アンビスホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アンビスホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する、ホスピス「医心館」の運営を主力とする企業です。医療依存度が高い人々を受け入れる施設を展開し、地域医療の再生を目指しています。第9期は積極的な新規開設により増収となりましたが、先行投資や人件費等の増加により減益となりました。


※本記事は、株式会社アンビスホールディングス の有価証券報告書(第9期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アンビスホールディングスってどんな会社?


医療依存度が高い人々を受け入れるホスピス「医心館」を展開し、地域医療の課題解決に取り組む企業です。

(1) 会社概要


2013年に三重県で株式会社アンビスとして設立され、翌2014年に「医心館」事業を開始しました。2016年に持株会社体制へ移行し、2019年にJASDAQ市場へ上場しました。その後、2023年に東京証券取引所プライム市場へ区分変更しています。2020年には医療機関の経営支援を行う子会社を設立するなど事業領域を拡大しています。

2025年9月末時点の連結従業員数は5,135名(単体142名)です。筆頭株主は創業者で代表取締役CEOの柴原慶一氏の資産管理会社であり、第2位は柴原慶一氏本人です。第3位には資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
株式会社IDEA Capital 52.97%
柴原 慶一 8.74%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.52%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名 (役員のうち女性の比率10.0%)の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役CEOは柴原慶一氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
柴原 慶一 代表取締役CEO 医師・研究者を経て、2013年アンビス設立、代表取締役就任。2016年アンビスホールディングス設立、代表取締役CEOに就任し現職。明日の医療代表取締役を兼務。
税田 紘輔 取締役 大学病院や国立がん研究センター等での勤務を経て、2023年アンビスホールディングス入社、医療部第一部長。2025年12月より取締役。
山口 真吾 取締役 法律事務所や事業会社での勤務を経て、2018年アンビスホールディングス入社。2019年より取締役管理本部本部長。アンビスおよび明日の医療の取締役を兼務。


社外取締役は、牛込伸隆(東京窯業代表取締役社長)、山田剛史(Link-U Technologies取締役CTO)、本多則惠(元厚生労働省大臣官房審議官)、西山正徳(国際医療戦略研究所代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは医心館事業の単一セグメントです。

(1) 医心館事業


医療依存度が高い方々(末期がん、人工呼吸器装着者等)を対象とした有料老人ホーム「医心館」を運営しています。一般的な施設では受け入れ困難な入居者に対し、訪問看護・介護、居宅介護支援等を組み合わせて終末期の看護ケアを提供します。医師機能のアウトソーシングにより、地域の医療機関と連携するプラットフォームとして機能しています。

収益は、医療保険報酬、介護保険報酬、および入居者から受け取る家賃・管理費・食費等(保険適用外売上)の三階建て構造となっています。主に連結子会社の株式会社アンビスが施設の運営や各種サービスの提供を行っています。また、障害者の受け入れにも取り組み、障害者総合支援法に基づくサービス提供も行っています。

(2) その他(医療支援事業等)


同社グループは、医心館事業で培ったノウハウやネットワークを活用し、医療過疎地の病院や経営難の医療法人に対する経営支援を行っています。具体的には、地域医療のプラットフォーム形成や組織づくり、コスト管理などのコンサルティングに加え、医師や看護師の人材派遣を通じたハンズオン型の支援を提供しています。

収益源は、支援先医療機関からのコンサルティング報酬等です。運営は主に連結子会社の株式会社明日の医療が担っており、医療機関や介護施設の運営に関する総合的な支援を行っています。これにより、グループ全体でのシナジー効果創出と地域医療の活性化を目指しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して拡大を続けており、順調な事業成長を示しています。一方、利益面では第8期まで増加傾向にありましたが、第9期においては利益率が低下し、各利益段階で減益となりました。これは事業拡大に伴うコスト増加等が影響しているものと考えられます。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 153億円 231億円 320億円 425億円 492億円
経常利益 38億円 61億円 85億円 106億円 63億円
利益率(%) 24.6% 26.3% 26.7% 24.8% 12.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 26億円 43億円 63億円 74億円 37億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しているものの、売上原価および販売費及び一般管理費の増加により、営業利益率は低下しました。特に売上原価の増加が顕著であり、事業拡大に伴う運営コストの上昇が見られます。結果として、営業利益は前期と比較して減少しています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 425億円 492億円
売上総利益 171億円 148億円
売上総利益率(%) 40.2% 30.1%
営業利益 106億円 62億円
営業利益率(%) 25.0% 12.5%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が30億円(構成比34.2%)、採用募集費が17億円(同19.2%)を占めています。売上原価については、新規開設に伴い採用した事業所従業員の給与手当等が主な増加要因です。

