EduLab 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

EduLab 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は、東京証券取引所グロース市場に上場するEdTech企業です。英語能力判定テスト「CASEC」やAIを活用した文字認識・採点技術の開発、テストセンター運営など、教育と技術を融合した事業を展開しています。2025年9月期は不採算事業からの撤退やコスト構造改革が奏功し、全利益区分で黒字化を達成しました。


※本記事は、株式会社EduLab の有価証券報告書(第11期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. EduLabってどんな会社?


教育分野における能力測定技術の研究開発と、テスト実施・運営サービスを主軸とする企業です。AI技術を活用した採点システムや、オンラインテスト(CBT)のプラットフォーム提供に強みを持ちます。

(1) 会社概要


2000年に創業者が前身企業へ参画し、2001年に子会社となる教育測定研究所を設立、英語テスト「CASEC」の提供を開始しました。2015年に持株会社として同社を設立し、2018年に東証マザーズ(現グロース)へ上場しました。その後、AI事業の開始やテストセンター運営への参入を経て、2024年にはテストセンター事業を分社化し、Z会グループとの連携を強化しています。

2025年9月30日現在、連結従業員数は232名(単体40名)です。筆頭株主は通信教育事業などを展開する増進会ホールディングスの完全子会社で、第2位は教育出版大手、第3位は創業者となっています。

氏名 持株比率
ZE1 29.43%
旺文社 5.16%
髙村 淳一 4.74%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性3名の計7名で構成され、女性役員比率は42.8%です。代表取締役社長兼CEOは廣實 学氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
廣實 学 代表取締役社長兼CEO 1997年東京三菱銀行入行。2019年同社入社執行役員。財務企画本部長等を経て、2021年12月より現職。
川瀬 晴夫 取締役CFO 1990年三和銀行入行。卑弥呼取締役、アスタリール取締役、富士化学工業執行役員等を経て、2022年12月より現職。
西田 紀子 取締役 2001年セレゴ・ジャパン入社。2016年教育測定研究所入社、同社執行役員等を経て、2022年12月より現職。


社外取締役は、名倉 英雄(PwCアドバイザリー合同会社スペシャルアドバイザー)、泉谷 智(元三井海洋開発内部監査部副部長)、清水 恵(西村あさひ法律事務所パートナー弁護士)、小柴 美樹(小柴公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「テスト等ライセンス事業」、「AI事業」、「テスト運営・受託事業」、「テストセンター事業」および「その他」事業を展開しています。

**(1) テスト等ライセンス事業**
科学的根拠に基づいたテスト・学習理論を応用し、試験・学習サービスを提供しています。主なサービスには、英語能力判定テスト「CASEC」や児童向け英語テスト「英検 Jr.」などがあり、大学等の教育機関や民間企業、個人が顧客です。

収益は、顧客からのライセンス利用料や受験料によって得ています。運営は主に株式会社教育測定研究所が行っています。

**(2) AI事業**
自社開発のAI技術を用いたサービスを提供しています。手書き文字認識AI-OCR「DEEP READ」や、ChatGPTを活用した自動採点ソリューション「DEEP GRADE」、英語ライティング学習サービス「UGUIS.AI」などを展開しています。

収益は、ソリューションの利用料やライセンス料から得ています。運営は株式会社教育測定研究所や米国の子会社が行っています。

**(3) テスト運営・受託事業**
学力調査などのテストに関する問題作成、システム構築、運営、採点などの一連の業務を受託しています。主な顧客は、国や地方公共団体などの公的機関や大学等の教育機関です。

収益は、公的機関や教育機関からの業務委託費として受け取っています。運営は主に株式会社教育測定研究所が行っています。

**(4) テストセンター事業**
各種資格・検定試験のCBT(Computer Based Testing)実施会場となるテストセンターを全国に設置・運営しています。会場提供だけでなく、作問から採点までをトータルにサポートし、テストのCBT化を推進しています。

収益は、テスト実施団体などからの会場利用料や運営受託費から得ています。運営は株式会社教育測定研究所および株式会社EdTech RISEが行っています。

**(5) その他事業**
主に広告配信事業などを展開しています。以前提供していた教育プラットフォーム事業からの撤退に伴い、継続している一部サービスをこの区分に分類しています。

収益は、広告主からの広告掲載料等から得ています。運営は同社グループが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2021年9月期の101億円をピークに減少傾向にあり、2025年9月期は62.3億円となっています。利益面では、2022年9月期から2024年9月期まで赤字が続いていましたが、2025年9月期には構造改革の効果により黒字転換を果たしました。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 100.9億円 97.6億円 70.6億円 71.4億円 62.3億円
経常利益 3.5億円 1.0億円 ▲6.2億円 ▲4.9億円 4.5億円
利益率(%) 3.5% 1.0% -8.7% -6.9% 7.2%
当期利益(親会社所有者帰属) ▲52.6億円 ▲8.2億円 ▲31.1億円 ▲12.7億円 0.2億円

