イー・ガーディアン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イー・ガーディアン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場し、インターネットセキュリティ領域で投稿監視やカスタマーサポート、サイバーセキュリティ等のサービスを一気通貫で提供しています。直近の業績は、売上高が前期比微減の113億円、経常利益は同10.4%減の15億円となり、先行投資等の影響で減益となりました。


※本記事は、イー・ガーディアン株式会社 の有価証券報告書(第28期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月10日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. イー・ガーディアンってどんな会社?


同社は「We Guard All」を掲げ、投稿監視やサイバー攻撃対策など、ネットの安心・安全を守る総合セキュリティ企業です。

(1) 会社概要


1998年に設立され、コンテンツ配信事業等を経て2003年に掲示板投稿監視事業を開始しました。2010年に東証マザーズへ上場し、2016年には東証一部(現プライム市場)へ市場変更を果たしています。その後もデバッグ事業やサイバーセキュリティ企業のM&Aを進めて事業領域を拡大し、2023年にはチェンジホールディングスの子会社となり、新たな成長フェーズに入っています。

同グループは連結427名、単体171名の従業員を擁する体制です。筆頭株主は親会社である事業会社のチェンジホールディングスで発行済株式の約半数を保有しており、第2位は創業者の高谷康久氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
チェンジホールディングス 49.70%
高谷 康久 5.63%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.37%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長最高経営責任者は高谷康久氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
高谷 康久 代表取締役社長最高経営責任者 ジョンソン・エンド・ジョンソン、京セラを経て、2005年同社入社。2006年4月より現職。
佐藤 伸 常務取締役最高執行責任者最高財務責任者営業部管掌アカウントリレーション部管掌総務部・経理部・人事部管掌情報システム部管掌 公認会計士。あおぞら銀行、ニトリ、大塚製薬等を経て2024年同社入社。2025年10月より現職。
堤 雄太郎 取締役EGテスティングサービス株式会社代表取締役 2016年同社入社。EGテスティングサービス取締役等を経て、2024年12月より現職。
福留 大士 取締役 アクセンチュアを経てチェンジ(現チェンジHD)を設立し社長に就任。2023年12月より現職。


社外取締役は、楠美雅堂(公認会計士)、峯尾商衡(公認会計士・税理士)、河村尚(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「インターネットセキュリティ事業」の単一セグメントですが、「ソーシャルサポート」「ゲームサポート」「アド・プロセス」「サイバーセキュリティ」「その他」の5つの業務で区分しています。

(1) ソーシャルサポート


SNSやWebサービスにおける投稿監視、風評調査、カスタマーサポート(CS)、本人確認(eKYC)などを提供しています。クライアント企業の要望に応じ、違法コンテンツや誹謗中傷の監視、問い合わせ対応などを代行し、安心安全な環境構築を支援します。

収益は主に、監視や対応の件数に応じた従量課金等により、Webサービス運営企業などから受け取ります。運営は主にイー・ガーディアンやイー・ガーディアン東北などのグループ各社が行っています。

(2) ゲームサポート


ゲーム会社に対し、問い合わせ対応(CS)、不具合検出(デバッグ)、多言語翻訳(ローカライズ)などのサービスを提供しています。プレイヤーからの技術的な質問への回答や、リリース前の品質チェックなどを通じ、ゲーム運営を支えています。

収益は、対応件数や業務量に応じた対価をゲーム開発・運営会社から受け取ります。運営は主にイー・ガーディアンおよびEGテスティングサービスが行っています。

(3) アド・プロセス


インターネット広告に関連する広告審査や入稿管理などのBPOサービスを提供しています。景品表示法や薬機法などの法規制、媒体ごとの掲載基準に基づき、広告テキストや画像の審査を行います。

収益は、審査件数や業務委託料として広告代理店や媒体社などから受け取ります。運営は主にイー・ガーディアンが行っています。

(4) サイバーセキュリティ


Webアプリケーションの脆弱性診断や、Webサイトをサイバー攻撃から守るセキュリティ製品(WAF)の開発・販売を行っています。専門技術者による診断や、クラウド型WAFの提供を通じて企業のセキュリティ対策を支援します。

収益は、診断サービス料やWAFの利用料などを顧客企業から受け取ります。運営は主にEGセキュアソリューションズが行っています。

(5) その他


家電製品やIoT機器などのハードウェアに対するデバッグ業務を提供しています。組み込み機器の動作チェックや検証を行います。

収益は、検証業務の対価を機器メーカー等から受け取ります。運営は主にEGテスティングサービスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は100億円前後から110億円台へと緩やかに成長してきましたが、直近2期は横ばいから微減傾向にあります。利益面では、22年9月期に経常利益23億円を記録した後、直近は15億円程度まで調整しています。利益率は13〜20%台と比較的高水準を維持していますが、低下傾向が見られます。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 99億円 118億円 119億円 114億円 113億円
経常利益 20億円 23億円 18億円 17億円 15億円
利益率(%) 20.5% 19.7% 15.2% 15.0% 13.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 11億円 17億円 12億円 11億円 9億円

