※本記事は、株式会社エスユーエスの有価証券報告書(第27期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. エスユーエスってどんな会社?
エンジニア派遣を中核事業とし、「社会人学校」を掲げて技術者の育成に注力するほか、AR/VR分野も展開する企業です。
■(1) 会社概要
1999年に京都で労働者派遣を目的として設立されました。2002年に派遣事業の許可を取得し、2007年には独自の事業モデル「社会人学校」を制定しています。2017年に東証マザーズへ上場し、2019年にはAR/VR事業を行うクロスリアリティを設立しました。2021年には再生医療支援を行うプライムロードを設立するなど事業領域を拡大しています。
同社グループの連結従業員数は2,409名(単体2,388名)です。筆頭株主は創業者で代表取締役社長の齋藤公男氏で、発行済株式の過半数を保有しています。第2位株主のセファテクノロジーは、大阪府枚方市に所在する企業です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 齋藤 公男 | 50.79% |
| セファテクノロジー | 4.93% |
| 奥 直彦 | 1.26% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性0名の計12名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は齋藤公男氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 齋藤 公男 | 代表取締役社長 | 1999年9月同社設立、代表取締役社長。クロスリアリティ、AMP.KYOTOの代表取締役社長等を兼任し、グループ経営を牽引。1999年より現職。 |
| 吉川 友貞 | 取締役副社長 | サイバード取締役副社長、大幸薬品専務取締役等を経て、2018年同社入社。プライムロード代表取締役社長を兼任。2019年12月より現職。 |
| 大槻 哲也 | 取締役執行役員エンジニアリングソリューション事業及びAI/AR/VR事業管掌ソリューション事業本部長 | 2001年同社入社。京都支店長、西日本統括本部長等を経て、ソリューション事業及びAR/VR事業を管掌。2024年10月より現職。 |
| 小林 孝史 | 取締役執行役員コンサルティング事業管掌 | 2004年同社入社。大阪支店長、東日本統括本部長等を経て、コンサルティング事業部を担当。ストーンフリー代表取締役社長を兼任。2025年10月より現職。 |
| 浅田 剛史 | 取締役執行役員最高財務責任者管理部門管掌情報システム部、経営企画部、人事部、総務部、経理部担当 | 東芝、大幸薬品経営企画部長を経て、2018年同社入社。経営企画室長、執行役員を経て管理部門全体を管掌。2019年12月より現職。 |
社外取締役は、中島彰彦(アソウ・ヒューマニーセンター代表取締役会長)、西嶋俊成(西嶋会計事務所所長)、立石知雄(キョーエン代表取締役)、関根幸平(ザ・パス・インベストメント代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ソリューション事業」、「コンサルティング事業」、「AR/VR事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) ソリューション事業
IT、機械、電気・電子、化学・バイオの4分野において、エンジニア派遣および業務受託サービスを提供しています。大手メーカーやシステムインテグレーターを主な顧客とし、エンジニアを正社員として雇用して技術力だけでなくヒューマンスキルの育成にも力を入れています。
収益は、顧客企業からの派遣料金および業務受託費によって構成されています。契約形態には派遣契約と請負契約があり、エンジニアの稼働実績や成果物の納品に基づいて対価を受け取ります。運営は主にエスユーエスが行っています。
■(2) コンサルティング事業
ERPソフトウェアパッケージを用いたITコンサルティングサービスと、タレントマネジメントシステム「SUZAKU」等のHRコンサルティングサービスを提供しています。IT分野では導入支援やカスタマイズを行い、HR分野ではアセスメントに基づいた教育研修を行っています。
収益は、コンサルティングフィー、システム導入・開発費、および「SUZAKU」やアセスメントツール「HQ Profile」の販売・利用料等から構成されます。運営はエスユーエスおよび子会社のイーアセスメントが行っています。
■(3) AR/VR事業
AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、MR(複合現実)、AI(人工知能)、メタバースに関連するコンテンツ・プラットフォームの開発・販売および受託開発を行っています。また、AR/VRエンジニアの育成機関「VRIA京都」を運営し、教育サービスも提供しています。
収益は、コンテンツや自社商品の販売代金、受託開発費、および教育サービスの受講料等から構成されます。運営はエスユーエスおよび子会社のクロスリアリティが行っています。
■(4) その他
障がい者の就労移行支援事業、医療機関向けの再生医療導入支援事業、京都の観光向けメタバースプラットフォームの企画運営などを行っています。
収益は、就労支援サービスに基づく給付費、再生医療導入に関する支援コンサルティング料等から得ています。運営は、子会社のストーンフリー、プライムロード、AMP.KYOTOがそれぞれ行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は94億円から150億円へと右肩上がりで成長しています。経常利益も増加傾向にあり、特に直近では13億円規模まで拡大しています。利益率も改善傾向にあり、当期純利益も順調に推移しています。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 94億円 | 105億円 | 115億円 | 132億円 | 150億円 |
| 経常利益 | 6億円 | 8億円 | 6億円 | 9億円 | 13億円 |
| 利益率(%) | 6.9% | 7.7% | 5.4% | 6.5% | 8.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | 2億円 | 5億円 | 6億円 | 9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、売上総利益率も改善しています。営業利益および営業利益率はともに上昇しており、収益性が高まっています。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 132億円 | 150億円 |
| 売上総利益 | 33億円 | 39億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.1% | 26.1% |
