フィックスターズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フィックスターズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フィックスターズはプライム市場に上場し、ソフトウェアの高速化サービスとSaaS事業を展開する企業です。大量データ処理が必要な半導体やモビリティ分野などで技術力を提供しています。直近の業績は、高速化案件の需要増により売上高20.3%増、経常利益12.0%増と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社フィックスターズ の有価証券報告書(第24期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フィックスターズってどんな会社?


同社は「Speed up your AI」を掲げ、マルチコアプロセッサ等の性能を最大限に引き出すソフトウェア高速化技術に強みを持つ技術者集団です。

(1) 会社概要


2002年に設立された同社は、2004年にマルチコアプロセッサ「Cell」向けのソフトウェア開発を開始し、技術基盤を築きました。2014年にマザーズ市場へ上場後、2016年には市場第一部へ変更し、2017年より量子コンピュータを手掛けるD-Wave Systems社との協業を開始しています。2022年の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しました。

現在の従業員数は連結で334名、単体で279名です。筆頭株主は創業者の三木聡氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
三木 聡 10.75%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505025 9.92%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 9.76%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.6%です。代表取締役社長は三木聡氏が務めています。社外取締役比率は41.7%です。

氏名 役職 主な経歴
三木 聡 代表取締役社長執行役員 1996年ラック入社。2002年フィックスターズ設立、代表取締役社長CEO就任。Fixstars Solutions CEO等を歴任し、2002年より現職。
堀 美奈子 取締役執行役員管理本部長 2001年アガスタ入社、同社取締役を経て2007年同社入社。同年管理本部長、取締役就任。2007年より現職。
蜂須賀 利幸 取締役執行役員Solutionカンパニープレジデント 1998年アルテック入社。2007年同社入社、営業本部長。ソリューション事業部長を経て、2021年より現職。
松田 佳希 取締役執行役員SaaSカンパニープレジデント 2011年東京大学物性研究所助教。2013年同社入社。Fixstars Amplify代表取締役社長を務め、2024年より現職。


社外取締役は、石井真(元ソニーLSIデザイン社長)、樺島弘明(エル・ティー・エス社長)、榎本ゆき乃(弁護士)、野澤俊通(THECOO取締役)、鉢嶺登(デジタルホールディングス会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「Solution事業」および「SaaS事業」、そして「その他」事業を展開しています。

(1) Solution事業


大量データの高速処理を実現するソフトウェア開発・高速化サービスや、関連するハードウェアの提供を行っています。顧客は、半導体、モビリティ、産業機器、ライフサイエンス、金融分野などの研究開発および製品開発を行う企業や研究機関です。

収益は、顧客からの受託開発費やコンサルティング料、およびハードウェアの販売代金から得ています。運営は主にフィックスターズ(親会社)が行い、米国ではFixstars Solutions, Inc.が、自動運転分野では株式会社Fixstars Autonomous Technologiesが事業を展開しています。

(2) SaaS事業


Solution事業で培った技術知見を活かし、量子コンピューティングクラウド「Fixstars Amplify」や乳がんAI画像診断支援「METIS Eye」、AI開発プラットフォーム「Fixstars AIBooster」などを提供しています。

収益は、各サービスの利用者から受け取るサブスクリプション形式等のサービス利用料です。運営は、株式会社Fixstars Amplify、株式会社Smart Opinionなどのグループ会社が担っています。

(3) その他


報告セグメントに含まれない事業として、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)事業などを展開しています。

収益は、投資先企業の株式売却益や評価益などから得られます。運営は主に株式会社Fixstars Investmentが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に右肩上がりで成長を続けています。経常利益も増加傾向にあり、利益率は20%台中盤から後半の高い水準を維持しています。当期純利益も順調に推移しており、安定した収益基盤と成長性がうかがえます。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 55.0億円 63.1億円 70.4億円 80.0億円 96.2億円
経常利益 9.6億円 16.9億円 20.8億円 23.1億円 25.8億円
利益率(%) 17.5% 26.8% 29.5% 28.8% 26.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 4.5億円 9.6億円 15.8億円 13.9億円 16.9億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で約20%増加し、売上総利益も順調に拡大しています。営業利益率は依然として20%台後半の高水準を保っていますが、前期と比較するとわずかに低下しました。これは事業拡大に伴う投資やコスト増の影響が含まれている可能性がありますが、全体として高い収益性を維持しています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 80.0億円 96.2億円
売上総利益 41.8億円 50.1億円
売上総利益率(%) 52.3% 52.1%
営業利益 23.0億円 25.8億円
営業利益率(%) 28.8% 26.8%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬が4.7億円(構成比20%)、研究開発費が4.5億円(同19%)を占めています。売上原価に関しては、労務費や外注費が主な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


