※本記事は、ティアンドエスグループ株式会社 の有価証券報告書(第10期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
ティアンドエスグループ転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
1. ティアンドエスグループってどんな会社?
大手企業や半導体メーカー向けのシステム開発受託、工場内システム運用、AI先端技術開発などを行う独立系システムインテグレーターです。
■(1) 会社概要
同社のルーツは1985年設立のシナノシステムエンジニアリングと1996年設立のテックジャパンに遡り、2016年に両社が合併してティアンドエスが発足しました。2020年に東証マザーズへ上場し、2022年の市場区分見直しで東証グロース市場へ移行しました。2024年6月には持株会社体制へ移行し、現商号であるティアンドエスグループへと変更しました。
現在のグループ全体の従業員数は368名(単体14名)です。筆頭株主は社長の武川義浩氏(24.54%)であり、次いで元役員の日下理氏(7.42%)、渡辺照男氏(6.02%)と続きます。創業メンバーや経営陣が主要株主として名を連ねるオーナー系企業の特徴を持っています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 武川義浩 | 24.54% |
| 日下理 | 7.42% |
| 渡辺照男 | 6.02% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名、計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役執行役員社長は武川義浩氏が務めています。社外取締役比率は約28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 武川義浩 | 代表取締役執行役員社長 | ティーエスディー、アイネット等を経てテックジャパン(現同社)入社。同社社長等を歴任し、2020年1月より現職。 |
| 木下洋 | 取締役執行役員COOコーポレート本部管掌 | あずさ監査法人パートナー等を経て、2020年同社入社。業務本部長等を経て2024年6月より現職。公認会計士。 |
| 三橋茂 | 取締役執行役員CCO子会社管掌 | アイネット等を経てテックジャパン(現同社)入社。インフラストラクチャー事業部長等を経て2025年12月より現職。 |
| 小林林広 | 取締役執行役員CSO経営戦略室長 | ラック、フィックスターズを経て同社入社。先進技術事業本部長等を経て2025年12月より現職。 |
| 永谷孝俊 | 取締役(監査等委員) | 東芝情報通信事業本部経理部長、クアーズテック取締役経理本部長等を歴任。2021年2月より現職。 |
社外取締役は、望月篤(税理士)、藤江勇佑(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「DXソリューション」「半導体ソリューション」「AIソリューション」の3カテゴリーで事業を展開しています。
■(1) DXソリューションカテゴリー
重電、社会インフラ、業務系アプリケーション等の領域において、情報システムの開発および運用・保守サービスを提供しています。日立グループや東芝グループなどの大手企業が主要な顧客です。
収益は、顧客企業からのシステム受託開発費や、稼働後の運用・保守サービス料から得ています。大規模システムの開発から運用までをワンストップで提供することで継続的な取引につなげています。運営は主に事業子会社のティアンドエス等が行っています。
■(2) 半導体ソリューションカテゴリー
半導体関連企業向けに、工場内の生産管理システム等の開発および運用・保守サービスを提供しています。キオクシアグループ、東芝グループ、ソニーグループなどが主要顧客です。
収益は、半導体工場向けのシステム開発費や、常駐型の運用・保守サービス料から得ています。専門性と機密性が求められる分野で長年の実績を持ちます。運営は主に事業子会社のティアンドエス等が行っています。
■(3) AIソリューションカテゴリー
AI(機械学習・ディープラーニング)、画像認識、ハードウエア制御などの高度技術を駆使したソフトウエア開発や研究開発支援を行っています。生成AIやエッジAIなどの最先端領域が対象です。
収益は、AI関連製品を開発中の顧客からの受託開発費や研究開発支援料から得ています。高度な技術力を付加価値として提供しています。運営は主に事業子会社のティアンドエス、イントフォー等が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
第9期は決算期変更により10ヶ月間の変則決算となっていますが、売上高・利益ともに拡大傾向にあります。第10期は売上高41億円、経常利益8億円を計上し、利益率も18.4%と高い水準を維持しています。DX、半導体、AIの全カテゴリーで需要が堅調に推移しています。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 30億円 | 41億円 |
| 経常利益 | 5億円 | 8億円 |
| 利益率(%) | 17.5% | 18.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | 5億円 |
■(2) 損益計算書
前期が10ヶ月決算のため単純比較はできませんが、売上高の伸長に伴い売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は約30%の水準を維持しており、高付加価値なサービス提供ができていることが窺えます。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 30億円 | 41億円 |
| 売上総利益 | 9億円 | 12億円 |
| 売上総利益率(%) | 29.1% | 30.2% |
| 営業利益 | 5億円 | 8億円 |
