ニーズウェル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ニーズウェル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の独立系システムインテグレーターです。業務系システム開発、IT基盤構築、AI等のソリューション提供を主力事業としています。第39期は、積極的なM&AやAIビジネスの拡大により売上高は過去最高を更新して増収となりましたが、将来への投資や体制強化に伴う費用増により減益となりました。


※本記事は、ニーズウェル の有価証券報告書(第39期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月15日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ニーズウェルってどんな会社?


金融系システム開発に強みを持つ独立系SIerであり、近年はAIや物流ソリューション等の付加価値領域を拡大させています。

(1) 会社概要


1986年に設立され、経営コンサルティングからシステム開発へ業容を拡大しました。2017年にJASDAQへ上場し、2019年には東証一部へ指定、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。近年は零壱製作やコムソフト等を子会社化し、グループ体制を強化しています。

連結従業員数は597名、単体では538名です。筆頭株主は、創業家の資産管理会社であるオーディーシーで、第2位は従業員持株会、第3位は個人株主となっています。

氏名 持株比率
オーディーシー 36.52%
ニーズウェル従業員持株会 3.32%
佐藤 辰弥 2.32%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は松岡元氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
松岡 元 代表取締役社長 コムシスを経て2006年に入社。システム事業部長等を歴任し、技術部門や営業部門を管掌。2025年7月より現職。
船津 浩三 取締役会長 日立製作所、富士ソフトを経て、サイバーコム代表取締役社長等を歴任。2014年に同社へ入社し、2016年に代表取締役社長に就任。2025年7月より現職。
田畑 更二 取締役常務執行役員 芙蓉アウトソーシング&コンサルティング等を経て2006年に入社。総務部長、ビジネス推進統括部長等を歴任し、現在は管理部門と営業部門を担当。
新井 千波 取締役執行役員 北海道銀行等を経て2017年に入社。CC室長、財務経理部担当等を歴任し、現在は関係会社担当、経営企画部長等を務める。


社外取締役は、柳川洋輝(元日本電気企業ネットワーク開発本部長)、安岡護(元富士通第一バンキングソリューション事業本部長)、寺内信夫(元EMシステムズ常務取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報サービス事業並びにこれらの付帯業務」および「その他」事業を展開しています。

(1) 業務系システム開発


金融、物流、通信、流通、サービス等の幅広い分野において、システム開発を行っています。特に金融系システムでは、保険会社や銀行、クレジットカード会社の基幹業務システム等を手掛け、長年の実績とノウハウを有しています。
収益は、顧客企業からのシステム開発受託費や保守・運用費として受け取ります。運営は主に同社が行い、連結子会社のコムソフト等も開発に参画しています。

(2) IT基盤


ハードウェアやネットワークを含めた総合的なICT環境の提供を行います。サーバ・クラウドの環境設計から構築・運用、セキュリティ対策、通信キャリア向けの第三者検証(ソフトウェアテスト)等を手掛けています。
収益は、インフラ構築費や運用保守費、テストサービス料等として顧客から受け取ります。運営は主に同社が行っています。

(3) ソリューション


AI、RPA、情報セキュリティ等の製品・サービスを提供しています。独自のAIソリューションや倉庫管理システム「SmartWMS」、業務効率化ツール等を展開し、企業のDX推進や働き方改革を支援しています。
収益は、ソリューションの導入費、ライセンス料、サブスクリプション利用料等として顧客から受け取ります。運営は同社および連結子会社の零壱製作、ビー・オー・スタジオ等が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近の業績推移を見ると、売上高は順調に拡大傾向にあり、第39期には100億円を突破しました。一方、利益面では、経常利益は11億円台から12億円台で推移しており、第39期は先行投資等の影響で減益となりましたが、当期純利益は特別利益の計上などにより増加しています。

