※本記事は、株式会社ピー・ビーシステムズ の有価証券報告書(第29期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ピー・ビーシステムズってどんな会社?
セキュアクラウドシステム事業とエモーショナルシステム事業の2軸で、デジタル社会の基盤と体験を創造する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1997年に福岡市で設立されました。翌1998年にはCitrix社製品の取り扱いを開始し、現在の主力事業の基盤を築いています。2019年に福岡証券取引所Q-Boardへ上場し、2022年には東京証券取引所グロース市場への上場を果たしました。2025年には新空間演出ソリューション「MetaAnywhere」の提供を開始するなど、事業領域を拡大しています。
2025年9月30日現在、従業員数は73名(単体)です。筆頭株主は創業者の冨田和久氏で、第2位、第3位も同社取締役が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 冨田 和久 | 16.83% |
| 森﨑 高広 | 5.09% |
| 彌永 玲子 | 4.29% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は冨田和久氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 冨田 和久 | 代表取締役社長 | 野村コンピュータシステム(現野村総合研究所)、シティアスコムを経て、1997年に同社設立。以来、代表取締役社長として経営を牽引。 |
| 森﨑 高広 | 取締役技術フェロー | 日立製作所、シティアスコムを経て、1997年同社取締役就任。経営企画部長、製造本部長等を歴任し、2020年より現職。 |
| 彌永 玲子 | 取締役経営企画部長 | オービックを経て2001年同社入社。経理部長、管理本部長を歴任し、2025年1月より現職。 |
| 吉富 裕之 | 取締役製造本部長 | ジャスティスを経て2003年同社入社。営業本部長、製造本部基盤部長等を歴任し、2023年より現職。 |
| 諌山 大介 | 取締役営業本部長兼東京営業部長 | 日本ビジネスシステムズ、ノースサンド等を経て2020年同社入社。2023年12月より現職。 |
社外取締役は、枇杷木秀範(元三洋信販常務執行役員)、坂本剛(ラインクロス代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「セキュアクラウドシステム事業」および「エモーショナルシステム事業」を展開しています。
■(1) セキュアクラウドシステム事業
Citrix、Microsoft、Broadcom等の製品を活用し、企業の基幹システムをクラウド化する事業です。プライベートクラウドとパブリッククラウドを融合した「ハイブリッドクラウド」の構築、サイバーセキュリティ対策、製造業のスマートファクトリー化を柱としています。主な顧客は売上高100億~500億円規模の中堅企業、SaaS事業者、公共団体です。
システムの設計・構築・保守やライセンス販売、自社製品「デルバイ」「キトラス」の販売等から収益を得ています。また、セキュリティ対策サービス「サイバー忍法帖」も提供しています。運営はピー・ビーシステムズが行っています。
■(2) エモーショナルシステム事業
VR(仮想現実)技術を用いた空間演出システムを提供する事業です。360度スクリーンに3D映像を投影するVRシアター「MetaWalkers」や、あらゆる場所に映像を投影する空間演出ソリューション「MetaAnywhere」の開発・販売を行っています。また、企業・自治体向けのメタバース構築サービスも提供しています。
遊園地、テーマパーク、博物館、公共団体等へのシステム販売や、イベント運営サービス、コンテンツ制作から収益を得ています。運営はピー・ビーシステムズが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、2024年9月期までは売上高、利益ともに拡大基調にありましたが、2025年9月期は減収減益となりました。特に2025年9月期は利益率が低下しており、投資の増加や高収益案件の減少などが影響していることが読み取れます。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 22億円 | 25億円 | 29億円 | 31億円 | 26億円 |
| 経常利益 | 2.3億円 | 2.6億円 | 3.0億円 | 3.6億円 | 1.3億円 |
| 利益率(%) | 10.7% | 10.5% | 10.2% | 11.7% | 4.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.6億円 | 1.8億円 | 2.1億円 | 2.6億円 | 0.9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で減少しており、それに伴い売上総利益、営業利益も縮小しています。特に営業利益率は前期の11.7%から4.7%へと低下しており、収益性の低下が見られます。これは、先行投資による固定費の負担増などが要因と考えられます。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 31.1億円 | 26.3億円 |
| 売上総利益 | 8.9億円 | 7.0億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.7% | 26.5% |
| 営業利益 | 3.6億円 | 1.2億円 |
