マリオン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マリオン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マリオンは、東京証券取引所スタンダード市場、名古屋証券取引所メイン市場、福岡証券取引所本則市場に上場する企業です。首都圏を中心に不動産賃貸関連サービスを展開し、賃貸、証券化、売買を行っています。直近の決算では、不動産売却が進んだことなどから増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社マリオン の有価証券報告書(第39期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. マリオンってどんな会社?


首都圏を中心に単身者向け賃貸マンションを保有・運営し、それらを裏付けとした証券化商品も展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1986年に不動産の賃貸・管理等を目的として設立されました。2004年に不動産特定共同事業の許可を取得し、不動産証券化商品「マリオンボンド」の取り扱いを開始しています。その後、2018年にJASDAQ(現:東証スタンダード)へ上場を果たしました。2019年にはネット完結型の不動産証券化商品「i-Bond」を開始するなど、不動産と金融を融合したサービスを展開しています。直近では2024年に福岡証券取引所および名古屋証券取引所へ重複上場し、認知度向上を図っています。

同社(単体)の従業員数は20名です。大株主構成を見ると、筆頭株主は創業者の福田敬司氏で、第2位は金融サービスを展開する事業会社、第3位は公益財団法人となっています。創業者が大株主として影響力を持ちつつ、事業パートナーや財団が安定株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
福田敬司 36.43%
SBIホールディングス 12.25%
公益財団法人マリオン財団 9.02%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は福田敬司氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
福田敬司 代表取締役社長 1986年11月同社設立。一般社団法人ホンジン・ホールディングス代表理事等を経て現職。
飛田明彦 取締役 営業本部長 アセットマネジメント部長 2009年同社入社。営業部投資事業課課長、営業部長等を経て現職。
武藤亮一 取締役 経営企画部長 ミドルオフィス部長 サステナビリティ委員会委員長 2020年同社入社。営業管理部長、ミドルオフィス部長等を経て現職。
宮原正徳 取締役 経営管理本部長 経営管理部長 みずほ銀行入行。同行支店長、学校法人宝仙学園を経て、2023年同社入社。現職。
深澤智広 取締役(常勤監査等委員) 2007年同社入社。経営企画部課長を経て現職。


社外取締役は、山田源(公認会計士)、増岡健司(医療法人社団理事長)、鎌田昭良(元防衛省大臣官房長)、和田佳久(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「不動産賃貸関連サービス」および「その他」事業を展開しています。

(1) 不動産賃貸サービス


居住者向け、特に単身世帯向けの賃貸マンションを中心に、首都圏等の主要都市で不動産を所有・賃貸しています。特徴として、保有物件の約36%を地方公共団体の東京事務所等に賃貸しており、安定的な顧客基盤を有しています。また、他社物件の借り上げ転貸(サブリース)や管理受託も行っています。

収益は、入居者からの賃料収入や、物件オーナーからの管理手数料等からなります。また、地方公共団体向けには生活家電の貸与や送迎サービスなどの付加価値を提供し、関係強化を図っています。運営は主にマリオンが行っています。

(2) 不動産証券化サービス


同社が保有または新規取得した賃貸不動産を対象に、不動産証券化商品を組成・販売しています。主な商品には「マリオンボンド」や、ネットで完結するクラウドファンディング型商品「i-Bond」などがあります。投資家から資金を集め、不動産運用益を分配する仕組みです。

収益は、対象不動産からの賃料収入や、組成・運営に係る手数料収入等が該当します。匿名組合契約に基づき、同社が営業者として物件を所有・運営し、投資家に利益を分配します。運営はマリオンが行っています。

(3) 不動産売買


保有する賃貸不動産の出口戦略として、またはポートフォリオの入れ替え、証券化商品の組成のために不動産の売買を行っています。市場環境を見極めながら、含み益の実現や新規物件の仕入れを実施します。

収益は、不動産の売却代金から得られます。賃貸・証券化業務のライフサイクルの一環として位置づけられており、適時適切な売買によって収益の最大化を図っています。運営はマリオンが行っています。

