キャリア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

キャリア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場し、高齢化社会型人材サービスを展開する企業です。シニア層の就労支援を行うシニアワーク事業と、介護人材を供給するシニアケア事業を柱としています。第17期は、主力事業の売上減少や将来への先行投資等の影響により、減収となり、営業損益および最終損益は赤字に転じました。


※本記事は、株式会社キャリア の有価証券報告書(第17期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. キャリアってどんな会社?


シニア層と介護業界に特化した人材サービスを提供し、高齢化社会における労働力不足の解消を目指す企業です。

(1) 会社概要


同社は2009年に東京都新宿区で設立され、シニア人材派遣および介護施設向け看護師派遣事業を開始しました。その後、オフィス向けやロジスティックス業界向けの人材サービスへと領域を拡大し、2016年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場を果たしました。2022年には市場区分の見直しに伴いグロース市場へ移行しています。

2025年9月末時点の連結従業員数は355名、単体では335名です。筆頭株主は創業者の川嶋一郎氏で、発行済株式の過半数を保有しており、第2位は証券業務を行う株式会社SBI証券、第3位は個人株主となっています。経営トップが安定的な持分を有するオーナー系企業としての側面を持っています。

氏名 持株比率
川嶋 一郎 50.30%
SBI証券 9.37%
水谷 桂子 3.45%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役会長兼社長は川嶋一郎氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
川嶋 一郎 代表取締役会長兼社長 2001年ザッパラス入社。2007年BH設立代表取締役。2009年同社設立代表取締役。2018年より現職。JR西日本キャリア代表取締役等を兼任。
蒲原 翔太 取締役 2009年キャリアマート入社。同年同社入社。メディカル事業部長、シニアケア事業部長等を歴任。2023年より現職。kusavee代表取締役等を兼任。
竹上 雅彦 取締役 2001年グッドウィル・グループ入社。ブレイブ取締役、キューボ代表取締役等を経て、2024年より現職。


社外取締役は、池田脩太郎(元リクルート室長)、岩見和磨(弁護士)、舘充保(弁護士)、山本和成(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「高齢化社会型人材サービス」の単一セグメントで事業を展開していますが、事業内容は主に「シニアワーク事業」と「シニアケア事業」に区分されます。

(1) シニアワーク事業


55歳以上の「アクティブシニア」を対象に、雇用を創造する事業です。ビルメンテナンス、ベッドメイキング、オフィスワーク、ロジスティックス(倉庫内軽作業等)などの分野で、シニア人材の派遣、紹介、業務請負を行っています。若手採用を望む企業に対し、業務フローを細分化してシニアでも対応可能な業務を切り出すことでマッチングを図ります。

この事業の収益源は、顧客企業から受け取る人材派遣料金、人材紹介手数料、および業務請負代金です。運営は主にキャリアが行っており、シニア人材の活用による顧客の採用コスト低減や業務効率化を支援しています。

(2) シニアケア事業


高齢者介護サービスが継続的に提供されるよう、それを支える看護師や介護士を介護施設等へ安定的に供給する事業です。主な就労場所は入所介護型施設、在宅介護型施設、医療機関などで、有資格者の人材派遣、人材紹介、紹介予定派遣、および訪問介護事業を行っています。

収益源は、介護施設等の顧客から受け取る派遣料金や紹介手数料です。運営は主にキャリアが行っています。労働力不足が深刻な介護業界において、人材サービスを通じて課題解決に取り組んでいます。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2023年9月期をピークに減少傾向にあります。利益面では、経常利益が黒字で推移していましたが、当期(2025年9月期)は赤字に転落しました。当期純利益も同様に赤字となっており、収益性の改善が課題となっています。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 142億円 163億円 178億円 167億円 149億円
経常利益 4.8億円 3.7億円 6.0億円 4.0億円 -0.2億円
利益率(%) 3.4% 2.2% 3.4% 2.4% -0.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.7億円 2.0億円 3.8億円 2.5億円 -1.5億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は減少し、売上総利益率も低下しています。販売費及び一般管理費は微増しており、売上総利益の減少と相まって営業損失を計上する結果となりました。コスト構造の変化や売上の伸び悩みが利益を圧迫している状況が見て取れます。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 167億円 149億円
売上総利益 37億円 32億円
売上総利益率(%) 21.9% 21.7%
営業利益 4.3億円 -0.1億円
営業利益率(%) 2.6% -0.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が12億円(構成比38.0%)、広告宣伝費が7億円(同20.7%)を占めています。

