オルトプラス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オルトプラス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場。主要事業としてスマートフォン向けゲームの企画・開発・運営、Webサービス開発、およびゲーム業界向け人材マッチングを展開しています。直近の決算では、主力タイトルの課金収入減少等により減収となり、営業損失および当期純損失を計上しています。


※本記事は、株式会社オルトプラス の有価証券報告書(第16期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. オルトプラスってどんな会社?


スマートフォン向けゲームの企画・運営を主力とし、ITサービスの受託開発や人材支援も展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は2010年にソーシャルゲームの企画・開発・運営を目的として設立されました。2013年に東証マザーズへ上場し、2014年には東証一部へ市場変更しました(2022年の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行)。事業拡大に伴い、2018年には高知県に開発拠点となる株式会社オルトプラス高知を設立し、2021年には人材マッチングサービスを行う株式会社STANDを設立するなど、グループ体制を強化しています。

2025年9月30日現在の連結従業員数は199名、単体では124名です。主要株主については、筆頭株主は同社の資本業務提携先であるジーエフホールディングス株式会社が関与する投資ファンド、第2位は創業者の石井武氏、第3位は資産管理業務を行う証券会社となっています。

氏名 持株比率
G Future Fund1号投資事業有限責任組合 36.51%
石井 武 3.05%
楽天証券株式会社 2.60%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役は石井武氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
石井 武 代表取締役 元気株式会社取締役、株式会社AQインタラクティブ(現マーベラス)執行役員などを経て、2010年5月に同社を設立し代表取締役に就任。株式会社STAND代表取締役等を兼任。
本間 稔彦 取締役 株式会社メビウス取締役事業部長、株式会社クロスゲームズ執行役員プロデューサー等を経て、2016年10月に同社入社。エンターテインメント事業本部長等を歴任し、2022年12月より現職。
石原 優 取締役 Doka Japan株式会社等を経て2019年5月に同社入社。財務・経理部長、執行役員を経て、2024年12月より現職。管理本部長を務める。


社外取締役は、入江秀明(元バンダイナムコエンターテインメントアメリカ副社長)、仙石実(公認会計士・税理士)、遠藤元一(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ゲーム事業」「サービス開発事業」および「技術・人材支援事業」を展開しています。

(1) ゲーム事業


スマートフォン向けアプリを中心とするオンラインゲームの企画・開発・運営を行っています。ユーザー認知度の高いIP(知的財産)を用いたタイトルを、IP保有会社との協業により開発・運営する「自社パブリッシングタイトル」と、他社タイトルの運営を受託する「運営受託タイトル」を提供しています。

収益は主に、アプリ内でのアイテム課金等による利用者からの収入や、他社からの運営受託費・開発受託費等からなります。運営は、オルトプラスおよび子会社の株式会社アイディアファクトリープラスなどが担っています。主なタイトルには『ヒプノシスマイク -Alternative Rap Battle-』などがあります。

(2) サービス開発事業


法人顧客向けに、「受託開発」と「共同開発」の2つの形態でサービスを提供しています。受託開発では、長年培った開発ノウハウを活かしてクライアントのニーズに応じたサービス開発を行い、共同開発ではパートナー企業と連携して新たなサービスを創出しています。

収益源は、クライアントからの受託開発費用や、共同開発したサービスから得られる収益の配分などです。本事業の運営は主にオルトプラスが行っています。

(3) 技術・人材支援事業


ゲーム開発における高度な技術力とノウハウを活かし、ゲーム開発人材を必要とする企業に対して人材サービスを提供しています。実践的な環境での人材育成にも注力し、即戦力となる開発人材を輩出しています。

収益は、人材派遣や紹介に伴うサービス料等からなります。運営は主に子会社の株式会社STANDが担っており、グループ会社の株式会社オルトプラス高知とも連携して人材育成体制の強化を図っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は減少傾向が続いています。利益面では、経常損失および当期純損失の計上が続いており、依然として厳しい収益状況にあります。直近期においても減収となり、赤字からの脱却が課題となっています。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 73億円 60億円 44億円 35億円 29億円
経常利益 -3.5億円 -7.4億円 -5.2億円 -4.2億円 -4.4億円
利益率(%) -4.8% -12.3% -11.9% -11.8% -15.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -4.0億円 -7.1億円 -5.3億円 -2.8億円 -4.8億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は前期比で減少しており、それに伴い売上総利益も縮小しています。営業損失および経常損失は前期からさらに拡大しており、収益性の改善が進んでいない状況がうかがえます。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 35億円 29億円
売上総利益 2.1億円 1.7億円
売上総利益率(%) 6.1% 6.0%
営業利益 -4.5億円 -4.7億円
営業利益率(%) -12.9% -16.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が2.8億円(構成比43%)、支払手数料が0.8億円(同12%)、広告宣伝費が0.7億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


