※本記事は、アイビーシー株式会社 の有価証券報告書(第23期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アイビーシーってどんな会社?
アイビーシーは、複雑化するITシステムの性能監視ツール「System Answer」シリーズを自社開発し、企業の安定稼働やコスト削減を支援する専門企業です。
■(1) 会社概要
2002年にネットワーク監視機器の開発を目的に設立され、翌年には監視アプライアンス製品をリリースしました。2015年に東京証券取引所マザーズへ上場し、2016年には市場第一部へ市場変更を果たしました。その後、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しています。2025年には新サービス「ITOGUCHI」を発表するなど、事業領域の拡大を進めています。
2025年9月30日時点の従業員数は82名(単体)です。筆頭株主は創業者で代表取締役社長の加藤裕之氏、第2位はプラスフジ、第3位は投資事業有限責任組合となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 加藤 裕之 | 37.11% |
| プラスフジ | 9.00% |
| 光通信KK投資事業有限責任組合 | 5.36% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長CEOは加藤裕之氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 加藤 裕之 | 代表取締役社長CEO | アライドテレシス、ネット・チャート・ジャパン等を経て2002年に同社設立。2021年より現職。 |
| 小田 成 | 取締役副社長COO | 1985年富士通入社。同社執行役員常務などを歴任後、2020年に同社取締役就任。2021年より現職。 |
| 太田 祐樹 | 取締役 | ネットワークバリューコンポネンツ取締役などを経て2017年に同社入社。2020年より現職。 |
社外取締役は、梶本繁昌(元アイネット社長)、天野信之(コウェル社長)、東常夫(元ユニアデックス社長)、由利孝(TY Insight社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ソフトウェア・サービス関連事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) ライセンスの販売
自社開発のITシステム性能監視ツール「System Answer シリーズ」のライセンスを販売しています。マルチベンダー環境の性能情報を収集・分析し、障害予兆の検知やキャパシティ計画を支援します。公務、金融、製造など幅広い業種の顧客が利用しています。
収益は、顧客からのソフトウェア使用権(ライセンス)料や、製品をインストールした筐体の販売代金から得ています。運営は主にアイビーシーが行っています。
■(2) サービスの提供
「System Answer シリーズ」のデータを活用した分析サービスや、ITインフラの設計・構築・運用支援を提供しています。また、24時間365日の有人監視サービス「SAMS」やセキュリティ診断など、顧客の課題に応じたソリューションを展開しています。
収益は、コンサルティングフィー、構築作業費、月額制の運用監視サービス料などから構成されます。運営は主にアイビーシーが行っています。
■(3) その他物販
顧客のIT課題解決のため、他社製品やソリューションサービスに付随するハードウェアやソフトウェアの販売を行っています。自社製品と組み合わせた提案により、顧客のシステム環境全体をサポートします。
収益は、他社製品等の販売代金として顧客から受領します。運営は主にアイビーシーが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近数期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあります。第23期より非連結決算へ移行しましたが、主力製品のライセンス更新が好調で、売上高は24億円、経常利益は5.7億円と成長を維持しています。利益率も改善傾向にあり、安定した収益基盤を築いています。
| 項目 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 15.0億円 | 19.0億円 | 21.8億円 | 24.0億円 |
| 経常利益 | -0.2億円 | 2.3億円 | 4.1億円 | 5.7億円 |
| 利益率(%) | -1.5% | 12.3% | 18.8% | 17.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -0.4億円 | 0.4億円 | 2.3億円 | 4.1億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も拡大しています。直近の第23期では売上総利益率が76.9%と高い水準を維持しており、自社ソフトウェア製品の高い収益性が反映されています。営業利益も前期比で大幅に増加し、収益性が向上しています。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 21.8億円 | 24.0億円 |
| 売上総利益 | 15.5億円 | 18.5億円 |
| 売上総利益率(%) | 71.1% | 76.9% |
| 営業利益 | 3.8億円 | 5.7億円 |