| 営業利益率(%) | 17.4% | 18.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1億円(構成比30%)、役員報酬が1億円(同21%)を占めています。売上原価の詳細はcore_dataにありませんが、ITサービス業の特性上、労務費や外注費が主な構成要素と考えられます。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、カテゴリー別の売上高を開示しています。主力のDXソリューションが堅調に推移するほか、半導体市場の活況を受けて半導体ソリューションも伸長しています。AIソリューションも需要の高まりを受けて成長しており、全カテゴリーで売上が拡大しています。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) |
|---|---|---|
| DXソリューション | 18億円 | 24億円 |
| 半導体ソリューション | 9億円 | 13億円 |
| AIソリューション | 3億円 | 4億円 |
| 連結(合計) | 30億円 | 41億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだ現金を借入金の返済や株主還元に充てつつ、将来への投資も自己資金の範囲内でコントロールしている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4億円 | 8億円 |
| 投資CF | -0.2億円 | -1億円 |
| 財務CF | -0.5億円 | -1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は19.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は79.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「あらゆる産業において、ソフトウエア技術が生み出す新たな付加価値を通じて、お客様に安心と満足そして豊かさを提供すると共に、社員を大切にし、株主様に貢献する」ことを企業理念としています。高度な技術力で顧客課題を解決し、地域社会と共に発展するコア企業としての役割を担うことを目指しています。
■(2) 企業文化
「社員全員が当社グループを愛し、自ら成長し続ける会社環境を提供し、社員一人ひとりが希望とやりがいが持てる会社を実現します」という方針を掲げています。社員を大切にし、自律的な成長を促す環境づくりを重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は2031年に向けた長期ビジョン「T&S Growth Journey 2031」を策定しています。2031年までに以下の財務目標の達成を目指しています。
* 売上高:100億円
* EBITDA:20億円
* 時価総額:300億円
■(4) 成長戦略と重点施策
長期ビジョンの実現に向け、以下の3つのミッションを掲げています。
1. 半導体領域におけるナンバーワン・システムインテグレーターの地位確立
2. AI事業の独自ブランド化を起点とする高速成長
3. これらを支えるエンジニア規模の拡大
また、横浜キャピタルとの事業提携を通じ、M&Aや採用強化などの支援を受けることで施策を加速させていく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
エンジニアリソースの拡充が収益拡大に直結するため、高度専門人材の採用と育成を最重要課題としています。人材開発室を設置し、新人研修やOJT、Eラーニング等を通じて技術力やプロジェクト推進力の強化を図っています。社員一人ひとりが成長できる環境を整備し、エンジニア規模の拡大を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 35.7歳 | 8.9年 | 6,571,231円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 78.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 80.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 61.7% |
※女性管理職比率、男性育児休業取得率については、同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員に占める女性比率(25.0%)、有給取得率(67.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定顧客への依存
同社グループの売上高において、キオクシアグループ、日立グループ、東芝グループなどの特定顧客への依存度が高くなっています。これらの顧客の事業方針や経営状況の変化、投資抑制などが発生した場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 人材の確保
同社の事業は専門技術を持つエンジニアに依存しており、優秀な人材の確保と定着が重要課題です。IT人材不足が深刻化する中で、計画通りの採用ができない場合や、離職により技術者が減少した場合には、事業運営や業績に影響が出る可能性があります。
■(3) AIに関する研究開発
AIソリューション事業において、大学等との共同研究を通じて技術開発を進めていますが、研究成果が想定通りに進まない可能性があります。この場合、AI関連事業の成長や競争力に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 情報管理
顧客企業の機密情報や個人情報を多数取り扱っています。情報セキュリティ対策を講じていますが、万が一情報漏洩が発生した場合、損害賠償請求や社会的信用の失墜により、業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。



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