各事業区分の売上を見ると、主力であるゲーム開発・運営による収入、および技術・人材支援による収入がいずれも前期を下回っています。サービス開発事業も減収となっており、全事業領域において収益が縮小しています。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期)
ゲーム開発・運営による課金収入等 17億円 14億円
サービス開発事業による収入 3.1億円 2.8億円
技術・人材支援による収入 15億円 12億円
連結(合計) 35億円 29億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)はマイナスであり市場平均を下回っていますが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.8%で市場平均(スタンダード市場・非製造業平均48.5%)を上回っています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF -4.1億円 -5.7億円
投資CF 0.6億円 0.2億円
財務CF 2.7億円 6.5億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「笑顔あふれるセカイを増やす」をパーパス(存在意義)として掲げています。ゲームというエンターテインメントを通じて、ユーザーをはじめ、従業員、株主、取引先など、同社を取り巻く人々の「笑顔」につながる新しい価値を創造・提供していくことを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は、経営の基本方針に基づき、事業活動を通じて企業価値および株主価値の最大化を図る文化を持っています。また、人材戦略を重視し、多様な勤務形態や職場環境の改善、福利厚生の充実などにより、働きやすい労働環境の整備に努めることで、優秀な人材の確保と育成を推進する風土があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、中長期的な事業成長と収益基盤の確保・安定化を経営上の重要課題としています。その達成のために、事業規模を示す「売上高」と、事業活動における収益を示す「経常利益」を重要な経営指標として定めています。現在は早期の黒字化実現による事業基盤および財務基盤の安定化を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


黒字化実現に向けて、主力のゲーム事業の収益力向上を最優先課題としています。具体的には、有力なIP(知的財産)の獲得による自社パブリッシングタイトルの提供や、ゲームから派生するコンテンツの商品化など重層的な展開を目指します。また、AI等の新技術の活用やシステムインフラの強化も進めます。

さらに、一般事業会社向けのサービス企画・開発受託や、技術・人材支援事業の強化により収益機会の多様化を図ります。これらを支えるため、優秀なプロダクトマネージャーやエンジニアの採用強化、および社内人材の育成に注力するとともに、グループ経営体制および内部管理体制の強化にも継続して取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、事業構造の改善と安定的な収益基盤確保のため、優秀な人材の確保と組織強化を重要課題としています。そのために、多様な勤務形態の導入や職場環境・福利厚生の充実を図り、働きやすい環境を整備しています。また、従業員のスキルや勤続年数に応じた段階別の研修プログラムを体系的に実施し、社内人材の育成に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 39.1歳 4.5年 5,799,000円


※平均年間給与は、基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.0%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 78.7%
男女賃金差異(正規雇用) 79.1%
男女賃金差異(非正規) -%


※男女賃金差異(非正規)については、同社単体のパート・有期労働者が存在しない、または該当者がいないため記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 継続企業の前提に関する重要事象等


同社グループは11期連続で営業損失等を計上しており、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる状況が存在しています。これに対し、新規タイトル開発やIPポートフォリオの拡充、技術・人材支援事業の強化による収益構造の改善、および新株予約権の発行等による資金調達で財務基盤の安定化を図り、当該状況の解消に努めています。

(2) ゲームタイトルの企画・開発・運営


安定的な収益確保にはヒットタイトルの継続的な提供が不可欠です。同社はIPを利用した新規案件や他社タイトルの運営受託を進めていますが、IPが利用できなくなる等により開発・運営が困難となり、十分なユーザーを獲得できなかった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) プラットフォーム運営事業者の動向


同社のゲームは主にAppleやGoogle等のプラットフォームを通じて提供されています。各事業者の規約を遵守していますが、今後、事業戦略の転換や規約変更、手数料率の変更等が生じた場合、サービス内容の変更や収益性の低下などにより、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 人材の確保・育成


事業拡大には優秀な人材の確保と育成が不可欠です。同社は採用活動や教育研修の充実に努めていますが、必要な人材を十分に確保できなかった場合や、重要な人材が流出した場合には、業務運営や事業展開の制約要因となり、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。