アサカ理研 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アサカ理研 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アサカ理研は、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、都市鉱山からの貴金属回収を行う貴金属事業や、エッチング廃液を再生する環境事業などを展開する企業です。直近の業績は、売上高が前期比増収、経常利益も増益となりましたが、当期純利益は減益となりました。


※本記事は、株式会社アサカ理研 の有価証券報告書(第58期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アサカ理研ってどんな会社?


都市鉱山からの貴金属回収を主力とし、環境保全と資源循環に貢献するリサイクル技術を持つ企業です。

(1) 会社概要


同社は1969年に福島県郡山市で設立され、1971年にプリント基板からの貴金属回収事業を開始しました。2008年にジャスダック証券取引所(現:東証スタンダード)へ株式を上場しました。2014年にはマレーシアの子会社化により海外展開を進め、2019年にはリチウムイオンバッテリー(LiB)再生事業に参入するなど、資源リサイクル分野での事業拡大を続けています。

2025年9月30日現在、連結従業員数は194名、単体では181名です。筆頭株主は創業家に関連するとみられる有限会社モラル・コーポレーションで、第2位は個人株主、第3位は銀行となっています。

氏名 持株比率
有限会社モラル・コーポレーション 41.82%
白岩 政一 4.09%
常陽銀行 3.58%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名、計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は山田浩太氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
山田 浩太 取締役社長(代表取締役) 2012年同社入社。営業本部長、管理本部長などを経て2022年より現職。
山田 慶太 取締役会長(代表取締役) 1973年同社入社。1994年代表取締役社長に就任し、2019年より現職。
佐久間 良一 取締役製造本部長 1981年同社入社。システム事業部長、環境事業部営業部長などを経て2025年より現職。
佐久間 幸雄 取締役最高技術責任者 1989年同社入社。技術・開発本部長などを経て2017年より現職。


社外取締役は、市川文子(元IHI物流産業システム取締役)、三崎秀央(兵庫県立大学国際商経学部教授)、髙野俊哉(元福島銀行取締役営業本部長)、末代政輔(元アルバック専務取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「貴金属事業」、「環境事業」、「システム事業」および「その他」事業を展開しています。

**貴金属事業**
電子部品メーカー等から集荷した基板屑などの都市鉱山から、金、銀、白金などを独自技術で回収・精製し、販売または返却を行っています。また、製造装置用治具の精密洗浄や、リチウムイオン電池(LiB)からのレアメタル回収なども手掛けています。
収益は、回収した貴金属の販売代金や、治具洗浄・加工の対価として顧客から受け取ります。運営は主に同社が行っています。

**環境事業**
プリント配線基板メーカーから使用済み塩化第二鉄廃液を引き取り、新液として再生販売するとともに、副産物の銅を回収・販売しています。再生された塩化第二鉄液は水処理凝集剤としても販売されます。
収益は、再生薬品や回収した銅の販売代金、廃液処理に伴う対価として顧客から受け取ります。運営は主に同社が行っています。

**システム事業**
生産・検査現場向けに、品質管理ソリューションや自動計測検査システムなどの開発・販売を行っています。検査機器のデータ収集や国際規格に対応した品質管理体制の構築支援も提供しています。
収益は、システムの開発・販売およびソリューション提供の対価として顧客から受け取ります。運営は主に同社が行っています。

**その他**
連結子会社のアサカ弘運が産業廃棄物の収集運搬を行っているほか、分析事業として金属成分などの分析・評価サービスを提供しています。
収益は、運搬業務や分析サービスの対価として顧客から受け取ります。運営はアサカ弘運および同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は80億円前後で推移していましたが、直近では87億円近くまで増加しています。経常利益は変動がありつつも黒字を維持しており、利益率も一定水準を保っています。当期純利益も毎期黒字を確保しており、安定した収益基盤を有していることが読み取れます。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 81億円 86億円 83億円 80億円 87億円
経常利益 4.5億円 7.8億円 3.9億円 2.7億円 4.3億円
利益率(%) 5.5% 9.0% 4.7% 3.4% 4.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 3.8億円 6.2億円 3.1億円 3.7億円 3.0億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は増加し、売上総利益率も改善傾向にあります。これに伴い営業利益および営業利益率も上昇しており、本業の収益性が高まっていることがうかがえます。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 80億円 87億円
売上総利益 23億円 27億円
売上総利益率(%) 29.2% 31.3%
営業利益 2.9億円 4.9億円
営業利益率(%) 3.7% 5.7%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が7.1億円(構成比32%)、給与及び手当が3.4億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


