#記事タイトル:日本エコシステム転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、日本エコシステム株式会社 の有価証券報告書(第28期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本エコシステムってどんな会社?
社会インフラ設備の保守・工事や公営競技運営、環境事業などを多角的に展開する企業です。
■(1) 会社概要
1998年に有限会社エコシステムとして設立され、電気空調工事や道路保全事業を開始しました。2001年に株式会社へ組織変更し、2011年に公営競技関連事業を譲り受け事業を拡大しました。2021年に株式を上場し、直近では2025年に文化財保全を手掛ける宇佐美松鶴堂などをグループ化しています。
連結従業員数は429名、単体では162名です。筆頭株主は資産管理会社の松福で、第2位は同じく資産管理会社のオクヤホールディングス、第3位は創業者の松島穣氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 松福 | 37.87% |
| オクヤホールディングス | 22.38% |
| 松島 穣 | 6.98% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表取締役社長は松島穣氏が務めています。社外取締役比率は41.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松島 穣 | 代表取締役社長 | 1998年11月有限会社エコシステム(現同社)設立、代表取締役社長就任。グループ各社の代表取締役等を歴任し、2001年7月より現職。 |
| 中村 成一 | 専務取締役交通インフラ事業担当 | 1989年名古屋トヨペット入社。2000年同社入社。取締役、専務取締役道路グループ担当、環境事業担当等を経て、2023年10月より現職。 |
| 奥村 泰典 | 常務取締役ファシリティ事業担当 | 1987年オスカー電子(現オスカー総業)入社。2011年同社取締役。日本ベンダーネット取締役等を兼務し、2019年12月より現職。 |
| 内田 敦 | 取締役グループ会社事業推進交通インフラ事業担当 | 1991年森吉倉庫入社。1998年同社入社。道路保全部長、施設保全部長等を経て、2023年12月より現職。 |
| 稲生 篤彦 | 取締役管理本部担当 | 1996年酒井会計事務所入所。2000年監査法人トーマツ入所。2017年同社入社管理本部長。同年7月より現職。 |
| 瀧本 裕二 | 取締役環境事業担当 | 1998年本多金属工業入社。2012年同社入社。JESテイコク代表取締役等を務め、2023年12月より現職。 |
| 亀山 直人 | 取締役(常勤監査等委員) | 1982年オスカー電子入社。同社常務取締役環境グループ担当、監査役を経て、2019年12月より現職。 |
社外取締役は、杉戸俊之(税理士法人大樹代表社員)、田野好彦(AWSG PTE. LTD. 取締役)、伊東史子(パークス代表取締役)、加納正二(岐阜聖徳学園大学教授)、南善隆(グラーティア弁護士法人代表弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ファシリティ事業」「環境事業」「交通インフラ事業」「アセットマネジメント事業」を展開しています。
■ファシリティ事業
防炎合板等の製造販売、空調給排水衛生設備の設計施工、公営競技場におけるトータリゼータシステムの設計製造・運営、競輪予想サービスなどを提供しています。主な顧客は建設業界や公営競技主催者などです。
製品の販売代金や工事代金、公営競技の運営委託料などが収益源です。運営は主に日本エコシステム、日本ベンダーネット、中央警備保障、OTS、ベニクスなどが行っています。
■環境事業
排水浄化処理・水循環システムのコンサルティング・施工・メンテナンスや、産業用太陽光発電設備の設計施工、売電事業を行っています。顧客のカーボンニュートラルやコスト削減を支援します。
設備の設計施工代金やメンテナンス料、売電収入などが収益源です。運営は主に日本エコシステム、JESテイコクが行っています。
■交通インフラ事業
高速道路のエンジニアリング・メンテナンス、建設コンサルタント、携帯電話無線基地局工事などの電気通信事業を展開しています。NEXCO中日本グループなどが主要顧客です。
道路照明灯工事や点検、維持修繕業務などの委託料が収益源です。運営は主に日本エコシステム、ワンズライフ、日新ブリッジエンジニアリング、Jes東海通建、三進などが行っています。
■アセットマネジメント事業
賃貸用不動産の運用や不動産売買、経営コンサルティング事業を展開しています。本社機能を備えた賃貸ビル「JES一宮ビル」などを保有しています。
不動産の賃料収入や売買収益、コンサルティング料が収益源です。運営は主に日本エコシステム、JES総合研究所が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は着実に増加傾向にあり、特に直近では100億円を突破しています。一方、利益面では経常利益率が低下傾向にあり、事業拡大に伴うコスト増などが影響していると見られます。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 70億円 | 72億円 | 76億円 | 93億円 | 113億円 |
| 経常利益 | 8.0億円 | 8.6億円 | 6.9億円 | 8.0億円 | 4.7億円 |
| 利益率(%) | 11.5% | 11.9% | 9.0% | 8.6% | 4.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5.7億円 | 4.1億円 | 8.7億円 | 6.2億円 | 3.0億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上原価や販管費の増加により営業利益率は低下しました。積極的な事業拡大に伴う投資やコスト増が利益を圧迫している状況が見て取れます。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 93億円 | 113億円 |