| 営業利益率(%) | 11.7% | 4.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1.6億円(構成比28%)、役員報酬が1.1億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セキュアクラウドシステム事業は、中規模案件の進捗遅れや高利益率案件の減少により減収減益となりました。一方、エモーショナルシステム事業は、イベント案件の増加や新製品の寄与により売上が大きく伸長し、営業損失も縮小しました。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) | 利益(2024年9月期) | 利益(2025年9月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| セキュアクラウドシステム事業 | 31億円 | 26億円 | 4億円 | 4億円 | 16.1% |
| エモーショナルシステム事業 | 0.5億円 | 0.8億円 | -0.2億円 | -0.1億円 | -6.4% |
| 調整額 | - | - | -3億円 | -3億円 | - |
| 連結(合計) | 31億円 | 26億円 | 4億円 | 1億円 | 4.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 0.6億円 | 1.9億円 |
| 投資CF | -0.5億円 | -3.3億円 |
| 財務CF | -1.2億円 | -3.9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「勇者たらんと。」という経営理念を掲げています。これは、一人一人の知恵と勇気と諦めない強い心を持ち、どんな時でも「その一歩」を踏み出す姿勢を表しています。顧客独自の経営ノウハウや文化をシステムとして組み上げるため、最新技術を咀嚼し、顧客独自の情報システム構築の実現に強力に取り組むことを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、経営理念「勇者たらんと。」の下、個々の知恵と勇気、そして諦めない強い心を重視する文化を持っています。小さな存在であっても、一人一人が主体性を持ち、困難な状況でも一歩を踏み出す勇気を持つことを大切にしています。この精神に基づき、顧客独自のシステム構築という難易度の高い課題に挑戦し続ける姿勢が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2030年9月期までにROE30%を達成し、維持継続することをKGI(重要目標達成指標)として掲げています。また、東京証券取引所グロース市場の上場維持基準変更に伴い、同時期までに時価総額100億円を超える規模への成長を目指しています。主力事業の継続的な成長とエモーショナルシステム事業の収益力確立により、企業価値の向上を図る方針です。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は2026年9月期を成長への再スタートの年と位置づけ、セキュアクラウドシステム事業の人財採用と投資を継続します。具体的には、セールスエンジニアの増強による受注力強化、エンジニアハビタットを活用した若手の戦力化、資本効率の向上に取り組みます。また、エモーショナルシステム事業では大手企業との協業強化や新ソリューションの受注拡大を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、新卒・中途採用のバランスの取れた体制構築と、教育制度の強化による社員の成長支援を掲げています。具体的には、技術開発拠点「エンジニアハビタット」の増床や人財開発部の拡充を行い、実践的なOJTや資格手当制度を通じて高スキル技術者の育成を促進しています。また、テレワークの活用や快適な執務環境の整備により、働きやすく成長できる職場づくりを目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 42.8歳 | 7.6年 | 6,112,395円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 7.7% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 200.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 80.4% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 84.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規) | 52.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員の比率(27.4%)、テレワーク可能な社員の比率(100.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 他社ソフトウエアの活用について
同社のセキュアクラウドシステム事業は、Cloud Software Group, Inc.社(旧Citrix社等)のソフトウエアを活用した事業が多くを占めています。同社は長年の実績とノウハウを有していますが、同社製品の市場訴求力の低下や、ライセンス契約の継続が困難になった場合、同社の競争力が低下し、業績に影響が及ぶ可能性があります。
■(2) プロジェクトの収益性変動について
同社は、顧客の要望の高度化や仕様変更により、当初の見積り以上に作業工数が増加し、原価が増加するリスクがあります。また、工数の算定は顧客からの情報に依存するため、不測の事態により工数が増加し、プロジェクトの収支が悪化する可能性があります。特に大規模プロジェクトでの収益悪化は、全体の業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 特定の人物および取引先への依存について
代表取締役社長の冨田和久氏は経営方針決定等で重要な役割を担っており、同氏への依存度が高い状況です。また、取引先のエヌ・デーソフトウェア株式会社への販売実績が総販売実績の約2割を占めており、同社からの受注動向が業績に影響を与える可能性があります。同社は組織的経営体制の強化や新規顧客開拓を進めていますが、これらの依存リスクは依然として存在します。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。