インソース 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

インソース 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のインソースは、講師派遣型研修や公開講座、ITサービスを提供する教育サービス企業です。2025年9月期の連結売上高は145億円(前期比16.3%増)、営業利益は60億円(同21.1%増)となり、過去最高益を更新しました。DX教育需要の取り込みやLMS「Leaf」の導入拡大により、増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社インソース の有価証券報告書(第23期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. インソースってどんな会社?


講師派遣や公開講座などの社会人向け研修と、受講管理システム等のITサービスを組み合わせ、組織の人材育成を支援しています。

(1) 会社概要


同社は2002年に設立され、2009年に公開講座事業へ参入しました。2014年には主力のLMS「Leaf」を発売し、ITサービスを強化しています。2016年に東証マザーズへ上場した後、2017年に東証一部へ市場変更し、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。直近では2025年にインソース総合研究所を設立しています。

2025年9月末時点の従業員数は連結550名、単体425名です。筆頭株主は創業者の舟橋孝之氏が代表を務める株式会社ルプラス(30.20%)で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(8.69%)、第3位は株式会社日本カストディ銀行(8.37%)となっています。

氏名 持株比率
ルプラス 30.20%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.69%
日本カストディ銀行(信託口) 8.37%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表者は代表取締役執行役員社長の舟橋 孝之氏です。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
舟橋 孝之 代表取締役執行役員社長 三和銀行(現三菱UFJ銀行)、プラザクリエイトを経て2002年に同社を設立し代表取締役に就任。2015年より現職。
川端 久美子 取締役執行役員常務 三和銀行(現三菱UFJ銀行)、マネジメントサポートを経て2002年に同社取締役就任。管理本部長、公開講座本部長等を歴任し2015年より現職。
金井 大介 取締役執行役員 明和地所、一広を経て2006年に同社入社。2015年に執行役員、2019年に取締役執行役員に就任。2024年よりインソースデジタルアカデミー社長を兼務し現職。
藤本 茂夫 取締役執行役員 ソニー、ソニーコミュニケーションネットワークを経て2012年に同社執行役員就任。管理本部長等を歴任し2015年より取締役。2025年よりグループ経営管理・経理部管掌。
澤田 哲也 取締役 ディスパを経て2007年に同社入社。2012年に子会社ミテモの代表取締役社長に就任。2016年より同社取締役を兼務し現職。


社外取締役は、藤岡 秀則(理想科学工業取締役、ローランドディー.ジー.取締役等を歴任)、庭本 佳子(神戸大学大学院経営学研究科准教授)、羽原 康平(GENDA常務取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは「教育サービス事業」の単体セグメントですが、研修に関する「講師派遣型研修事業」「公開講座事業」、人事部門のIT化に関わる「ITサービス事業」、「その他事業」の4つの事業を中心に、人材育成および及び組織コンサルティングサービスを提供しています。

(1) 講師派遣型研修事業


顧客から受託した階層別研修やスキル別研修に対し、講師を派遣して研修を実施するサービスです。民間企業の従業員や自治体職員が主な対象で、対面型とオンライン型の選択が可能です。自治体向けには研修業務を一括受託する常駐型サービスも提供しています。

収益は、法人顧客からの研修回数に応じた受託費用等です。運営は主にインソースが行っており、IT関連研修については子会社のインソースデジタルアカデミーが企画開発・コンサルティングを行っています。

(2) 公開講座事業


階層別・スキル別研修を公募型セミナーとしてWebサイトで募集し、1名から参加可能な研修を実施するサービスです。全国各地での来場型とオンライン型があり、IT系や会計・法務系などの提携先プログラムも提供しています。

収益は、個人または企業単位で申し込まれる受講料です。まとめて購入することで割引となる「人財育成スマートパック」の販売も行っています。運営は主にインソースが行っており、IT分野については子会社のインソースデジタルアカデミーも展開しています。

(3) ITサービス事業


人事業務や研修運営の効率化を支援するLMS(学習管理システム)・人事サポートシステム「Leaf」や、ストレスチェック支援サービスなどのHRテックサービスをクラウド形式で提供しています。LGWAN(総合行政ネットワーク)対応の自治体向けサービスも展開しています。

収益は、法人顧客からの月額課金(システム利用料)や、導入時のカスタマイズ費用、オプション費用等です。運営は主にインソースが行っており、Webプロモーションやシステム開発の一部を子会社のインソースマーケティングデザインが担っています。

(4) その他事業


eラーニングコンテンツの制作・販売(動画百貨店)、オンラインセミナー事務代行、アセスメントサービス、人材紹介、コンサルティングなどを提供しています。動画教材は買い切りやレンタル、定額制サービス「STUDIO」など多様な形態で展開しています。

