バンク・オブ・イノベーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

バンク・オブ・イノベーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場のスマートフォンアプリ開発企業。放置RPG『メメントモリ』と恋活アプリ『恋庭』を主力とします。2025年9月期は、『メメントモリ』の経年により売上高は減少しましたが、広告宣伝費の抑制により営業利益は大幅な増益を達成しました。


※本記事は、株式会社バンク・オブ・イノベーションの有価証券報告書(第20期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. バンク・オブ・イノベーションってどんな会社?


スマートフォン向けゲームアプリの開発・運営を主力とし、オリジナルIPの創出に注力するエンターテイメント企業です。

(1) 会社概要


同社は2006年に設立され、当初は動画検索エンジン事業を行っていましたが、2012年にスマートフォンゲーム事業へ参入しました。2018年にマザーズ市場へ上場し、2021年にゲーム恋活アプリ『恋庭』、2022年にRPG『メメントモリ』の配信を開始しました。

同社の従業員数は連結で247名、単体で194名です。筆頭株主は創業社長の樋口智裕氏で、第2位は創業メンバーで取締役の田中大介氏です。第3位は顧客資産の分別管理等を行う楽天証券です。経営陣が主要株主として名を連ねるオーナー系企業の特徴を持っています。

氏名 持株比率
樋口 智裕 43.85%
田中 大介 7.04%
楽天証券 3.84%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名、計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は樋口智裕氏がつとめます。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
樋口 智裕 代表取締役社長 2006年同社設立代表取締役社長就任。2019年Koiniwa代表取締役社長、2022年バンク・オブ・インキュベーション代表取締役社長を兼務し現職。
田中 大介 取締役人事部長 2006年同社監査役。2007年取締役。人材開発部長、ゲーム運営部長を経て、2021年より取締役人事部長。Koiniwa監査役等を兼務し現職。
河内 三佳 取締役CFO経営管理部長 2008年監査法人トーマツ入所。公認会計士。2013年同社入社、2014年取締役CFO就任。Koiniwa取締役等を兼務し現職。


社外取締役は、熊倉安希子(公認会計士)、深町周輔(弁護士)、櫻田厚(元モスフードサービス会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ゲーム」および「その他サービス」事業を展開しています。

(1) ゲーム事業


自社オリジナルのRPGアプリを提供しています。主力タイトルは2022年10月に配信を開始した『メメントモリ』で、水彩調のグラフィックや著名アーティストによる楽曲などが特徴の放置RPGです。

主な収益源は、ユーザーによるアイテム購入に伴う課金収入です。また、自社IPとして他社に著作物の利用許諾を行っており、そこから得られるロイヤリティも収益の一部となっています。運営は主にバンク・オブ・イノベーションが行っています。

(2) その他サービス


「ゲーム×マッチング」をコンセプトとしたアプリを提供しています。主力サービスは『恋庭』で、アバターを通じたコミュニケーションや共同での庭作りゲームを楽しみながらパートナーを探すことができるゲーム恋活アプリです。

収益源は、ユーザーがゲームを有利に進めるためのアイテムやマッチング機能を便利に利用するための有料プラン等の課金収入です。運営は連結子会社の株式会社Koiniwaが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2023年9月期に主力タイトル『メメントモリ』のヒットにより売上高が飛躍的に拡大し、黒字転換を果たしました。直近の2025年9月期は、既存タイトルの経年影響により減収となりましたが、利益率は前年から改善しており、高い収益性を維持しています。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 21億円 24億円 213億円 136億円 124億円
経常利益 -8億円 -10億円 49億円 14億円 22億円
利益率(%) -37.6% -41.8% 23.1% 10.0% 17.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -4億円 -6億円 29億円 9億円 14億円

(2) 損益計算書


売上高は減少しましたが、売上総利益率は高い水準を維持しています。営業利益は前年比で大きく増加し、営業利益率も大幅に改善しました。これは主にコストコントロールによるものです。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 136億円 124億円
売上総利益 64億円 60億円
売上総利益率(%) 47.3% 48.5%
営業利益 13億円 22億円
営業利益率(%) 9.8% 17.4%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が31億円(構成比81.2%)、給料手当が1.4億円(同3.6%)を占めています。

(3) セグメント収益


『メメントモリ』が全社売上の大半を占めていますが、サービス開始からの経過期間に伴い減収となりました。『恋庭』についても前年を下回る結果となりましたが、依然として主力2タイトルへの集中が続いています。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期)
メメントモリ 128億円 117億円
恋庭 8億円 7億円
その他 0億円 0億円
連結(合計) 136億円 124億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF -17億円 29億円
投資CF -4億円 1億円
財務CF -5億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は26.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は73.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「ロマン (世界で一番「思い出」をつくるエンターテイメント企業)」と「企業信念 (良いものは必ず評価される)」という2つの企業理念を掲げています。これに基づき、人々の心に末永く刻まれるようなサービスを創出し、スマートフォンゲームアプリを中心に高品質なサービスを提供することで、企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


「良いものづくり」を重視し、経営陣と従業員が互いに尊重し合いながら開発を行う文化があります。「品質最優先」を掲げ、開発期間の期限をあえて設けず、納得のいく品質になるまで作り込む姿勢を徹底しています。また、「お客様と共にゲームをつくっていく」という姿勢を通じ、ユーザー動向の分析と改善を繰り返すPDCAサイクルを強みとしています。

(3) 経営計画・目標


同社は、翌期以降3年間における売上高および営業利益それぞれの合計金額を重要な経営指標と位置づけています。単年度の成果だけでなく、中長期的な視点での収益拡大と株主価値の最大化を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


継続的な企業価値向上のため、「良いものづくり」「自社IPの創出」「海外市場展開」の3つを戦略の柱としています。

* 品質最優先の開発方針のもと、開発期間の期限を設けず、質の高いサービスの開発に取り組みます。
* 20年、30年先にも残る価値あるIPの創出を目指し、既存タイトルの活用や新作の検討を進めます。
* 収益規模拡大のため、開発中の新作ゲームアプリは、一部地域を除き世界同時配信かつ自社配信を前提に進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


優秀な人材の獲得と育成を重要な課題と認識しています。社内研修の強化や福利厚生の充実を図るとともに、オリジナリティのあるヒットタイトルを継続的に提供することで、志望者を惹きつける採用活動を展開しています。また、事業活動を通じてコーポレートブランドを高め、ゲームだけでなく企業としての魅力を訴求していく方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 33.3歳 5.8年 6,794,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.5%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 78.3%
男女賃金差異(正規雇用) 78.4%
男女賃金差異(非正規) 67.1%


※男性育児休業取得率については、当事業年度の該当者は存在しないため「-」で表示しております。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、男性の平均勤続年数(5.1年)、女性の平均勤続年数(6.5年)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定のタイトルへの収益依存


同社の売上高の大部分(2025年9月期は94.5%)は『メメントモリ』に依存しています。同社は既存タイトルのサービス向上や新規開発に注力していますが、主力タイトルの収益が想定を大きく下回った場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) プラットフォーム運営事業者の動向


スマートフォンアプリはAppleやGoogle等のプラットフォームを通じて提供されており、これらに対する収益依存度が大きくなっています。プラットフォームの規約変更やランキング仕様の変更、または運営事業者の方針転換等によりサービス提供が困難になった場合、業績に影響が出る可能性があります。

(3) 開発フェーズの長期化


同社は「品質最優先」を掲げ、開発期間の期限をあえて設けない方針をとっています。また、ヒット確率を高めるために開発ライン数を絞り込んでいます。このため、開発期間が長期化した場合や、事業環境の変化への即応が難しい場合に、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。