デジタルプラス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

デジタルプラス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所(グロース市場)に上場するフィンテック企業です。主要事業はデジタルギフトやデジタルウォレットを展開するフィンテック事業と、メディア運営を行うデジタルマーケティング事業です。2025年9月期は前期比で売上収益が増加する一方、営業損失および当期損失を計上し、増収減益(赤字転落)となりました。


#デジタルプラス転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社デジタルプラス の有価証券報告書(第21期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. デジタルプラスってどんな会社?


「人を不幸にしないための、デジタルと」を掲げ、デジタルギフトやウォレットなどのフィンテック事業を主力とする企業です。

(1) 会社概要


2005年に株式会社リアルワールドとして設立され、クラウドメディア「Gendama」を開始しました。2014年に東京証券取引所マザーズへ上場を果たし、2022年には現在の株式会社デジタルプラスへ商号変更を行いました。近年は「フィンテックフォーカス」を掲げ、2025年にはデジタルマーケティング支援事業を譲渡するなど、フィンテック領域への事業集中を進めています。

2025年9月30日現在の連結従業員数は31名、単体では11名という組織体制です。筆頭株主は代表取締役社長の菊池誠晃氏で発行済株式の23.68%を保有しています。第2位は投資事業組合、第3位はLTVマーケティング等を手掛ける株式会社Macbee Planetとなっています。

氏名 持株比率
菊池 誠晃 23.68%
PC投資事業有限責任組合 9.25%
Macbee Planet 8.47%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は菊池誠晃氏が務めています。取締役7名のうち4名が社外取締役であり、社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
菊池誠晃 代表取締役社長 2001年サイバーエージェント入社。2005年同社設立とともに代表取締役社長に就任。2005年7月より現職。
千葉博文 取締役 2013年同社入社。リアルX代表取締役、同社執行役員を経て、2020年12月より現職。
加藤涼 取締役 監査法人、証券会社、事業会社役員等を経て2020年同社執行役員CFO就任。2022年12月より現職。


社外取締役は、澤博史(エステートテクノロジーズ代表取締役)、志村正之(Shimura&Partners代表取締役)、西井健二朗(セブン銀行執行役員)、松本雄真(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「フィンテック事業」および「デジタルマーケティング事業」を展開しています。

(1) フィンテック事業


企業から個人への送金やインセンティブ付与を効率化する「デジタルギフト®」や、資金移動業に対応した「デジタルウォレット」を提供しています。主な顧客はキャンペーンや福利厚生、株主優待などで個人への支払ニーズを持つ法人企業です。

収益は、デジタルギフトの発行手数料やシステム利用料、デジタルウォレットにおける交換手数料などから構成されています。また、ファクタリングサービスによる収益も含まれます。運営は主にデジタルプラス、および子会社の株式会社デジタルフィンテック、株式会社デジタルandが行っています。

(2) デジタルマーケティング事業


自社で運営するWebメディアを通じた情報発信や集客支援を行っています。既存事業のメディア運営を中心に展開しており、特定のターゲット層に向けたコンテンツ提供を行っています。

収益は、運営するメディアにおける広告掲載料や成果報酬型のアフィリエイト収入などが主な源泉となります。運営は主にデジタルプラスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2024年9月期から2025年9月期にかけて、売上収益は増加傾向にあります。一方で、利益面では2024年9月期には黒字を確保していましたが、2025年9月期には損失を計上し、赤字に転じています。利益率もマイナスとなっており、収益性の改善が課題となる推移を示しています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上収益 8.4億円 9.3億円
税引前利益 0.8億円 -0.4億円
利益率(%) 9.9% -3.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.2億円 -0.7億円

(2) 損益計算書


売上収益は増加しましたが、売上原価の増加により売上総利益率は低下しています。また、販売費及び一般管理費も増加しており、結果として営業損益は赤字となりました。売上の拡大に対し、コストコントロールや利益率の維持が課題となっている状況がうかがえます。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 8.4億円 9.3億円
売上総利益 7.1億円 7.5億円
売上総利益率(%) 85.2% 80.4%
営業利益 0.6億円 -0.0億円
営業利益率(%) 6.7% -0.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が2.6億円(構成比32%)、業務委託費が1.9億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益


フィンテック事業は売上収益が大きく伸長し、利益も増加しました。一方、デジタルマーケティング事業は事業譲渡の影響もあり、売上収益、利益ともに減少しました。全社費用等の調整額が増加しているものの、フィンテック事業が全体の収益を牽引する構造が鮮明になっています。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期) 利益(2024年9月期) 利益(2025年9月期) 利益率
フィンテック事業 6.3億円 8.5億円 2.1億円 3.2億円 37.1%
デジタルマーケティング事業 2.1億円 0.8億円 1.5億円 0.5億円 62.2%
調整額 - - -3.1億円 -3.7億円 -
連結(合計) 8.4億円 9.3億円 0.6億円 -0.0億円 -0.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


* パターン:**再建・転換型**
なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に営業債権及びその他の債権の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF -0.2億円 -4.5億円
投資CF -1.7億円 0.5億円
財務CF 5.4億円 7.1億円


* 企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-9.1%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は25.3%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人を不幸にしないための、デジタルと」というミッションを掲げています。人々の人生に不可欠となったデジタルを活用し、無意識のうちにあきらめてしまっていることを、叶えられることに変えていくサービスの展開を基本方針としています。

(2) 企業文化


同社グループは、失敗を恐れずに挑戦し続けることを重視しています。多様な人材が集い、各社員が最大限の力を発揮することで活力を生み出し、お客様への課題解決や持続可能な社会の実現に向けて、社会への価値提供に努める姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、重要な経営指標として「流通総額」「売上総利益」および「営業利益」を掲げています。具体的な数値目標や達成期限については記載がありませんが、これら3つの指標の成長を重視した経営を行っています。

(4) 成長戦略と重点施策


「フィンテック事業」を中核とし、デジタルギフトおよびデジタルウォレットを活用した流通総額の継続的な拡大を最優先課題としています。特に、資金移動業対応デジタルウォレットの垂直立ち上げを重要課題と位置付け、セキュリティ強化や安心・安全な運用体制の構築、サービスブランドの価値向上を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


組織全体の生産性向上が不可欠であると認識し、優秀な人材の採用・育成を継続して進めています。あわせて、AI技術を活用した業務効率化・自動化を推進することで、バックオフィスを含む組織全体の業務プロセスの高度化と生産性向上を図る方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 38.0歳 3.4年 6,300,000円


※平均年間給与は、基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は「女性の職業性格における活躍の推進に関する法律」及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」に規定による公表義務の対象ではないため、有報には本稿の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) システム障害リスク


事業がネットワークや各種システムに依存しているため、災害、事故、サイバー攻撃等によるシステム障害やサービス停止が発生した場合、重大な支障を来す可能性があります。設備増強等で安定運営に努めていますが、障害が長期化した場合は信頼低下や対応コスト増により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) フィンテック市場の変化


フィンテック市場で事業を展開しており、競合の増加、技術革新、法令・規制の改正等により事業環境が大きく変化する可能性があります。これらの変化に対し、サービス内容や事業運営の見直し、システム対応等が適切にできない場合、事業展開や経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) 競合環境の激化


複数の事業者が参入しており、既存事業者の拡大や大手企業の参入により顧客獲得競争が激化する可能性があります。価格競争やユーザー獲得コストの増加が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、人材・マーケティング・新規事業への積極投資を行い、競争優位性の確保に注力しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。