キャリアデザインセンター 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

キャリアデザインセンター 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場しており、求人メディア「type」や人材紹介、IT派遣などの人材サービス事業を展開しています。2025年9月期は、IT派遣事業が好調に推移したことなどにより、売上高・利益ともに過去最高を更新し、増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社キャリアデザインセンターの有価証券報告書(第34期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. キャリアデザインセンターってどんな会社?


同社グループは、転職サイト「type」や人材紹介、派遣など、キャリア形成支援サービスを総合的に提供する企業です。

(1) 会社概要


同社は1993年7月に設立され、情報誌の出版事業を開始しました。2000年4月にWebサイト『@type』の運営を開始し、ネット主体のサービスへ移行しました。2004年10月にヘラクレス市場へ上場後、2006年9月に東証二部、2013年7月に東証一部へ指定替えを行い、2022年4月の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。

現在の従業員数は単体で768名です。筆頭株主は代表取締役社長兼会長の多田弘實氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には出版社である株式会社ダイヤモンド社が名を連ねています。

氏名 持株比率
多田 弘實 23.97%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 3.14%
株式会社ダイヤモンド社 2.28%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長兼会長は多田弘實氏です。社外取締役比率は55.6%です。

氏名 役職 主な経歴
多田弘實 代表取締役社長兼会長 1977年日本リクルートセンター(現リクルートホールディングス)入社。同社取締役を経て、1993年7月同社設立と同時に代表取締役社長就任。2006年10月より現職。
加山祐介 代表取締役副社長メディア情報事業部担当 2001年近畿日本ツーリスト入社。2002年10月同社入社。キャリア営業本部長、メディア情報事業部長などを経て、2024年10月より現職。
西山裕 専務取締役上席専務執行役員経営企画担当 2005年同社入社。経営企画本部長、取締役経営企画局長などを歴任。2023年12月より現職。
菊池亮平 取締役(常勤監査等委員) 1998年同社入社。編集販売部長、予算管理部長、内部監査室長、常勤監査役などを経て、2021年12月より現職。


社外取締役は、和田芳幸(元中央青山監査法人理事・指名報酬委員長)、齋藤哲男(現ワークツー代表取締役)、宮地夕紀子(現慶應義塾大学非常勤講師)、菅原隆志(現東京青果常勤監査役)、皆見晴彦(元総合ハウジングサービス社長)です。

2. 事業内容


同社グループは「人材サービス事業」を営む単一セグメントですが、「メディア情報事業」「人材紹介事業」「新卒メディア事業」「新卒紹介事業」「IT派遣事業」の領域でサービスを展開しています。

(1) メディア情報事業


中途採用向けにWeb求人サイト『type』『女の転職type』などの運営や、転職イベント『適職フェア』の開催を行っています。エンジニアや営業職、女性をメインターゲットとしたサービスを提供しています。

収益は、求人企業から受け取る広告掲載料やイベント出展料です。運営は主に同社が行っています。

(2) 人材紹介事業


転職希望者に対して最適な求人案件を紹介するサービスです。営業・IT・販売・サービスなどの一般領域に加え、専門職や管理職を対象としたミドル領域も展開しており、『type転職エージェント』を運営しています。

収益は、求人企業から受け取る紹介手数料(成果報酬)です。運営は主に同社が行っています。

(3) 新卒メディア事業


就職意識の高い大学新卒者を対象とした就職情報誌『type就活』の発行や、就職イベント『type就活フェア』の開催を行っています。

収益は、新卒採用を行う企業から受け取るイベント出展料や広告掲載料です。運営は主に同社が行っています。

(4) 新卒紹介事業


就職活動中の学生に対して、適性に合った企業を紹介する登録型の新卒紹介サービス『type就活エージェント』を運営しています。

収益は、新卒採用を行う企業から受け取る紹介手数料(成果報酬)です。運営は主に同社が行っています。

(5) IT派遣事業


ITエンジニアに特化した人材派遣サービス『typeIT派遣』を提供しています。有期雇用派遣と無期雇用派遣の形態があり、顧客企業のニーズに合わせて技術者を派遣しています。

