ANAPホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ANAPホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場。「ANAP」ブランド等のカジュアルファッション販売を中心に、エステサロン運営やビットコイン投資事業を展開。第34期は連結売上高18億円、営業損失および最終損失を計上し、事業再生プロセスを経て経営再建中です。


※本記事は、株式会社ANAPホールディングス の有価証券報告書(第34期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年12月1日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ANAPホールディングスってどんな会社?


若年層向けカジュアルファッション「ANAP」を展開し、近年はエステやビットコイン事業へ参入した企業です。

(1) 会社概要


1992年に設立され、原宿エリアでの出店を皮切りに事業を拡大しました。2002年にはオンラインショップの運営を開始し、2013年にJASDAQ市場(現スタンダード市場)へ上場しています。2025年には持株会社体制へ移行し、現在の商号へ変更するとともに、新たにビットコイン事業を行う子会社等を設立しました。

連結従業員数は250名、単体は7名です。筆頭株主は事業再生支援等を行うネットプライス事業再生合同会社で、第2位は株式会社キャピタルタイフーン、第3位はGAD有限責任事業組合となっています。創業者の家髙利康氏は主要株主から外れましたが、一定の株式を保有しています。

氏名 持株比率
ネットプライス事業再生合同会社 42.08%
キャピタルタイフーン 22.0%
GAD有限責任事業組合 13.85%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は川合林太郎氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
川合 林太郎 代表取締役社長 住友商事ロシア現地法人、KasperskyLabsJapan代表取締役等を経て、2021年イフィネクスジャパン代表取締役社長。2025年3月同社代表取締役会長、同年7月より現職。
山本 和弘 取締役副社長 パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)、HVBキャピタル証券会社等を経て、2009年クロノス・キャピタル合同会社代表社員。2025年3月より現職。
宮橋 一郎 取締役 日本アイ・ビー・エム、シマンテック等を経て、2022年イフィネクスジャパン執行役員CTO。2025年3月より現職。
根岸 良直 取締役 イノテック、ユニバーサルエンターテインメント等で取締役管理本部長(CFO)を歴任。2025年7月同社入社、同年11月より現職。


社外取締役は、柚木庸輔(公認会計士・税理士柚木庸輔事務所代表)、浦山周(弁護士法人中央総合法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「店舗・卸売販売、ライセンス事業」「インターネット販売事業」「エステティック・リラックスサロン事業」「投資関連事業」および「その他」事業を展開しています。

店舗・卸売販売、ライセンス事業

「ANAP」や「BASICKS」ブランドのアパレル商品を、ショッピングモールやファッションビル等の実店舗で販売するほか、他社への卸売を行っています。また、ブランド商標の使用許諾も行っています。
収益は、一般顧客への商品販売代金、卸売販売による代金、およびライセンス契約に基づくロイヤリティ収入です。運営は主に株式会社ANAPが行っています。

インターネット販売事業

自社ブランド専用の「ANAPオンラインショップ」等のECサイトを運営し、アパレル商品を販売しています。自社開発システムにより、顧客管理や在庫管理を一元化し、スマートフォン対応を強化しています。
収益は、一般顧客への商品販売代金です。運営は主に株式会社ANAPが行っています。

エステティック・リラックスサロン事業

ビューティーサロン、エステティックサロン、およびリラクゼーションサロン等の店舗運営を行っています。前受金モデルからサブスクリプションモデルへの転換を進めています。
収益は、顧客からの施術・サービス利用料です。運営は主に株式会社AELおよび株式会社ARFが行っています。

投資関連事業

ビットコインを中核とした投資およびコンサルティング事業を行っています。単なる保有にとどまらず、ビットコインエコシステムの構築を目指しています。
収益は、投資運用益やコンサルティング料等です。運営は主に株式会社ANAPライトニングキャピタルが行っています。

その他

報告セグメントに含まれない事業として、その他の収益活動を行っています。
収益は、当該事業に関連する売上等です。運営は同社グループが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2024年8月期(第33期)は連結財務諸表を作成していないため、表には記載していません。直近の第34期は、事業再生プロセスの過程で大幅な最終赤字となっています。過去の連結期間と比較しても、売上規模は縮小傾向にあり、利益面でも苦戦が続いています。

項目 2021年8月期 2022年8月期 2023年8月期 2025年8月期
売上高 51億円 51億円 42億円 18億円
経常利益 -6.3億円 -4.5億円 -8.0億円 -3.2億円
利益率(%) -12.5% -8.8% -19.0% -17.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -8.1億円 -5.2億円 -11.6億円 -23.7億円

