フィンテック グローバル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フィンテック グローバル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の投資銀行。「すべての産業界へ革新的なストラクチャードファイナンスの効用を浸透させる」を掲げ、投資銀行事業、公共コンサルティング事業、テーマパーク「メッツァ」の運営を行うエンタテインメント・サービス事業を展開。2025年9月期は売上高144億円(前期比4.5%増)、経常利益32億円(同31.7%増)と増収増益でした。


※本記事は、フィンテック グローバル株式会社 の有価証券報告書(第31期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フィンテック グローバルってどんな会社?

投資銀行事業を核に、公共コンサルティングや「ムーミンバレーパーク」等の運営を行う企業グループです。

(1) 会社概要

1994年にストラクチャードファイナンスを専門とする金融サービス提供を目的に設立。2005年に東証マザーズへ上場しました。その後、2013年に株式会社ムーミン物語を設立し、2018年に「メッツァビレッジ」、2019年に「ムーミンバレーパーク」を開業しました。2022年には東証スタンダード市場へ移行しています。

同グループの従業員数は連結220名、単体65名です。筆頭株主は代表取締役社長の玉井信光氏で、第2位は玉井氏の親族が保有する資産管理会社である株式会社CAT-MYです。第3位には個人株主が続いています。

氏名 持株比率
玉井 信光 5.34%
CAT-MY 5.20%
藤井 優子 1.70%

(2) 経営陣

同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は玉井 信光氏です。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
玉井 信光 代表取締役社長投資銀行本部長 オリエント・リース(現オリックス)入社を経て1994年同社設立、代表取締役社長就任。2023年より現職。
千田 高 取締役副社長上席執行役員経理部/財務部/事業統括部/人事総務部/法務・コンプライアンス部管掌財務部長 兼事業統括部長 兼人事総務部長 東邦生命保険相互会社(現ジブラルタ生命保険)入社を経て2004年同社入社。2025年より現職。
吉岡 尚子 取締役上席執行役員事業開発本部/事業統括部/資金ファイナンス部/営業推進室/ソリューション部管掌事業開発本部長 税理士法人プライスウォーターハウスクーパース入所、シンプレクス不動産投資顧問等を経て2011年同社入社。2025年より現職。
木村 喬 取締役上席執行役員総合企画部管掌総合企画部長 新日本監査法人入所、ベルウェザー総合会計事務所代表、やまと監査法人代表社員等を経て2023年より現職。


社外取締役は、野崎 篤彦(元日本生命保険相互会社常任監査役)、鈴木 健次郎(元預金保険機構金融再生部長)、大山 亨(㈲セイレーン代表取締役)です。

2. 事業内容

同社グループは、「投資銀行事業」「公共コンサルティング事業」「エンタテインメント・サービス事業」を展開しています。

(1) 投資銀行事業

顧客の資金調達を支援するファイナンス・アレンジメントやアドバイザリー業務、事業承継案件へのプライベートエクイティ投資、不動産投資運用、航空機売買・リース等を行います。また、北欧のライフスタイルを体験できる「メッツァビレッジ」の不動産賃貸も含まれます。

収益は、顧客からの手数料、投資収益、不動産賃貸料、航空機リース料等から得ています。運営は、同社、フィンテックアセットマネジメント株式会社、FGIキャピタル・パートナーズ株式会社、aviner株式会社などが行っています。

(2) 公共コンサルティング事業

地方公共団体に対し、財務書類作成支援や、公共施設等総合管理計画の策定・改訂支援などを行っています。近年は子育て・健康増進などの行政計画策定支援にも領域を拡大し、地方財政の健全化に貢献しています。

収益は、地方公共団体からの業務委託料等から得ています。運営は、株式会社パブリック・マネジメント・コンサルティングが行っています。

(3) エンタテインメント・サービス事業

ムーミンの物語を主題としたテーマパーク「ムーミンバレーパーク」の開発、保有、管理、運営を行っています。

収益は、来園者からのチケット代、物販・飲食代金等から得ています。運営は株式会社ムーミン物語が行い、不動産の保有・賃貸は特別目的会社である飯能地域資源利活用合同会社が行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は第27期の81億円から第31期の144億円へと拡大傾向にあります。利益面でも、第27期・第28期は低い水準でしたが、第29期以降は大幅に改善し、利益率も20%を超える水準まで上昇しています。当期利益も増加基調を維持しています。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 81億円 93億円 93億円 138億円 144億円
経常利益 1.2億円 5.4億円 13億円 25億円 32億円
利益率(%) 1.4% 5.8% 13.7% 17.8% 22.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.3億円 1.8億円 16億円 17億円 21億円

