PKSHA Technology 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

PKSHA Technology 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

PKSHA Technology(パークシャテクノロジー)は東証プライム市場に上場し、自然言語処理や機械学習技術を用いたアルゴリズム開発およびAI SaaS事業を展開しています。東京大学発のベンチャーとして創業。2025年9月期はM&Aによる事業拡大と既存事業の成長が業績を牽引し、大幅な増収増益となりました。


※本記事は、株式会社PKSHA Technologyの有価証券報告書(第13期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はIFRSです。

1. PKSHA Technologyってどんな会社?


東京大学発のベンチャーとして創業し、AIアルゴリズムの研究開発と社会実装を行うテクノロジー企業です。

(1) 会社概要


同社は2012年に機械学習技術を用いたデータ解析事業を目的に設立されました。2017年に東証マザーズへ上場し、2022年にスタンダード市場、2024年9月にプライム市場へ区分変更しています。積極的なM&Aを行い、2025年には子会社のPKSHA Workplace等を吸収合併、サーキュレーションを子会社化するなど事業基盤を拡大しています。

2025年9月30日時点で、連結従業員数は1,001名、単体従業員数は366名です。筆頭株主は代表取締役の上野山勝也氏で、第2位は共同創業者である山田尚史氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。トヨタ自動車も大株主に名を連ねており、安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
上野山 勝也 30.35%
山田 尚史 7.67%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.89%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役は上野山勝也氏が務めています。社外取締役比率は83.3%です。

氏名 役職 主な経歴
上野山 勝 也 代表取締役 ボストンコンサルティンググループを経て2012年に同社を創業。東京大学松尾研究室の特任助教も務めた。デジタル庁参与やスマートニュース取締役などを兼任し、2016年より現職。


社外取締役は、水谷健彦(JAM代表取締役)、吉田行宏(アイランドクレア代表取締役)、藤岡大祐(ESネクスト有限責任監査法人代表)、下村将之(下村総合法律事務所所長)、佐藤裕介(STORES代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「AI Research & Solution事業」および「AI SaaS事業」を展開しています。

(1) AI Research & Solution事業


自然言語処理、画像認識、機械学習・深層学習などのアルゴリズム・知能化技術を開発し、パートナー企業のニーズに合わせたソリューションを提供しています。また、IoT機器からデータを収集する駐車場機器の製造販売事業や、フリーランス領域における経営課題解決支援なども行っています。

収益は、主に共同研究開発やソリューション提供の対価、駐車場機器の販売代金などから構成されています。また、アルゴリズムモジュールを顧客のソフトウエアに組み込む際のイニシャルフィーやライセンスフィーも収益源です。運営はPKSHA Technologyや子会社のアイテック、サーキュレーション等が行っています。

(2) AI SaaS事業


AI Research & Solution事業で開発したアルゴリズムをもとに、汎用的なニーズに対応するAI SaaSプロダクトを販売しています。主な製品には自動応答エンジン「PKSHA ChatAgent」、FAQシステム「PKSHA FAQ」、AI議事録「Yomel」などがあり、顧客接点や社内業務の効率化を支援しています。

収益は、主に初期設定時に受領するイニシャルフィーと、設定後に月額で受領するライセンスフィー(サブスクリプション収入)から構成されています。ストック型の収益モデルにより高い収益率を維持しています。運営は主にPKSHA Technologyや子会社のPKSHA Associatesが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2023年9月期よりIFRSを適用しており、直近3期間で売上収益、利益ともに右肩上がりの成長を続けています。特に2025年9月期は売上収益が200億円を突破し、利益率も20%を超える高水準を維持しています。M&Aによる事業拡大と既存事業の成長が業績を牽引しています。

項目 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上収益 139億円 169億円 218億円
税引前利益 4億円 33億円 47億円
利益率(%) 2.5% 19.6% 21.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.0億円 21億円 27億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上収益の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は約50%で安定しており、高収益なビジネスモデルであることがわかります。営業利益率も20%前後と高く、効率的な経営が行われています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上収益 169億円 218億円
売上総利益 85億円 108億円
売上総利益率(%) 50.5% 49.8%
営業利益 32億円 53億円
営業利益率(%) 19.0% 24.3%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が5億円(構成比8%)、採用教育費が3億円(同4%)を占めています。売上原価においては、外注費が36億円(構成比33%)、人件費が34億円(同31%)を占めており、開発体制への投資が継続されています。