(3) セグメント収益


同社グループは医心館事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの内訳はありません。連結全体としては、新規施設開設による増収効果がある一方で、先行投資や運営コストの増加により利益は減少しました。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は「積極型」です。本業である営業活動でキャッシュを獲得しつつ、それを上回る規模で投資を行い、不足分を財務活動(借入等)で調達している状態です。新規事業所の開設など、将来の成長に向けた積極的な投資姿勢がうかがえます。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 75億円 60億円
投資CF -168億円 -104億円
財務CF 61億円 64億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「世界で最もエキサイティングな医療・ヘルスケアカンパニーへ」をビジョンに掲げています。医療やヘルスケアの進歩に貢献し、その恩恵を多くの人々が享受できる社会の実現を目指すとともに、仕組みのイノベーションによって社会課題を解決し、かつ利益を上げることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、サイエンスやテクノロジーではなく「仕組み」をイノベーションすることを重視しています。その具体例として、終末期の病床から医師機能をアウトソーシングするというアイデアを実践し、「医心館」という独自のホスピス事業を確立しました。常識にとらわれず、斬新な解決策を模索するチャレンジャー精神を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、事業活動の成果を示す「EBITDA」を主な経営指標としています。また、収益性の判断指標として「EBITDAマージン」、財務安定性指標として「自己資本比率」と「Net Debt/EBITDA倍率」を用いています。これらを向上させ、バランスよく持続的に企業価値を拡大することを目指しています。

* 自己資本比率目安:30%

(4) 成長戦略と重点施策


「医心館」事業の拡大と持続的な事業基盤の構築を掲げ、末期がん患者を中心とした展開推進や西日本を含む広範な地域への拠点新設を進めます。また、医療支援事業に本格的に取り組み、疲弊した医療機関への経営支援を通じて総合医療カンパニーへの進化を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


良質なケアの実現に向け、経験豊かな看護職員を基準以上に配置する手厚い体制をとっています。また、従業員の退職率低減に取り組み、教育研修の実施、ゆとりある運営、人員体制の拡充を進めています。さらに、経営会議での女性比率向上など、多様な人材が活躍できる環境整備も推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 37.2歳 2.2年 6,493,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 77.3%
男性育児休業取得率 15.1%
男女賃金差異(全労働者) 100.8%
男女賃金差異(正規雇用) 102.7%
男女賃金差異(非正規) 117.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、CO2排出量原単位(0.26)、経営会議での女性比率目標(50.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業所の新規開設に関するリスク


「医心館」の開設にあたっては多角的なリサーチを行っていますが、競合により好立地を確保できない場合や、規制、天候、景況感の変化等により計画通りに進まない可能性があります。開設遅延や計画乖離が生じた場合、利益機会の逸失により業績に影響を与える可能性があります。

(2) 人材の確保、育成及び管理に関するリスク


事業の根幹である看護職員等の有資格者を適切に確保・育成する必要がありますが、医療・介護業界の人材不足や競争激化は続いています。必要な質量の人材が確保できない場合、サービス縮小や新規開設の遅れなどが生じ、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 特定人物への依存に関するリスク


創業者であり大株主でもある代表取締役CEO柴原慶一氏は、経営戦略の構築等で重要な役割を担っています。特定の人物に依存しない体制整備を進めていますが、何らかの理由で同氏の業務執行が困難になった場合、業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

(4) 事業に係る法的規制に関するリスク


売上高の約9割が医療・介護保険収入であり、関連法令や制度改正の影響を受けやすい構造です。報酬改定等で経営に不利な変更があった場合、業績に影響を与える可能性があります。また、不正請求等により指定取消処分を受けた場合、事業継続に重大な支障をきたす恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。