| 売上総利益 | 26億円 | 30億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.5% | 26.4% |
| 営業利益 | 7.6億円 | 4.4億円 |
| 営業利益率(%) | 8.2% | 3.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が6.4億円(構成比25.0%)、役員報酬が3.8億円(同14.9%)、支払手数料が2.5億円(同10.0%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで増収となりましたが、ファシリティ事業は利益率が低下しました。環境事業は大幅な増益を達成しています。アセットマネジメント事業は新賃貸ビル取得関連費用等により赤字となりました。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) | 利益(2024年9月期) | 利益(2025年9月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ファシリティ事業 | 46億円 | 52億円 | 6.9億円 | 5.1億円 | 9.7% |
| 環境事業 | 10億円 | 13億円 | 1.6億円 | 2.9億円 | 22.5% |
| 交通インフラ事業 | 35億円 | 44億円 | 7.8億円 | 7.2億円 | 16.4% |
| アセットマネジメント事業 | 2.3億円 | 4.1億円 | -0.0億円 | -0.2億円 | -4.9% |
| 連結(合計) | 93億円 | 113億円 | 7.6億円 | 4.4億円 | 3.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
積極型:営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5.1億円 | 6.4億円 |
| 投資CF | -17億円 | -45億円 |
| 財務CF | 1.0億円 | 35億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.5%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も40.1%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「未晃道(みこうどう)」を社是とし、「事業を通じ、物心両面の幸福を追求すると同時に、かけがえのない地球環境の維持にも貢献します」を経営理念に掲げています。これは、未来の地球を照らし、輝き続ける事業を創造する道を常に追求するという思いが込められています。
■(2) 企業文化
同社は社会インフラサービス企業として公共性の高い事業を展開し、社会に必要とされ続ける「300年企業」の創造を目指しています。事業間連携による群戦略や、エンジニアを柔軟に配置転換するエコシステム形成を推進する風土があります。
■(3) 経営計画・目標
「JESG Vision 2030」を掲げ、2030年に連結売上高138億円以上を目指しています。また、事業の成長性を示す売上高CAGR6~7%以上の達成を業績目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
M&Aによるシナジー効果促進とグループ経営の効率化、採用・人材育成の強化、海外展開の推進を掲げています。既存事業のエンジニアリングとの相性が良くシナジーが見込める事業へのM&A投資枠を設定し、専門性の高い技術者の獲得と事業ポートフォリオの拡大を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を最も大切な資本と位置づけ、社員が楽しく働ける企業風土の醸成、人材育成の強化、ダイバーシティの実現を推進しています。事業やグループ会社の枠を超えてエンジニアを配置転換する「エンジニアエコシステム」や、グループ全体のエンジニア育成機関「JESアカデミー」により、技術者のスキル向上と柔軟な活躍を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 40.5歳 | 6.6年 | 5,676,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.9% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※労働者の男女の賃金の差異につきましては、公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、レベル1(易しい)の累計資格取得数(265件)、レベル2(普通)の累計資格取得数(634件)、レベル3(難しい)の累計資格取得数(207件)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場動向の変化
ファシリティ事業ではネット投票への移行による場外発売場来場者の減少、環境事業では再生可能エネルギーの買取価格変動や売電収入減少、交通インフラ事業では公共投資の動向や競争激化による受注減などが、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 人材の確保と育成
事業拡大には電気工事士や各種施工管理技士等の有資格者が不可欠です。社内外の研修充実等により育成に努めていますが、工事施工を賄える十分な人材の確保・育成が困難となった場合、業績等に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) M&A等による事業拡大
事業拡大のため同業他社の事業譲受や買収等を行う可能性がありますが、市場動向や経済環境によっては当初予想した結果を生み出せない場合や、のれんの発生等が財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。



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