(3) セグメント収益


両事業とも減収となりました。シニアワーク事業はBPO事業への転換を進めたものの大型案件獲得に至らず、シニアケア事業は採用市場の逼迫によるコスト増や営業基盤再構築の影響で売上が減少しました。全体として厳しい事業環境が続いています。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期)
シニアワーク事業 26億円 23億円
シニアケア事業 141億円 126億円
連結(合計) 167億円 149億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の収益力が低下し営業CFがマイナスとなる中、長期借入等により資金を調達し、事業継続や投資に充てている「勝負型」の状態です。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF -0.9億円 -0.2億円
投資CF -0.2億円 -3.3億円
財務CF -4.8億円 0.6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-8.0%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は41.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「高齢化社会のなかで、すべての人々が仕事を通じて社会に貢献し、生きがいを見つけることのできる世の中の実現を目指します。」という企業理念を掲げています。高齢化が進む日本において、労働人口減少による人手不足の解消と、高齢者が必要とするサービスの継続的な供給という社会課題の解決を目指しています。

(2) 企業文化


経営理念を実現するための行動指針として「自分らしさ × 変化を楽しむ × 成長と当事者意識 × ビジネスの力で社会貢献」というValueを掲げています。これに基づき、働きやすい環境づくりや社員の成長支援、コミュニケーションの活性化に取り組み、年齢や国籍等を問わず公平に機会を提供する風土を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、高い成長性と収益性、および企業価値の向上を経営上の重点課題として認識しています。具体的な経営指標としては、「売上高対前年比率」による成長性と、「売上高営業利益率」による収益性を重視しています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後は、単なる人材派遣から高付加価値なサービス提供への転換を図ります。DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、AIなどを活用したマッチング機能の強化や業務効率の抜本的改善を行うことで、生産性と競争力を高める方針です。また、人材サービス以外のシニア市場向けサービスやヘルスケア領域等での新規事業開発にも戦略的に投資し、収益源の多様化を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


経営戦略と連動した人材戦略に基づき、「当社独自のソリューション提案」能力を高め、「寄り添う姿勢」を大切にする人材の育成を目指しています。採用強化と定着率向上のため、人事戦略会議を週次で開催し、組織体制の整備や施策を実行しています。多様な働き方の推進や、リスキリング教育の充実を通じて、従業員が長く働き続けられる環境を整備し、エンゲージメントの向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 30.4歳 2.2年 4,354,000円


※平均年間給与は、基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 25.2%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 73.6%
男女賃金差異(正規雇用) 78.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 93.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業の許認可と法的規制


同社グループは、労働者派遣法および職業安定法に基づき事業を行っています。法令違反による許可取り消しや業務停止処分を受けた場合、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、関連法令の改正内容によっては、事業運営に影響が生じるリスクがあります。

(2) 社会保険料の負担


派遣スタッフの社会保険加入を徹底していますが、保険料率や対象範囲の変更により会社負担額が増加した場合、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) スタッフの確保


シニア人材や有資格者の確保が事業の要です。競合他社と比較して信用力やブランド力が低下した場合、優良なスタッフの確保が困難となり、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 競争の激化


人材サービス業界は参入障壁が低く、多数の競合が存在します。多くの競合他社が同社の事業分野に参入した場合、価格競争の激化などにより収益性が悪化する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。