※本記事は、株式会社CRI・ミドルウェアの有価証券報告書(第25期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月15日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. CRI・ミドルウェアってどんな会社?
音声・映像関連の独自技術を核としたミドルウェア「CRIWARE」を、ゲームやモビリティ等の幅広い分野に提供する研究開発型企業です。
■(1) 会社概要
同社は2001年、CSK総合研究所から独立する形で設立され、2014年に東証マザーズへ上場しました。2019年には中国に現地法人を設立し、2022年の市場区分見直しに伴いグロース市場へ移行しています。近年は主力のゲーム事業に加え、モビリティや組込み機器向けのエンタープライズ事業を拡大させています。
同グループの従業員数は連結173名、単体153名です。筆頭株主はゲームソフト大手のセガで、第2位は同社代表取締役社長の押見正雄氏、第3位は従業員持株会となっており、創業時の経緯からセガとの関係性を持ちつつ、経営陣や従業員が主要株主として名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| セガ | 12.25% |
| 押見 正雄 | 7.86% |
| CRI・ミドルウェア従業員持株会 | 5.64% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役会長は鈴木正彦氏、代表取締役社長は押見正雄氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 鈴木 正彦 | 代表取締役会長 | 1981年コンピューターサービス(現SCSK)入社。同社副社長執行役員CTO等を経て、2020年CRI・ミドルウェア顧問。2022年11月より現職。 |
| 押見 正雄 | 代表取締役社長 | 1987年CSK総合研究所入社。2002年CRI・ミドルウェアへ出向し、取締役、専務を経て、2013年4月より現職。 |
| 櫻井 敦史 | 取締役専務執行役員 | 2000年CSK総合研究所入社。2004年CRI・ミドルウェア入社。研究開発本部長、エンターテインメント事業本部長等を歴任し、2023年12月より現職。 |
| 田中 克己 | 取締役常務執行役員 | セガ・エンタープライゼス、マーベラスAQL等を経て、2013年CRI・ミドルウェア執行役員。コーポレート本部長等を歴任し、2023年12月より現職。 |
| 及川 直昭 | 取締役常務執行役員 | 図書印刷、SEGA-AM2を経て、2004年CRI・ミドルウェア入社。営業本部長等を歴任し、2025年10月より現職。 |
社外取締役は、鈴木久和(元SCSK副社長)、田中信重(元住友生命保険シニアアドバイザー)、和藤誠治(TMI総合法律事務所パートナー)、田村奈央子(田村奈央子公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ゲーム事業」および「エンタープライズ事業」を展開しています。
■(1) ゲーム事業
主にゲーム業界向けに、開発をスムーズかつ効率的に行うための音声・映像関連ミドルウェアの提供や、画像最適化ソリューションの提供、音響制作等を行っています。「CRIWARE」ブランド製品は多くのスマートフォンゲームや家庭用ゲーム機で採用されています。
収益は、顧客であるゲーム会社からのミドルウェア許諾料(ライセンスフィー)や、音響制作の受託費等から得ています。運営は、同社および子会社のツーファイブ、上海希艾維信息科技有限公司が行っています。
■(2) エンタープライズ事業
ゲーム事業で培った音声・映像関連技術を活かし、モビリティ(車載)、家電・IoT機器、Web動画等の分野へミドルウェアやソリューションを提供しています。特に車載サウンドソリューションやメーターグラフィックソリューションに注力しています。
収益は、機器メーカーやサービス事業者からのライセンス許諾料、ソリューション提供費、および関連する受託開発費等から得ています。運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあります。利益面では、2022年9月期に赤字を計上しましたが、その後は回復し、直近では営業利益率16%を超える水準まで改善しています。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 29億円 | 28億円 | 30億円 | 32億円 | 34億円 |
| 経常利益 | 3.4億円 | 1.4億円 | 3.8億円 | 3.8億円 | 5.7億円 |
| 利益率(%) | 11.6% | 4.9% | 12.7% | 12.1% | 16.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2.4億円 | -3.0億円 | 2.4億円 | 3.0億円 | 3.5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も拡大しています。売上総利益率は60%前後で推移しており、高い収益性を維持しています。直近では営業利益率も向上し、収益体質の強化が進んでいることがわかります。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 32億円 | 34億円 |
| 売上総利益 | 17億円 | 21億円 |
| 売上総利益率(%) | 54.2% | 60.1% |
| 営業利益 | 3.7億円 | 5.5億円 |