| 営業利益 | 8億円 | 12億円 |
| 営業利益率(%) | 6.3% | 8.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が8億円(構成比30%)、広告宣伝費が3億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のソリューション事業は、エンジニア需要の堅調な推移と在籍数の増加により増収増益となりました。コンサルティング事業は減収となったものの、利益率の改善により増益を確保しています。AR/VR事業は、実証実験フェーズの案件が中心となった影響等で減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) | 利益(2024年9月期) | 利益(2025年9月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ソリューション事業 | 117億円 | 137億円 | 11億円 | 11億円 | 7.8% |
| コンサルティング事業 | 10億円 | 9億円 | 1億円 | 1億円 | 14.1% |
| AR/VR事業 | 4億円 | 4億円 | 0.5億円 | 0.1億円 | 3.2% |
| その他 | 0.8億円 | 1.0億円 | -0.2億円 | 0.1億円 | 8.2% |
| 調整額 | - | - | 0億円 | 0億円 | - |
| 連結(合計) | 132億円 | 150億円 | 8億円 | 12億円 | 8.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、運転資金や投資資金を主に自己資金で賄い、状況に応じて金融機関からの借入も活用しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは増加しました。これは主に、事業活動から得られた利益によるものです。投資活動によるキャッシュ・フローは減少しました。これは、設備投資や保険積立金への支出があったためです。財務活動によるキャッシュ・フローも減少しました。これは、株主への配当金支払いが主な要因です。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 7億円 | 11億円 |
| 投資CF | -2億円 | -3億円 |
| 財務CF | -3億円 | -2億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「人と企業の笑顔が見たい」という経営理念を掲げています。独自の事業モデル「社会人学校」を通じて、エンジニアと企業に対して最大の貢献とサービスを提供することを使命とし、ステークホルダーからの信頼獲得、企業価値の向上、社会貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「社会人学校」という事業モデルを重視しています。これは、入社後のエンジニアが自身のキャリアパスプランを設定し、目標を持って将来の姿を追求できる環境を提供するものです。テクニカルスキルだけでなくヒューマンスキルの育成も重要視し、多様な人材が活躍できる場を作ることを大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、成長性と収益性を評価する指標として、売上高成長率、売上高営業利益率、自己資本利益率(ROE)を重視しています。また、中核事業であるソリューション事業の成長指標として、以下の項目を目標としています。
* 派遣単価増加率
* 在籍エンジニア数の増減
■(4) 成長戦略と重点施策
ソリューション事業における安定成長基盤の確立と、先端技術分野での成長を目指しています。具体的には、エンジニアの採用拡大と定着率向上、AR/VRおよびAI開発の推進、M&Aや戦略的提携、新規事業展開を成長ドライバーとして位置づけています。
* ソリューション事業:継続的な教育による高付加価値化、派遣単価の上昇、プロジェクト請負・チーム化の推進。
* コンサルティング事業:プロフェッショナル人材の確保・育成、パートナー連携強化。
* AR/VR事業:AI技術を活用した実働人材の確保、産業ユースケースに特化した展開。
* 経営システム:組織改編、ITインフラ整備による経営の効率化と透明性確保。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「社会人学校」モデルを通じて、エンジニア一人ひとりのポテンシャルや目指す未来を可視化・共有し、テクニカルスキルとヒューマンスキルの両面から育成を行っています。採用では新卒と経験者のバランスを考慮し、女性活躍推進や健康経営、フレックスタイム制やテレワークの導入など、多様な人材が長期的に活躍できる環境整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 31.0歳 | 4.9年 | 4,372,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | -% |
| 男性育児休業取得率 | 56.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 84.9% |
| 男女賃金差異(正規) | 86.5% |
| 男女賃金差異(非正規) | 55.6% |
※女性管理職比率は、公表項目として選択していないため、記載を省略しております。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンジニアに占める女性社員の割合(13.2%)、内勤社員に占める女性役職者(主任以上)の割合(11.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 人材の確保について
事業基盤であるエンジニアの確保と育成が最重要課題です。少子高齢化や理系離れによる人材獲得競争の激化により、計画通りの採用が困難になる場合や、離職によりエンジニア数が大幅に減少した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) エンジニア派遣業界の環境
主要顧客であるIT関連企業や製造業の業績動向の影響を受けやすい特性があります。景気低迷による顧客の設備投資・研究開発費の削減、自然災害等による事業停止、顧客拠点の海外移転等が発生した場合、業績に悪影響が生じる可能性があります。
■(3) 技術革新について
主力とするIT分野は技術革新や顧客ニーズの変化が激しい領域です。AIを含む最新技術動向を常に分析し対応に努めていますが、予期しない技術革新や急激なニーズ変化に適切に対応できない場合、競争力が低下し業績に影響を与える可能性があります。



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