(2) 損益計算書


2024年9月期から2025年9月期にかけて、売上高は減少したものの、売上総利益は増加し、利益率が大きく改善しました。これは不採算事業からの撤退やコスト削減などの構造改革が進んだ結果、営業黒字への転換に成功したことを示しています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 71.4億円 62.3億円
売上総利益 17.2億円 20.6億円
売上総利益率(%) 24.1% 33.0%
営業利益 ▲3.3億円 3.9億円
営業利益率(%) -4.6% 6.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が7.6億円(構成比46%)、役員報酬が1.9億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


AI事業とテストセンター事業が増収となり、特にAI事業は大幅な増収増益を達成しました。一方、テスト運営・受託事業は直接受注から間接受注への変更により減収となりましたが、利益率は改善しています。テスト等ライセンス事業は減収となりましたが、全体として各セグメントで黒字を確保しています。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期) 利益(2024年9月期) 利益(2025年9月期) 利益率
テスト等ライセンス事業 9.2億円 6.7億円 1.9億円 1.8億円 26.2%
AI事業 1.5億円 3.7億円 ▲0.4億円 1.8億円 49.2%
テスト運営・受託事業 24.4億円 15.2億円 2.6億円 3.8億円 24.8%
テストセンター事業 31.5億円 32.8億円 3.1億円 4.0億円 12.1%
その他事業 4.8億円 3.9億円 ▲0.9億円 0.3億円 8.2%
調整額 - - ▲9.5億円 ▲7.7億円 -
連結(合計) 71.4億円 62.3億円 ▲3.3億円 3.9億円 6.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

EduLabは、事業活動を通じて資金を生み出し、将来の成長に向けた投資を行い、財務基盤を安定させることで事業運営を行っています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、当期純利益の計上や前受金の増加などにより、前連結会計年度の支出から収入へと大きく改善しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、ソフトウエア開発への投資などにより支出となりましたが、前連結会計年度と比較すると支出額は減少しています。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の活用や長期借入金の返済などにより、支出となりました。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF ▲12.3億円 1.0億円
投資CF 10.0億円 ▲3.2億円
財務CF ▲9.0億円 ▲1.2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「人の能力を測定する技術の研究開発を行い、質の高いテストおよびラーニングの機会を提供することで、効果的な学びの機会を実現し、一人ひとりの能力の発展に寄与する」ことをミッションとして掲げています。また、培った技術や知見を活かして新たな事業創出にも挑戦しています。

(2) 企業文化


同社は、従業員一人ひとりの尊厳を大切にし、仕事を通じた能力向上と達成感を得られる職場環境を目指しています。また、すべての顧客ニーズを把握し品質の高いサービスを提供すること、事業活動を通じて社会の発展に貢献し、ステークホルダーから信頼される企業であることを重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2024年9月期から2026年9月期までの中期経営計画を推進しており、最終年度においても全利益区分の黒字維持を目指しています。具体的な数値目標として、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益の黒字化を掲げており、2025年9月期にはこれを達成しました。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「事業構造改革」「コスト構造改革」「組織体制・企業風土改革」の3つを重点施策として掲げています。高付加価値・成長事業への資源集中と不採算事業の撤退を進めるとともに、コスト削減による筋肉質な体制構築、顧客・プロダクト軸での組織再編により、持続的な成長と収益性の向上を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、持続的な成長のために優秀な人材の確保と育成を重要課題としています。営業・開発体制の強化に加え、新しい人事制度の導入により人材の活性化を推進しています。また、研修・教育制度の充実を図り、従業員が安心して働きながら能力向上と達成感を得られる環境の構築を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 45.2歳 6.7年 8,015,138円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 26.1%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 50.6%
男女賃金差異(正規雇用) 57.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 45.6%


※男性育児休業取得率について、同社は配偶者の出産サポートのための特別休暇を新設し利用促進中ですが、取得率は記載されていません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定顧客への売上依存


同社グループの主要事業において、特定の取引先に対する売上の依存度が高く、全売上高に占める割合は約40%前後となっています。同社は顧客の開拓や深耕により依存度の分散を図っていますが、特定顧客との契約内容に変更が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。

(2) テストセンター事業の運営リスク


同社は約40拠点の直営テストセンターを運営しており、賃料や運営費などの固定費負担が生じます。運営体制の構築に注力していますが、固定費の上昇や稼働率の低下などが発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) テスト運営・受託事業の入札リスク


テスト運営・受託事業は国内の公的機関が入札によって発注するケースが多く、長期的な継続契約の確保が難しい性質があります。毎年の入札結果や新規参入による競争激化により、特に大規模案件を受注できなかった場合、業績に大きな影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。