貴金属事業は金価格の上昇等により増収となり、利益も大幅に増加しました。環境事業は銅の生産量減少により微減収減益となりました。システム事業は大型案件の反動で減収減益となっています。その他事業はグループ内取引の増加により増収増益でした。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期) 利益(2024年9月期) 利益(2025年9月期) 利益率
貴金属事業 65億円 73億円 1.4億円 3.0億円 4.2%
環境事業 12億円 12億円 0.7億円 0.7億円 5.9%
システム事業 2.2億円 2.0億円 0.2億円 0.2億円 8.4%
その他 0.2億円 0.2億円 0.3億円 0.4億円 194.5%
連結(合計) 80億円 87億円 2.7億円 4.3億円 4.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 8.0億円 4.1億円
投資CF -2.5億円 -8.0億円
財務CF -7.9億円 35.5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.3%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.4%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「豊かな創造性を発揮し、社会貢献を果たす」を社是に掲げ、地球資源の有効活用や環境保全に向けた再生技術を柱としています。また、長期ビジョンとして「新たな挑戦を通じて資源循環社会の実現に貢献できるNo.1企業になる」ことを目指し、資源リサイクルの経済的・社会的重要性の高まりに対応した役割を果たしていく方針です。

(2) 企業文化


同社は「市場創造型企業」として、独自の技術を用いて新たな製品やサービスを開発することを重視しています。既存事業の成長に加え、新規事業の創造に取り組む姿勢を持ち、持続的な成長と企業価値の向上を目指す風土があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、持続的な成長と中長期的な企業価値向上のため、資本コストや株価を意識した経営に取り組んでいます。

* 株主資本コスト:7~8%
* 目標:株主資本コストを上回るROEおよびROICの継続的達成

(4) 成長戦略と重点施策


同社は持続的な成長に向け、既存事業の強化と新規事業の育成に注力しています。特に、リチウムイオン電池(LiB)再生事業を重要課題と位置づけ、独自技術の開発と電池メーカーとの提携を進めています。

* 研究開発体制の強化:新規事業創出のため人的リソースを集中
* 人材の活性化:イノベーションを牽引する人材の採用・育成・評価・登用
* LiB再生事業の早期収益化:いわき工場への生産設備導入による量産化
* 既存事業の収益力向上:独自技術による市場拡大と効率化によるコスト低減

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業環境や社会情勢が大きく変化する中で、同社は会社を支える人材の活性化を重要課題としています。イノベーションを牽引する人材の採用・育成・評価・登用に取り組み、持続的な成長を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 41.5歳 12.0年 5,609,086円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 80.5%
男女賃金差異(正規) 80.3%
男女賃金差異(非正規) 85.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境の変動


主要事業である貴金属事業と環境事業は、それぞれ電子部品・デバイス業界やプリント基板業界の需給動向の影響を強く受けます。特定の取引先への仕入依存度が高い状況もあり、競争激化や顧客の他社への乗り換え、利益率低下などが業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 金属相場の変動


主力製品である貴金属および銅加工品等の価格は、国際的な金属相場や為替相場の影響を受けます。これらの相場が著しく変動した場合、同社グループの財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。これに対し、先渡取引の利用などでリスク低減を図っています。

(3) 財務・資金に関するリスク


有利子負債の総資産に対する依存度が高く、金利変動の影響を受ける可能性があります。また、一部の借入金には財務制限条項が付されており、業績悪化によりこれに抵触した場合、期限の利益喪失による一括返済を求められるリスクがあります。

(4) 新規事業投資


LiB再生事業などの新規事業に対し積極的に経営資源を投入していますが、研究開発目標の未達や事業計画の遅れが生じた場合、先行投資分が回収できず、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。