(2) 損益計算書

売上高、売上総利益ともに増加しており、売上総利益率は50%台から60%台へと上昇しています。営業利益率も向上しており、収益性が高まっています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 138億円 144億円
売上総利益 74億円 89億円
売上総利益率(%) 53.3% 61.5%
営業利益 26億円 34億円
営業利益率(%) 18.6% 23.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が16億円(構成比約30%)、支払手数料が9億円(同約17%)を占めています。

(3) セグメント収益

主力の投資銀行事業は微増収となり、利益面でも事業承継案件のPE投資等が寄与し業績を牽引しています。エンタテインメント・サービス事業はチケット価格改定等の効果で増収となり、損益も改善して黒字化しました。公共コンサルティング事業は増収基調ですが、先行投資により若干の赤字となっています。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期)
投資銀行事業 112億円 115億円
公共コンサルティング事業 4.3億円 4.6億円
エンタテインメント・サービス事業 22億円 25億円
連結(合計) 138億円 144億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

フィンテック グローバルは、営業活動による資金の減少、投資活動による資金の減少、そして財務活動による資金の増加という構成で、期末の資金は前期比で増加しました。営業活動では、主に利益の創出や資産売却があったものの、賃貸資産の取得や税金の支払いなどが資金を減少させました。投資活動では、有価証券や固定資産の取得、貸付金の増加などが資金の減少要因となりました。財務活動では、借入金の増加が資金の増加に大きく寄与しました。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 41億円 -7億円
投資CF -5.5億円 -16億円
財務CF -8億円 31億円

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は「すべての産業界へ革新的なストラクチャードファイナンスの効用を浸透させる」をコーポレートアイデンティティとして掲げています。金融環境の変化に応じた先端的・革新的な金融商品や「仕組み」を作り、顧客の企業価値、資産価値の最大化を通じて、ステークホルダーの満足を実現することを目指しています。

(2) 企業文化

多様な役職員の知識及び能力を結び付けることにより、商品や仕組みを生み出すノウハウを有することに加え、それらを活かしてイノベーションを起こすべく様々なチャレンジができる企業風土があります。

(3) 経営計画・目標

株主価値最大化のため、効率性を測る尺度として自己資本利益率(ROE)を重要な経営指標と位置づけ、20%超のROEを安定的に達成できるよう、収益力の強化を中心とする施策を推進しています。また、期末配当は1株当たり5円を計画しています。

(4) 成長戦略と重点施策

公共コンサルティング事業ではアウトソーシング受託を拡大し、地域の課題解決に向けたモデルを確立します。投資銀行事業との連携も強化し、地域プロジェクトへの資金供給を行います。また、事業承継案件の探索や、トラックオペレーティングリース等の販売向上のため、金融機関等へのネットワーク強化を推進します。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

専門人材の確保・育成を重視し、2025年4月に等級制度・報酬制度の見直しを実施しました。給与水準や新卒初任給の引き上げを行い、社員が長期的に能力を発揮できる環境を整備しています。また、役員や従業員への株式インセンティブの付与を通じ、企業価値向上に向けた意欲の醸成を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 38.9歳 5.1年 10,870,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含めストック・オプション、譲渡制限付株式による株式報酬費用は除いております。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 46.9%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※同社および連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」および「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の規定による公表義務の対象ではないため、有報には一部項目の記載がありません。なお、女性管理職比率は株式会社ムーミン物語の実績です。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(81.8%)、女性比率(78.9%)などです(いずれも株式会社ムーミン物語の実績)。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 投融資(プリンシパルインベストメント)

同社グループが行う投融資対象の多くは未上場企業や不動産であり、流動性が低く、希望する価格・時期での売却が困難な場合があります。投資によるキャピタルロスや融資の貸倒れが発生し、期待通りの収益が得られない可能性があります。

(2) メッツァビレッジ(販売用不動産)の評価減

同社が販売用不動産として保有する「メッツァビレッジ」について、正味売却価額が帳簿価額を下回る場合、評価損を計上する可能性があります。2025年9月期には一部施設の撤去損を計上しています。

(3) 固定資産の減損(ムーミンバレーパーク)

「ムーミンバレーパーク」の運営において、想定した来園者数を下回る状況が長期間続き、将来キャッシュ・フローが固定資産の帳簿価額を下回った場合、減損損失を計上する可能性があります。

(4) 人材の確保、育成

投資銀行事業や公共コンサルティング事業においては高度な専門知識を持つ人材が不可欠です。人材の流出や採用難により十分な人材を確保できない場合、事業運営に支障をきたす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。