項目 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 88億円 95億円 100億円
経常利益 11億円 12億円 12億円
利益率(%) 13.0% 12.7% 11.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 8億円 9億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費も増加しました。特に販管費の増加率が高く、営業利益率は低下しました。売上総利益率は概ね横ばいで推移しています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 95億円 100億円
売上総利益 22億円 23億円
売上総利益率(%) 22.7% 22.7%
営業利益 12億円 12億円
営業利益率(%) 12.4% 11.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2億円(構成比16%)、支払手数料が2億円(同14%)を占めています。また、当期より株主優待関連費用が2億円(同14%)計上されています。売上原価においては、労務費や外注費が主な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


各サービスラインの売上高を見ると、主力の業務系システム開発は堅調に推移しました。ソリューション分野はAI関連や自社製品の拡販により大幅な増収となりましたが、IT基盤は前期を下回りました。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期)
業務系システム開発 63億円 65億円
IT基盤 17億円 14億円
ソリューション 15億円 20億円
連結(合計) 95億円 100億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持し、投資有価証券の売却等により投資活動によるキャッシュ・フローもプラスとなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは配当金の支払い等によりマイナスとなっており、営業利益と資産売却で借入返済や株主還元を進める改善型の傾向が見られます。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 4億円 8億円
投資CF -3億円 2億円
財務CF -5億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は19.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は73.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、技術革新の激しい情報サービス産業において技術向上に取り組み、各業務分野で蓄積したノウハウを活かしてお客様満足を実現し、「広く経済社会に貢献し続ける」ことを経営理念としています。

(2) 企業文化


経営理念に賛同する社員が結集し、全社員のパートナーシップを基盤としています。企業規模と就業ステージの拡大を図り、自己研鑽の機会を創造すること、社員が働き甲斐や幸せを感じながら就労し、「社会有用の人材として社員を育成すること」を経営規範として掲げています。

(3) 経営計画・目標


グループの成長性・収益性の経営指標として、売上高成長率、売上総利益率、販管費率、経常利益率、EPS(1株当たり当期純利益)、PER(株価収益率)、ROE(自己資本利益率)を掲げています。具体的な数値目標は記載されていませんが、流通株式時価総額100億円以上の達成などを目指して取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


2026年9月期の重点施策として、「業務系システム開発の拡大」「IT基盤の拡大」「ソリューションビジネスの拡大」「マイグレーション開発ビジネスの拡大」「ITアウトソーシングビジネスの拡大」「物流ビジネスの拡大」「AIビジネスの拡大」の7点に取り組む方針です。特に金融系分野の拡大や、AI技術者の育成による高付加価値化、自社ソリューションの拡販に注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業規模拡大のため、新卒・キャリア採用における優秀な人材確保を重視しています。採用後は、ダブルジョブ制度、社内FA制度、職場復帰支援制度、奨学金補助制度等を活用し、モチベーション向上や働き甲斐のある職場づくりを推進しています。また、技術研修や階層別研修を通じて社員の技術力と人間力を高めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 35.1歳 7.5年 4,886,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.7%
男性育児休業取得率 40.0%
男女賃金差異(全労働者) 81.3%
男女賃金差異(正規雇用) 81.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 118.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境に関するリスク


情報サービス産業は技術革新が速く、顧客企業のIT投資動向や景気変動の影響を受けやすい特性があります。顧客の投資意欲減退や、競合他社との競争激化、技術革新への対応遅れが生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 人材の確保


事業拡大には優秀な技術者の確保が不可欠です。人材獲得競争が激化する中、計画通りの採用や育成が進まない場合、または協力会社からの技術者確保が困難になった場合、プロジェクトの遂行や受注活動に支障をきたす可能性があります。

(3) プロジェクト管理(不採算案件)


システム開発においては、開発工程での品質問題や工期の遅延、納品後の不具合等が発生するリスクがあります。これらに起因して追加コストが発生し、不採算プロジェクトとなった場合、業績や財政状態に悪影響を与える可能性があります。

(4) 情報セキュリティ


業務上、顧客や取引先の機密情報や個人情報を取り扱う機会が多くあります。サイバー攻撃や内部要因による情報漏洩、システム障害等が発生した場合、損害賠償請求や社会的信用の失墜により、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。