(2) 損益計算書


当期(第34期)のみ連結決算を行っているため、前期比較は行いません。売上総利益率は約50%を確保していますが、販管費の負担が重く、大幅な営業損失となっています。

項目 2025年8月期
売上高 18億円
売上総利益 9億円
売上総利益率(%) 49.8%
営業利益 -15億円
営業利益率(%) -82.1%


販売費及び一般管理費のうち、その他が11億円(構成比46%)、地代家賃が5億円(同21%)、給料及び手当が5億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントにおいてセグメント損失を計上しています。特に主力の店舗・卸売販売事業と新規参入のエステ事業での赤字額が大きく、収益性の改善が課題となっています。

区分 売上(2025年8月期) 利益(2025年8月期) 利益率
店舗・卸売販売、ライセンス事業 11億円 -4億円 -34.7%
インターネット販売事業 2億円 -1億円 -44.1%
エステティック・リラックスサロン事業 5億円 -3億円 -54.7%
投資関連事業 0.0億円 -0.1億円 -1620.7%
その他 0.1億円 0.0億円 4.4%
調整額 - -7億円 -
連結(合計) 18億円 -15億円 -82.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業の収益がマイナスであるものの、将来の成長や事業転換のために借入や増資によって資金を調達し、投資を行っている「勝負型(事業再生・転換型)」です。

項目 2025年8月期
営業CF -19億円
投資CF -107億円
財務CF 132億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-21.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、アパレル事業やエステ事業、投資関連事業などの多様な事業展開を通じて、顧客のライフスタイルに寄り添い、より豊かで充実した日々を提供することを使命としています。「美と健康、そして新たな価値を創造する」ことを掲げ、顧客満足度の最大化を追求しています。

(2) 企業文化


同社グループは、既存の概念や因習に囚われず、常に進化し続ける企業でありたいと考えています。そのために、顧客や社会にとって真に価値のあるものを追求し、テクノロジーと実業、デジタルとアナログの垣根を越えた新しい体験の創造を実現する新たな挑戦を続けることを重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、本業における営業活動の成果を示す「営業利益」を特に重視する経営指標としています。ビジネスモデルを支える「ブランド力・ブランド認知度」「魅力ある店舗づくり」「オンラインショッピングサイトの販売力」を強化し、売上高営業利益率の向上を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


経営体制を刷新し、ホールディングス体制へ移行しました。アパレル事業では、ターゲット層を明確化したリブランディングや原価率の見直し、SNSを活用したデジタルマーケティングの強化、ECシステムの刷新による顧客体験の向上を進めます。また、新規事業としてビットコイン事業やエステ事業へ参入し、事業ポートフォリオの転換と全社的な構造改革を推進することで、収益基盤の獲得を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、事業の発展を担う人材の獲得を最優先とし、即戦力となる社会人採用を積極的に行っています。また、フレックスタイム制の導入や育児短時間勤務の期間延長など、ワーク・ライフバランスの改善に取り組み、長時間労働の削減や有給休暇の取得促進を通じて働きやすい環境を整備することで、優秀な人材の確保と定着を図る方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年8月期 51.2歳 1.5年 7,875,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。持株会社単体のデータであり、従業員数が少ない点に留意が必要です。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.0%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 58.0%
男女賃金差異(正規雇用) 58.0%
男女賃金差異(非正規) -


※男女賃金差異(非正規)については、同社は公表項目として選択していないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、連結子会社である株式会社ANAPの管理職に占める女性労働者の割合(88%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 継続企業の前提に関する重要事象等

同社グループは、2020年8月期以降6期連続で各段階損益の損失を計上し、営業キャッシュ・フローも7期連続でマイナスとなっており、継続企業の前提に重要な疑義が生じています。事業再生ADRの手続き完了や新株発行による資金調達で債務超過は解消しましたが、依然として厳しい経営状況が続いています。

(2) ファッショントレンドや消費者ニーズの変化

主力のアパレル事業は流行の移り変わりが早く、商品のライフサイクルが短い傾向にあります。急激な景気悪化や顧客嗜好の変化が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。ブランドの並行展開などでリスク低減を図っていますが、市場環境の変化には注意が必要です。

(3) イオングループへの出店集中

展開する店舗の多くがイオングループ運営の商業施設内に出店しており、同グループへの依存度が高い状況です。イオングループの集客力の変化、経営方針や出店政策の変更、業界再編などがあった場合、同社グループの事業展開や業績に影響を与える可能性があります。

(4) 相場変動リスク(ビットコイン)

投資関連事業においてビットコインを保有・運用していますが、その価格は需給、規制、経済情勢など様々な要因で大きく変動します。ビットコイン価格の急激な変動は、同社グループの財務の健全性や経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。