| 営業利益率(%) | 11.6% | 16.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が3.2億円(構成比21%)、役員報酬が1.9億円(同12%)、研究開発費が1.9億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
ゲーム事業、エンタープライズ事業ともに増収増益となりました。特にエンタープライズ事業は、モビリティ分野での製品採用数増加などが寄与し、大幅な利益成長を見せています。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) | 利益(2024年9月期) | 利益(2025年9月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ゲーム事業 | 17億円 | 18億円 | 1.2億円 | 1.9億円 | 10.3% |
| エンタープライズ事業 | 15億円 | 16億円 | 2.5億円 | 3.7億円 | 22.4% |
| 連結(合計) | 32億円 | 34億円 | 3.7億円 | 5.5億円 | 16.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は「健全型」です。本業の営業活動から十分なキャッシュを獲得し、それを原資として投資活動や株主還元、負債の返済を行っている安定した状態です。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.3億円 | 8.5億円 |
| 投資CF | -0.1億円 | -1.4億円 |
| 財務CF | -0.8億円 | -1.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「音と映像で社会を豊かに」を企業理念に掲げています。設立以来、感動を伝える音声・映像関連の独自技術の研究開発を通じて、豊かな社会の創造に貢献する企業となることを目指しています。
■(2) 企業文化
設立以来、音声・映像関連の技術を得意として研究開発を行い、ゲーム業界を中心としたエンターテインメント業界に展開してきた実績を基盤としています。技術革新のスピードが速い環境下で、ゲーム事業で培った技術やノウハウを他分野へ展開し、事業領域を広げる姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画(2026-2030)のもと、2030年度までにモビリティ、ゲーム、オンラインコミュニケーションをコア事業とした事業構造に変革し、売上高100億円企業グループとなることを目指しています。
* 売上高:100億円
* 営業利益率:20%
* 許諾売上高比率:60~70%
* ROE:15%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
ゲーム事業で得られた技術や資金をエンタープライズ事業の研究開発や営業強化に投下し、事業領域を拡大します。また、モビリティやオンラインコミュニケーションなどの新製品への継続投資に加え、海外市場(中国・欧米)での拡販を強化し、グループ全体での飛躍的な成長を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続可能な社会の実現と事業拡大のため、社会や顧客への価値提供の源泉である人材の活躍を支援することを重要視しています。新卒・中途を問わず多様な優秀人材の獲得、社員の能力発揮を後押しする学びの支援、ライフステージの変化に対応し安心して長く活躍できる基盤作りを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 39.5歳 | 7.1年 | 6,496,000円 |
※平均年間給与は、基準内給与に加えて通勤費以外の基準外給与及び賞与、25期業績連動賞与を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.1% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※男性育児休業取得率、男女賃金差異については、公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の採用の比率(20%)、育児休暇取得人数(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業内容に関するリスク
ゲーム向け製品の国内市場での競合優位性が崩れることや、他社による代替技術の登場が業績に影響する可能性があります。また、モビリティ市場向け事業において、主要顧客との関係変化や自動車業界の動向変化、製品不具合の発生がリスク要因となります。
■(2) 海外事業に関するリスク
中国を中心に海外事業を展開しており、予期せぬ政策変更、法制度や許認可制度の変更、経済情勢の悪化、カントリーリスク、感染症の流行などが、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) サイバー攻撃に関するリスク
機密情報や個人情報、自社技術に関する知的財産等を保有しており、ISMS認証取得や社内研修等の対策を講じていますが、サイバー攻撃や不正アクセス等による情報流出が発生した場合、損害賠償請求や信用の失墜により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 人材確保に関するリスク
製品開発には高い技術力が必要であり、優秀なエンジニアの採用と育成が重要課題です。人材獲得競争の激化により採用に支障が生じたり、離職者が著しく増加した場合、製品開発体制や業績に影響を及ぼす可能性があります。



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