※本記事は、株式会社イルグルム の有価証券報告書(第25期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. イルグルムってどんな会社?
インターネット広告の効果測定ツールやECサイト構築プラットフォームを提供し、企業のマーケティング活動を支援する企業です。
■(1) 会社概要
2001年に前身となる有限会社ロックオンを設立し、2004年に広告効果測定システム「アドエビス」の販売を開始しました。2006年にはEC構築ソフト「EC-CUBE」を提供開始し、2014年に東証マザーズへ上場を果たしました。2019年に現社名へ商号変更し、近年では株式会社トピカやルビー・グループ株式会社を子会社化するなど、M&Aを通じた事業拡大を進めています。
同グループの従業員数は連結334名、単体141名です。筆頭株主は創業者の岩田進氏で、第2位、第3位も個人株主となっており、創業者オーナー色が残る資本構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 岩田 進 | 42.59% |
| 福田 博一 | 12.43% |
| 又座 加奈子 | 5.31% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員CEOは岩田進氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岩田 進 | 代表取締役社長執行役員CEO | 2001年同社設立。株式会社イーシーキューブ等のグループ会社代表を経て、2019年より現職。 |
| 赤澤 洋樹 | 取締役上席執行役員CFO | ガイア株式会社、株式会社日本エスコン、株式会社ユー・エス・ジェイを経て2016年に入社。経営管理本部長などを歴任し2025年より現職。 |
| 椎木 茂 | 取締役 | 日本アイ・ビー・エム株式会社専務執行役員、日本オラクル株式会社副社長執行役員などを歴任。2017年より現職。 |
社外取締役は、佐伯壽一(元神鋼ケアライフ株式会社社長)、西野充(元ペンタックス株式会社執行役員)、大久保丈二(元プライスウォーターハウスコンサルタント株式会社常務取締役CFO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「マーケティングDX支援事業」および「コマース支援事業」を展開しています。
■(1) マーケティングDX支援事業
広告効果測定サービス「アドエビス」やレポート自動作成ツール「アドレポ」、動画マーケティング支援などを提供しています。主な顧客は、インターネット広告を活用してマーケティングを行う企業や広告代理店です。
収益は主に、サービスの利用企業から受け取る月額利用料(サブスクリプション)等で構成されています。運営は同社のほか、株式会社スプー、株式会社トピカなどの子会社が行っています。
■(2) コマース支援事業
EC構築のためのオープンプラットフォーム「EC-CUBE」の提供および、ECサイトの構築・運用支援サービスを行っています。EC事業者のインフラ整備や売上向上を支援するソリューションを提供しています。
収益は、プラットフォームと連携する決済代行事業者等からの手数料収入や、EC事業者からの開発・保守費用等が柱です。運営は主に株式会社イーシーキューブやルビー・グループ株式会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に右肩上がりで成長しており、特に直近期はM&Aの効果もあり大幅な増収となりました。一方で利益面では、経常利益は黒字を維持しているものの、直近期は特別損失の計上により最終損益が赤字に転落しています。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 30億円 | 33億円 | 36億円 | 36億円 | 49億円 |
| 経常利益 | 3.6億円 | 4.0億円 | 3.3億円 | 1.6億円 | 2.8億円 |
| 利益率(%) | 12.3% | 12.0% | 9.1% | 4.5% | 5.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3.1億円 | 2.0億円 | 1.4億円 | 1.1億円 | -3.0億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い売上総利益も伸長していますが、販管費の増加により営業利益率は一桁台で推移しています。売上規模の拡大に対し、利益率の改善が課題となっています。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 36億円 | 49億円 |
| 売上総利益 | 21億円 | 26億円 |
| 売上総利益率(%) | 58.3% | 52.0% |
| 営業利益 | 1.6億円 | 2.8億円 |
| 営業利益率(%) | 4.5% | 5.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給与賞与が9億円(構成比41%)、役員報酬が1億円(同6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
マーケティングDX支援事業は堅調に推移し、安定した収益基盤となっています。一方、コマース支援事業はM&A等により売上が急拡大しており、全社売上の成長を牽引しています。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) |
|---|---|---|
| マーケティングDX支援事業 | 29億円 | 29億円 |
| コマース支援事業 | 8億円 | 20億円 |
| 連結(合計) | 36億円 | 49億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
イルグルムのキャッシュ・フローの状況について解説します。
営業活動によるキャッシュ・フローは、減損損失やのれん償却額の計上等があったものの、前年比で大幅な収入増となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に無形固定資産や有形固定資産の取得による支出がありました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済や子会社株式の取得による支出が主な要因です。これらの結果、期末の現金及び現金同等物は増加しました。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.9億円 | 5.9億円 |
| 投資CF | -4.9億円 | -1.9億円 |
| 財務CF | 0.5億円 | -2.6億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「Impact On The World」を経営理念に掲げています。データとテクノロジーを活用して世界中の企業のマーケティング活動を支援し、売り手と買い手の幸せを創出することを通じて、関わるすべての人に良い影響を与え、それを世界規模で実現することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「一人一人が力を存分に発揮し、ともに成長できる組織へ」という基本方針に基づき、HRポリシーやリーダーシッププリンシプルといった具体的な行動指針を設けています。これらを指針として、教育カリキュラムの充実や相互理解を生むコミュニケーション機会の創出に取り組み、持続的な人と組織の成長を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営方針「VISION2027」において、連結営業利益の黒字を維持しながら先端テクノロジーへの投資を継続し、新たな収益の柱を構築することを目指しています。
* 連結売上高:100億円
* ROE:10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
プロダクト開発会社から、プロダクトと専門性の高い人材によって顧客ビジネスを推進するパートナーへの変革を掲げています。2026年9月期からはセグメント名称を「マーケティングAI事業」「コマースAI事業」へ変更し、生成AI等の先端技術を活用して顧客の生産性向上と競争力強化を支援します。また、M&Aによる事業領域の拡大や組織能力の獲得も進めていきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「VISION2027」の実現に向け、生成AI等のテクノロジーを活用できる高度な専門性と創造性を兼ね備えた人材の獲得・育成を最重要課題としています。多様な働き方を支援する環境整備や教育の充実を図り、持続可能な雇用の創出と人的資本の価値向上に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 34.7歳 | 5.9年 | 6,257,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 24.1% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異につきましては、公表義務の対象ではないため記載を省略しています。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業環境に関するリスク
インターネット広告市場やEC市場の動向に大きく影響を受けます。インターネットの普及に伴う規制強化や技術革新によりサイト運営が困難になった場合、また景気変動により広告需要やEC取引が縮小した場合には、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定のサービスへの依存
主力サービス「アドエビス」関連の売上が全体の多くを占めています。市場環境の変化や競合サービスの台頭により同サービスの需要が減少した場合、業績に大きな影響を与える可能性があります。また、プラットフォーム側の方針変更等によりデータの自動収集が制限された場合、サービス品質の低下やコスト増のリスクがあります。
■(3) M&Aに関するリスク
事業拡大のためにM&Aを重要な手段と位置づけていますが、買収後の事業運営や統合プロセスが計画通りに進まない場合、あるいは市場環境の変化等により期待したシナジーが得られない場合には、のれんの減損損失が発生するなど、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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