(3) セグメント収益


両セグメントともに大幅な増収増益を達成しました。AI Research & Solution事業は生成AI関連の需要増やM&A効果により売上が伸長しました。AI SaaS事業も自動応答エンジン等の導入が進み、新規顧客の獲得と既存顧客の拡大により成長しています。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期) 利益(2024年9月期) 利益(2025年9月期) 利益率
AI Research & Solution 100億円 129億円 19億円 25億円 19.0%
AI SaaS 70億円 90億円 25億円 31億円 34.5%
調整額 -1億円 -2億円 -13億円 -17億円 -
連結(合計) 169億円 218億円 31億円 39億円 18.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、資金調達をふくめて積極投資を行う「積極型」です。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 30億円 52億円
投資CF -31億円 -62億円
財務CF 0.4億円 49億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「未来のソフトウエアを形にする」をコーポレートミッションに掲げています。アルゴリズム領域の技術を用いた「各種ソフトウエア・ハードウエアを知能化する技術」の研究開発と社会実装を通じて、社会課題の解決と近未来のポストデジタル情報社会へ向けた価値創造を目指しています。

(2) 企業文化


「人とソフトウエアの共進化」というビジョンのもと、多様な背景と専門性を持つ人材が集まっています。実践的な学びを重視し、技術知見の共有やプロジェクトを通じた相互学習を促進する文化があります。また、エンジニアイベントやハッカソンなどを積極的に開催し、イノベーションを生み出す環境を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


現在はアルゴリズムの時代の黎明期と捉えており、ChatGPT等の大規模言語モデルの性能向上により進展が加速していると考えています。具体的な数値目標としてのKPI等は開示されていませんが、AIと人の共進化による新たな関係性を提供し、労働力不足の解決を通じて持続可能な社会の実現を追求しています。

(4) 成長戦略と重点施策


AI Research & Solution事業とAI SaaS事業の両輪での事業拡張を目指しています。開発体制の強化として優秀な人材の確保や開発プロセスの改善を進めるとともに、営業体制の強化やグループ間でのノウハウ共有に取り組みます。また、M&Aを通じた事業領域の拡大やシナジー創出も重要な戦略としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


機械学習や深層学習領域のエンジニアおよびソフトウエアエンジニアの獲得・育成を最重要課題としています。エンジニア・研究者コミュニティへのアクセスを活かしたリファラル採用を推進するとともに、裁量労働制などの柔軟な勤務制度や快適なオフィス環境を整備し、自律的な成長と高い生産性を発揮できる環境づくりに注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 36.1歳 1.5年 9,228,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.1%
男性育児休業取得率 90.0%
男女賃金差異(全労働者) 67.0%
男女賃金差異(正規雇用) 73.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 200.3%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気動向及び業界動向の変動


労働人口減少に伴う効率化ニーズにより市場拡大が予測される一方、景気後退や新技術への投資抑制の影響を受ける可能性があります。経済情勢の変化により事業環境が悪化した場合、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

(2) 人材の確保及び育成


事業拡大に伴い、アルゴリズムエンジニアやソフトウエアエンジニアの獲得・育成が不可欠です。しかし、人材市場の競争激化等により、必要な人材の採用や社内育成が計画通りに進まない場合、事業展開や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) コンプライアンス体制


事業運営において法令順守は重要であり、社内規程の整備や研修を実施しています。しかし、コンプライアンス上のリスクを完全に排除することは困難であり、法令違反等が発生した場合には、企業価値の毀損や業績への悪影響が生じる可能性があります。

(4) 情報管理


顧客の機密情報や個人情報を取り扱う事業の性質上、情報漏洩リスクがあります。情報管理規程の整備等は行っていますが、予期せぬ事態により漏洩が発生した場合、損害賠償や信用の失墜により、事業及び業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。