フリークアウト・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フリークアウト・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フリークアウト・ホールディングスは、東証グロース市場に上場し、広告事業やインフルエンサーマーケティング事業を展開する企業です。2025年9月期は、主力のアドテク領域が堅調に推移し、経常利益は5.6億円と前期比で大幅増益となりました。一方で、連結売上高は微減収となっています。


※本記事は、株式会社フリークアウト・ホールディングス の有価証券報告書(第15期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フリークアウト・ホールディングスってどんな会社?


同社グループは、インターネット広告のリアルタイム取引システム(DSP)やインフルエンサーマーケティング事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は2010年10月に設立され、2011年1月にDSP「FreakOut」をリリースしました。2014年6月に東京証券取引所マザーズ市場へ上場し、2017年1月には持株会社体制へ移行して現在の商号に変更しました。近年では事業領域の拡大を進めており、2023年9月にはインフルエンサーマーケティング大手のUUUMを連結子会社化しています。

同社グループの従業員数は連結で1,051名、単体で62名です。大株主構成を見ると、筆頭株主は創業者で代表取締役社長の本田謙氏(資産管理会社含む)です。第2位は資本業務提携を結んでいる伊藤忠商事となっており、事業シナジーを意識した資本構成となっています。

氏名 持株比率
DAIWA CM SINGAPORE LTD - NOMINEE MOTHERS OF INVENTION PTE LTD 37.15%
伊藤忠商事 16.32%
株式会社SBI証券 7.23%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長 Global CEOは本田謙氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
本田 謙 代表取締役社長Global CEO 2005年ブレイナー設立。ヤフーを経て2010年同社設立・代表取締役CEO就任。2018年より現職。
永井 秀輔 取締役CFO 新日本監査法人、エンデバー・パートナーズ、ペットゴー取締役CFOを経て2016年同社入社。2017年より現職。
時吉 啓司 取締役 ワコールを経て2011年同社入社。フリークアウト代表取締役社長、本田商事代表取締役社長を経て2020年より現職。
大元 伸一 取締役 伊藤忠商事入社後、ウェルネス・コミュニケーションズ取締役などを歴任。2023年より現職。


社外取締役は、井出博之(EY新日本有限責任監査法人等)、高田祐史(島田法律事務所パートナー)、松橋雅之(エフワンインターナショナル常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「広告事業」、「インフルエンサーマーケティング事業」、「投資事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 広告事業


日本、北米、アジアにおいて、広告主向けの広告配信プラットフォーム(DSP)や、媒体社向けの収益最大化支援ツールを提供しています。主なプロダクトには、DSP「Red」、プレミアム媒体向けプラットフォーム「Scarlet」、YouTube動画広告配信システム「GP」などがあります。また、北米ではPlaywireを中心に広告収益最大化支援を行っています。

収益は、広告主や広告代理店からの広告配信料、および媒体社からのシステム利用料やレベニューシェアによって構成されています。運営は、国内では株式会社フリークアウト、北米ではPlaywire, LLC、アジア各国の拠点などが担当しています。

(2) インフルエンサーマーケティング事業


クリエイターとともにビジネスを創造する事業を展開しており、クリエイターのサポートやプロモーション提案を行っています。具体的には、YouTube上の広告収益(アドセンス)の管理、オリジナルグッズの企画・販売(P2C)、タイアップ動画の制作などが含まれます。

収益は、YouTubeからのアドセンス収益の一部、グッズ販売売上、企業からのプロモーション料(タイアップ動画制作費等)などから得ています。運営は主にUUUMが担っており、クリエイターのマネジメントからコンテンツ制作までを一貫して提供しています。

(3) 投資事業


グローバル展開のポテンシャルを持つITベンチャー企業を対象とした投資を行っています。製品やソリューションを開発する企業への投資を通じて、キャピタルゲインによる企業価値向上を目指しています。

収益は、投資先企業の株式売却益や評価益などから構成されています。運営は、同社グループの投資部門や海外拠点が連携して行っています。

(4) その他事業


グループ全体の経営管理機能の提供や、既存の広告領域以外の新規事業開発を行っています。データ解析基盤や機械学習エンジンを活用し、リテールテックなどの領域へも展開しています。

収益は、グループ会社からの経営指導料や新規事業からの売上などで構成されています。運営は主にフリークアウト・ホールディングスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、第13期までは売上高300億円前後で推移していましたが、UUUMを子会社化した第14期に売上高が500億円台へと急拡大しました。利益面では第13期に過去最高益を記録しましたが、第14期は赤字に転落しています。第15期は黒字回復を果たしています。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上収益(または売上高) 295億円 290億円 306億円 517億円 503億円
経常利益 11億円 27億円 23億円 4億円 6億円
利益率(%) 3.8% 9.4% 7.6% 0.7% 1.1%
当期利益(親会社所有者帰属) -2億円 -13億円 89億円 -42億円 -7億円

