※本記事は、株式会社オリエンタルコンサルタンツホールディングス の有価証券報告書(第20期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. オリエンタルコンサルタンツホールディングスってどんな会社?
インフラ整備を中心としたマネジメントサービスを提供する企業グループの持株会社です。社会価値創造企業を目指し、グローバルに事業を展開しています。
■(1) 会社概要
2006年にオリエンタルコンサルタンツの株式移転により持株会社として設立され、ジャスダック証券取引所に上場しました。2008年には海外コンサルタント事業を譲り受け、グローバル展開を加速させます。2014年には海外事業を牽引するオリエンタルコンサルタンツグローバルを設立しました。2018年に現在の商号へ変更し、2025年にはSMEC Consultoría Chile SpAを子会社化するなど、事業拡大を続けています。
同グループの従業員数は連結3,635名、単体12名です。筆頭株主はオリエンタルコンサルタンツホールディングス社員持株会で、第2位は同業者である事業会社のパシフィックコンサルタンツ、第3位は不動産開発を行う事業会社の住友不動産です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| オリエンタルコンサルタンツホールディングス社員持株会 | 19.20% |
| パシフィックコンサルタンツ | 5.40% |
| 住友不動産 | 4.80% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は野崎秀則氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 野崎 秀則 | 代表取締役(社長) | 1982年オリエンタルコンサルタンツ入社。同社社長等を経て、2013年より現職。 |
| 青木 滋 | 取締役国内事業推進本部長 | 1982年オリエンタルコンサルタンツ入社。同社取締役専務役員等を経て、2021年より現職。 |
| 米澤 栄二 | 取締役海外事業推進本部長 | 1985年オリエンタルコンサルタンツ入社。オリエンタルコンサルタンツグローバル社長(現任)等を歴任し、2021年より現職。 |
| 橘 義規 | 取締役統括本部長 | 1984年オリエンタルコンサルタンツ入社。エイテック社長等を経て、2024年より現職。 |
| 龍野 彰男 | 取締役内部監査本部長 | 1980年オリエンタルコンサルタンツ入社。エイテック社長、オリエンタルコンサルタンツグローバル取締役等を経て、2023年より現職。 |
社外取締役は、高橋明人(高橋・片山法律事務所代表弁護士)、田代真巳(元SMBCインターナショナルビジネス社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「インフラ・マネジメントサービス事業」「環境マネジメント事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) インフラ・マネジメントサービス事業
社会環境整備に関わる知的サービスを提供するグローバルな総合コンサルタント事業です。国内外において、道路、鉄道、河川、港湾などの社会インフラに関する調査、計画、設計、維持管理、運営マネジメント等を行っています。国や地方自治体、海外政府機関などが主な顧客です。
主な収益源は、コンサルティング業務の対価として顧客から受け取る業務委託料です。運営は主に、オリエンタルコンサルタンツ、オリエンタルコンサルタンツグローバル、エイテック、中央設計技術研究所などが担っています。
■(2) 環境マネジメント事業
地質・土質調査、環境・環境浄化、構造物調査・リニューアル、水理解析などを手掛ける事業です。さく井工事、解体工事、温泉工事、宅地建物取引業なども含み、インフラ整備や環境保全に必要な技術サービスを提供しています。
主な収益源は、調査・工事・解析業務等の対価として顧客から受け取る業務委託料や工事代金です。運営は主に、アサノ大成基礎エンジニアリング、鈴木建築設計事務所、三協建設などが担っています。
■(3) その他事業
建設マネジメント、計測制御、資産管理等に関するITソリューションの提供や、人材および業務プロセスに関わるアウトソーシング事業などを展開しています。
主な収益源は、システム開発・販売による対価や、アウトソーシングサービスの利用料などです。運営は主に、リサーチアンドソリューションなどが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高、利益ともに増加傾向にあります。特に2025年9月期は売上高が950億円を超え、経常利益も過去最高水準に達しました。利益率も改善傾向にあり、堅調な成長を続けています。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 683億円 | 773億円 | 782億円 | 863億円 | 954億円 |
| 経常利益 | 35億円 | 43億円 | 43億円 | 40億円 | 58億円 |
| 利益率(%) | 5.1% | 5.6% | 5.4% | 4.7% | 6.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 17億円 | 27億円 | 28億円 | 26億円 | 38億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で約91億円増加し、売上総利益も増加しました。売上総利益率は概ね横ばいから微増で推移しており、収益性は安定しています。営業利益率も向上しており、効率的な事業運営が行われていることがうかがえます。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 863億円 | 954億円 |
| 売上総利益 | 195億円 | 211億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.6% | 22.1% |
| 営業利益 | 47億円 | 56億円 |