(4) その他


上記に含まれない事業として、不動産売買の仲介や顧客紹介、天然水の販売などを行っています。

収益は、仲介手数料や紹介料、商品販売代金等からなります。運営はマリオンが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に拡大傾向にあります。特に直近の2025年9月期は売上高が33億円となり、経常利益も7億円へ伸長しました。利益率も高い水準を維持しており、20.4%を記録しています。不動産売却益などが寄与し、成長トレンドを維持しています。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 18億円 22億円 28億円 29億円 33億円
経常利益 1.3億円 0.9億円 1.6億円 5.2億円 6.7億円
利益率(%) 7.1% 4.2% 5.7% 18.2% 20.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.9億円 0.6億円 1.4億円 3.4億円 4.6億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較します。売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。売上原価率はやや上昇したものの、売上総利益率は40%台前半を維持しています。販売費及び一般管理費の増加を抑えつつ売上を伸ばしたことで、営業利益率は24.2%から26.9%へと改善し、収益性が向上しています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 29億円 33億円
売上総利益 12億円 14億円
売上総利益率(%) 41.2% 42.4%
営業利益 7億円 9億円
営業利益率(%) 24.2% 26.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1.2億円(構成比23%)、役員報酬が0.8億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、サービス別の売上状況を分析します。不動産賃貸サービスは安定的に推移し、不動産証券化サービスも微増となりました。一方、不動産売買は物件売却が進んだことで大きく伸長し、全体の増収を牽引しました。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期)
不動産賃貸サービス 12億円 12億円
不動産証券化サービス 3億円 3億円
不動産売買 13億円 17億円
その他 0.3億円 0.1億円
連結(合計) 29億円 33億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、本業の営業活動で現金を生み出し、それを借入金の返済や株主還元に充てる「健全型」の傾向を示しています。投資活動による支出は抑えられ、財務活動は借入と返済を実施しつつ全体ではマイナスとなっています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 17億円 16億円
投資CF -13億円 -8億円
財務CF -5億円 -5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は25.3%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「私たちは、人間愛に基づき行動し、人にやさしい、地球にもやさしい社会を創造します」を経営理念に掲げています。不動産賃貸事業による安定基盤を確保しつつ、証券化商品などを通じて「住」に関連したサービスを提供し、社会貢献と企業価値向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「不動産のサービスで、サステナブルな社会に貢献する」というビジョンのもと、リスクを適切に制御しながら事業を展開する姿勢を重視しています。また、サステナビリティ基本方針において、環境問題への取り組みや安心安全な暮らしの実現、多様性の尊重などを掲げており、これらを重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、不動産市況等のリスクを制御しつつ安定成長を目指すことを基本方針としています。重視する経営指標として以下を掲げています。

* 売上高経常利益率の水準と推移
* 入居率の推移

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、首都圏以外の政令指定都市での仕入れ機会を追求し、賃貸業務基盤の拡充と新規証券化案件の組成を目指しています。また、法改正に伴い、主力商品である「i-Bond」をブロックチェーン技術を用いてセキュリティトークン化(デジタル証券化)する準備を進めており、この分野での優位性強化を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人財の育成と確保を重要課題と位置づけています。人事基本方針に基づき、評価制度や研修体制、OJT、自己啓発支援などを推進しています。また、個性の尊重と多様性の確保を掲げ、リモートワークや超過勤務の抑制など、個々の状況に応じた快適な職場環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 51.3歳 7.8年 6,111,202円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.3%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 64.0%
男女賃金差異(正規) 72.8%
男女賃金差異(非正規) -%


※男性育児休業取得率は0.0%ですが、出産時の特別休暇付与等は実施されています。非正規雇用者は女性のみのため、男女賃金差異(非正規)は算出不能となっています。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 不動産市況と金利の変動


同社は不動産賃貸や売買を行っており、景気や地価、金利動向の影響を受けます。特に、仕入れ資金を金融機関からの借入に依存しているため、金利上昇は経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、不動産市況の急変により、保有物件の売却が計画通りに進まないリスクもあります。

(2) 競合環境と風評リスク


不動産業界には多数の競合が存在し、優良物件の仕入れ競争が激化すると投資利回りが低下する恐れがあります。また、不動産証券化事業においては、同業他社に関する不祥事や風評が業界全体の信頼性に影響し、同社商品の販売等に波及する可能性があります。

(3) 法的規制と許認可


同社は宅地建物取引業法や不動産特定共同事業法など多数の法的規制を受けて事業を行っています。法令の大幅な変更や、何らかの理由により免許・許認可の取り消し処分を受けた場合、主要事業の継続が困難となり、経営に重大な影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。