| 営業利益率(%) | 17.6% | 23.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が5.3億円(構成比41.2%)、役員報酬が1.3億円(同9.7%)を占めています。売上原価においては、経費が2.2億円(構成比39.1%)、商品仕入高が2.7億円(同48.4%)となっています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、販売区分別の売上高を開示しています。主力のライセンス販売が前期比20.6%増と大きく伸長し、物販も同35.3%増と好調でした。一方、サービス提供は前期比5.8%減となりましたが、全体としては増収となっています。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) |
|---|---|---|
| ライセンスの販売 | 10.4億円 | 12.5億円 |
| サービスの提供 | 6.6億円 | 6.3億円 |
| その他物販等 | 3.9億円 | 5.3億円 |
| 合計 | 20.9億円 | 24.0億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
**パターン判定:健全型**
営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資および財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスです。本業で稼いだ現金を、将来への投資や借入金の返済・配当に充当しており、財務的に健全な状態と言えます。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.5億円 | 7.0億円 |
| 投資CF | 1.6億円 | -1.3億円 |
| 財務CF | -1.7億円 | -0.9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は19.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「お客様に心から喜んでいただける企業になる」「プロフェッショナルとしての倫理観と実行力を備える」「お客様との信頼関係を築き、優れた人材の育成を通じて社会に貢献する」という3つの経営理念を掲げています。また、「IT障害をゼロにする」をミッションとし、「信頼と技術で、社会と共に成長する」というビジョンのもと、ITシステムの運用支援を通じて社会インフラの安定と発展に寄与することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、公正で透明性の高い経営を重視し、ステークホルダーとの信頼関係構築を基本としています。社内では、プロフェッショナルとしての倫理観と実行力を備え、チーム力を高めることで企業価値向上に貢献できる人材育成を目指しています。また、環境配慮や社会貢献活動(障がい者支援NPOとの連携等)にも取り組み、社会課題解決と企業成長の両立を図る姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、継続的な収益向上のため、売上高・売上総利益・営業利益の成長とともに、ROE(株主資本当期純利益率)を重要な経営指標として位置づけています。2026年9月期の業績予想として以下の数値を掲げています。
* 売上高:27億円
* 営業利益:6.1億円
* 経常利益:6.1億円
* 当期純利益:4.2億円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、主力製品「System Answer シリーズ」の機能拡張やブランディング強化に加え、AI活用による次世代サービスの開発に注力しています。特に新サービス「ITOGUCHI」による運用支援の高度化や、インテグレーション事業の拡大を通じて、ストックビジネスの積み上げと事業領域の拡大を図っています。また、デジタルマーケティングの活用によるリード獲得や、高度専門人材の育成・確保にも取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、持続的な成長のために、高度な技術力と多様な価値観を持つ人材の確保と育成を重視しています。全社研修や階層別教育を通じて、プロフェッショナルとしての倫理観と実行力を備えた人材を育成する方針です。また、在宅勤務や育児支援制度など柔軟な働き方を整備し、従業員のエンゲージメント向上と働きやすい環境づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 37.4歳 | 6.7年 | 6,551,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」および「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の規定による公表義務の対象企業ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の製品への依存
売上高の約半数を主力製品である「System Answer G3」などのライセンス販売が占めています。これらの製品分野において、強力な競合製品の出現などにより競争環境が激化し、売上高が減少した場合には、同社の業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) ライセンス契約の更新率
同社はストックビジネスとしてライセンスの継続的な更新を重視しています。直近の更新率は高い水準を維持していますが、何らかの要因で契約更新率が急激に低下した場合には、安定的な収益基盤が揺らぎ、業績に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 人材の確保と育成
事業拡大には高度な専門性を持つ技術者や営業担当者の確保が不可欠です。しかし、IT業界における人材獲得競争は激化しており、十分な人材を確保できない場合や、既存社員の流出が進んだ場合には、事業運営や成長戦略の実行に支障をきたす可能性があります。



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