クリングルファーマ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クリングルファーマ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クリングルファーマはグロース市場に上場し、難治性疾患治療薬の研究開発を行う医薬品開発事業を展開しています。直近の業績は、売上高0.7億円、税引前利益はマイナス9.1億円でした。研究開発への先行投資が続いており、減収かつ赤字幅が拡大する傾向にあります。


※本記事は、クリングルファーマ株式会社 の有価証券報告書(第24期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. クリングルファーマってどんな会社?


同社は、HGF(肝細胞増殖因子)タンパク質を活用した難治性疾患治療薬の研究開発を行う、大阪大学発の創薬バイオベンチャーです。

(1) 会社概要


同社は2001年に大阪市北区で設立され、2005年にHGFタンパク質の開発実施権許諾を得て本格的な開発を開始しました。2020年に東証マザーズ(現グロース市場)へ上場し、2025年1月には大阪市北区へ本店を移転する予定です。現在は脊髄損傷急性期などの治療薬開発を進めています。

同社の従業員数は単体で17名です。筆頭株主は共同研究契約等を締結している事業会社の日本全薬工業で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は資本業務提携先である事業会社のCYBERDYNEとなっています。

氏名 持株比率
日本全薬工業 7.14%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 510643 3.52%
CYBERDYNE 2.85%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名、計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は安達 喜一氏です。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
安達 喜一 代表取締役社長 三井物産戦略研究所等を経て2004年に同社入社。研究開発部長、取締役副社長、事業開発部長などを歴任し、2016年12月より現職。
村上 浩一 取締役経営管理部長 リクルート、アドバンスクリエイト常務執行役員、NHSインシュアランスグループ執行役員CFO等を経て2021年に同社入社。2021年12月より現職。
早田 大真 取締役医薬開発部長兼薬事部長 2004年に同社入社。研究開発部研究員、医薬開発部シニアマネージャー等を経て、2023年8月より現職。
茅野 善行 取締役信頼性保証部長 和研薬、岡山大鵬薬品を経て2019年に同社入社。医薬開発部シニアマネージャー等を経て、2023年12月より現職。
友保 昌拓 取締役 雪印乳業、中外製薬、三菱UFJキャピタル等を経て、現在は友保総合研究所代表取締役。2016年12月より現職。


社外取締役は、吉野 公一郎(カルナバイオサイエンス代表取締役社長)、福井 真人(ゼノジェンファーマ代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医薬品開発事業」を展開しています。

医薬品開発事業


同社は、症例数が少なく治療法が確立していない「難治性疾患」に対し、組換えヒトHGFタンパク質を用いた治療薬の研究開発を行っています。主な対象疾患は、脊髄損傷急性期、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、声帯瘢痕、急性腎障害などです。大学等との共同研究を活用し、自社で医薬品製造販売承認の取得を目指しています。

収益は主に、製薬企業や卸売業者などの提携先から得られる「契約一時金」「マイルストーン収入」「ロイヤリティ収入」および「製品販売収入(原薬供給等)」から構成されます。開発段階に応じた提携により収益を獲得するモデルで、運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は0.7億円から3.9億円の範囲で推移しています。利益面では、医薬品開発には多額の研究開発費等の先行投資が必要となるため、経常損失および当期純損失の計上が続いています。直近の2025年9月期は売上が減少し、赤字幅も拡大しています。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 2.9億円 3.9億円 0.7億円 0.8億円 0.7億円
経常利益 -3.0億円 -3.3億円 -8.5億円 -7.5億円 -9.1億円
利益率(%) -103.4% -84.3% -1231.3% -943.3% -1266.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -3.0億円 -3.3億円 -8.5億円 -7.6億円 -9.2億円

(2) 損益計算書


売上高に対し、売上原価は発生しておらず、販売費及び一般管理費が大きく上回る構造となっています。このため、営業損失が継続しており、直近では赤字額が増加しています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 0.8億円 0.7億円
売上総利益 0.8億円 0.7億円
売上総利益率(%) 100.0% 100.0%
営業利益 -8.2億円 -9.1億円
営業利益率(%) -1021.9% -1259.4%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が6.8億円(構成比69%)を占めており、創薬ベンチャーとしての先行投資が費用の大半を占めています。