| 営業利益率(%) | 5.4% | 5.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が53億円(構成比34%)、賞与引当金繰入額が15億円(同10%)を占めています。売上原価においては、人件費や外注費が主な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで増収増益となりました。主力のインフラ・マネジメントサービス事業は、国内外での受注が好調で売上・利益ともに大きく伸長しました。環境マネジメント事業やその他事業も増収となり、グループ全体の業績向上に寄与しています。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) | 利益(2024年9月期) | 利益(2025年9月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| インフラ・マネジメントサービス | 705億円 | 794億円 | 38億円 | 47億円 | 5.9% |
| 環境マネジメント | 138億円 | 137億円 | 6億円 | 8億円 | 5.7% |
| その他 | 20億円 | 23億円 | 1億円 | 2億円 | 8.4% |
| 調整額 | -10億円 | -13億円 | 1億円 | -0億円 | - |
| 連結(合計) | 863億円 | 954億円 | 47億円 | 56億円 | 5.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
当期は営業キャッシュ・フローがマイナスとなりましたが、これは海外市場における超大型案件の業務進捗に伴い運転資金が増大し、売掛債権及び契約資産等が増加したことによるものであり、積極的な事業活動の結果と言えます。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 28億円 | -17億円 |
| 投資CF | -22億円 | -18億円 |
| 財務CF | 3億円 | 33億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「世界の人々の豊かなくらしと夢の創造」というミッション(使命)を掲げています。この理念のもと、顧客、株主、社員やその家族など、関係する全てのステークホルダーの信頼を確立するため、経営の透明性、効率性、企業の健全性を確保することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
2030年のビジョンとして「社会価値創造企業~自らが社会を創造する担い手になる~」を定めています。「革新」「変革」「挑戦」をキーワードにした基本戦略に基づき、国・地域との高い信頼関係を築き、その活力や魅力を高める事業を推進する姿勢を重視しています。自らが社会創造の担い手となることを目指す文化があります。
■(3) 経営計画・目標
2030年に向けたビジョン及び中期経営計画において、以下の経営目標を掲げています。
* 売上高:1,100億円以上
* 営業利益:70億円以上
* 社員数:5,000人以上(主要6社3,500人以上、その他連結子会社1,500人以上)
* 有資格者:技術士1,300人以上、博士100人以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「事業創造・拡大」「人材確保・育成」「基盤整備」の3つを基本方針としています。事業の総合化やDX推進による市場拡大、重点化事業によるナンバーワン・オンリーワン技術の確立、国内外の競争力強化と連携によるワンストップサービス推進に取り組みます。また、多様な人材の確保と育成、DXによるグループ共通基盤の整備なども進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
企業ブランドの強化による多様な人材の確保と、プロフェッショナル人材の育成を推進しています。また、グループ内外のリソースを効果的に活用することで、社会価値の更なる創造を目指しています。多様な働き方に対応可能な柔軟な制度と環境の整備を進め、ダイバーシティの推進にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 47.6歳 | 13.3年 | 7,068,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。なお、以下の数値は主要連結子会社(株式会社オリエンタルコンサルタンツ)の実績です。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.7% |
| 男性育児休業取得率 | 77.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.5% |
| 男女賃金差異(正規) | 76.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | 76.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職の比率(主要6社)(8.0%)、外国人管理職の比率(主要6社)(1.9%)、中途採用者管理職の比率(主要6社)(51.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 成果品に対する瑕疵責任
技術・品質に関する管理を徹底し、高度な技術を要する業務では熟練技術者による照査を実施していますが、万が一成果品に瑕疵があり、損害賠償請求や指名停止処分を受けた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 重大な人身・設備事故等
建設工事現場における安全確保を徹底していますが、重大な人身・設備事故が発生した場合、顧客の信頼低下、損害賠償義務の発生、受注機会の減少等により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 営業キャッシュ・フローの変動
業務代金の入金時期や外注費等の支払時期が契約ごとに異なるため、期末の債権・債務残高が変動しやすく、これに伴い営業キャッシュ・フローが大きく変動する可能性があります。資金繰りへの影響を考慮する必要があります。
■(4) 法的規制
建設業法、建築基準法、独占禁止法、下請法など様々な法規制の適用を受けています。コンプライアンスを重視した経営を行っていますが、これらを遵守できなかった場合、営業活動の制約等により業績に影響が出る可能性があります。



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