(2) 損益計算書


直近2期間を見ると、売上高はほぼ横ばいで推移していますが、売上総利益と営業利益はいずれも減少しています。売上総利益率は29%台を維持していますが、販管費の増加などにより営業利益率は1.7ポイント低下しました。コストコントロールと成長投資のバランスが課題となっています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 114億円 113億円
売上総利益 34億円 33億円
売上総利益率(%) 29.6% 29.0%
営業利益 17億円 15億円
営業利益率(%) 15.0% 13.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料が4.1億円(構成比23%)、交際費が2.1億円(同12%)、役員報酬が1.7億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社グループは、「インターネットセキュリティ事業」の単一セグメントなので、事業ごとの利益は開示されていません。

主力事業であるソーシャルサポートはECやFintech関連が伸長し増収となりましたが、ゲームサポートは大型案件の売上が想定を下回り減収となりました。アド・プロセスは広告審査の伸び悩みで減収、その他(ハードウェアデバッグ)も減収となりました。一方、サイバーセキュリティはWAF等が好調で増収を確保しました。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期)
ソーシャルサポート 68億円 71億円
ゲームサポート 16億円 14億円
アド・プロセス 14億円 13億円
サイバーセキュリティ 9億円 9億円
その他 7億円 6億円
連結(合計) 114億円 113億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。本業で稼いだ資金(営業CFプラス)の範囲内で投資(投資CFマイナス)や配当・自社株買いなどの株主還元(財務CFマイナス)を行っており、財務の健全性は高いと言えます。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 17億円 10億円
投資CF -0.5億円 -1.2億円
財務CF 30億円 -3.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は87.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「We Guard All」を経営理念として掲げています。主力のインターネット投稿監視やカスタマーサポートに加え、広告審査やサイバーセキュリティなど多岐にわたるサービス展開を通じて、すべての利用者に安心と安全を提供することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は持続的な成長のために優秀な人材の確保と育成を重視しています。階層別研修や資格支援制度でスキル向上を図るとともに、正社員登用制度の整備や職場環境の改善を通じて人材の定着を促進する文化があります。また、法令遵守やガバナンスへの意識向上にも注力しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、総合ネットセキュリティ企業としての飛躍を目指し、既存事業の拡大と新規事業の推進に取り組んでいます。具体的な数値目標としては以下を掲げています。

* 女性管理職比率:2026年3月までに30%以上

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向けて、サイバーセキュリティ事業の基盤強化やM&Aを活用した事業拡大、新サービスの提供に積極的に取り組む方針です。特に「AIと人のハイブリッド」を強みとし、親会社であるチェンジHDグループとの連携を強化することで、AI開発やエンタープライズ・官公庁案件の獲得を加速させます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


労働人口減少や高スキル人材不足に対応するため、長年培ったノウハウで積極的に人材を採用しています。入社後は研修や資格支援でスキルアップを促し、正社員登用や環境改善で定着を図ります。これにより高品質なサービスを提供し、顧客満足度を高めることを重視しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 32.4歳 3.9年 4,724,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 28.6%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 84.7%
男女賃金差異(正規雇用) 92.6%
男女賃金差異(非正規) 91.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の取引先への依存について


同社のインターネットセキュリティ事業では、TikTok Pte Ltd.(売上比率10.7%)およびメルカリ(同13.9%)への依存度が高くなっています。これら主要顧客の事業方針変更や動向によっては、同社の事業戦略や経営成績に大きな影響が及ぶ可能性があります。

(2) 競合について


インターネットセキュリティ市場は成長が期待されるため、国内外から多数の事業者が参入する可能性があります。資本力や知名度で勝る競合他社との競争が激化した場合、価格競争や受注減を招き、同社グループの業績に悪影響を及ぼす恐れがあります。

(3) 新技術の出現について


IT業界は技術革新が速く、業界標準やニーズが常に変化しています。新たな技術への対応が遅れた場合、提供サービスの陳腐化や競争力低下を招くリスクがあります。同社は新技術への適応を進めていますが、対応の成否は業績に影響を与える可能性があります。

(4) 設備及びネットワークの安全性について


同社の事業は24時間365日のシステム稼働を前提としており、災害やサイバー攻撃などで設備やネットワークに障害が発生すると、サービス停止や信用低下に直結します。障害防止策を講じていますが、万一の事態には解約や新規獲得への支障が生じ、業績に重大な影響が出る可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。