(3) セグメント収益


医薬品開発事業の単一セグメントです。直近では提携先からの収入減少により減収となりました。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期)
医薬品開発事業 0.8億円 0.7億円
連結(合計) 0.8億円 0.7億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

クリングルファーマは、新株予約権の発行による資金調達を進め、事業継続のための資金確保を図っております。

同社は、創薬バイオベンチャーとして、研究開発費と長い時間を要する特性から、現在、営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスを計上しております。医薬品開発に多額の投資を行うため、投資活動によるキャッシュ・フローもマイナスとなっております。一方で、資金調達活動によるキャッシュ・フローは、新株予約権の発行等によりプラスに転じております。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF -6.6億円 -7.6億円
投資CF -1.2億円 -1.5億円
財務CF 8.4億円 0.8億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「難治性疾患治療薬の研究開発を行い、難病に苦しむ患者さんに対して画期的な治療手段を提供し社会に貢献すること」を企業理念としています。組換えヒトHGFタンパク質の研究開発による創薬イノベーションを通じて事業機会を創出し、希少疾患を対象に自社開発で承認を取得することを基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は、「組換えヒトHGFタンパク質の研究開発を通じた創薬イノベーションの実現に向けて従業員の成長を支援し、従業員との間に強固で長期にわたるパートナーシップを構築すること」を人材育成および社内環境整備に関する基本方針としています。この方針のもと、従業員のポテンシャルの最大発揮と伸長に向けた取り組みを進めています。

(3) 経営計画・目標


同社は、創薬バイオベンチャーとして開発品の実用化に向けた研究開発を優先しており、継続的な売上を計上する段階に至っていないため、客観的な指標等は設定していません。その代わり、「開発の進捗」を経営目標とし、その達成状況を将来の利益計上に至るまでの重要な指標と位置づけています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、難治性疾患治療薬の実用化に向け、主に以下の課題に取り組んでいます。

* **進行パイプラインの開発促進**:脊髄損傷急性期、声帯瘢痕、ALSの各パイプラインにおいて、追加試験や解析を進め、承認申請を目指す。
* **新たなパイプラインの開発**:HGFの多面的な作用を活かし、新規適応症や新規シーズの探索を行う。
* **原薬の量産・供給体制の確立**:実用化や提携先への供給拡大に備え、製造法の効率化と安定供給体制を構築する。
* **財務体質の強化**:増資や提携による収益確保で、研究開発資金を安定的に調達する。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人材を持続的な成長を支える基盤と捉え、人的資本の拡充に取り組んでいます。具体的には、フルフレックスタイム制やリモートワークの導入、ストックオプション制度によるウェルビーイング向上、社内外の機会を通じた社員教育などにより、従業員のポテンシャルの最大発揮と伸長を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 49.9歳 2.1年 6,446,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 25.0%
男性労働者の育児休業取得率 0.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 91.5%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 93.9%
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) -%


※女性のパート・有期労働者は在籍していません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 医薬品開発に係るリスク


主要パイプライン(脊髄損傷急性期、声帯瘢痕、ALS)の開発において、臨床試験で期待通りの結果が得られない、または当局との協議により有効性が認められない可能性があります。開発の遅延や中止、追加試験の実施等は、承認申請時期の後ろ倒しや資金需要の増大を招き、将来の収益確保に影響を与える可能性があります。

(2) 製造に関するリスク


治験薬や将来の医薬品製造において、特殊な原材料を使用するため少数のサプライヤーに依存しています。原材料の供給不足や、製造委託先の事情により製造が滞った場合、開発や製品供給に支障をきたす恐れがあります。また、製造技術やノウハウの流出により競争優位性が失われるリスクもあります。

(3) 事業開発に係るリスク


製品販売や流通において、丸石製薬や東邦ホールディングス等の提携先企業に依存する部分があります。相手先企業の経営方針変更等により提携が機能しなくなった場合、売上や市場供給に影響が出る可能性があります。また、未提携のパイプラインや海外展開において適切なパートナーを獲得できない場合、事業計画に遅れが生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。