主力のSolution事業は、半導体やモビリティ分野での旺盛な需要を背景に、売上高・利益ともに大きく伸長しました。一方、SaaS事業は売上高が増加しているものの、将来の収益獲得に向けた先行投資を積極的に行っているため、赤字幅が拡大しています。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期) 利益(2024年9月期) 利益(2025年9月期) 利益率
Solution事業 76.8億円 91.7億円 24.6億円 32.4億円 35.3%
SaaS事業 3.2億円 4.5億円 -1.5億円 -4.2億円 -95.0%
その他 - - -0.0億円 -2.3億円 -
調整額 - - - - -
連結(合計) 80.0億円 96.2億円 23.0億円 25.8億円 26.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 16.6億円 19.8億円
投資CF -1.7億円 -6.3億円
財務CF -12.4億円 -10.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は26.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は83.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、ソフトウェア技術を通じて全社員の幸福およびすべてのお客様の成功を追求し、自社の技術を活かして全世界のしあわせ向上に貢献することを経営理念としています。「Speed up your AI」をスローガンに掲げ、創業以来培ってきたソフトウェア高速化技術をAI領域へ活用し、顧客のAI開発と活用を強力に支援することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、社員の9割以上をエンジニアが占める技術者集団です。ハードウェアの性能を最大限に引き出す低レイヤソフトウェア技術や、高度なアルゴリズムの実装力を重視する文化があります。また、培った技術ナレッジを共有する仕組みを整え、プロフェッショナル職制度を通じてエンジニアとしてのキャリアパス構築を支援するなど、技術力向上と人材育成を大切にする風土を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、経営の効率化と継続的な事業拡大を通じて企業価値を向上させ続けることを目標としています。特に、2024年9月期を初年度とする中期経営ビジョンにおいて、営業利益を重要な経営指標と位置づけています。

* 売上高
* 自己資本利益率(ROE)
* 営業利益
* フリーキャッシュ・フロー

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「Winner takes all」が進む市場環境下で、ソフトウェア開発・高速化サービスの安定成長と新規事業開発を推進しています。特にAIや量子コンピュータ等の先端分野において、自社プロダクト(SaaS)の展開による「継続型ビジネス」の拡大に注力しています。

* 新製品の開発と研究開発への継続投資
* SaaS型自社プロダクト(Fixstars Amplify等)による収益モデルの確立
* 優秀なエンジニアの確保と育成
* 知名度とブランド価値の向上

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は優秀なエンジニアを競争力の源泉と位置づけ、積極的な採用と育成を行っています。社内ナレッジの共有や研修制度の整備に加え、エンジニアとしてのキャリアパスを支援するプロフェッショナル職制度を導入しています。また、多様な人材の活躍を重視し、性別や国籍等を問わない採用・登用を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 36.1歳 6.0年 7,908,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.0%
男性育児休業取得率 70.0%
男女賃金差異(全労働者) 88.2%
男女賃金差異(正規) 87.2%
男女賃金差異(非正規) 100.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定販売先への依存について


同社グループは特定の主要顧客(キオクシア株式会社)に対する売上割合が高く、当期においては全売上高の17.1%を占めています。今後も同社との取引は継続する見込みですが、万が一プロジェクトの変更や中止により売上が減少した場合には、同社グループの事業および業績に影響を与える可能性があります。

(2) 技術革新への対応について


同社グループが注力するソフトウェア開発・高速化サービス分野では、技術革新のスピードが極めて速いのが特徴です。常に世界最先端レベルの技術力が期待されており、新しいハードウェアやアルゴリズム等のIT技術の変化に迅速かつ十分に対応できなかった場合、競争力が低下し、事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 人材の確保および育成について


同社グループの事業はエンジニア等の人的リソースに大きく依存しています。事業拡大に伴い、高度なスキルを持つ人材の確保と育成が必要不可欠です。適切な人材を十分に確保できない場合や、エンジニア等の退職者が一時的に多数発生した場合には、技術力や開発力が低下し、事業展開に制約が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。