収益は、コンテンツ販売料、制作費、事務代行手数料、コンサルティング料などです。運営は、ミテモ(地方創生・教材制作)、らしく(人材紹介)、インソースマーケティングデザイン(Web制作)、インソースビジネスレップ(運営代行)、インソースコンサルティング(組織開発)、インソースクリエイティブソリューションズ(動画制作)、インソース総合研究所(調査研究)などグループ各社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年9月期から2025年9月期までの5期間において、売上高と利益は一貫して増加傾向にあります。特に売上高は75億円から145億円へと約2倍に成長しました。経常利益率も30%台から40%台へと向上しており、高い収益性を維持しながら事業規模を拡大させています。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 75億円 94億円 108億円 125億円 145億円
経常利益 24億円 33億円 39億円 49億円 60億円
利益率(%) 32.2% 35.5% 36.5% 39.6% 41.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 16億円 22億円 27億円 34億円 41億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益、営業利益ともに順調に伸長しています。売上総利益率は70%台後半、営業利益率は40%前後と非常に高い水準を維持しています。増収効果が販管費の増加を吸収し、利益率の改善に寄与しています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 125億円 145億円
売上総利益 96億円 112億円
売上総利益率(%) 77.1% 76.9%
営業利益 49億円 60億円
営業利益率(%) 39.6% 41.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が23億円(構成比44%)、賞与が8億円(同15%)を占めています。人件費が主なコスト要因となっています。

(3) セグメント収益


同社グループは「教育サービス事業」の単体セグメントであり、セグメント利益は開示していません。

全事業区分において売上高が増加しています。特に講師派遣型研修事業とその他事業(映像・eラン制作等)の伸び率が高く、対面研修の回復とデジタルコンテンツ需要の拡大が寄与しています。ITサービス事業も有料利用組織数の増加により堅調に推移しています。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期)
講師派遣型研修事業 59億円 69億円
公開講座事業 31億円 36億円
ITサービス事業 18億円 19億円
その他事業 17億円 21億円
連結(合計) 125億円 145億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動で得た資金で、借入金の返済や配当支払いを行いながら、必要な投資も自己資金で賄っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 40億円 44億円
投資CF -4.5億円 -2.3億円
財務CF -14億円 -17億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は36.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は77.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「あらゆる人が『働く楽しさ・喜び』を実感できる社会をつくる」を経営理念として掲げています。この理念のもと、社会が求めるサービスをいち早く開発し、あらゆる人にジャストフィットするカスタマイズされたサービスを提供することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「社会の求めるサービスをいち早く開発し提供する」「人とITを有効活用し、リーズナブルであることを追求する」といった経営方針に基づき行動しています。また、「どのような人でも活躍できる社会の実現を目指し、ダイバーシティを実現する」ことを重視し、多様な人材が活躍できる組織づくりを推進しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは中期経営計画「Road to Next 2028」を策定しており、市場シェア拡大と持続的成長を目指しています。2028年9月期に向けた数値目標として以下を掲げています。

* 売上高:234億円
* 営業利益:96億2,000万円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:68億2,000万円
* 3年間のCAGR(年平均成長率):17.3%

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画の実現に向け、講師派遣型研修および公開講座を中心に「DXサービス」「人事部門支援」領域を伸ばす方針です。特に生成AI関連への投資を強化し、サービス開発や社内業務改善を進めるほか、コンサルティング事業の強化や新規採用者の早期戦力化にも注力します。

* 2026年9月期 売上高予想:168億円
* 2026年9月期 営業利益予想:68億円
* 総人件費:前年同期比17.6%増を想定(生成AI関連の採用強化等による)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「グループ人材開発部」を設置し、社内教育の充実やナレッジ共有を通じて、新規採用者の早期戦力化と人的資本の活用強化を図っています。また、多様な人材が能力を発揮できる組織を目指し、平等な機会提供と公正な評価、差別や偏見のない職場づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 36.7歳 5.0年 6,477,104円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 44.2%
男性育児休業取得率 57.1%
男女賃金差異(全労働者) 72.4%
男女賃金差異(正社員) 94.3%
男女賃金差異(パート・有期) 68.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員1人当たりの研修時間(eラーニング含む)(24時間51分)、DX研修 各年度における延べ受講者数(60名)、従業員の自社サービス経験率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人権の侵害


同社グループでは、ハラスメント等の人権侵害が発生するリスクを認識しています。万一こうした事態が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償請求等により、業績に重大な影響を与える可能性があります。対策として「人権に関する基本方針」の制定や全従業員向け教育、内部通報窓口の設置などを実施しています。

(2) 大規模自然災害による事業所損壊、サーバ損壊


気候変動に伴う洪水の頻度増加等の物理的リスクにより、事業所やサーバーが損壊・水没する可能性があります。これによりサービスの提供が不可能となった場合、売上減少や損害賠償請求等が発生し、業績に影響を与える可能性があります。全拠点の洪水リスク確認等の対策を進めています。

(3) 賄賂・腐敗の発生


役職員による贈収賄を含む腐敗行為や横領等の不正行為が発生するリスクがあります。これらが発生した場合、行政処分や社会的信用の失墜により業績に影響を与える可能性があります。「腐敗防止基本方針」に基づく教育やコンプライアンス体制の整備を通じてリスク低減に努めています。

(4) 生成AI活用の遅れによる競争力低下


生成AIの利用増加により、従来のWebページへのアクセスが減少し、販売促進効果が低下する可能性があります。また、生成AIを活用した競合サービスの台頭や、自社での活用遅れによる生産性低下のリスクもあります。AIに取り込まれやすい情報構造の設計や、生成AI関連サービスの投入等の対策を強化しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。