式会社アリスタゴラ・アドバイザーズ代表取締役会長)、吉野公一郎(カルナバイオサイエンス株式会社代表取締役社長)、市川邦英(株式会社サイジェクト代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「細胞加工業」および「再生医療等製品事業」を展開しています。
■(1) 細胞加工業
医療機関向けの特定細胞加工物の製造をはじめ、企業や大学等からの臨床用・治験用細胞加工の受託(CDMO事業)、および細胞培養加工施設の運営管理や技術者派遣などのバリューチェーン事業を行っています。主な顧客は医療機関、製薬企業、研究機関です。
収益は、医療機関や企業からの加工受託料、技術移転一時金、施設運営管理費、ロイヤリティ収入などから得ています。運営は主に同社が行っています。
■(2) 再生医療等製品事業
がんや難治性疾患を対象とした再生医療等製品の研究開発を行い、製造販売承認の取得を目指しています。自社開発に加え、大学や国内外の企業とのアライアンスを通じてパイプラインの拡充を図っています。
現在は開発段階にあるため事業収益は限定的ですが、ライセンスアウトによる契約一時金やマイルストーン収入、上市後の製品売上やロイヤリティ収入を目指しています。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は6億円から8億円程度で推移しています。利益面では、研究開発費や先行投資負担により経常損失および当期純損失が継続しており、赤字幅は12億円から14億円程度で推移しています。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 7億円 | 6億円 | 7億円 | 8億円 | 8億円 |
| 経常利益 | -9億円 | -13億円 | -14億円 | -13億円 | -13億円 |
| 利益率(%) | -127.5% | -207.4% | -214.5% | -164.2% | -165.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -8億円 | -13億円 | -14億円 | -13億円 | -14億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高は増加傾向にありますが、売上総利益率は10%台で推移しています。多額の販売費及び一般管理費が発生しているため、営業損失の状態が続いており、コスト構造の改善と売上拡大が課題となっています。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 8億円 | 8億円 |
| 売上総利益 | 1億円 | 1億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.7% | 13.5% |
| 営業利益 | -14億円 | -14億円 |
| 営業利益率(%) | -180.2% | -178.4% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が5億円(構成比29%)、給与手当が3億円(同17%)を占めています。売上原価においては、労務費が3億円(売上原価に対し49%)、経費が3億円(同39%)を占めています。
■(3) セグメント収益
細胞加工業はCDMO事業の新規受託等により増収となりましたが、先行投資や原価増により損失が拡大しました。再生医療等製品事業は開発段階のため売上は僅少で、研究開発費の負担により損失が継続しています。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) | 利益(2024年9月期) | 利益(2025年9月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 細胞加工業 | 8億円 | 8億円 | -4億円 | -5億円 | -58.6% |
| 再生医療等製品事業 | 0.0億円 | 0.0億円 | -4億円 | -4億円 | -186290.4% |
| 調整額 | - | - | -6億円 | -6億円 | - |
| 連結(合計) | 8億円 | 8億円 | -14億円 | -14億円 | -178.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -13億円 | -14億円 |
| 投資CF | 1億円 | -6億円 |
| 財務CF | 15億円 | -0.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-30.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は88.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「常に本質を究め、誠実性と公正性をもって真の社会的付加価値を創造する」という経営理念を掲げています。この理念の下、次世代の医療を支える革新的な技術やサービスを迅速かつ効率的に社会へ提供し、人々の健康とQOL(生活の質)の向上に貢献することを使命としています。
■(2) 企業文化
同社は、「先を見据え、自ら考え一歩先の考動ができる」人財の育成や活性化を推進しています。また、性別・年齢・国籍などにとらわれず多様な人財を採用・登用し、社員個々のワーク・ライフ・バランスや柔軟な働き方を尊重することで、一人ひとりが活躍できる職場環境を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、中長期的なビジョンとして「VISION2030」を掲げ、Well-Being社会に貢献するHealthcare Innovating Companyを目指しています。当面の目標として、細胞加工業での新規ビジネス領域の拡大による早期の黒字化と、再生医療等製品の承認取得による飛躍的な成長を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
成長戦略として、細胞加工業では特定細胞加工物の受託拡大やCDMO事業の基盤強化、バリューチェーン事業によるトータルソリューションの提供を推進しています。再生医療等製品事業では、開発の加速と早期の承認取得、および新規シーズの育成やアライアンスによるパイプライン拡充に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的な成長のために人財を最も重要な経営資源と位置づけ、「先を見据え、自ら考え一歩先の考動ができる」人財の育成と活性化を推進しています。eラーニングの導入や研修など人的資本への投資を行うほか、多様な働き方を尊重し、育児・介護休職制度や短時間勤務制度などの社内環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 39.5歳 | 8.7年 | 5,649,259円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(67.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) サイバー攻撃及び情報漏洩リスク
業務上利用するITシステムへのサイバー攻撃により、システム運用停止等の問題が発生する可能性があります。また、技術・営業情報や個人情報等の漏洩が発生した場合、信用低下や業績への悪影響が生じる可能性があります。これに対し、監視体制やセキュリティ対策の強化を図っています。
■(2) 価格に係るリスク
免疫細胞治療は現在保険診療の対象外であり、自由診療の治療費は患者負担となります。加工料は治療費に依存するため、治療費水準の変動や新たな規制への対応により加工料の見直しが生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。また、競合激化による価格競争のリスクもあります。
■(3) 研究開発の不確実性に関わるリスク
再生医療分野は技術革新が速く、継続的な研究開発投資が必要です。しかし、研究成果が事業化に結びつかない場合や、臨床試験で期待通りの結果が得られず承認取得に至らない場合、投資回収が困難となり業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 継続企業の前提に関する重要事象等
細胞加工業の売上回復が十分でないことや、再生医療等製品事業での開発支出により、営業損失およびマイナスの営業キャッシュ・フローが継続しており、継続企業の前提に疑義を生じさせるリスクが存在します。資金調達等により当面の資金繰りは確保していますが、今後の動向には注意が必要です。



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