収益は、派遣先企業から受け取る派遣料金です。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあり、特に直近の2025年9月期は過去最高の186億円に達しました。経常利益も高い水準を維持しており、利益率も8~9%台で推移しています。当期純利益も安定して黒字を計上しており、成長と収益性を両立した経営が続いています。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 94億円 155億円 174億円 177億円 186億円
経常利益 2億円 11億円 16億円 14億円 16億円
利益率(%) 1.6% 7.1% 9.1% 8.1% 8.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 8億円 12億円 10億円 11億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益は微減となったものの、営業利益は増加しています。売上総利益率は50%台を維持しており、営業利益率も8%台で安定しています。コストコントロールと売上拡大のバランスが取れた収益構造となっています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 177億円 186億円
売上総利益 97億円 97億円
売上総利益率(%) 54.9% 51.9%
営業利益 14億円 16億円
営業利益率(%) 8.1% 8.5%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が30億円(構成比37%)、広告宣伝費が20億円(同25%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社グループは「人材サービス事業」を営む単一セグメントのため、セグメント利益は開示していませんが、サービス領域ごとの売上高を開示しています。

IT派遣事業が大幅な増収となり、全社の成長を牽引しました。一方、メディア情報事業や人材紹介事業、新卒メディア事業は、企業の採用意欲の一部慎重化などの影響を受け、減収となりました。新卒紹介事業は増収を確保しています。

区分 売上(2025年9月期)
メディア情報事業 59億円
人材紹介事業 31億円
新卒メディア事業 8億円
新卒紹介事業 2億円
IT派遣事業 86億円
連結(合計) 186億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持し、その範囲内で投資や借入返済、配当支払いを行っており、健全型のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 9億円 20億円
投資CF -8億円 -3億円
財務CF -18億円 -5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は25.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「いい仕事。いい人生。」を企業理念として掲げています。質の高い人材の流動化を通して、企業の活性化と日本経済の発展に寄与することを目指しています。また、キャリア志向の高いエンジニア、営業、女性をターゲットとし、『type』ブランドによるひとつ上のキャリア転職マーケットの確立を目指しています。

(2) 企業文化


コーポレートコンセプトである「いい仕事。いい人生。」を行動規範としています。従業員だけでなく、様々なステークホルダーに対して「いい仕事」を提供することが、それぞれの「いい人生」につながると考え、それこそが価値創造および中長期的な価値向上につながるという価値観を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2026年9月期を最終年度とする中期経営計画を策定しています。2025年9月期は中期経営計画の4年目にあたり、最終年度に向けて長期にわたり安定的に企業価値を向上できる基盤の構築に取り組んでいます。

* 売上高:200億円
* 経常利益:24億円

(4) 成長戦略と重点施策


「メディア情報」「人材紹介」「新卒メディア」「新卒紹介」「IT派遣」の各サービスをメディアミックス展開し、『type』ブランドによるシナジー効果を高める戦略をとっています。特に、少子高齢化による労働人口減少という社会課題に対し、中途採用による人材の流動化を促進することで、企業の労働力確保に貢献することに取り組むべきテーマとしています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従業員一人ひとりが能力を最大限発揮できるよう、個性を尊重し多様性を認めるとともに、オープンで公平・平等な環境づくりに努めています。人材育成においては、OJTに加え、新入社員時から階層別のキャリア開発研修を実施し、主体的なキャリア形成を支援しています。また、事業収益を従業員へ還元することで好循環を生み出すことを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 30.7歳 5.9年 5,514,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 48.7%
男性育児休業取得率 20.0%
男女賃金差異(全労働者) 79.0%
男女賃金差異(正規雇用) 81.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 76.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、課長職の女性比率(57.4%)、部長職の女性比率(36.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況の変動について


人材サービス事業は景気変動の影響を受けやすい特性があります。大規模な自然災害や感染症の流行等により景気が停滞し、転職市場や経済の低迷が長期化した場合には、同社の経営成績や財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。

(2) 競合について


求人情報提供サービス市場には多くの競合会社が存在します。同社は『type』ブランドによる差別化や総合的なソリューション提供に努めていますが、競争力のある新規参入等により優位性が薄れた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 法的規制について


職業安定法や労働者派遣法等の法的規制を受けて事業を行っています。法令違反等により許可の取り消しや事業停止命令を受けた場合、事業運営に重大な支障をきたす可能性があります。また、法改正の内容によっては業績に影響が出る可能性があります。

(4) 個人情報保護について


求職者の個人情報を多数取り扱っており、情報セキュリティ対策を講じています。しかし、不正アクセス等により個人情報の漏洩や改ざん等が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償請求等により、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。