(2) 損益計算書


直近2期間の傾向を見ると、売上高は前期の決算期変更に伴う変則決算の影響もあり微減となりました。売上総利益率は約28%で推移しています。営業利益は前期のほぼゼロ水準から改善し、1億円を確保しました。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 517億円 503億円
売上総利益 147億円 141億円
売上総利益率(%) 28.3% 27.9%
営業利益 0億円 1億円
営業利益率(%) 0.0% 0.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が59億円(構成比42%)、システム利用料が12億円(同8%)を占めています。売上原価についての詳細な内訳記載はありません。

(3) セグメント収益


広告事業は北米事業の減速等があったものの、国内のプレミアム媒体支援事業などが伸長し増収となりました。インフルエンサーマーケティング事業は構造改革を進めていますが、減収となり営業損失を計上しています。その他事業は売上が大きく伸びましたが、先行投資により損失が拡大しています。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期) 利益(2024年9月期) 利益(2025年9月期) 利益率
広告事業 295億円 304億円 10億円 7億円 2.5%
投資事業 0.5億円 0.6億円 -0.7億円 -0.1億円 -11.9%
インフルエンサーマーケティング事業 221億円 195億円 -1億円 -0.3億円 -0.1%
その他事業 1億円 4億円 -0.8億円 -5億円 -102.1%
調整額 -14億円 -9億円 -7億円 -2億円 -
連結(合計) 517億円 503億円 0億円 1億円 0.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、本業の営業活動、投資活動、財務活動のいずれもマイナスとなる「末期型」の状態を示しています。ただし、財務CFのマイナスは主に連結範囲の変更を伴わない子会社株式の取得(UUUM完全子会社化関連)や借入返済によるものであり、単純な資金繰り悪化とは異なります。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF -27億円 -0.4億円
投資CF 2億円 -10億円
財務CF 31億円 -30億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.4%でグロース市場平均(2.9%)を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は26.1%でグロース市場平均(43.3%)を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「人に人らしい仕事を。」をミッションとして掲げています。広告分野において、優れたプロダクトの提供を通じて広告主の価値最大化と媒体社の収益最大化を推進するとともに、技術資産であるデータ解析基盤や機械学習エンジンを活用し、広告以外の領域においても人間が創造的な仕事に専念できるサービスの提供を目指しています。

(2) 企業文化


同社はミッション実現のために、「最高の失敗」「最強のインパクト」「最善のモラル」「最大のオープンネス」という4つの価値観を大切にしています。挑戦と失敗を賞賛し、常識にとらわれない発想で社会にインパクトを与えつつ、高いモラルを持って業界をリードし、オープンな環境でイノベーションを起こす文化を推奨しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、売上高、EBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却額+持分法投資利益+株式報酬費用+M&A関連費用)、および調整後当期利益を重要視する経営指標としています。具体的な数値目標については記載がありませんが、これら指標の向上を通じて企業価値の拡大を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


広告事業では、国内においてプレミアム媒体支援事業の一部である動画・Connected TV領域やモバイルマーケティングプラットフォーム「Red」を積極的に展開します。海外では、既存拠点およびM&A先の効率化による収益化とグループシナジーによる収益基盤強化を進めます。また、開発力の強化、M&Aによる事業領域拡大、内部管理体制や情報セキュリティの強化にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人に人らしい仕事を」というミッションに基づき、多様なバックグラウンドを持つ人材の育成と働きやすい環境整備に取り組んでいます。新入社員への育成担当者の配置や1on1面談、エンジニア向けの「Tech Day」などを実施し、成長を支援しています。また、リフレッシュ休暇や部活動支援などを通じて創造的なコミュニケーションを促進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 35.6歳 2.8年 7,507,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.5%
男性育児休業取得率 83.3%
男女賃金差異(全労働者) 75.4%
男女賃金差異(正規雇用) 76.9%
男女賃金差異(非正規) 108.9%


※上記データは連結子会社であるUUUM株式会社の実績です。提出会社は公表義務の対象ではないため記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、仕事の満足度(75.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) インターネットの普及と広告市場の変動


同社グループの事業はインターネットの利用拡大を前提としており、新たな法規制や予期せぬ要因で普及が阻害された場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、インターネット広告市場は景気動向や広告主の戦略変更の影響を受けやすく、これらの環境変化が事業に影響を与える可能性があります。

(2) 技術革新とプログラマティック広告の動向


インターネット業界は技術革新が速く、新しい広告手法やテクノロジーへの対応が遅れると競争力が低下するリスクがあります。また、主要サービスであるプログラマティック広告取引の普及が減退したり、一部メディアが非プログラマティック取引に回帰する動きが強まった場合、業績に影響が出る可能性があります。

(3) 競合環境の激化


プログラマティック広告市場には国内外に競合が存在し、市場拡大に伴う新規参入や競争激化が予想されます。また、子会社のUUUMが展開するクリエイター関連ビジネスでも競合が増加しており、競争力の維持が困難になった場合、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

(4) プラットフォームへの依存


動画コンテンツ事業などはYouTube等の他社プラットフォーム上でサービスを提供しており、運営会社の方針変更やプラットフォーム自体の利用者減少などが生じた場合、事業展開に支障をきたす可能性があります。また、Google社との契約解除などが生じた場合も業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。